沼野恭子のレビュー一覧

  • ペンギンの憂鬱

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    ウクライナの状況が描かれた小説である。といっても戦争ではない。主人公がペンギンを動物園から譲り受け、さらに新聞社から生きている人が死んだ場合の追悼文を書く仕事をしている。子どもを知り合いからあずかり、さらに編集長が行方不明になり、ペンギンの飼い主も死亡する。話が最後まで見えない小説である。

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    2022年10月30日
  • ペンギンの憂鬱

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    売れない短編作家と、憂鬱症のペンギンの話。

    最近急に寒くなってきたけど、ひんやりした空気の中で読むに相応しい小説だった。
    ウクライナ人の作家の作品だけど、ロシア語で書いているのが原因か祖国ではあまり読まれず、むしろ翻訳されたものがヨーロッパでよく読まれているっていうのが小説にも何となく微妙に曇りっぽい印象を与えている気がする。

    売れない短編作家にたまたま舞い込んできのは、新聞に掲載する追悼文をその人が生きている間に書く仕事だった。
    生前の悪に、多少なり哲学的意味を与える文章は短編作家の才能を引き出してくれたけど、奇妙なことが次々に起こる。
    クライマックスは憂鬱症のペンギンのために手配したあ

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    2022年10月07日
  • ペンギンの憂鬱

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    鬱々とした雰囲気なんだけど、読めてしまう。ただ思ったよりページ数は多くて淡々としているけれど、文章自体は読みやすい。
    単純にペンギンが出てくる本なら読んでみようかな!なんて思っただけなんだけれど、思いもよらない陰謀だとか。読んでいくに連れてそういうことかーと思いました。
    続きがあるみたいだけれど、翻訳はされていないらしいので、もどかしい。

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    2022年10月05日
  • 初恋

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    ネタバレ

     5つ年上の女性ジナイーダに恋をしてしまった16歳ウラジミールの恋物語。私も読みながら、ジナイーダに弄ばれて、それでも心躍ってしまった。また、1番好きなシーンは、ウラジミールが父からザセーキン家のことを聞かれるシーン。父は、聞いているのか聞いていないのかよく分からないのに、絶妙なタイミングで話し手の気持ちを煽るような合いの手を入れてくる。それが目に浮かんで、ジナイーダとは別の意味で翻弄された。

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    2022年09月06日
  • 初恋

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    好きな曲の原典で気になった事がきっかけです。

    主人公にとってのこの初恋は、あまりにも鮮烈である意味で大恋愛なものでした。
    私は誰かを好きになった事がないので、自分を変えられてしまうような恋愛が羨ましいですが、当人からしてみればそんな生優しいものではないのでしょう。
    寝ても覚めても頭から離れない、自分でも理解できない行動をとってしまったり、感情の制御ができなかったり……強制的に自分を変えられてしまう主人公の戸惑いや恐怖を、何度も目にしました。

    初恋というタイトルではありますが、ロマンスというよりジナイーダが誰を恋い焦がれているかを見つけるミステリーのようで、先が気になりました。
    お話自体が短

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    2021年01月14日
  • 初恋

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    ネジ読書会の課題本でした。16の初恋の甘く切なすぎるときめき。40になった主人公の人に読ませるための日記の形で綴られる。ネタバレしないで読んだ方がいいと、言われていたにもかかわらず、あらすじをつい読んでしまった。

    初恋は、他のどの作品よりも作者自身に愛された幸福な小説であるという。彼の人生そのものであり身をもって体験したものだそう。

    語り手ウラジーミル・ペトローヴィチの父と初恋相手21歳の、公爵令嬢ジナイーダがとりたてて美化されている。
    人生は短くどうしようもなく人間は悲しく惨めで、美しいと思えた。 

    どういう立場であれ一瞬のときめきがあるから人は生きていけるのかも。

    後ろのほうで、青

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    2020年02月09日
  • 初恋

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    ネタバレ

    ジナイーダが父に恋をしているとわかった時、嫉妬のあまり殺そうとしていたほどの激情に流されることなく引き返したのは、ウラジーミルも「父に相手にしてほしい」という一種の父への恋慕があったから?と思ってしまった。

    ウラジーミルは、恋の甘さと苦しさをすごいはやさで経験して、成長してしまったのだなと。でもこういう変化って本当に一瞬で、唐突に起こる。自分の初恋を思い返してみても、その前と後でずいぶん変わったなと思う。そしてそういう境はいつも唐突。


    とりまきを弄んでいるジナイーダに最初同じ女としてまったく好感が持てなかったが、ウラジーミル父に鞭で打たれた痕にキスをするシーンを読んで、「ジナイーダ、貴女

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    2020年01月16日
  • 初恋

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     豊富な語彙を用いた表現ではないが、テンポよく、主人公が自らの心の内を偽りなく純粋に、私たちに語りかけてくれている感じがした。主人公の内面や行動の描写が適切かつ雄弁で、ありありと伝わってくる。
     初恋の、どうしても陥ってしまう無限ループ的な感じ、高揚感、全能感、幸福感、絶望感、それらに振り回されに振り回される主人公。共感しつつも、子供だなぁって思って楽しく気楽に読めた。あの幸せは子供だからこそ存分に味わえるものであると思うし、特別で大切なものだと思う。その感情を抱かなくなったり、抱きそうになっても振り回されないようにと思ってブレーキをかけてしまうようになった自分を、大人になったのかなと思いつつ

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    2020年03月04日
  • 初恋

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    青年時代の大人の女性への憧れと失恋、その恋敵が衝撃的で、この時代ではかなりセンセーショナルな感じもします。
    序章での老人3人が語るところと、それに繋がる最終章の終盤の、青春を振り返る切なき思いが響きます。
    新約でとても読みやすいです。階級を露骨に描くところは時代を感じさせますね。

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    2019年07月01日
  • 家庭で作れるロシア料理

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    コラムも多く、レシピ本としても読み物としても秀逸な本でした。
    ここ暫くロシア料理にどっぷり嵌まっているので、友人が遊びに来ると必ずロシア料理を振る舞います。味見に利用しているとも言う。
    厳しい気候と厳しい統制のソビエト時代を経たロシア料理は、素朴かつ命を繋ぐ切実さを感じさせます。
    塩コショウとハーブのみの味つけ(アルコールは一切不使用)なのに、滋味溢れる人情味のある豊かな美味しさです。
    ただし、恐ろしくカロリーが高い!
    ロシア人が早死になのはウォッカのせいだけではあるまい…。気を付けよう…。

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    2019年06月11日
  • 初恋

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    ロシア文学って人間の内面に入り込んでいくことを得意としているイメージがあるので、積極的に読んでいきたいと思っている。

    初恋っていうと、衝動ばかりが前に出てしまっておかしな言動をとってしまうような、くすぐったいものを想像する。この本も読みながら身悶えすることを期待して読んだ。
    しかし、この作品は物語が進むほど精神的に追い込まれていくのでしんどかった。
    けれど、こんなのも悪くはない。

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    2018年08月29日
  • 初恋

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    これはもう読んでみてくださいとしかいいようのないみずみずしい物語。
    ウラジミールのジナイーダへの初恋と失恋の物語。

    ウラジミール 16歳
    ジナイーダ 21歳
    ジナイーダの彼氏 40歳代。

    年齢構成的にも申し分ない。
    ウラジミールに勝ち目があるはずがないですね。

    これも、いまぐらいの年になると、落ち着いて読めるなあ。

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    2017年12月09日
  • 初恋

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    とんでもない話です。
    10代半ばかな?今で言うと中学生かな?みたいな男の子が、20代前半くらいの女性に惚れちゃうわけです。
    それでまあ、別段エッチなことがあるわけではなくて、精神的に振り回されたりもてあそばれたりするんですが。
    実はその娘さんは、男の子のお父さんと不倫の関係でした。どっとはらい。

    という話なんです。

    それが、男の子目線から、実に繊細と言えば繊細に。
    理屈抜きで、とにかくキレイなお姉さんにのぼせちゃってる。
    もう、身もだえするほどに恥ずかしくて、自殺したいくらいみっともない。
    そんな10代のアホな恋ごころが、恥ずかしくて恥ずかしくてもう、たまりません。

    1860年に発表され

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    2016年02月16日
  • 家庭で作れるロシア料理

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    工程の写真が細かく載っていて、ここしばらく見ていた料理本の中ではかなりの分かりやすさである。本は大きめ、目の覚める鮮やかな色合いの写真がたくさん。歴史や背景などの文章も多めで読み応えもある。コラムはロシア文学者マダム沼野によるもの。ロシア料理を順番につくっていきたい人にオススメ。

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    2015年04月13日
  • 初恋

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    読後、私より先に読み終えた父から「カルピスみたいな味やと思ったやろう、どぶろくやで。」と名言を頂いた。

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    2015年01月04日
  • 初恋

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    ネタバレ

    16歳の少年ウラジーミルは、年上の公爵令嬢ジナイーダに、一目で魅せられる。初めての恋にとまどいながらも、思いは燃え上がる。しかしある日、彼女が恋に落ちたことを知る。だが、いったい誰に?初恋の甘く切ないときめきが、主人公の回想で綴られる。作者自身がもっとも愛した傑作。

    わりかしドロドロしているなぁと思う。
    ロシア人名はなかなか頭に定着してこないのは自分だけだろうか。それでも恋心を抱く健気なウラジーミルを見ていると自分もこんなにも純粋に恋をしていた時があったのかなと自分を振り返ってしまう。

    読んでいて懐かしく感じる感覚は自分自身とダブらせている所を探しているのかもしれない。
    それでもジナイーダ

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    2014年11月13日
  • 初恋

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    少年ウラジーミルは隣に引越してきた年上の美しい女性ジナイーダに恋心を抱く。しかし彼女は自身に好意を寄せる何人もの男たちを家に集めては、いいようにあしらい楽しんでいた。そんな彼女の型破りな言動に驚きつつもウラジーミルの想いは募る一方。しかし、ある日を境に彼女の様子が一変する。ツルゲーネフの半自伝的恋愛小説。

    恋は盲目というように、好きという気持ちが湧いてしまうと許されない恋だとしても止まらない。辛くても苦しくても、会えるその一瞬に幸せを感じる。そんな切ない恋を経験する者と、目の当たりにする者。好きになった相手だからこそ、微妙な変化には良くも悪くも敏感に気付いてしまう苦さがよく描かれている。

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    2014年07月15日
  • 初恋

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    報われなかった初恋を純化して美化して回想するというのは、男の性なのだとも思う。痛々しいが甘美な小説であった。

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    2012年07月26日
  • 家庭で作れるロシア料理

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    おいしそうです!日本で日本人が作れるおいしそうなロシア料理の本って、はじめて。
    ブルガリア料理でもこんな本が出るといいのに。

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    2009年10月04日
  • ペンギンの憂鬱

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    不条理なのですが、日常の描写にそのエピソードがうまく溶け込んでいて、心地よく読み進められました。
    訳者あとがきにもありますが、初期の村上春樹の著作と同じ雰囲気のある作品です。

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    2025年09月15日