【感想・ネタバレ】炎舞館の殺人(新潮文庫nex)のレビュー

あらすじ

欠落を抱える者たちが陶芸で身を立てる山奥の函型の館。師匠が行方不明となり、弟子たちの間で後継者をめぐる確執が生じる。諍いが決定的になったとき、窯のなかでばらばら死体が発見された。奇怪なことに、なぜか胴体だけが持ち去られていた。炎の完全犯罪は何を必要とし、何を消したのか。過去の猟奇事件と残酷な宿命が絡み、美しく哀しい罪と罰が残される。本格ミステリーの傑作。

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Posted by ブクログ

その蛾は脚が欠けていた。それでもなお、鱗粉を散らしながら光を求めて力強く羽ばたいた───。

月原氏が描く物語のバックボーンは、やはり少し重め。過酷な環境下でも、懸命に日々を営む彼女達でまたも起こる不可解な死。

真相が全て明らかになった時、その罪の本当の所在を深く考える。真に断罪されるべき人間は誰か、はたまた社会なのか。この物語に於いて夏季屋肇と言う人間がいた事、それだけは救いであったと思う。そして彼が陶芸に見せた狂気的な想いは、情熱なのか、それとも贖罪なのか。

「鏡館の殺人」を読んだ際に感じたトリックへの物足りなさは本書ではなく、この物語の流れを大いに汲む、とは言え予想の出来ぬ巧みなレトリックで驚かされた。

著者の特徴とも言えるであろう綿密な人間関係の描き方と、時代背景に合わせた見世物小屋と言う現代ではタブーとされる娯楽もこの物語に奥行きを持たせる良い材料になっている。

美しい使用人探偵の理路整然とした推理も名物。

…はぁ、また推し作家様が増えた。私の財産は永遠に本に消えていくなぁ。(恍惚)

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2025年03月13日

Posted by ブクログ

シチュエーションと雰囲気がかなり好きなテイストだった。全体的に占星術殺人事件を思わせる様相で読んでてワクワクした。
謎解きは結構スタンダードというか古典的な感じかと思ったら、さらにもう一捻りあってそこは予想外だった。ただ、どっちにしても可能不可能の吟味がちょっと物足りないなぁと感じた。もう少し検証して欲しかったなぁ。まあ、このへんはあまり突っ込むのも野暮なのでこれくらいで。

これシリーズものなんですね。今作中で1番気になるキャラクターが主人公のシリーズのようなので、他のも読んでみようと思います。

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2024年02月29日

Posted by ブクログ

欠落した人たちが集まるからこそ他のミステリーとは違う面白さがありました。

この館シリーズは、基本的にどの物語から読んでも内容が分かり面白いですが、家政婦、栗花落さんがどんな人なのかを知った上で読むと面白いと思います。この物語を読む前に何か一冊、同じシリーズの本を読んでおくとより面白く読めると思います。

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2023年02月08日

Posted by ブクログ

ネタバレ

本格ミステリらしい雰囲気が好印象で、グイグイ引き込まれた。
トリック自体は読み慣れている人にはすぐわかりそうで、推理の楽しさや驚きはそれほど感じなかった。
また、館自体があまり生かせていないのも個人的にはやや残念なポイント。
シリーズの順番を勘違いしていて、当シリーズの初見がこの作品になってしまった…。
順番に読んできた人にとっては、叙述トリック的なサプライズポイントになり得る部分があったかもしれない。

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2021年09月20日

Posted by ブクログ

この世界観・キャラ造形だからこそ成立するトリック!(嬉)久しぶりにコテコテに凝ったミステリィを読ませていただきました〜〜そうそうコレだよこーゆーのが好きなのよ私は(感涙)。古いとかありがちとか難易度低いとか、そんなの関係ねぇ!好きなものは好きなんだ!!!

既読だった首無館・犬神館では探偵役のメイド・シズカのキャラクタがいまいちハマらなかったんですが、今作では登場の仕方含めて非常に良かった………。

最後の一言も、この狂気に満ちた物語を締め括るに相応しくて素敵。

身体の一部に欠損を抱える若者達が、建物内部に窯を抱える異形の館で陶芸を営んでいた。ところが、彼らの師匠が行方不明になり、若者達の間で後継者を巡る確執が浮き彫りになる。そんなある日、窯の中でバラバラ死体が発見されるが、何故か胴体だけが持ち去られていた。その後も、次々と身体の一部が持ち去られた遺体が出現し、容疑は行方不明になったままの師匠にかけられるが……。 

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2021年09月15日

Posted by ブクログ

シリーズを通して読み進めて、月原先生の世界の歪な美しさを一番感じた、切ない物語でした。
耐火煉瓦の窯の館、炎が舞う館、熱気を帯び、パチパチと火の粉が舞う音が聞こえてくるような臨場感が良かったです。
死体をバラバラにする理由、どこを隠してどこを見せるのかは色んなミステリで重要な役割を担っていますが、今回は更に全員が欠損を抱えていた、そのあたりの細やかなトリックが面白かったです。
いつもシズカさんには驚かされますが、特に後半は本当に驚きました。

残された彼女たちにいつまでも幸ありますように。

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2022年01月16日

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山奥の陶芸の工房で、師匠が行方不明になったあとに起こる殺人事件。シズカは今回、使用人として雇われているわけではなく途中から登場。
舞台や設定を生かしたストーリーとトリックだが、どこかしら欠損を抱えた弟子たちの陶芸への希求がもう少し描かれているとよかったと思う。

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2022年01月05日

Posted by ブクログ

犯人の動機とか、それ本当に実行できるの?とか、バラバラ欠損だとついあのトリックをイメージしちゃう、などなどツッコミ入れたくなるところはあるのだけど、館クローズドミステリとしてとても面白かった!!
この作品が作者さんの本初だったので、他のも読もうと思った。

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2021年08月21日

Posted by ブクログ

ネタバレ

陶芸の師匠が行方不明になり、弟子達だけとなった山奥にある箱型の館。なぜか弟子達は、「何か」を失っている人達ばかり。後継者は誰か?お互い確執が生じるなか、ある事件が起きた。窯のなかで、バラバラとなった発見された遺体。でも胴体はなかった。疑問が生じるなか、新たに事件が起きる。


館で起きる連続殺人、不可解な点といったミステリーならではの楽しさがありました。ただ、ある部分だけもち去られたり、特殊で閉ざされた空間といった設定などは、既視感があって、特に驚く状況ではありませんでした。

時折、過去の出来事を挟みながら、犯人は誰なのか?興味をそそられます。

事件が起きるたびに繰り返される発言が、横溝正史作品を彷彿とさせてくれますが、既視感はあるものの、やはりゾワゾワと不気味さを増してくれます。その恐怖感によって、グイグイと引き込まれました。

一応、時代の設定は、明治時代だそうですが、特にそういった主張はなく、館の見取り図もないため、ちょっと微妙かなと思いました。

事件の犯人としては、意外でしたが、読み進めるたびにどこかしらの引っかかる部分はあるので、やっぱり・・・あの人だと思う人もいるかもしれません。でも、その動機で凄惨な殺人を行う?という疑問はありましたし、この設定だったら、単独犯にして欲しかったです。

残酷な部分はありましたが、単にグロいという印象ではなく、哀しくもあり、美しくもある印象がありました。

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2021年08月12日

Posted by ブクログ

ネタバレ

探偵役のシズカさんがいつものように、メイドとしてお館に雇われているわけではないので、少し雰囲気が違う。このシリーズは紙幅の関係もあるのか、いつも慌ただしい印象がある(わーっと事件が起きて、わーっと解決するみたいな)のだけれど、今作はそれをあまり感じなかった。物語として膨らみがあったように思う。
ただミステリ的にはちょっと苦しい。メイントリックには明らかに既視感がある。最初の殺人の特徴を箇条書きにでもしたら、その時点で真相を看破できるミステリファンは少なくないと思う。終章で明らかにされる犯人の動機は哀しいものだが、そうだとすると、その行動はおかしくないかと疑問が生じるものでもある。
叙述トリックを疑ってしまうような、露骨なインタールードの書きぶりと言い、作者さんももうミステリであることにはあまりこだわってないのかもね。

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2021年08月02日

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