斎藤文彦のレビュー一覧
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Posted by ブクログ
まず初めにことわっておくと、私はプロレスないし格闘技には全く興味がなかったし、ちゃんと観たこともない。
強いて挙げれば『キン肉マン』は好きではあるが、それはプロレスが好きというのとは違うしプロレス的表現やエピソードには実はピンと来ていない。
ただ何となく、知らない事を読んでみようと思い手に取ったのが本書。
結論から言えばものすごく良かった。
おおよそ60〜80年代くらいまでに活躍をした、10名の外国人レスラーについて人柄・内面性をメインに、丁寧にさらっている人物伝集。
大抵の人物がパッと大きく華やかに開くが、やがて注目が離れては静かに散っていく生涯を送っており、また、えてしてその素顔というのが「レスラー」というイメージからは少し違った、豪放でありつつもどことなく素朴で繊細な、好もしい人達ばかりである。
職業の性質的には’アイドル’に近いのだろうか。
現代のようにSNSで私生活をオープンにしてきてはいないので、ミステリアスな部分や計り知れない部分が多々あり、その分、著者だけが知ることが出来た・過ごす事が出来た彼らの’素’の描写には血が通っている。息遣いのような、温もりを感じることができる。だからこそ、読んでいて心が揺さぶられるのだと思う。
この点、いまはSNSでリアルタイムに’今’を発信することは可能だが、そこに’生きている感’を見出すことは案外難しいのではなかろうか。
私は確かに、10名のレスラーの魂のバトンを受け取った。
使われている肖像写真も、良いものばかりだと思う。
個人的にはアンドレ・ザ・ジャイアントとバンバン・ビガロが好き。
1刷
2021.7.9 -
Posted by ブクログ
超獣。
キング・コング。
インテリジェント・モンスター。
ブルーザー・ブロディ。
プエルトリコでの突然の死から30年。
昭和のリングを彩った大レスラー ブルーザー・ブロディの評伝が、平成が終わろうとする今、出版された。
「ハンセンにはプロレスラーの凄さを、ブロディにはプロレスの凄さを教えられた」と天龍源一郎はかつて語った。
カーリーヘヤーに長いあご髭。
毛皮つきのリングシューズ。
「移民の歌」をテーマに、チェーンを振り回し、雄叫びを上げながらの入場シーン。
試合が始まれば、クラシカルなレスリングもあり。
打点の高い強烈なドロップキックあり。
フィニッシュは、キングコング・ニードロップ。
当時のインタビューに加え、プエルトリコでの急死の新証言。
バーバラ夫人へのインタビュー。
闘う哲学者ブロディの言葉は、今でも我々ファンにプロレスリングとは何かを語り続ける。
こんな凄いレスラーは、もう二度と出ないかもしれない。
ブロディ革命は、続いている。 -
Posted by ブクログ
第94回アカデミー賞での平手打ち事件についての現地アメリカと日本の受け止め方の違いが指摘されていますが、それは社会の判断基準の変化についてのエンターテイメント業界の敏感さの違いとも言われています。本書もプロレスを窓にして、社会の変化を「論評」する本です。非常にタイミングのいい出版。WWEのレッスルマニアではいよいよ女子がメインをとったという出来事からはジェンダーを、元々プロレスのストーリーラインで大きな位置を占めていた人種問題の消滅のスピードからはポリティカルコレクトネスを、はてまたコロナ禍の中での無観客試合からはエンタメの未来を語り合います。そのどれも、実は日本のプロレスの影響が紐付けられて、めちゃくちゃそそる話です。日本のプロレスが進みすぎていたのか、そのあと全然進まなかったのか…論客がアメリカンプロレスのウィキペディア(命名:プチ鹿島)、フミ斎藤と時事芸人、プチ鹿島、そして実は一番効いているような気がするKAMINOGE編集者、堀江ガンツ。スイングしまくります。現代の話題だけではなく、NWAの権威のプロパガンダだったり、ロードウォリアーズというブランドの会社と個人のせめぎ合いだったり、よだれダラダラなテーマの連発です。トランプが大統領になった頃からリアルとファンタジーの逆目の溶解現象が起こっているような気がするのですが、それは現実社会のプロレス化が起こっているのかもしれません。実は直前の読書が北村紗衣「批評の教室」。その影響もあってプロレス入り口で、社会のことをあーでもないこーでもないと批評、論評する豊かさを感じました。最後の最後にプチ鹿島の言う「批評を止めるな!」「論評を止めるな!」賛成です!
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Posted by ブクログ
どのジャンルもそうかもしれないが、特にプロレス界は記憶のジャンルだと思った。空前の80年代を経験したものにとってはなおさら。
ブッチャーの「ブロディはフレンド、ホセもフレンド、カルロスもフレンド、みんなフレンドなんだ」との言葉が忘れられない。不幸な事件について、特にその後、その始末記を端的に表すとすると、そういう言葉に収まるのだろう。
ただネット、YOUTUBEで語られつつある事件の背景として、88年当時のブロディのメンタリティ(全日ファーストをベースとしたプライド)への切り込みが少なかったので、この本だけではもやもやは残るようには思う。
とはいえ、構成・まとめ方、そしてちょっとしたエピソードの挿入が上手な良書。
また、ブロディが、鶴田に対してもそうだが、やはりレスラーとしての猪木に対しても特別な感情を抱いていたことがこの本でもよくわかる。 -
Posted by ブクログ
ネタバレ『超獣』ことブルーザー・ブロディの没後30年を機会に
出版された本。著者はファンから絶大な信用を誇るプロ
レスジャーナリスト及びエッセイスト、フミ・サイトー
こと斎藤文彦。
いまから30年前の7月17日(日本時間)、プエルトリコ
・バイヤモンのフォアン・ラモン・ルブリエル球場で行
われていたWWC(ワールド・レスリング・カウンセル:
カルロス・コロン代表)の興行開始前、同会場のシャワ
ールームにて、プロレスラーのブルーザー・ブロディが
刺殺された。刺したのは同じくプロレスラーで同団体の
ブッカーも務めていたホセ・ゴンザレス。ブロディは病
院に搬送されたが、翌18日に死亡が確認された。享年42。
この作品の冒頭で、作者は我々に問いかけている。
「いまから30年前の7月18日、“あなた”はどこにいて、
そのニュースを耳にしたのだろう」
・・・僕は何故かコレをハッキリ覚えている。
場所は今は無き新宿厚生年金会館の楽屋口。僕はコンサ
ート設営のアルバイト中で、同じ場所に居たプロモータ
ーの人からこの話を聞いた。この日の仕事は本当に上の
空となってしまい、周囲には少し迷惑をかけたかも。そ
の日の帰り、新宿三丁目駅売店で購入した東スポでソレ
が真実であることを知り、強い絶望感に苛まれた・・・。
ブルーザー・ブロディという選手、好き・嫌いで言えば
僕は決して好きなタイプの選手ではなかった。しかし、
当時の日本プロレス界に於いて、凄く重要な登場人物だ
ったことは間違い無い。なぜなら、我々の考え得る「夢
のカード」の一方には必ずブロディの名前が入る。好き
だろうが嫌いだろうが、認めざるを得ない。それがブロ
ディだった。
この本の構成は、書き下ろしとなるブロディの生い立ち
からフットボーラー・新聞記者としてのキャリア、そし
てプロレスデビューから死に至るまでのストーリーと、
当時週刊プロレスに掲載されたインタビューの2本立て。
流れは終始淡々としているのだが、その分あの時の感情
がリアルに蘇ってくる。
あの時、僕はホセ・ゴンザレスに殺意を覚えたし、絶対
に実現することの無いハンセンvsブロディを思い絶望し
ていたりした。でも、30年経った今では違う感情を持っ
ている。
ブルーザー・ブロディは、きっと刺されるべくして刺さ
れた。そして、ホセ・ゴンザレスにはそうしなければな
らない事情がきっと在ったのではないか?と、今は思っ
ている。
ブルーザー・ブロディという唯一無二のプロレスラーが
全盛期のうちに亡くなったからこそ、僕らは今でも「IF」
の話をいくらでも出来る。もしブロディが実力の衰えた
晩年をさらけ出してキャリアを終えていたら、こういう
状況にはならなかった、と思う。間違い無くスキャンダ
ラスな事件であり、二度と在ってはいけないことだが、
ブロディはそういう「最後」を我々に提供してくれた。
そんなプロレスラーは、他に居ない。
昭和プロレスファンであれば、昭和プロレス最後のエー
スガイジンについてもう一度検証すべき。好き・嫌いの
レベルで語るワケにいかないレベルにいた男の人生には、
必ず何かがあると思うので。 -
Posted by ブクログ
時代的には力道山がプロレス入りしてから、馬場・猪木が台頭するまで。
内容については既存のプロレス史をなぞってるだけで、特段新説・奇説が出てるわけではないので割愛。
以下、簡単ながら雑感を。
・昭和のプロレスライターの(田鶴浜弘、鈴木庄一、桜井康雄ら)の文章を元に、プロレス史を紐解いている。
今みたいにネットも動画もない時代の情報を精査するのは難しい中、丹念に取り扱っているのは素晴らしい。
・当然ながら今ほどプロレス界において報道の自由はないし、情報も限られた中、著者の立場や性格によって若干の違いがあるのが面白い。
逆に、その微妙な差異の面白さを感じ取れない人にとっては退屈かと。
プロレスに興味のある人ならば、読んで損はないかと。