【感想・ネタバレ】初恋のレビュー

あらすじ

16歳の少年ウラジーミルは、隣に引っ越してきた年上の公爵令嬢ジナイーダに、一目で魅せられる。初めての恋にとまどいながらも、思いは燃え上がる。取り巻きの青年たちと恋のさや当てが始まるなか、ある日彼女が恋に落ちたことを知る。だが、相手はいったい誰なのか? 初恋の甘く切ないときめきが、主人公の回想で綴られる。作者自身がもっとも愛した自伝的中編。

...続きを読む
\ レビュー投稿でポイントプレゼント / ※購入済みの作品が対象となります
レビューを書く

感情タグBEST3

Posted by ブクログ

語り口が好きでした。主人公の心情がうんうん分かる分かると痛々しくも分かってしまう。ヒロインが小悪魔的な美女で想像が膨らむ。弄ばれたい衝動に駆られる。読んですぐに再読したくなる。そんな作品でした!

0
2023年12月13日

Posted by ブクログ

ネタバレ

ここ数年で読んで古典の中で一番素晴らしいと思った。最後数ページの主人公の心境の吐露は感動的ですらあった。「初恋」というタイトルのイメージからくる清涼感、ほろ苦い思い出、とはよほどかけ離れた衝撃を受けた。

「青春に魅力があるとしたら、その魅力の秘密は、なんでもできるというところにではなく、なんでもできると思えるというところにあるのかもしれません。持てる力を、他に使いようがないまま無駄遣いしてしまう、そこにこそ青春の魅力が潜んでいるのかもしれません。だれもが自分のことを浪費家だと本気で思い込み、「ああ、時間をつぶさなかったら、どれほどすごいことができただろう!」と本気で考える、そこにこそ潜んでいるのかもしれません。」

0
2022年06月12日

Posted by ブクログ

んあ~結構好きだな~!
言い回しとか表現が好みだったんだけど、それは訳者さんのおかげかな?
初恋のエピソードとかは目新しいのではないし、特に惹かれるものはないけれど(雰囲気はとても好き)、最後の章が良かったなぁ。そう、改めて考えるとこれって年をとってから自分の初恋を振り返ってるんだけど、何で思い出して書いたんだろう...。まだ自分の初恋に終止符を打てていないのかなぁ。うーん、もうちょっと読み込みたい!し、ツルゲーネフの他の作品読んでみたいなぁ!

0
2020年03月24日

Posted by ブクログ

ネタバレ

世の中に「初恋」を題材にした作品は多いが、その多くが「純粋」「淡い」「儚い」といった形容詞で語ることができると思う。なので本作もそのような内容ではないかと勝手に想像していたのだが、一味違っていた。たしかに先に挙げたように表現することもできるかもしれないが、しかしそもそもからして、ウラジーミルとジナイーダの2人の関係性は歪んでいる。告白を受け入れてデートを重ねて、というわけではなく、あくまでも一方的で、ウラジーミルは最後まで弄ばれ続ける。しかし、シチュエーションはともかくとして、こういった非対称的な構造のほうがむしろリアリティを感じるし、かえって今日でもじゅうぶんに通用するような内容になっている。巻末解説によれば、じっさいに著者の経験が如実に反映されているようである。そして、結末もまた印象的。ふたたび冒頭の記述に戻るが、主人公の初恋が実らなかった理由として、相手と実父が繫がっていたからとなる作品は、いったいどれだけあるのだろうか。そういう意味では、この悲劇的で独特な結末こそがなによりも純粋で新しく、いつまでも陳腐さを感じさせない瑞瑞しいものであり、著者にそういう意図はなかっただろうが、こうした状態もまた「初恋」と呼べるかもしれない。

0
2019年11月09日

Posted by ブクログ

文章表現が巧みで、じっくり読んで場面を想像する楽しさを感じられた本でした。初恋の恋心の気もちをいろんな言葉で表していてすばらしかったです。ジナイーダが恋をしている相手がまさかの人で、小説後半は目を見開くほど衝撃的な場面が繰り広げられていました。

0
2019年08月29日

Posted by ブクログ

古い作品だと侮っていたことが大間違いだった。この時代の、さらに日本人ではない国の人々が初恋と言う様々な作家が描くことを試みた永遠のテーマをどのように描いているのかということに興味を持って読み始めた。しかしそこに文化的、時代的違いによって分断されるような異なりはなく、自分も全く似たようなことを考えたり行っていたりしたと恥ずかしい記憶を思い起こさせるような記述が多くあった。相手を好きと思うことをただ「好きだと感じた」などと記述するのではなく、その気持ちをどのような行動に置き換え消費しているのかを細かく記していたことが、その共通点を生む大きな由来だと考える。少年の恥ずかしい、しかし楽しいそして苦しい大切な相手を思う気持ちと行動は、当時の自分を見ているかのようでとても応援したくなった。その分その後に起こる悲劇を見たときは、半分ほどあらすじを見ていた時点で分かっていたものの、胸を貫かれる思いであった。さらに注目すべき点は、残り数ページ辺りで描かれるこの作者の青春の定義である。ただロマンスを描くのではなく、青春とは一体何なのかを描くことによって、物語の少年、そして読者が追体験したあの出来事は過ぎ去った人生におけるもっとも素晴らしい、そしてもう戻ることのできない過去の事であると認識できだのであった。同時に、人生におけるもっとも愚鈍になりしかし素晴らしい全能感を味わい行動に移す気力や体力のある青春時代とはなんてかないものなのかと哀しくなった。

0
2017年07月02日

Posted by ブクログ

今読んでもなお古びないのは普遍的な人間の性を描いているからでしょうね。
ネットが発達しようが100年前と同じように恋に苦しむのです。って本当に最近は苦しむのか?苦しむのが面倒だから恋愛しないという話も聞くけど・・・
それにしても、42歳でこんな瑞々しくも身勝手な恋心を描けるトゥルゲーネフ、凄い!

ロシア語には愛と恋は別の単語としてあるのだろうか?

0
2016年03月12日

Posted by ブクログ

決してなにかこう小説的に優れているかと言われれば、そうでもないと思う。なにやら高尚らしい終わりかたも取ってつけたようだと思うし。

表現をうんぬんとかってより、筆がひとりでに滑ってるみたいな勢い、熱を感じられる。思えば冒頭の2人の紳士のためにノートに書きつづってるんだものなあ、律儀としか言いようがない。

隣に引っ越してきた侯爵夫人。その娘のジナイーダは医者だの詩人だの騎兵だのといった男の一大コレクションといったものを従えて、彼らと蓮っ葉な遊びに興じる。男たちは皆彼女に熱っぽい気持ちを抱いているが、この恋愛ゲームにおいて彼女は常に女王様なのだ。
16歳のウラジーミルも当然のように彼女に熱を上げるが、この「初恋」はまだ子供である彼にとっては甚だ高くつく…。
けど「初恋」とは誰にとっても常に高くつくものなのだ。たぶん。

ウラジミールにとってはこの蓮っ葉な女王様が、誰がために自己を犠牲にするような献身を持っていようとは夢にも思わない。
(初々しいウラジミールの心の動きといったら!)

彼女の意中の人は誰なのか…これは冒頭で既に予想がつく。だけでなく、それにより「この物語がどんな話なのか」という全体像もある程度つかめてしまう。たぶんもっとうまく隠せただろう。
でも逆にその「洗練されなさ」がいみじくもリアルっぽい。うん。どこにでもいるような紳士が昔の印象的な初恋物語をしている…そんな感じだ。

そしてやっぱりあの鞭を振るう場面。あれは頭のなかに残り続けるんだろうと思う。あの場面にまつわる数多の謎も、そのまま。
あれがウラジミールの子供時代の最後の光景になったんじゃなかろうか、と考えてみる。

うん、ビルディングロマンスとしても素敵だと思う。ウラジミールが大人になることで風景が変わっていく……特に、はじめ彼に嘲笑をなげかけたルージンが実はもっとも分別と思いやりを持った大人であることがわかるというような…あーうん、爽やかだな!

0
2013年12月14日

Posted by ブクログ

ネタバレ

本当に初恋は儚くて、切なくて脆いもの。
特にそれが望むべきものではないときには
なおさらだと思います。

多感な時期に一人の年上の女性に恋をし
惚れてしまった一人の青年。
だけれども彼女の心理はなかなか
「見えない」

ようやくつながったように思えても
嫉妬ゆえにそれは遠回りになってしまう。
そして

私は残念ながら
このような恋をしたことはないです。
だけれども、多感な時期だからこその
心理描写は共感できるものがあります。

0
2013年09月06日

Posted by ブクログ

ネタバレ

 主人公の別荘の隣に越してきた貧しい公爵夫人一家の娘のジナイーダに一目惚れし、失恋する物語。
 ジナイーダの周りには常に男がおり、常連として軍人、伯爵、医者、詩人を侍らせ、夜毎にくだらないどんちゃん騒ぎをしていた。主人公もその常連に加わるのだが、次第にジナイーダが恋をしている人物がいることに気付く。その相手が自分の父であることをひょんなことから知り、理解できないながらも本当の恋や愛に触れたように思う。でも、それが元で父は身を滅ぼし、ジナイーダにもすれ違いから再会せずに相手の死を知る。知らぬ老婆を看取りながら物語は幕を閉じる。
 個々の描写が素晴らしく、心情に沿った自然描写や瑞々しい初恋の機微を映す心理描写が好きだった。特に、自然描写では、「そういうときは、自室に引きこもるか、庭のつきあたりまで行って廃墟になっている温室によじのぼるかしました。石造りの高い温室の一部が壊れずに残っていたのです。道に面しているほうの壁に足をぶらさげてすわり、何時間もそのまま何も目に入らず、ただただぼんやりしていたものです。そばでは、埃をかぶったイラクサの上をモンシロチョウが数匹けだるそうに飛び、威勢のいいスズメが壊れかけた赤レンガにとまって、いらだたしげにチュンチュン鳴きながら尾をいっぱいに広げ、体をあっちに向けたりこっちに向けたりしています。相変わらず疑り深いカラスは、はるか高く、葉の落ちた白樺の梢にとまって、ときどきカアカア鳴きかわしています。白樺の枝はまばらで、そのあいだを太陽と風が静かにたわむれ、ときおり聞こえてくるドンスコイ修道院の鐘の音は穏やかでわびしげでした。じっとすわったきり、眺めるともなくぼんやり前を見て耳をすましていると、なんとも言いようのない気持ちがこみあげてきました。悲しみも、喜びも、未来への予感も、希望も、生に対する恐怖も、すべて含んでいるような気持ちです。(中略)この複雑な気持ちをたった一言であらわそうとしたかもしれません──「ジナイーダ」という一言で。」というシーンが好きだった。心理描写では「『ジュリアス・シーザーは武芸に秀でていた』という箇所をつづけざまに十回も読んだのにまったく理解できない」というシーンが好きだった。
 シンプルな筋立てでありながら、人物の関係性や立場が細かい構造のシンメトリーや皮肉めいていたものになっていることを、解説を読んで知り舌を巻いた。この物語が時代を超えて残っていることにも納得感があった。
 あまり欠点らしいものはなかったが、私にはそこまで刺さる物語ではなかったため、4.4。

0
2025年10月10日

Posted by ブクログ

ジナイーダが自分のタイプじゃなくて、主人公に全然共感出来なかった。
ただ好きな女の子を父親に寝盗られるって展開は、源氏物語みたいで面白かった。マイダーノフとかに取られるよりはマシなのかな?主人公もそんなに悔しくなかったって言ってたし。
全体的に綺麗で、特に最後の青春に関する一節は好きだった。

青春に魅力があるとしたら、その魅力の秘訣は、なんにでも出来ると言うとこやろではなく、なんでも出来ると思えるというところにあるのかもしれません。

自分はまだ大学生だけど、こんな感じの初恋してみたかったなあ。

あと主人公の厨二病全開妄想シーンも好き。
相手の男と戦闘をし、血まみれになる主人公。心配してるジナイーダに向かって、格好つけながら「何にも」と答える。





0
2023年04月24日

Posted by ブクログ

ネタバレ

 5つ年上の女性ジナイーダに恋をしてしまった16歳ウラジミールの恋物語。私も読みながら、ジナイーダに弄ばれて、それでも心躍ってしまった。また、1番好きなシーンは、ウラジミールが父からザセーキン家のことを聞かれるシーン。父は、聞いているのか聞いていないのかよく分からないのに、絶妙なタイミングで話し手の気持ちを煽るような合いの手を入れてくる。それが目に浮かんで、ジナイーダとは別の意味で翻弄された。

0
2022年09月06日

Posted by ブクログ

好きな曲の原典で気になった事がきっかけです。

主人公にとってのこの初恋は、あまりにも鮮烈である意味で大恋愛なものでした。
私は誰かを好きになった事がないので、自分を変えられてしまうような恋愛が羨ましいですが、当人からしてみればそんな生優しいものではないのでしょう。
寝ても覚めても頭から離れない、自分でも理解できない行動をとってしまったり、感情の制御ができなかったり……強制的に自分を変えられてしまう主人公の戸惑いや恐怖を、何度も目にしました。

初恋というタイトルではありますが、ロマンスというよりジナイーダが誰を恋い焦がれているかを見つけるミステリーのようで、先が気になりました。
お話自体が短い事もありさらっと読めた印象です。


この小説はトゥルゲーネフさんの半自伝だそうで、当たり前といえば当たり前なのですが、恋で頭がいっぱいになる気持ちはロシアでも同じなんだな、と思いました。
決してこのお話をなぞりたくはありませんが、自分を変えてしまうほどの恋を、自分もしてみたくなりました。

0
2021年01月14日

Posted by ブクログ

ネジ読書会の課題本でした。16の初恋の甘く切なすぎるときめき。40になった主人公の人に読ませるための日記の形で綴られる。ネタバレしないで読んだ方がいいと、言われていたにもかかわらず、あらすじをつい読んでしまった。

初恋は、他のどの作品よりも作者自身に愛された幸福な小説であるという。彼の人生そのものであり身をもって体験したものだそう。

語り手ウラジーミル・ペトローヴィチの父と初恋相手21歳の、公爵令嬢ジナイーダがとりたてて美化されている。
人生は短くどうしようもなく人間は悲しく惨めで、美しいと思えた。 

どういう立場であれ一瞬のときめきがあるから人は生きていけるのかも。

後ろのほうで、青春の魅力について語り手が語ってるのがほんとにそうだなぁと共感した。

以外引用。
青春に魅力があるとしたら、その魅力の秘密はなんでもできるというところにあるのかもしれません。持てる力を他に使いようのないまま無駄つかいしてしまう。そこにこそ青春の魅力が潜んでいるのかもしれません。だれもが自分のことを浪費家だと本気で思いこみ、『あぁ、時間を無駄につぶさなかったら、どれほどすごいことができただろう!』と本気でかんがえる、そこにこそ潜んでいるのかもしれません。

0
2020年02月09日

Posted by ブクログ

ネタバレ

ジナイーダが父に恋をしているとわかった時、嫉妬のあまり殺そうとしていたほどの激情に流されることなく引き返したのは、ウラジーミルも「父に相手にしてほしい」という一種の父への恋慕があったから?と思ってしまった。

ウラジーミルは、恋の甘さと苦しさをすごいはやさで経験して、成長してしまったのだなと。でもこういう変化って本当に一瞬で、唐突に起こる。自分の初恋を思い返してみても、その前と後でずいぶん変わったなと思う。そしてそういう境はいつも唐突。


とりまきを弄んでいるジナイーダに最初同じ女としてまったく好感が持てなかったが、ウラジーミル父に鞭で打たれた痕にキスをするシーンを読んで、「ジナイーダ、貴女も恋する女の子だよ…。」と同情してしまった。

ウラジーミルの主観的な描写でしか父のことは語られていないので何とも言えないけれど、女性はウラジーミル父みたいな人好きでしょ。こんな読み方をしていいのかわからないけれど、正直惹かれた。あとルーシンも…。

0
2020年01月16日

Posted by ブクログ

 豊富な語彙を用いた表現ではないが、テンポよく、主人公が自らの心の内を偽りなく純粋に、私たちに語りかけてくれている感じがした。主人公の内面や行動の描写が適切かつ雄弁で、ありありと伝わってくる。
 初恋の、どうしても陥ってしまう無限ループ的な感じ、高揚感、全能感、幸福感、絶望感、それらに振り回されに振り回される主人公。共感しつつも、子供だなぁって思って楽しく気楽に読めた。あの幸せは子供だからこそ存分に味わえるものであると思うし、特別で大切なものだと思う。その感情を抱かなくなったり、抱きそうになっても振り回されないようにと思ってブレーキをかけてしまうようになった自分を、大人になったのかなと思いつつも、心が老いたなぁと少し切なくなった。

 主人公が恋している相手や主人公の父親をみて、魅力とは何か考え直そうと思った。人格者と、人間的に魅力的な人は違う。また、人間的に魅力的な人と、女性や男性として魅力的な人は違う。(登場人物と直接的な関係はないが)個人的にはそう思った。

印象に残った文
青春に魅力があるとしたら、その魅力の秘密は、なんでもできるというところにではなく、なんでもできると思えるというところにあるのかもしれない。

0
2020年03月04日

Posted by ブクログ

青年時代の大人の女性への憧れと失恋、その恋敵が衝撃的で、この時代ではかなりセンセーショナルな感じもします。
序章での老人3人が語るところと、それに繋がる最終章の終盤の、青春を振り返る切なき思いが響きます。
新約でとても読みやすいです。階級を露骨に描くところは時代を感じさせますね。

0
2019年07月01日

Posted by ブクログ

ロシア文学って人間の内面に入り込んでいくことを得意としているイメージがあるので、積極的に読んでいきたいと思っている。

初恋っていうと、衝動ばかりが前に出てしまっておかしな言動をとってしまうような、くすぐったいものを想像する。この本も読みながら身悶えすることを期待して読んだ。
しかし、この作品は物語が進むほど精神的に追い込まれていくのでしんどかった。
けれど、こんなのも悪くはない。

0
2018年08月29日

Posted by ブクログ

これはもう読んでみてくださいとしかいいようのないみずみずしい物語。
ウラジミールのジナイーダへの初恋と失恋の物語。

ウラジミール 16歳
ジナイーダ 21歳
ジナイーダの彼氏 40歳代。

年齢構成的にも申し分ない。
ウラジミールに勝ち目があるはずがないですね。

これも、いまぐらいの年になると、落ち着いて読めるなあ。

0
2017年12月09日

Posted by ブクログ

とんでもない話です。
10代半ばかな?今で言うと中学生かな?みたいな男の子が、20代前半くらいの女性に惚れちゃうわけです。
それでまあ、別段エッチなことがあるわけではなくて、精神的に振り回されたりもてあそばれたりするんですが。
実はその娘さんは、男の子のお父さんと不倫の関係でした。どっとはらい。

という話なんです。

それが、男の子目線から、実に繊細と言えば繊細に。
理屈抜きで、とにかくキレイなお姉さんにのぼせちゃってる。
もう、身もだえするほどに恥ずかしくて、自殺したいくらいみっともない。
そんな10代のアホな恋ごころが、恥ずかしくて恥ずかしくてもう、たまりません。

1860年に発表された小説です。
つまりこれ、江戸時代(笑)。すごいですねえ。
日本では、坂本竜馬とか新選組がうんぬんしてた時代ですよ。
そんな頃に書かれた小説が、今読んでも面白い。

19世紀の西欧の世の中が、貴族や王様という時代から、資本主義で経済でという時代へと変わっていく。
商品としての小説が生まれる。
この頃に書かれた小説は、21世紀の今も、読めるものだなあ、と。改めて。

語り口がやや時代めいていたり、全体が中年になった主人公の回想ということになっていたり、
そういう枠組みに関しては、無論の事19世紀ぽいなあとは思います。
それに、当然ながら物語の中の固有名詞とか習慣とかモラルとかで、「?」というところも、たまにあります。
光文社の古典新訳シリーズは、そういうつまづきの小石をなるたけ排除してくれている気がして、読み易い(と、僕は思います)。

こういう「思春期初恋、苦く終わりぬ」的な小説は山ほどあると思いますが、その原点みたいな小説。
オリジンに特有の、堂々たるその恥ずかしさ。素材剥き出し、ゴロンって、転がした感じの手ざわり。
止まらず読めちゃう面白さでした。

0
2016年02月16日

Posted by ブクログ

読後、私より先に読み終えた父から「カルピスみたいな味やと思ったやろう、どぶろくやで。」と名言を頂いた。

0
2015年01月04日

Posted by ブクログ

ネタバレ

16歳の少年ウラジーミルは、年上の公爵令嬢ジナイーダに、一目で魅せられる。初めての恋にとまどいながらも、思いは燃え上がる。しかしある日、彼女が恋に落ちたことを知る。だが、いったい誰に?初恋の甘く切ないときめきが、主人公の回想で綴られる。作者自身がもっとも愛した傑作。

わりかしドロドロしているなぁと思う。
ロシア人名はなかなか頭に定着してこないのは自分だけだろうか。それでも恋心を抱く健気なウラジーミルを見ていると自分もこんなにも純粋に恋をしていた時があったのかなと自分を振り返ってしまう。

読んでいて懐かしく感じる感覚は自分自身とダブらせている所を探しているのかもしれない。
それでもジナイーダみたいな娘には恋をしないと思う。
ジナイーダは美しいは正義と当たり前に言ってのけてしまいそう。

話の展開が読めてしまった事には少々残念。

0
2014年11月13日

Posted by ブクログ

少年ウラジーミルは隣に引越してきた年上の美しい女性ジナイーダに恋心を抱く。しかし彼女は自身に好意を寄せる何人もの男たちを家に集めては、いいようにあしらい楽しんでいた。そんな彼女の型破りな言動に驚きつつもウラジーミルの想いは募る一方。しかし、ある日を境に彼女の様子が一変する。ツルゲーネフの半自伝的恋愛小説。

恋は盲目というように、好きという気持ちが湧いてしまうと許されない恋だとしても止まらない。辛くても苦しくても、会えるその一瞬に幸せを感じる。そんな切ない恋を経験する者と、目の当たりにする者。好きになった相手だからこそ、微妙な変化には良くも悪くも敏感に気付いてしまう苦さがよく描かれている。

0
2014年07月15日

Posted by ブクログ

報われなかった初恋を純化して美化して回想するというのは、男の性なのだとも思う。痛々しいが甘美な小説であった。

0
2012年07月26日

Posted by ブクログ

海外古典文学は敷居が高いイメージがあったが、サクサク読めた。
源氏物語然り、恋愛というのはいつの時代も万国共通変わらないものなんだと改めて勉強させられた。

ジョジョ好きなら是非読んでほしい!

0
2025年05月12日

Posted by ブクログ

冒頭から何か思い出すことがあり、話が分かってしまって読み進めたが、、、もしかして別訳(とすると岩波か)で昔読んだことあったかな。
でもはっきりと思い出せない。「父」に記憶が引っかかるけど、別の作品か?

0
2022年04月22日

Posted by ブクログ

ネタバレ

衝撃的な小説だった。
おじさん3人で初恋について語り合う、ノスタルジーを感じる設定。
主役であるウラジーミルの初恋相手ジナイーダは、美しく気品に溢れ、天真爛漫な女性。モテモテのジナイーダは、男達を魅力し、翻弄する。小悪魔、いや、悪魔的である。
ジナイーダに陶酔し、どんな要求でも喜んで叶える男達と、彼らを手のひらで転がし楽しんでいるジナイーダ。その奇妙な関係は、まるで見てはいけないものを見ているよう。
さらに奇妙なのは、ウラジーミルの父親である。
ジナイーダと密かに交際するのだ。奥さんは健在である。その上、ウラジーミルがジナイーダの虜なのは明白なのにも関わらず。
ジナイーダと父親は一目見た時から惹かれ合っていた。
ジナイーダを取り囲む男達が、1人、また1人と交際関係に気づく中、ウラジーミルただ1人が何も見えていない。
ジナイーダは誰かに恋をしているようだ、一体誰に恋をしているんだろう、と悩むばかり。
ウラジーミルがいつ父親の裏切りに気付くのか、ハラハラしながら読み進めた。こんな状況に追いやられる彼が可哀想で仕方がない。
小説の中で最も奇妙なシーンは、終盤に訪れる。
父親がジナイーダの白い腕を鞭で打ち、赤く晴れた腕にジナイーダがそっとキスをする。
それを見たウラジーミルは、「これが本当の恋なんだ!本当に愛しているなら、ぶたれても受け入れられるんだ!」と大興奮。この世の心理を発見したかのようだ。
わたしは思わず、え???いやいやいや、ちがうちがう。ただのDVやん。ウラジーミルよ、これ本当の愛ちゃうで。と本に向かって話しかけた。
しかしウラジーミルの勢いは止まらず、物語も濁流のように展開する。父親がジナイーダに裏切られショックで死亡。ジナイーダ、結婚相手との子どもを生み死亡。ウラジーミル、2人が安らかな気持ちでいられることを祈る。爽やかな雰囲気で物語が完結。
これが作者トゥルゲーネフの実際の経験だと言うのだから、ますます衝撃的。
事実は小説より奇なり。これはイギリスの詩人バイロンの名言だ。本小説「初恋」の中にバイロンの名が一度出てくる。トゥルゲーネフは、バイロンの名言を誰よりも噛みしめていたに違いない。

最後に、お気に入りの一文を紹介する。
「詩人や作家はたいていそうですが、マイダーノフもかなり冷たい人間でした。」
ジナイーダの取り巻きの1人、詩人マイダーノフの紹介文である。作家であるトゥルゲーネフが、詩人や作家は冷たい人間とこき下ろす言葉。眉間に深いシワを刻んだトゥルゲーネフによる、皮肉たっぷりのこの一文に、ユーモアと人間らしさを感じずにはいられない。


















0
2021年09月09日

Posted by ブクログ

ネタバレ

初恋とはこういうものだと思う。
ちょっとしたことで、動揺する。
そのせいで気付かないことも多い。

16歳故か、鈍感すぎるウラジーミルくん。
疑わしい材料は目の前にたくさんあったのになかなか気付かない!

まだ気付かんか!…おばさんは何回もそう思いました。

そして、ジナイーダさん。
見た目は美しいのしょうが、それだけかと。この中から得られる情報からはとてもオススメできないわ。

ウラジーミルが理解した時、明石家サンタの鐘が鳴ったよ。

0
2018年01月27日

Posted by ブクログ

題名そのまま、甘酸っぱい初恋物語でした。こういうのを全力で面白いと思える人は、心が豊かなんでしょうね。私には正直ちょっと物足りなかったです。まあ、面白かったけど…、すごく綺麗で、瑞々しくて、心が洗われるような気がしました。

0
2014年09月07日

Posted by ブクログ

貴女に恋をした日のことを、僕はずっと忘れない。

甘酸っぱい。まさに、初恋。宝塚で舞台するというから読んでみたけれど、なんというかもう恋するウラジーミルのトキメキがむずむずする。お父さんもかっこいいし。ジナイーダも、奔放で勝手ですが魅力的。

過去を振り返っている、という設定がまた憎い。これが現在進行形の話だったら、若造め! となりそうだけど、主人公と一緒に振り返るから、若い頃の甘美な思い出として、あの若かった頃は、と共感できる。

0
2014年06月13日

「小説」ランキング