大庭忠男のレビュー一覧
-
Posted by ブクログ
ネタバレモース主任警部第七弾。
オックスフォードのホテルで企画された
大晦日から新年二日にかけて宿泊プラン、
その山場は大晦日の夜の仮装パーティだった。
仮装コンテストで優勝したのはラスタファリー教徒の仮装をした男だったが、
翌朝ホテルの別館三号室で死んでいるのが見つかる。
殺された男は顔を激しく傷つけられ、
警察が来る前に帰ってしまった宿泊客たちは正体不明、
雪が降っていたので別館は密室状態と、
設定は悪くないし描写も面白いので、読んでいて楽しい。
モース主任警部が登場するまでは。
ちなみにラスタファリー教徒、というのは信仰というよりも思想運動のようだが、
その仮装はドレッドヘアーにフェルトの帽子、水色の長袖のシャツに白いズボンとあるので、
ちょっと奇麗めなレゲエという感じのようだ。 -
Posted by ブクログ
ネタバレモース主任警部第五弾。
パーティで偶然会った若い女性に家に招かれ、
半年後にふらりと訪れたモース警部。
もちろんロマンス的な展開にはならず、
鍵が開いていた部屋の1階には誰もいなかった。
だが、その夜に女性が首つり死体で発見される。
女性の部屋を訪れたのを隣の男に目撃されていたモース警部は…。
といっても今風に、警部が犯人だと疑われたり、
内部監査をうけたり、警部を陥れる陰謀だったりはしない。
いつも通り推理が迷走して、
女性の自殺の理由は自分の息子の子供を妊娠してしまったからだ、
とルース刑事に主張していた。
身代わりのトリックは前回も見たような気がするが、
今回のトリックは見事だった。
それと、重要な証拠の指紋が、実はモース警部のものだったということも。
今回はモース警部が女性の家を訪れたのが遅すぎたというほろ苦い最後だったが、
前作の最後で、モース警部が家を訪れた女性とはどうなったのか? -
Posted by ブクログ
劇的な終幕を迎えた「十日間の不思議」(1948)に続く1949年発表作。単なる〝思考機械〟から苦悩する探偵へと様相を変え、円熟味を増したエラリイ・クイーン中期を締めくくる傑作だ。
正体不明の連続殺人鬼にマンハッタンは震撼していた。何れも絞殺で、犯行には絹紬が使われていた。性別や人種、年齢や家庭環境に共通点はなく、動機も解明されない。新聞は過激な記事で恐怖を煽り、殺人鬼を〝猫〟に見立て、新たな犠牲者をその尻尾に付け加えた。すでに尾は五つ。市民らは自警団を作り、不甲斐ない警察と市政を批判。父・リチャードに懇願されて捜査の陣頭指揮を取ることになったエラリイは手掛かり皆無の連続殺人事件に着手するが、まるで霧の中を彷徨うが如く事件解決への道は八方塞がりだった。
舞台をニューヨーク/マンハッタンに絞り、大都会の喧騒を織り交ぜつつ、格差や人種差別などの社会の闇もしっかり描いており、発表当時はかなり刺激的な作品だっただろう。
論理的思考を駆使した前期傑作群を彷彿とさせる渾身の一作であり、よりダイナミックな展開で人間の心理/闇を照射し、罪と罰の在り方をも掘り下げている。サイコパスによる無差別連続殺人に打ち震えるマンハッタンの狂騒、探偵クイーンの苦悩、殺人者にまつわる暗い過去、終盤で辿り着く重い真相はミステリ作家として成熟の極みにあった証左だろう。後に席巻するサイコキラー物の先駆的作品としての価値も高い。精神分析を巧みにプロットに絡ませるロジックは見事に昇華して、大きく畝り、読者を圧倒する。或る意味必然的にこの悲劇的な結末を取らざるを得なかったクイーンの達観。結末も深い余韻を残す。 -
Posted by ブクログ
ネタバレ競馬シリーズの後ろの広告で見て。
まったくもって作者の思うつぼにはまっていたらしく、
全然犯人がわからなかった。
まだタイピストが全盛の時代で、
しかも主人公のモース主任警部が熱を上げた女性が犯人なんて、誰が思う?
ウッドストック行き最終バスを逃した二人の若い女性のうち、
一人が殺された。
ヒッチハイクを一緒にしたもう一人の女性は誰なのか。
殺された女性と同じ職場の女性がその日の行動に嘘をつき、
暗号が隠された手紙を受け取ったとしたら、
その女性が同乗者だと思い込んで当然でしょう?
途中で、モース主任警部が事件と全然関係ないところで足にけがをしたり、
部長刑事相手に犯人の条件をあげて統計論的に犯人をしぼっていく場面にも、
多少いらついたが、
何よりも作者の落とし穴にずっぽり落ちて抜け出せなかった自分に腹が立つ。 -
Posted by ブクログ
ミステリ。モース主任警部。
著者の本を読むのは4冊目。
3冊読んで4冊目に挑戦している訳なので、何かしらの魅力を感じてはいたが、シリーズの面白さを明確に認識できた一冊。
読んでいて連想した作家はアントニイ・バークリー。
個人的に思う作品の魅力は、モース警部の想像力を活かした捜査スタイル。
証拠からストーリーを考える論理的手法ではなく、ストーリーを考えてから証拠を集めるスタイルが特徴的。
このスタイルのおかげで、一冊を通して推理がひっくり返され続ける。
最後の最後まで、事件の輪郭が掴めず、何が起きているのかも分からない。ホワットダニットというやつか?
独特のユーモアもあり。
自分のなかではかなり印象的な作品になりそう。 -
Posted by ブクログ
難聴のニコラスクインが殺された。海外学力検定試験委員会に選ばれた無害な彼はなぜ殺されたのか?
モース主任警部のアクロバティックな推理?が炸裂する!!
期待通りの仮説と推理の繰り返しで大満足。事件の肝が不正絡みか恋愛か動機は釈然とせず。被害者も含めた登場人物の行動の時刻がいまいちわからない。モースとやきもきしながら推理の妄想を楽しみました。
ある程度構えてしまったため、前作ほどのカタルシスはなかったものの、モースが閃くたびに、私も目がキラキラしてしまいました。
モースの天才と紙一重な探偵っぷりがほんとたまらない。
「極度の難聴」この事実が見事に最後のピースになっていることが本当に憎い!! -
Posted by ブクログ
英ミステリ作家、コリン・デクスター(1930-2017)による、モース主任警部シリーズの1作目。
モースは、「英国で最も好きな探偵」第1位に選ばれたこともあり、イギリスではシャーロック・ホームズを凌ぐ人気があるとも言われるのだそうである。
本シリーズは長編13作、短編集1冊が刊行され、モースの死によって完結している。
本編もドラマ化されているが、近年、若き日のモースを主人公としたテレビシリーズが制作され、日本でも一部が放送された(『刑事モース〜オックスフォード事件簿〜』(原題は"Endeavour"。モースのファーストネームで、原作の壮年モースはこれを明かしたがらず、ネタの1つになっていた))。原作者もコンサルタントとして制作に参加している。時代背景は異なるが、全体としてのテイストはかなり似ているようである。
さて本作。シリーズの他の作品同様、舞台はオックスフォードである。
2人の若い女性が、ウッドストック行のバスを待つ夕暮れ。なかなか来ないバスにしびれを切らした2人は、ヒッチハイクを始める。その夜、そのうちの1人が死体となって発見される。
2人を乗せた車はどこだ? そしてもう1人の娘はどこへ消えたのか?
モースのアクロバティックな推理が展開される。
メインストーリーの謎は謎としておもしろいのだが、読んでいて思い出すのはクロスワードパズルである。縦のカギ、横のカギが示唆する単語の謎。さまざまなヒントを元に、最終的にはすべてのピースが組み合わされる。暗号やアリバイ、状況証拠。小さな手がかりからいくつもの仮説が立てられ、取捨選択されていく。
著者はクロスワードパズルづくりの名手でもあり、その片鱗があちこちに姿を現す。博識・多読の人でもあったようで、コールリッジやダウスンの詩が散りばめられているのも味わいを増す。
全般に惜しげもなく多くの要素を詰め込み、一度ではすべてを味わいきれないほどである。再読に耐えるとする人が多いのも頷ける。
ミステリとしての味わいに加えて、オックスフォードの美しい街並み、モースの実らぬ恋、不倫や家庭の不和といった人生のままならなさもまた、本作の厚みを増している。
真犯人に至る謎解きの出来にはいささか疑問が残らないでもないが、英国パブの重厚な雰囲気を思わせる、薫り高いミステリである。