大庭忠男のレビュー一覧
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夕闇の迫るオックスフォード。
なかなか来ないウッドストック行きのバスにしびれを切らして、
二人の娘がヒッチハイクを始めた。
その晩、娘の一人が死体となって発見された。
もう一人の娘はどこに消えたのか、なぜ名乗り出てこないのか?
テムズ・バレイ警察のモース主任警部は、
ルイス部長刑事とともに捜査にあたる。
多くの仮説が覆されたあと、最終的に浮かび上がった解答とは……。
現代本格の代表作家、デクスターのデビュー作。
原題「Last Bus to Woodstock」。
デクスターの名前は以前から知っていたが、手に取るのは初めて。
作風についても噂は聞いていたが、確かに噂どおりだった。
クイーンやポアロのような名探偵たちは、
物語の最後まで真相をひた隠しにして、
最後にすべて説明を行うというスタイルであるが、
デクスターの生み出したモース警部は違う。
いくつもの仮説を立てては、それを検証するのだが、
新たな証拠が出てきて仮説が覆され、
再検討を余儀なくされる――ということを繰り返して、
最終的に真相にたどり着くのである。
自分の立てた仮説が間違っていたとわかりイライラしたり、
捜査に行き詰まりを感じて悩んだりもする。
また、モースは捜査中にやたらと酒を飲むし、
事件の関係者の女性と恋に落ちてしまうし、
ルイスに八つ当たりをしたりするし、
家の壁の穴をふさごうとして脚立から落ちて骨折してしまったりする。
このように人間味のある人物造形になっている点がユニークである。
そのような形で物語が進行するので、真相が明かされる直前まで、
我々読者も五里霧中といった感覚でいることになり、
結末に対していささかの不安をも感じてしまうのだが、
その不安を見事に晴らしてくれる結末が用意されているのでご安心を。
しかも、ちゃんと伏線も張られていたこともわかって、
思わず冒頭のあたりを読み返してしまったりもする。
そして、構造のしっかりしたミステリであることを認識し、
改めて感心させられることになるのである。
人物造形が魅力的であり、意外な真相が用意されている。
ミステリとしてはこれだけで充分だろう。
ミステリ好きには迷いなくオススメできる。
ところで、表紙の画像は新装版のものなのかな? -
Posted by ブクログ
祝!初、エラリイ・クイーン!
とうとうあたしもエラリイ・クイーン・デビューであります。
特になんの先入観も持ってなかったのですが、
でも、こう思いました。
思っていたより、ずっとエンタメだった。
テリー・リングが毎回登場するキャラクターなのかとか、
そんなことは分からないのですが、
このテリーとエヴァの物語は、あたしを熱狂させました笑。
こういうの、大好き!
その二人にあまり顔色の良さそうじゃないエラリイ・クイーンが
寄り添っているところなんかは、かなり良いツボだと思います。
ミステリーとしては、いまいち満たされませんでした。
そうだったのか!なんと!
という驚きもない、けど、それはこの人たちが考えだしたことを、
色々な人がそれぞれに取り入れて真似したものを
あたしが今まで生きてきた中で目にしてきたからであって、
そう考えると、やっぱりこの本は衝撃的だったのだと思います。 -
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読み終わった後で、「ちょっとダメな人」にほんの少し優しくなれる気がする。そんなお話でした。笑
モース警部みたいに、仕事ができるとは言い難いけどなぜか憎めない人、いますよね〜。
本書については、愛読書である『海外ミステリ・ハンドブック』で知りました。
またドラマ化もされていて、イギリスではあのスーシェ版ポワロさんに次ぐ人気シリーズなんだとか。秩序・論理・整頓を重んじるポワロさんと、想像に基づく「推理」という砂の城を作っては崩壊させるモース警部が人気とは……イギリス人の国民性もなかなか興味深いです。
海外ミステリはそれなりに読んでいるつもりですが、翻訳の妙なのか元々の文体なのか、今回は久々に苦戦。語り手の視点がよく変わるのと、代名詞の多い文章とでなかなか読み進めることができませんでした(章ごとの引きが巧く続きが気になるので、挫折はしませんでしたが)。
それに拍車をかけて、モース警部の繰り広げる暴走推理にも振り回されまくり!
統計学を用いて犯人を「一人」と絞り込むくだりでは、もうどうしようかと思ってしまいました。笑
そんなモース警部の手綱をゆるく握る年上の部下、ルイス刑事とのコンビがいいですね。本人は胃痛が絶えないでしょうけども。
最終的な結末としては主要人物みんな愛人関係にあったという、なんとも昼ドラ展開なのですが、不思議と生々しさがあまりないのも本書の魅力。
残忍な殺害方法やモース警部の恋愛パートも含めて、なぜかカラッとして後味の悪さがない、不思議な作風となっています。このあたりは解説にもあったとおり、作者が「クロスワードのカギ」のごとく展開しているからでしょうか?
「本格ミステリの醍醐味」といわれるとクエスチョンマークですが、良くも悪くもモース警部、なかなか忘れられないキャラとなりました。 -
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ネタバレ多重解決がというより、真面目な探偵小説読者をおちょくるような作風がアントニイ・バークリーみたいだと思った。確かに我々読者はすぐに複雑で突飛な真相に結びつけてしまう。ここまで読者に擬態したお茶目な探偵役ははじめてだ。迷探偵ぶりもロジャー・シェリンガムといい勝負。
ロジカルでかつアクロバティックな推理を多重に披露するミステリーを読んでいるので、「現代本格の最高峰」というのは誇大広告かな。といっても、真相は作者の匙加減というのが狙いなのかもしれないが。
しょぼい失踪事件でこれだけワクワクさせるのは凄いし、真相に関わる「容姿の変貌」についての説得力は他に類を見ないもので驚いた。
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Posted by ブクログ
ネタバレ諜報機関に属していたため、都合上4んだ事にされていた語り手ホールデンが復員し、数年ぶりに旧友ソーリィと恋人シーリアに再開する場面から始まる。「なにか特別な任務で遠くへいらしていたのね。」恋人の第一声に込められた思いは後に如何ほどのものであったか分かる。
ホールデンは旧友の妻であり恋人の姉であったマーゴットが脳出血で4んだと聞かされる。旧友ソーリィは病死と説明するが、恋人シーリアはソーリィの虐待を苦にしての自死であると完全に意見が食い違っており、ホールデンは旧友と恋人のどちらを信頼するか悩んだ挙句に殺人という結論を出す。
物語の核となるのが二者択一の苦悩。旧友が正しければ恋人は精神異常者であり、恋人が正しければ旧友は殺人犯となる。ホールデンが大切な人が狂っているかもしれないと悩み続けながらも、事件を推理していく展開が実に面白く三気読み。そして、この二者択一の決着の付け方は流石だと思った。
他の方も書いているように納骨堂の密室のカラクリは特に本筋とは関係ないので、とってつけたようでもったいない。一つ目の事件の方も、浴槽水浸しの論理などはよく出来ているが、過去作の使い回し感もあってミステリーとしては微妙かな。
石橋を叩いて渡る善人よりも向かうみずな犯罪者の方がなんて…女心はわからんね。カーおじさんもそんな経験あり? -
Posted by ブクログ
クラシカルなザ•ミステリーといった作品。
やはりこういったクラシックな舞台と設定は好みだ。
おそらく1970年代であろう時代設定、
夕闇の迫るオックスフォード。
なかなか来ないウッドストックへのバスに痺れを切らし
二人の女性はヒッチハイクを始める。
その晩、女性の一人は死体となって発見される。
もう一人の女性は一体どこに消えたのか?
そして事件を担当するモース主任警部が導き出す答えとは。
あらすじからは特に物珍しさは感じないが、
中々ミスリードが多く、犯人には意外性を感じた。
モース主任警部の人間臭すぎる部分など、
その辺のユーモアも兼ねた良作。
最後が個人的には一方的な主張、あくまで推理でしか分からず、
根っこの部分をもうちょっと深掘りしてほしかったなと感じたが
こういったものは蛇足なのかもしれない。
それぐらい、ある意味スタイリッシュにまとめられた作品であった。