棚橋志行のレビュー一覧
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スティーヴン・ハンター『フロント・サイト 2 ジョニー・チューズデイ』扶桑社ミステリー。
2024年12月末、行き付けの書店に行くとネットの新刊案内には一切情報が無かったのに、新刊コーナーにいきなりスティーヴン・ハンターの新刊が2冊並んでいたので驚いた。
本作は『フロント・サイト 1 シティ・オブ・ミート』に続くスワガー・サーガ中篇三部作の第二部である。
ボブ・リー・スワガーの父親であるアール・スワガーの物語ということなのだが、何故か登場人物の一覧にはその名は無い。賢明な読者であれば、謎の男ジョニー・チューズデイこそがアール・スワガーの偽名であることに早々に気付くだろう。
本作では『フロント・サイト 1 シティ・オブ・ミート』のチャールズ・F・スワガー以上のガンアクションとノワールが描かれる。
冒頭に掲載された『著者の覚書』によると、この物語を総天然色で想像してはならない。のだそうだ。伝統的な西部劇を前面に打ち出したようなノワールにはセピア色、或いはモノクロが似合うのだろう。
1945年2月、タバコの街メリーランド州チェスターフィールドにあるタバコ農場の大地主レイモンド・タプスコットとその妻ローラが、州立信託銀行頭取のニック・オークリーと会っていた丁度その時、銀行を4人組の強盗が襲う。ローラを守ろうと抵抗したニック・オークリーは命を落とし、一味は車で逃走する。
その2年後、ジョニー・チューズデイと名乗る謎の男がチェスターフィールドに住む元看護兵のニック・ジャクソンという黒人を訪ねて、2年前の銀行強盗事件の調査に協力するよう要請する。
それにしても最近は海外翻訳小説の値上げが著しい。本作の場合は183ページで1,210円で、1ページ当たり6.6円となる。最近読んだ講談社文庫のパトリシア・コーンウェル『憤怒 』も高いなと思ったのだが、304ページで1,200円だから3.9円ほどである。如何に本作が高額であるのか……
定価1,210円
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16世紀の海図から最新の研究成果まで、深海についての知見を物語のように面白くっ綴ったサイエンスノンフィクションである。何よりもわくわくするのは、著者自身が足を運んで、時には深海へもぐり、その驚異と感動を伝えてくれることである。要するに、体を張っているのだ。だからこそ、書かれていることが単なる知識でなく、血肉のような喜びや恐れとして感じられる。深海は孤独で静かである一方、生き物に満ちにぎやかである。そんな深海に、人間は容赦なく開発の手を伸ばそうとしている。私たちは、深海についてほとんど何も知らない。そのことをあらためて教えてくれるとともに、深海を知りたくてたまらなくさせる本である。
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自分の深海探査情報はジェイムズ・キャメロンの個人的探査艇建造時点から更新されていないかった!宇宙開発関係のニュースはどこかの社長がロケットに乗ります含めてどんどん発信されてくるのに海中の探査のニュースは全然出ない。この本も本屋さんをぶらぶらしていて偶然見つけたもの。ネットでもリコメンドで上がってこないしどういう情報を分析してるんだろうね?こうして自分の関心領域も、意識しないと変なバイアスがかかったものだけが流れてきて影響を受けていることがよくわかった。
深海探査すごい進化してるぞ。本は付箋だらけ。深海探査は国家プロジェクトとしてやっているのかと思いきや、金持ち企業家が各分野のプロを集めた個人的プロジェクトによって推進されているのも驚き。一周回ってもはベルヌのSFやスペオペの世界になってる!
もはや有人潜水艇のデザインもランチパックを立てたみたいな格好!ダイオウイカを見つけた時の透明アクリル球体の船体にも驚いたけどこれはすごいね。カーボンを取り込んだ植物プランクトンを深海域からのプランクトンが夜間に取り込んで深海に溜め込んでいくサイクルがあるとか、気候は海から始まっていることがよくわかる。
ショックだったのは深海域を資源開発のために切り売りする国際機関があるとか、その資源開発開発会社の科学顧問として伝説のアルヴィン号の唯一無二の女性パイロットだったバン・ドーバーがついてめちゃめちゃな開発に関与していたということ(昔彼女の本読んですごい感動したのになぁ)。中国の深海探査挺は中であたたかい食事まで取れるデカさなんていう情報は誰も流さない。欲とエゴと政治にまみれた科学探査の世界の情報は流れてくる情報を漫然と受け取るだけでは正しい姿は見えない。もっと積極的に取りに行かないといけなのね。恐ろしくも面白い世の中になったものだ。 -
Posted by ブクログ
ネタバレ元ボクシングヘビー級絶対王者マイク・タイソンの自伝。結構なページ数がある大著であるが、彼の人生には、それだけいろいろなことがあったということだ。『真相』というタイトルの通り、タイソン自身がかなり赤裸々に自身の人生で起こったことについて語っている。衝撃的である意味では喜劇的でもあったレイプ事件などについて、彼から見た「真相」が書かれている。もちろん、「真相」のいくつかについては割り引いて読む必要はありそうではあるが。
無敗のタイソンが、東京ドームでジェームス・ダグラスに敗れた大番狂わせの試合のことは覚えている。この本を読むと、その裏で、傲慢さと心の弱さによって、それまでに蓄積した自らの貯金をタイソンが食いつぶしてきた様子がわかる。「地上最強」「モンスター」と呼ばれていた無類の強さを、酒と女と薬で食いつぶしてしまったかと思うと、どうにももったいない。本人の意志の面もあるが、マネジメントチームがうまく機能していなかったことも大きな問題だった。本書はすべてタイソンの視点で書かれているため、その主張すべてが正しいかどうかはわからないが、ドン・キングと組んだことは大きな失敗のひとつだったように思われる。もちろん、最初の妻のロビンとの結婚もよくなかった。Heavy DやAl. B. Sureだとか2PACとかBobby Brown、Whitney Hustonなど懐かしい有名人の名前も出てくる。典型的な金と名誉に溺れて、それに群がる人にだまされたというストーリー。出てくる人やお金の単位にびっくりするのも本書の楽しみのひとつだ。
ボクシングとは別のもうひとつの軸が女性関係だが、これもまた激しい。タイガー・ウッズはセックス依存症と診断されたが、タイソンも当時同じような基準を当てはめれば、そう診断されたのではないか。それともウッズのイメージでは女性問題はダメで、タイソンならやりそうなので咎めなしなのかもしれないが。しかし、そういう機会が向こうから転がり込んでくるなら、そうなる素養は誰でも持っているんじゃないのかなと思ったりする。
タイソンは、ダグラスに敗れて王座から陥落した後、レイプ事件で三年間も収監されたあげく、ホリフィールド戦での耳噛み事件で一年間ライセンス剥奪されるなど、数年間の単位でボクシングをする時間を失っている。事件自体は、よく知られた話ではあるが、具体的にその後に失われた時間の長さについては初めて知った。レイプ事件はタイソンによるとはめられた、耳噛みの件はホリフィールド寄りのレフェリーがバッティング狙いの反則を止めなかったからだというが、さすがに自業自得であるところも否めない。史上最年少王者となったことから明らかであるし、三年間のブランク後に王座復帰を果たしたことからも、その才能は疑いようもない。やはりもったいない。ただ、その収監時の描写やその後のカウンセリングや薬物依存との闘いもひとつの読みどころである。それは、なぜか悲惨ではなく、どこかコミカルでさえある。
最後に添えられた監訳者のジョー小泉さんの文章が本書に厚みを加えている。おそらくは日本語版のみの補遺だと思われるが、ダマトとキングを単純な善悪に二分するべきではないと指摘するなど、単なる解説を超えた内容で素敵だ。カス・ダマトがタイソンを見出して引き上げたのは見事な手腕であり誇られるべき功績だが、一方でカスの指導の結果としてその後のタイソンの行動につながったと指摘する。歴史に、もしはないが、その後も引き続きカスがいて、ヘビー級タイトルのベルトを巻いても生き続ければどうなっていたのだろうか。
ボクシング自体のエンタテーメントとしての価値を引き上げた不世出のボクサー。そうであるがゆえの波乱の人生。意外に面白く読めた。果たして、タイソンを引き継ぐようなヘビー級ボクサーは再び登場するのだろうか。 -
Posted by ブクログ
読みやすいが、サクサク読める小説ではない
三十年という長い時間に埋もれたままの事件
スウェーデンという国の歴史の変遷
複雑で進まない捜査
警察官スヴェンの苦悩が延々と続く 延々と
重く深く出口の見えない闇に彼と一緒に放り込まれた感じ
息子ヴィダルがそれを引き継ぎ、父子二世代に渡って物語が進んでいく
どういう結末なのか、真実がどこにあるのか、その果てに救いはあるのか?
「私」を通して徐々に見えてくる真相に、感情がわからないため息をつく
スヴェンが息子を警察官にさせたくない気持ちがよくわかった
それは単なる未解決事件ではなく、「病」だから
やりきれなさが残る北欧ミステリーの傑作
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Posted by ブクログ
《真実を知ることに、意味はあるのか》
SNSで見掛けて気になっていた作品。
1986年、スウェーデンの首相が暗殺された夜、その混乱の裏で一人の女性が殺される。首相暗殺事件の混乱が初動捜査を妨げ、犯人は闇に消える。そして再び殺人がー…。
物語の内容自体は全然穏やかじゃないのに、文章の温度がすごく低くて、淡々としている。
記憶とか時間とか、人の内側にあるものを描く文章が詩的で印象的だった。
詩的な文章も相まって、冬の薄暗いスウェーデンの景色の中で、人の記憶だけがぼんやり浮かんでくるみたい。
「犯人を追うぞ!」というテンションで読むより、静かな文章に浸りながら、少しずつ謎が浮かび上がってくるのを楽しむ本だな、と感じた。
私はどちらかと言うと「犯人を追うぞ!」というテンションの作品の方が好みなので、中盤過ぎまではなかなか入り込めず(꧞ 'ᢦ' )
それ以降は面白く読めました♪
登場人物たちが抱えてるものがずーっと胸に沈んでくる感じで、とにかく重い!( ´-` ).。oO
真実もドーン!って明らかになるわけではなく、静かに登場人物たちの過去や選択を積み重ねて、どう受け止めるかを読者に委ねてくる感じで、読み終わってスッキリ!というよりかは余韻を残してくる感じ。
真実は必ずしも明らかにしなくてはいけないものなのか?
明らかにしたほうがいい場合もあるし、知らないほうが幸せな場合もある。
でも、だからといって真実を隠していいとも言い切れない。
答えが出ないこと自体がこの作品の答えなのかもしれない。