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恋人に去られ孤独なヴィクトルは売れない短篇小説家。ソ連崩壊後、経営困難に陥った動物園から憂鬱症のペンギンを貰い受け、ミーシャと名づけて一緒に暮らしている。生活のために新聞の死亡記事を書く仕事を始めたヴィクトルだが、身辺に不穏な影がちらつく。他人の死が自分自身に迫ってくる。ウクライナはキーウ在住のロシア語作家による傑作長編小説。
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Posted by ブクログ
数ヶ月付き合って別れた人が、別れて数ヶ月後の私の誕生日に送ってくれた2冊のうちの1冊でした。 この主人公の燻ってる感じが私と重なったってことなのかな。 売れない作家が主人公の不条理ものってことで、 どうしてもポール・オースターも想起したし、 ニーナやソーニャとの淡白な関係もおもしろかったな。
憂鬱症のペンギンと暮らす売れない作家。死亡記事を書く仕事を受けたことで、じわじわと恐ろしいことに巻き込まれているようだ。それでも収入は増え、不穏な状況に目をつぶれば淡々と日常が過ごせているように思えなくもない。 正義なのか犯罪なのかよくわからないまま、「何か」に巻き込まれる感じが訳者後書きにもあった...続きを読むけど、村上春樹の羊をめぐる冒険に通ずる空気感。 ペンギンのミーシャの存在感が大きくて、愛おしい。 後半は特にザワザワしながら夢中になってすごーく面白かった。
職もなく恋人も失った売れない作家である主人公ヴィクトルは,動物園から引き取ったペンギンと暮らしている.そんな彼に新聞社から「生きている人たちのXデイに備えて,事前に追悼記事を書いておく」仕事を依頼される.その仕事は軌道に乗るが,不思議なことに書いた追悼記事が次々に使われ,なぜか女児を引き取ることにな...続きを読むり,また,ヴィクトルの周りでも不穏な事件が起こり始める.一体,この追悼記事は何なのか? 不思議なテイストなのだが,一応,ミステリーなのだろう.作者はウクライナ人.
ウクライナ戦争が始まったころにクルコフのウクライナ日記を読みこの本を買っておいた。今読んでみてものすごくエンターテイメント性あふれるサスペンス小説だった。独身の小説家の男が鬱のペンギンを動物園から引き取りペットとして対等な関係で生活をしていくシチュエーションも面白い。 新聞に追悼記事を生前から書...続きを読むいていき事件に巻き込まれていく話は不気味だ。 4歳の少女を引き取りその面倒を見る若い20代の女性と3人とペンギンとの愛のない生活を綴っていくところも男のやさしいキャラクターを表している。 ソ連崩壊後のウクライナの混乱した政情での設定だけど政治性もあると思うがエンターテイメントとして難しく読む必要もない小説だった。 最後40ページ余りの物語の展開は一気読みさせられた。
ウクライナのキエフ(キーウ)でペンギンのミーシャと暮らす売れない小説家のヴィクトルは、ある日、出版社から「十字架」を書く仕事を依頼される。 不穏な空気+ペンギンの物語→ 1990年代、ソ連崩壊後のウクライナが舞台。戦後の日本にしか住んだことのない私には最初、とても不思議な気持ちになった。 家の外の...続きを読む世界はとても殺伐としているのに、ヴィクトルのキャラとペンギンのミーシャがその世界から少し浮いていて、それがとても絶妙。一気に読みやすくなる。→ でも、ペンギンのミーシャは動物園が閉園するタイミングでヴィクトルが貰い受けているわけだし、この時点で今の日本にはない感覚なんだよね。 終始この「感覚はわからないけど、何となくわかる」みたいな感じが魅力的なお話(語彙力なさすぎなんだけど伝わってー!) 読んでよかった(語彙力喪失)
短編作家の主人公が謎の仕事を引き受けるが、 徐々に明らかになってゆく。 共に暮らすペンギンがなんとも魅力的。途中から一緒に暮らす彼女や子どもとの日常もほっこりするが、主人公は彼女らに愛はないと思っている。 最後のオチがあっと言わせる。 旧ソ連ぽいなーと思わせる管理統制社会、闇社会の面影。
憂鬱症のペンギンと売れない小説家。もう、これだけで面白い。 不可思議でどこか、現実と空想のあわいに惹き込まれるような物語。 どことなく村上春樹を想わせる文章ですが、訳者のあとがきを読んで納得。 続編が出ているらしいけれど、どうやら15年以上経った現在でも日本語翻訳は出されていないそうで、残念。 ...続きを読む さて、本作はソ連解体後のキエフを背景にした物語。 「人生の本質が変わったからといっていちいち考えこんだりしてはいられない。」 と作中にあるように、当時の人たちの、激しく変わる社会に、いちいち反応してたらやってられない、みたいな感情が窺えます。 これは、たぶん私たちも同じで、自分の人生に起こっていることの意味や、日々労働していることのその先なんて、いちいち考えながら生きていくことなんてできないし、問題や困難を避けて生きていくほうが良いとも思える。 そんな暗い背景がベースにありながらも、ペンギンとソーニャ(預かることになった子供)ニーナ(ベビーシッター)が間に入ることでどこかコミカル、そしてこの関係を通してヴィクトルの感情の変遷も伝わってきます。
ペンギンとヴィクトルが互いに依存関係であり「憂鬱症」を通して重なりあう様子がとてもうまいなと思った 追悼記事を書く仕事を訝しく思いながらも、深くは知ろうとしないとことか、とにかく生活ができればいいと思ってたところとか、ヴィクトルがなぜこんなにも物事に無関心でいられるのかが不思議だった 作品に終始漂...続きを読むうヴィクトルの諦念とその受容は、ウクライナが新生国家で情勢が不安定だったことが大きく関係してるんだろう でも途中に出てきたペンギン学者のおじいさんが亡くなったことはヴィクトルのかすかにあった生への執着をかなり吸い取った気がするな 最後はヴィクトル=ミーシャだったということか……… そしてどんなことがあっても生活は続くのだと思わされた
ソ連崩壊直後のウクライナ、売れない小説家のセルゲイは恋人に去られ、動物園からペンギンを1匹引き取る。 ペンギンのミーシャと共同生活を始めた頃、新聞に追悼文を書く仕事を得る。追悼文と言っても、亡くなった人ではなく存命の著名人について亡くなる前に準備しておく…という奇妙なものだった。 ーーーーーーーー...続きを読むーーーーーーーー 現在のウクライナとは違うけど、この当時のウクライナの社会が先行の見えない不安に混沌としていた様子が伺える。登場人物達はみな淡々と日常生活を送っているが、足元に不安が燻っている。 数ページ読んで感じたのは 「村上春樹みたい」 だった。初期のハルキ作品に何となく似ている。と同時に安部公房の不可思議さやポール・オースターの形の見えない不安要素もある。 不安の原因が何なのかわからない恐怖、並行してゆったりと繰り広げられる日常。話の展開が読めないので、ハラハラと楽しんで読めた。
1996年に発表。20ヶ国語に翻訳され、日本語訳版は2004年。ソ連崩壊後の新生ウクライナの首都キエフで、ペンギンと暮らす売れない小説家のヴィクトルは、新聞の死亡記事を書く仕事を持ちかけられる。それは存命の人物の追悼記事を目録にするという不穏な仕事だったが、生活のために二つ返事で引き受けてしまう。初...続きを読むめはうまくいっているように思えたが、思いもよらぬ事態が次々と巻き起こり思わぬ結末を迎える。 寺田順三さんの可愛い装画と、ウクライナ出身の小説家とのことで気になり購入。内省的で淡々とした独特の文体は、可愛い表紙とのギャップに戸惑ったがすぐに慣れた。ページをめくるごとに物語の魅力に引き込まれ、不条理な展開にもかかわらず読んだ後まで心地よい余韻が残る。ペンギンとの奇妙な生活はペーソスとユーモアの間で揺れ動き、掴みどころのない魅力のある物語になっていた。 時代の不穏な空気のなかで、奇妙な生活が淡々と進んでいく。どこか寂しそうなペンギンを心配するヴィクトルだが、彼もまた常に満たされない孤独を感じている。孤独がテーマとなっていることは確かで、Wikipediaによるとクルコフは7歳の時に飼っていたハムスターの孤独をテーマに詩を書いていたらしい。まだ読んでいないが動物が登場する作品も多く、街で飼われる動物に孤独な自分を重ね合わせていたのではないか。 登場人物も孤独な人が多い。動物園から売られたペンギンのミーシャ。〈ペンギンじゃないミーシャ〉の娘のソーニャ、ミーシャの元飼育員のピドパールィ、子守りのニーナも街を好きになれずに自分の居場所を探しているようだ。ヴィクトルの日常には孤独と死が常に溶け込んでいて、それを紛らわすように人が集まってくる。彼らの何気ない普通の暮らしがとても愛おしく思えてくるのは、誰しもが持っている「孤独感」を引き出されるからだろう。 突然の結末に驚いたが、これ以上はないのではないだろうか。作者はどこか孤独を愉しんでいるようだった。
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