梅棹忠夫のレビュー一覧
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かつて主婦論争というものがあった。
本書の著者梅棹氏自身は、当時自らが論争の当事者との意識はなかったようであるが、今から60年以上前に、「妻無用論」、「母という名のきり札」という刺激的なタイトルの論説を次々と発表したのであるから、賛否分かれるものだったことは推察できる。
家事や育児を外部化するためには一定の収入が必要であり、女性も職を持って社会参加すべきということになるのだろうが、就労環境も一周廻った感もする。フェミニズムを経た現在の時点で、また、家庭の在り方や結婚、子育てを巡る環境が大きく変化した現状を踏まえて本書をどう読むか、興味深く思う。 -
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・梅棹忠夫「日本語と事務革命」(講談社学術文庫)は、 今となつては一種の日本語の機械処理に関する歴史文書とでも言ふべき書であらう。いや、機械処理とはいささか大袈裟か。仮名タイプライターからワープロへと移行し始める頃の出来事である。だからこそ、時代の雰囲気を知ることのできる歴史的文書たりうる。今となつては貴重である。何しろ、例の「知的生産の技術」「文明の生態史観」の梅棹忠夫である。一世を風靡した学者の著作である。その人の日本語処理に関する考へ、時代からして古いのは当然だが、だからこそ 歴史的な資料として読める。しかもそれなりにおもしろい。梅棹といふのはかういふ人だつたのだと改めて思ふ、そんな文書
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「生きがい」というテーマについて語った講演などをまとめた本です。
「創造」を至上の価値として走り続けた明治以降の日本をふり返りつつ、老荘思想をヒントに「無為」の生き方に新しい可能性を見ようとしています。
少し前に、ひたすら前へ向かって走ることを良しとする勝間和代と、そうしたレースについていくことのできない人びとを救おうとする香山リカとの論争が話題になったことがありましたが、著者の議論は、非常にマクロな文明史的観点から人びとの「生きがい」についての考察をおこなっているところが特徴的です。著者の議論と比較すると、勝間・香山両氏とも「生きがい」を個人の問題に閉じ込めてしまうという視野狭窄に陥って -
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民族學の泰斗、梅棹忠夫による京都案内。
文庫化されたのは2004年9月だが、角川撰書として發刊されたのは1987年。
折にふれて書かれた京都に關するエッセイなどを集めたものであるが、書かれたのはかなり古く、1951年から1965年にかけて書かれたものである。
大學生活の5年間を京都で過ごした私にとつてはいづれも興味深い内容であつたが、なかでも第4章の「京ことば」は面白く讀めた。
私は學生時代、關西の丁寧語表現「はる」について自分で氣づいた法則がある。
すなはち、同じ關西弁でも、京都では「書かはる」と未然形接續で、大阪では「書きはる」と連用形に接續する、といふことである。
關東出身の私として