月原渉のレビュー一覧
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Posted by ブクログ
ネタバレ低評価が信じられないほど私は面白かった。月原渉の中では断トツで一番
香港映画を観たばかりというのもあるけれど、香港の光と闇、極彩色のネオンと暗く湿った路地裏、魔窟のような九龍城塞への没入感がすごい! 展開もスピーディでページをめくる手が止まらなかった
月原先生の描く女の子たちは本当に魅力的だ
こそばゆいほどの友情がそれぞれ闇を抱えながらも悪と対峙するのが、ミステリでいて歪な青春小説の体をなしている
ミステリの部分はかなりオーソドックスなハウダニットで、正直オリエント急行〜! と思いはしたけれどもするすると謎が解けてすっきり
しかし冒頭の紳士氏にはやられました。お前が探偵かい
事件は解決したけれど、もっともっと大きな謎が残っているぞ? と思ったらまさかの姉妹入れ替わり
序盤、フーがシェリーと邂逅するところで写真のヒントをくれていたというのがまた憎い演出
正義って振るい方と向かう場所を間違えたらそれはもう悪なんだなとぼんやり思いました。これは黒社会の話だけど、全く関係ないわけではない
だからこそ、最後の『蘇芳の国の風姫』には泣かされました
あまりにも嬉しい、美しいハッピーエンドだった -
Posted by ブクログ
ネタバレ月原渉さんの作品はミステリの中でも特に世界観が好みすぎるので時々無性に読みたくなる。この巫女探偵もシリーズ化するのだろうか。
使用人シズカがゴシックな雰囲気だったのに対し、こちらは戦後の因習がまだ漂う、和風の村が舞台。
現実的にあり得ないだろう、とか、なんでそんな風に思うの?(姉妹愛ってそんな風に表出するかなあとか)とも思いつつ、これをこの世界を構築するために必要なものと思うとそうだねって思える。このありそうで非現実的な隠れ里はこうでなければならないのだ。
トリックは、屋根裏だとばれて本殿の間だと大丈夫とはならないんじゃないかなとそこはひっかかった。変に構築されすぎたトリックではなく、筋の通ったものが最後に一気に開示され、犯人も抵抗なくあっさりと自供する。ここは、彼女たちの関係性からみて抗うことはしないだろうとは思ったけど。
私は、因習から最後は外国の人という逆説的な展開がとても興味深くおもしろく読めた。願わくばこれがすぐ外国人排斥や陰謀論を唱えるなんちゃって右翼が批評をしませんように。 -
Posted by ブクログ
第一次世界大戦末期のルーマニアの戦記物だと思ったらミステリーだった。
登場人物の一人が別のシリーズの主人公だと読み終わったあとに知り、またやってしまったと思いつつ面白かったから良しとしよう。
単発で読んでも充分楽しめる内容だけどシリーズを読んでいればもっと楽しめたかも。
舞台は第一次世界大戦末期のルーマニア、
「やんごとなき一族」の古い屋敷で妹エマのために主人公リサは看護師として働くことになり次々と奇怪な事件に巻き込まれていく…
ミステリーはあまり読み慣れていないのでトリックの善し悪しはあまり良く分からないけど、次々に起こる奇怪な事件や謎が気になりぐんぐん引き込まれ夢中で読んでしまいました。
事件や謎以外にも「やんごとなき一族」ならではの古い血のしがらみやルーマニアの伝承を絡ませながら物語が展開していくのもミステリアスな雰囲気が味わえておもしろかった。
タイトルの『すべてはエマのために』とあるが
結局は各々が大切な人を思っての行動と結果で
『すべては大切な人のために』という印象を受けた。
その背景には少なからず戦争の不条理さがあり、戦争によって人生も心も狂わされてしまったのだなと。
表紙の絵も寒寒しく怪しげで物語にピッタリ!
ラストは悲しい結末に終わらず良かった。
「愛と献身のミステリー」面白かったのでシズカシリーズ読んでみようかな!
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Posted by ブクログ
その蛾は脚が欠けていた。それでもなお、鱗粉を散らしながら光を求めて力強く羽ばたいた───。
月原氏が描く物語のバックボーンは、やはり少し重め。過酷な環境下でも、懸命に日々を営む彼女達でまたも起こる不可解な死。
真相が全て明らかになった時、その罪の本当の所在を深く考える。真に断罪されるべき人間は誰か、はたまた社会なのか。この物語に於いて夏季屋肇と言う人間がいた事、それだけは救いであったと思う。そして彼が陶芸に見せた狂気的な想いは、情熱なのか、それとも贖罪なのか。
「鏡館の殺人」を読んだ際に感じたトリックへの物足りなさは本書ではなく、この物語の流れを大いに汲む、とは言え予想の出来ぬ巧みなレトリックで驚かされた。
著者の特徴とも言えるであろう綿密な人間関係の描き方と、時代背景に合わせた見世物小屋と言う現代ではタブーとされる娯楽もこの物語に奥行きを持たせる良い材料になっている。
美しい使用人探偵の理路整然とした推理も名物。
…はぁ、また推し作家様が増えた。私の財産は永遠に本に消えていくなぁ。(恍惚) -
Posted by ブクログ
時代背景と言い、世間から隔絶された豪奢な洋館と言い、僅かに感じる横溝正史風味から、まずはこの謎に吸い込まれて行った。
月原渉氏の著作は先日読んだ「九龍城の殺人」に次いで、これで二作目になるのだが、とても登場人物同士の関わりと、それに伴う感情の動き、そしてその背景の描き方が綿密だなぁ。と言う印象。
鳥が鳥でいられるには、外の世界に向かって飛んでいくしかないんだよ───。
籠の鳥に自由は、手の届かない夢ってことか───。
わたしたちに人権なんてない。出荷される家畜と同じなんだ───。
本能のままに子を為した奔放な父親。そして本来なら恋に友情にと最も輝けるであろう年頃に、潤沢な資産の元とは言え、政略結婚の値踏みをされる為だけに軟禁状態の暮らしを送る娘たち。
正直、この謎のトリック自体は納得し切れて居ないのが本音ではある。纏め方の無理矢理感は少々否めない。が、不遇な彼女たちの悲痛な叫びと、それでも自由を求め羽ばたこうとするその背中にそっと手を添えたくなった。ミステリーとしての面白さは勿論、そこに浮かび上がる人間ドラマが魅力的な満足の一冊。
それにしても、双子が忌み嫌われるという古い日本の思想は理解しかねる。片方を口減らしの為にと容姿に出すやら、座敷牢やら、酷い場合は間引きだとか、正気の沙汰じゃない。そして双子を産んだ母親は畜生腹と揶揄されることもあったと言うんだから尚更驚きである。どうなってるんだ昔の日本人よ。