あらすじ
欠落を抱える者たちが陶芸で身を立てる山奥の函型の館。師匠が行方不明となり、弟子たちの間で後継者をめぐる確執が生じる。諍いが決定的になったとき、窯のなかでばらばら死体が発見された。奇怪なことに、なぜか胴体だけが持ち去られていた。炎の完全犯罪は何を必要とし、何を消したのか。過去の猟奇事件と残酷な宿命が絡み、美しく哀しい罪と罰が残される。本格ミステリーの傑作。
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Posted by ブクログ
本格ミステリらしい雰囲気が好印象で、グイグイ引き込まれた。
トリック自体は読み慣れている人にはすぐわかりそうで、推理の楽しさや驚きはそれほど感じなかった。
また、館自体があまり生かせていないのも個人的にはやや残念なポイント。
シリーズの順番を勘違いしていて、当シリーズの初見がこの作品になってしまった…。
順番に読んできた人にとっては、叙述トリック的なサプライズポイントになり得る部分があったかもしれない。
Posted by ブクログ
陶芸の師匠が行方不明になり、弟子達だけとなった山奥にある箱型の館。なぜか弟子達は、「何か」を失っている人達ばかり。後継者は誰か?お互い確執が生じるなか、ある事件が起きた。窯のなかで、バラバラとなった発見された遺体。でも胴体はなかった。疑問が生じるなか、新たに事件が起きる。
館で起きる連続殺人、不可解な点といったミステリーならではの楽しさがありました。ただ、ある部分だけもち去られたり、特殊で閉ざされた空間といった設定などは、既視感があって、特に驚く状況ではありませんでした。
時折、過去の出来事を挟みながら、犯人は誰なのか?興味をそそられます。
事件が起きるたびに繰り返される発言が、横溝正史作品を彷彿とさせてくれますが、既視感はあるものの、やはりゾワゾワと不気味さを増してくれます。その恐怖感によって、グイグイと引き込まれました。
一応、時代の設定は、明治時代だそうですが、特にそういった主張はなく、館の見取り図もないため、ちょっと微妙かなと思いました。
事件の犯人としては、意外でしたが、読み進めるたびにどこかしらの引っかかる部分はあるので、やっぱり・・・あの人だと思う人もいるかもしれません。でも、その動機で凄惨な殺人を行う?という疑問はありましたし、この設定だったら、単独犯にして欲しかったです。
残酷な部分はありましたが、単にグロいという印象ではなく、哀しくもあり、美しくもある印象がありました。
Posted by ブクログ
探偵役のシズカさんがいつものように、メイドとしてお館に雇われているわけではないので、少し雰囲気が違う。このシリーズは紙幅の関係もあるのか、いつも慌ただしい印象がある(わーっと事件が起きて、わーっと解決するみたいな)のだけれど、今作はそれをあまり感じなかった。物語として膨らみがあったように思う。
ただミステリ的にはちょっと苦しい。メイントリックには明らかに既視感がある。最初の殺人の特徴を箇条書きにでもしたら、その時点で真相を看破できるミステリファンは少なくないと思う。終章で明らかにされる犯人の動機は哀しいものだが、そうだとすると、その行動はおかしくないかと疑問が生じるものでもある。
叙述トリックを疑ってしまうような、露骨なインタールードの書きぶりと言い、作者さんももうミステリであることにはあまりこだわってないのかもね。