宮野美嘉のレビュー一覧
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Posted by ブクログ
“「お嬢様、その男から離れて下さい」
墓地への立ち入りを禁止されているヴォルグは、鉄柵の前まで来ると、ガシャンと音を立てて手をかけた。
「コルドン伯爵、何お嬢様に色目使ってんですか。あんたは頭の線が切れたあの女と、よろしくやってりゃいいんですよ。大体何ですか?あんたはお嬢様みたいに凹凸のない幼児体型が好みなんですか?幼女趣味ですか?」
悪い目付きで鉄柵越しにジェイクを睨み、ヴォルグはどう考えても、フィナに対して失礼としか言いようのないことをまくしたてる。
『ヴォルグ、あなたは人のこと言えないと思うの』
フィナが穏やかに言うと、ヴォルグは自信満々な顔でフィナを見た。
「ご安心下さい。俺はお嬢様に拾われたあの日から、幼女趣味に目覚めています」
『そうだったの?よかった』
笑顔でそう答えたフィナは相当大物かもしれないと、ジェイクは本気で思った。
「お嬢様、幽霊だろうと幼児体型だろうと、女性が不用意に男に近付くのは危ないんですよ。特にこういう何を考えているか分からない男は、変質的な性癖の持ち主に決まってます」
ヴォルグが甚だしく偏った主張をしたところで、開いていた玄関からソイが姿を見せた。
「ヴォルグお前、何サボってるんだよ。掃除しとけって言われただろ」
気の良い笑みを浮かべながら、大股で歩いて来ると、彼はヴォルグの背骨に素早く膝蹴りをかました。げふっと呻いたヴォルグの首根っこを捕まえて、館まで引きずって行く。
「主人に対する口の利き方を少しは弁えろよ」
怒りのこもったソイの言葉に、ヴォルグは反抗的な態度を見せた。
「俺の主はお嬢様で、コルドン伯爵じゃねえよ。つーか、てめーに指図される覚えもさらさらねえ」
「いい度胸だなクソガキ」
さほど歳の変わらないヴォルグを頑なにガキ扱いし、ソイは彼を館に放り込む。
二人を見送って、フィナはジェイクを見上げた。
『ジェイクくん、あれがいい見本だよ。分かった?』
「何がだ?」
意味が全く分からず、ジェイクは怪訝な顔で問い返した。”[P.124]
4巻目。
またも面白くってにやけてしまう。
リゼットは少し見当付いてたけれど、ブライアンが正直意外だった。
一瞬ただ生きたかっただけかと思ったけど、愛が故のあの芝居。
個人的に好きな締まり。
今回は家人たちがいい味出してて。
ソイとハロルドの幽霊の押さえ方は今回が初出だった?ハロイドが意外で少しびっくり。
前回綺麗に心温まる感じに思ってたのに、ヴォルグこ、これでいいのか。
アシェリーゼとフィナの二人のやり取りが楽しい。
“「話をした時、夫人は何か知っている風でした。……けど、何というか……深く追求し辛かったというか……。正直に言うと、怖くて聞けなかったというか……」
ジェイクの頭の中を疑問が渦巻く。
いったいどういうことだろうか?
彼女がダグラス・ローをかくまっている?
何のために?
答えを知りたいのなら直接聞いてしまえばいい。いつもの自分ならすぐにそうしたはずだ。
けれど、今のジェイクはそれをして正しい答えを得る自信がないのである。
下手な嘘をつかれるならまだいいが、彼女はジェイクを拒むかもしれなかった。
それを想像すると、踏み出すことに躊躇いを感じる。
固まってしまったジェイクを案じたのか、ブライアンは再びグラスに酒を注いだ。
「お疲れですよね。面倒ばかりおかけしてすみません」
ため息交じりにそう言うと、ブライアンは手酌で注いだ酒をあおった。
それを見てジェイクは、彼もまた、愛する少女の奇矯な言動に振り回されている男の一人なのだと思い至った。それを思うと、奇妙な同族意識が感じられる。
ここはしばらく、厳しい言葉を浴びせられてばかりいるジェイクは、疲れた精神を麻痺させるように、グラスの中身を一気に乾した。”[P.179]
20160823 再読 -
Posted by ブクログ
“「では、参りましょうか」
最後に愛らしく微笑んで、サアラはエリオスに歩み寄り、腕を取った。
「何するんだよ!」
エリオスは、すごい勢いでサアラを振り解く。
「何って、そのためについて来て下さったのでしょ?」
にっこりと微笑んで、サアラは再びエリオスの腕に手を回した。
「それとも、お父様が傍にいないと不安ですの?」
「なっ……そんな……わけないだろ」
仏頂面に戻り、ぷいと顔を背ける。しかし、もう腕を振り解こうとはしないあたり、扱いやすい少年だ。サアラは可笑しそうにくすくすと笑う。
「頼もしいですわね。もしも私が怖い人に苛められたら、どうか守って下さいな」
「そんな命知らずが、この世のどこにいるんだよ」
エリオスは呆れたような半眼で、サアラを見下ろした。”[P.35]
3巻目。
合理的拘束とか思いつ。
殺意に走る主人公お嬢様なんて初めてだ…!
一番可愛いのはアシェリーゼさんに違いない…。
他の女の子みんな色んな意味合いで強すぎる。
知り合いには欲しいけど絶対敵に回したくない。
フィナちゃんも増えて次が楽しみ。
“「お嬢様のいない世界で、どうして俺が生きていけると思うんですか!俺が要らなくなったなら、はっきりそう言って下さい。今すぐ死んでやりますよ!!」
混乱したまま、ほとんど脅しのように怒鳴る。
「お嬢様に拾われた時、俺の人生の全てをこの人に捧げようと決めたんです。お嬢様のいるところが、俺の居場所だ。だからもう……俺の前からいなくならないで下さい」
『私は……あなたに何もしてあげられないよ』
フィナは諭すような目でヴォルグを見上げた。
「そんなのどうでもいいんです。どうか俺を、お嬢様の傍に置いて下さい」
睨むようにフィナを見つめ、ヴォルグは必死に懇願する。握り締めた拳が微かに震えた。
『本当にそれでいいの?』
「そうしたいんです。ダメだと言うなら、死んで幽霊になって、お嬢様に付きまといます」
その言葉を聞き、フィナは啞然とした顔でヴォルグを見上げてきた。そして弾かれたように吹き出すと、体を前に折って、くっくと笑う。
ひとしきり笑うと、フィナは顔を上げてヴォルグを見た。
『分かった。いいよ、傍にいても。うん……傍にいて』
フィナは観念したように、目を閉じて微笑んだ。”[P.240]
20160811 再読 -
Posted by ブクログ
“「承知しています。ですが、私が主と同じく、サアラお嬢様とジェイク様の行く末を、心から気にかけているのだということは、どうかご理解下さいませ」
サアラは笑みを引っ込めると、曲げた指を口元に当てて、マリエッタを見やる。
一見女性らしい柔らかさを持ちながら、実は大変男前なこの侍女を、サアラはどうも嫌いではないのだった。男性の好みが近いせいだろうか?
「あなたは、おじ様が好きなのですわね」
尋ねるわけでもなくつぶやくと、マリエッタは虚を衝かれたように一瞬動きを止めた。
「主に忠誠を尽くすのは、当然のこと。それ以上のことなどありません」
「おじ様はとても素敵な紳士ですから、あなたが心を奪われるのも、無理のないことだと思いますわ」
「......あの、サアラお嬢様。私の話を聞いていらっしゃいませんね?」
マリエッタは、微かに困ったような顔をする。
「もちろん聞いていますわ。ジェイク様の良さが分かる女は、この世に私一人でいいというお話でしょう?あなたは、分かりやすく魅力的な紳士に、魅了されていればよろしいの」
にっこりと微笑むサアラに、マリエッタはふわりと柔らかく笑った。
「我が主から、サアラお嬢様とまともにやりあうのは、大変だと聞かされていました。その意味が、よく分かったような気がします」”
今回も良かった。
サアラの行動/言動楽しいなぁ。
続編欲しい。
“ジェイクを見上げたまま、サアラは聞いてみた。
「私が殺人鬼になったら、ジェイク様は庇って下さいますの?」
言葉の不吉さと裏腹に、朗らかな笑みを浮かべる。
「.........出来ないだろうな。するべきだとも思わない」
ジェイクははっきりと言った。ジェイクならそう言うだろうと思ったサアラは、愛らしく笑ってみせた。
「どうか安心なさって。私が殺人を犯す時は、完全犯罪を目指しますから、庇って下さらなくても大丈夫ですわ」
不届きな宣言をするサアラを、ジェイクは呆れたような目で見返す。
「そんな時が永遠に訪れないことを祈るよ。レニー・ガスティンの真似は、どう考えても出来そうにない」
サアラは、真顔でそう言うジェイクの顔を覗き込む。
「ジェイク様は、人を好きになったことがないのですものね?」
夫婦として有り得ないことを平気で口にして、サアラは笑った。サアラはそれで構わないと思っている。一生かけて好きだと言わせてみせると決めたのだ。
しかし、ジェイクは眉をひそめ、おかしなことを言い出した。
「そうだな......そのはずだ。だが、レニー・ガスティンは、私がきみに惚れているのだと言っていた」
「はい?」
思いもよらないことを言われ、サアラはきょとんとした。”
20160806 再読 -
Posted by ブクログ
“「それは無理だ」
ジェイクは今までにないほど、強くはっきりと即答した。完全な無表情を貼り付けて、何を考えているのかなど欠片も覗かせなかった。言葉の強さに驚いたのか、エリオスも驚いた顔でジェイクを見上げた。
「私はきみを幸せにはできないよ。私は人を不幸にする性質の人間だ」
ジェイクはそう続けた。サアラは自分の言葉が、歪んで伝わってしまったことに少しがっかりして、口を尖らせた。
「私は幸せにしてほしいなんて、一言も言っていませんわ。私は幸せになりたいのではなくて、幸せでありたいんです」
言葉遊びのようで意味が分からなかったのか、ジェイクの無表情に少し不可解な色が混じった。サアラは胸に片手を当てて、堂々と言ってのける。
「昔も今も変わりなく、私は充分幸せです。ただ、最期の時まで幸せであり続けるために、私は与えられた状況の中で、最善を尽くしたいのですわ」
力強くサアラが言い放つと、ジェイクは何だか不思議そうな真顔になった。
「きみにとっての幸せとは、何だ?」
そんなことを聞かれるとは思わなかったので、サアラは少しびっくりして目を見開き、ジェイクを見つめた。そしてにっこりと微笑む。
「私にとっての幸せとは、私が私であることを後悔しないということです」”
新鮮。
主人公の性格が何より新鮮。
すっきりするなー。
傲慢にも生意気にも性格が悪いようにも見える本音を隠さないずばっとした物言い。
自分が美人であることさえも武器に使うような。あと人を観察するのに長けている。
この世で一番恐ろしいものは生きている人間でそれは誰しもが残虐にさえなれる『悪意』を持っているからで。
けれどそれと同じくらいに人間は優しさを愛情を持っているから生きている人間を好きになれる。
達観してらっしゃる。
ジェイクの性格も良いなー。優しい人だ。
“「ねえ、ジェイク様。私を不幸で可哀想だとお思いになる?」
最初と同じ質問に、ジェイクは難しい顔をして考え込んだ。
「………それはよく分からないが……君がとてもずるくて強かな人間だということは、よく分かった」
そんなことを言う。意外な事を言われてサアラは頬杖をついたまま首をかしげた。
「まあ……、ずるいですか?」
傲慢とか、生意気とか、性格が悪いとかは言われたことがあるが、ずるいと言われたことはあまりない。不思議そうに眉をひそめたサアラに、ジェイクははっきり言った。
「きみはずるいよ。幼い頃の傷や痛みを武器にして相手を攻撃している。そんな……自分をも傷付けるような武器を使う人間など、そうはいない」
そう言いながらも、ジェイクの口調に責める気配はなかった。
サアラは誇らしげに指先を自分の胸に当て、凄艶な笑みを浮かべた。
「ええ――私、使えるものなら何でも使って戦いますわ。だって、私は私しかもっていないのですもの」
他のものなど、もう何一つ持っていない。だから、傷だろうと痛みだろうと、使えるなら使う。
「強かだな」
ジェイクは呆れたようにつぶやいた。”
20160803 再読 -
購入済み
ヒロインいい人
ヒロインがいい人過ぎです。ヒーローがわかりにくいキャラクター設定だったけど、もう少しヒーロー側の感情を一人称でも匂わせてくれたら、もっと面白く読めたかなぁ。最後の方は ヒーローの感情がちゃんとわかって良かったです。もちろんハッピーエンド。