中島要のレビュー一覧
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口入れ屋「やよいや」を継いだのは22歳の子娘だった。口入れ屋の主人は仕事を斡旋する商売だから経験豊かな年寄りが多い。なのに22歳と言う若さのお貫が年上の相談者を遣り込める痛快な話だ。
この時代は火事で全てを失ったり、両親を幼い頃に亡くしてしまったりと不幸な生い立ちな者が沢山いる。自分だけが不幸の塊だと感じている者は捻くれがちだし、大店で恵まれ育った者はそのありがたみがわからない。22歳という若さでも苦労を重ねてきたお貫だからこそ困っている人をほっとけず、ついつい口出ししてしまう。この若かさでピシャリとものを言うお貫の物言いを楽しんで貰いたい作品です。 -
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仕事柄、助産師さんやお産が身近にあり
興味深く読ませていただいた。
自身もお産を経験しているので
大変なことは重々承知しているが
江戸時代のお産は私の想像以上に大変
だったんだろう。
子どもを産む(跡継ぎを産む)ことの
経済的な負担、嫁としての重責、世間の目
現在に生きる私の知るところではない。
主人公のお亀久ちゃんは札差のお嬢さん。
訳あって産婆さんを目指すことになる
弟子入りした産婆のタネさんやほかの産婆見習い
の先輩方に支えられ、成長する姿が
素晴らしい。親目線で、子供たちが巣立つとき
支えてあげられるか?とかいろいろ考えてしまった。 -
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着物始末歴シリーズもついに完結。ストーリー的には9巻がクライマックスで、最終巻である10巻はその後始末と言った感もあるが、一切手を抜かない展開できっちり落とし前をつけてくれました。
全10巻。面白いかったです。そして着物の柄や色味に無茶苦茶詳しくなれました。時代小説初心者におすすめできるシリーズです。
以下は備忘録的メモ(ネタバレ)。
「刻の値打ち」
井筒屋を訴え出ると言う余一。困った綾太郎は後藤屋大旦那の利左衛門に相談をする。
「対決」
後藤屋利左衛門が京に登り井筒屋の後継人になる事に。ただしそれには綾太郎と余一が井筒屋若愁介を説得すると言う条件がつけられた。見かねた古着屋の -
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着物始末歴シリーズ第4巻。4話収録。
中弛みを感じさせないどころか、「そろそろ本筋に入ろうかしら」って作者の余裕すら感じさせる第4巻です。
以下、各話の感想など
「禁色」
満を持しての悪役登場。こいつは手強そうだ。
「歳月の実」
主な人物はあらかた出尽くしたと思っていたのだが、端役と思っていた大隈屋の御新造お園(綾太郎の母)が踊り出る。金持ち嫌いの余一と、生粋のお嬢様育ちのお園の会話が楽しい。無口で頑固な余一の塩対応を軽く受け流す『大人のお嬢様』の余裕。
「雪とけ柳」
「とっつぁんが立派なひとだったら、おれはとても近寄れねぇ。いい加減ななまけものだから、こっちは言いたいことが言えるの -
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着物始末歴シリーズ第2巻。1巻と同様、場違いな吉原にいる綾太郎から話が始まり思わずニヤリとする。
一巻では花魁道中が描かれただけだった唐橋花魁がようやく登場する。
「この唐橋を前にして別の女を思うとは。真面目な顔をして、隅に置けないお人でありんす」「わっちらのような金で縛られた者でさえ、かりそめの恋に身を焦がすもの。あやさまのような立場のお人が意気地のないことをおっせぇすな」「恋のひとつもしないまま嫁をとっても不幸の元でござんすよ。年をとってからの麻疹と恋はこじらせやすいと申しんす」
中島要さんの描く花魁はいつもカッコいいですね。
主人公余一の生い立ちに不穏な影をチラつかせながらも、まだまだ平 -
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この後10巻も続くことになる着物始末歴シリーズの第1巻。
後にキャラ立ちして勝手に動き出す主要人物たちの初々しさが面白い。最初に登場するのは呉服太物問屋の若旦那綾太郎。シリーズを通して最も成長する一人であるが、初登場時はこんなに頼りなかったのかと微笑ましくなる。
このシリーズは何より「着物の始末屋」という職業を見出した(創造した?)事が素晴らしい。着物は衣食住の一要素でもあり、貧乏人にも金持ちにも欠かせない必須品ではあるが、時には贅沢品であったり、身分や家柄を示す記号であったり、思い出の品だったりする。その着物を通して物語が紡がれていく。
僕はこれを通して着物の柄や色味に詳しくなりました。