【感想・ネタバレ】初恋のレビュー

あらすじ

16歳の少年ウラジーミルは、隣に引っ越してきた年上の公爵令嬢ジナイーダに、一目で魅せられる。初めての恋にとまどいながらも、思いは燃え上がる。取り巻きの青年たちと恋のさや当てが始まるなか、ある日彼女が恋に落ちたことを知る。だが、相手はいったい誰なのか? 初恋の甘く切ないときめきが、主人公の回想で綴られる。作者自身がもっとも愛した自伝的中編。

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Posted by ブクログ

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ここ数年で読んで古典の中で一番素晴らしいと思った。最後数ページの主人公の心境の吐露は感動的ですらあった。「初恋」というタイトルのイメージからくる清涼感、ほろ苦い思い出、とはよほどかけ離れた衝撃を受けた。

「青春に魅力があるとしたら、その魅力の秘密は、なんでもできるというところにではなく、なんでもできると思えるというところにあるのかもしれません。持てる力を、他に使いようがないまま無駄遣いしてしまう、そこにこそ青春の魅力が潜んでいるのかもしれません。だれもが自分のことを浪費家だと本気で思い込み、「ああ、時間をつぶさなかったら、どれほどすごいことができただろう!」と本気で考える、そこにこそ潜んでいるのかもしれません。」

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2022年06月12日

Posted by ブクログ

ネタバレ

世の中に「初恋」を題材にした作品は多いが、その多くが「純粋」「淡い」「儚い」といった形容詞で語ることができると思う。なので本作もそのような内容ではないかと勝手に想像していたのだが、一味違っていた。たしかに先に挙げたように表現することもできるかもしれないが、しかしそもそもからして、ウラジーミルとジナイーダの2人の関係性は歪んでいる。告白を受け入れてデートを重ねて、というわけではなく、あくまでも一方的で、ウラジーミルは最後まで弄ばれ続ける。しかし、シチュエーションはともかくとして、こういった非対称的な構造のほうがむしろリアリティを感じるし、かえって今日でもじゅうぶんに通用するような内容になっている。巻末解説によれば、じっさいに著者の経験が如実に反映されているようである。そして、結末もまた印象的。ふたたび冒頭の記述に戻るが、主人公の初恋が実らなかった理由として、相手と実父が繫がっていたからとなる作品は、いったいどれだけあるのだろうか。そういう意味では、この悲劇的で独特な結末こそがなによりも純粋で新しく、いつまでも陳腐さを感じさせない瑞瑞しいものであり、著者にそういう意図はなかっただろうが、こうした状態もまた「初恋」と呼べるかもしれない。

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2019年11月09日

Posted by ブクログ

ネタバレ

本当に初恋は儚くて、切なくて脆いもの。
特にそれが望むべきものではないときには
なおさらだと思います。

多感な時期に一人の年上の女性に恋をし
惚れてしまった一人の青年。
だけれども彼女の心理はなかなか
「見えない」

ようやくつながったように思えても
嫉妬ゆえにそれは遠回りになってしまう。
そして

私は残念ながら
このような恋をしたことはないです。
だけれども、多感な時期だからこその
心理描写は共感できるものがあります。

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2013年09月06日

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ネタバレ

 主人公の別荘の隣に越してきた貧しい公爵夫人一家の娘のジナイーダに一目惚れし、失恋する物語。
 ジナイーダの周りには常に男がおり、常連として軍人、伯爵、医者、詩人を侍らせ、夜毎にくだらないどんちゃん騒ぎをしていた。主人公もその常連に加わるのだが、次第にジナイーダが恋をしている人物がいることに気付く。その相手が自分の父であることをひょんなことから知り、理解できないながらも本当の恋や愛に触れたように思う。でも、それが元で父は身を滅ぼし、ジナイーダにもすれ違いから再会せずに相手の死を知る。知らぬ老婆を看取りながら物語は幕を閉じる。
 個々の描写が素晴らしく、心情に沿った自然描写や瑞々しい初恋の機微を映す心理描写が好きだった。特に、自然描写では、「そういうときは、自室に引きこもるか、庭のつきあたりまで行って廃墟になっている温室によじのぼるかしました。石造りの高い温室の一部が壊れずに残っていたのです。道に面しているほうの壁に足をぶらさげてすわり、何時間もそのまま何も目に入らず、ただただぼんやりしていたものです。そばでは、埃をかぶったイラクサの上をモンシロチョウが数匹けだるそうに飛び、威勢のいいスズメが壊れかけた赤レンガにとまって、いらだたしげにチュンチュン鳴きながら尾をいっぱいに広げ、体をあっちに向けたりこっちに向けたりしています。相変わらず疑り深いカラスは、はるか高く、葉の落ちた白樺の梢にとまって、ときどきカアカア鳴きかわしています。白樺の枝はまばらで、そのあいだを太陽と風が静かにたわむれ、ときおり聞こえてくるドンスコイ修道院の鐘の音は穏やかでわびしげでした。じっとすわったきり、眺めるともなくぼんやり前を見て耳をすましていると、なんとも言いようのない気持ちがこみあげてきました。悲しみも、喜びも、未来への予感も、希望も、生に対する恐怖も、すべて含んでいるような気持ちです。(中略)この複雑な気持ちをたった一言であらわそうとしたかもしれません──「ジナイーダ」という一言で。」というシーンが好きだった。心理描写では「『ジュリアス・シーザーは武芸に秀でていた』という箇所をつづけざまに十回も読んだのにまったく理解できない」というシーンが好きだった。
 シンプルな筋立てでありながら、人物の関係性や立場が細かい構造のシンメトリーや皮肉めいていたものになっていることを、解説を読んで知り舌を巻いた。この物語が時代を超えて残っていることにも納得感があった。
 あまり欠点らしいものはなかったが、私にはそこまで刺さる物語ではなかったため、4.4。

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2025年10月10日

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 5つ年上の女性ジナイーダに恋をしてしまった16歳ウラジミールの恋物語。私も読みながら、ジナイーダに弄ばれて、それでも心躍ってしまった。また、1番好きなシーンは、ウラジミールが父からザセーキン家のことを聞かれるシーン。父は、聞いているのか聞いていないのかよく分からないのに、絶妙なタイミングで話し手の気持ちを煽るような合いの手を入れてくる。それが目に浮かんで、ジナイーダとは別の意味で翻弄された。

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2022年09月06日

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ネタバレ

ジナイーダが父に恋をしているとわかった時、嫉妬のあまり殺そうとしていたほどの激情に流されることなく引き返したのは、ウラジーミルも「父に相手にしてほしい」という一種の父への恋慕があったから?と思ってしまった。

ウラジーミルは、恋の甘さと苦しさをすごいはやさで経験して、成長してしまったのだなと。でもこういう変化って本当に一瞬で、唐突に起こる。自分の初恋を思い返してみても、その前と後でずいぶん変わったなと思う。そしてそういう境はいつも唐突。


とりまきを弄んでいるジナイーダに最初同じ女としてまったく好感が持てなかったが、ウラジーミル父に鞭で打たれた痕にキスをするシーンを読んで、「ジナイーダ、貴女も恋する女の子だよ…。」と同情してしまった。

ウラジーミルの主観的な描写でしか父のことは語られていないので何とも言えないけれど、女性はウラジーミル父みたいな人好きでしょ。こんな読み方をしていいのかわからないけれど、正直惹かれた。あとルーシンも…。

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2020年01月16日

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16歳の少年ウラジーミルは、年上の公爵令嬢ジナイーダに、一目で魅せられる。初めての恋にとまどいながらも、思いは燃え上がる。しかしある日、彼女が恋に落ちたことを知る。だが、いったい誰に?初恋の甘く切ないときめきが、主人公の回想で綴られる。作者自身がもっとも愛した傑作。

わりかしドロドロしているなぁと思う。
ロシア人名はなかなか頭に定着してこないのは自分だけだろうか。それでも恋心を抱く健気なウラジーミルを見ていると自分もこんなにも純粋に恋をしていた時があったのかなと自分を振り返ってしまう。

読んでいて懐かしく感じる感覚は自分自身とダブらせている所を探しているのかもしれない。
それでもジナイーダみたいな娘には恋をしないと思う。
ジナイーダは美しいは正義と当たり前に言ってのけてしまいそう。

話の展開が読めてしまった事には少々残念。

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2014年11月13日

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衝撃的な小説だった。
おじさん3人で初恋について語り合う、ノスタルジーを感じる設定。
主役であるウラジーミルの初恋相手ジナイーダは、美しく気品に溢れ、天真爛漫な女性。モテモテのジナイーダは、男達を魅力し、翻弄する。小悪魔、いや、悪魔的である。
ジナイーダに陶酔し、どんな要求でも喜んで叶える男達と、彼らを手のひらで転がし楽しんでいるジナイーダ。その奇妙な関係は、まるで見てはいけないものを見ているよう。
さらに奇妙なのは、ウラジーミルの父親である。
ジナイーダと密かに交際するのだ。奥さんは健在である。その上、ウラジーミルがジナイーダの虜なのは明白なのにも関わらず。
ジナイーダと父親は一目見た時から惹かれ合っていた。
ジナイーダを取り囲む男達が、1人、また1人と交際関係に気づく中、ウラジーミルただ1人が何も見えていない。
ジナイーダは誰かに恋をしているようだ、一体誰に恋をしているんだろう、と悩むばかり。
ウラジーミルがいつ父親の裏切りに気付くのか、ハラハラしながら読み進めた。こんな状況に追いやられる彼が可哀想で仕方がない。
小説の中で最も奇妙なシーンは、終盤に訪れる。
父親がジナイーダの白い腕を鞭で打ち、赤く晴れた腕にジナイーダがそっとキスをする。
それを見たウラジーミルは、「これが本当の恋なんだ!本当に愛しているなら、ぶたれても受け入れられるんだ!」と大興奮。この世の心理を発見したかのようだ。
わたしは思わず、え???いやいやいや、ちがうちがう。ただのDVやん。ウラジーミルよ、これ本当の愛ちゃうで。と本に向かって話しかけた。
しかしウラジーミルの勢いは止まらず、物語も濁流のように展開する。父親がジナイーダに裏切られショックで死亡。ジナイーダ、結婚相手との子どもを生み死亡。ウラジーミル、2人が安らかな気持ちでいられることを祈る。爽やかな雰囲気で物語が完結。
これが作者トゥルゲーネフの実際の経験だと言うのだから、ますます衝撃的。
事実は小説より奇なり。これはイギリスの詩人バイロンの名言だ。本小説「初恋」の中にバイロンの名が一度出てくる。トゥルゲーネフは、バイロンの名言を誰よりも噛みしめていたに違いない。

最後に、お気に入りの一文を紹介する。
「詩人や作家はたいていそうですが、マイダーノフもかなり冷たい人間でした。」
ジナイーダの取り巻きの1人、詩人マイダーノフの紹介文である。作家であるトゥルゲーネフが、詩人や作家は冷たい人間とこき下ろす言葉。眉間に深いシワを刻んだトゥルゲーネフによる、皮肉たっぷりのこの一文に、ユーモアと人間らしさを感じずにはいられない。


















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2021年09月09日

Posted by ブクログ

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初恋とはこういうものだと思う。
ちょっとしたことで、動揺する。
そのせいで気付かないことも多い。

16歳故か、鈍感すぎるウラジーミルくん。
疑わしい材料は目の前にたくさんあったのになかなか気付かない!

まだ気付かんか!…おばさんは何回もそう思いました。

そして、ジナイーダさん。
見た目は美しいのしょうが、それだけかと。この中から得られる情報からはとてもオススメできないわ。

ウラジーミルが理解した時、明石家サンタの鐘が鳴ったよ。

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2018年01月27日

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