三浦佑之のレビュー一覧
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<目次>
はじめに
第1章 歴史書としての風土記
第2章 現存風土記を概観する
第3章 常陸国風土記~もう一つの歴史と伝承の宝庫
第4章 出雲国風土記~神の国ともう一つの文化圏
第5章 語り継がれる伝承~播磨国風土記と豊後国・肥前
国風土記
まとめにかえて
<内容>
勉強不足だったが、当初の朝廷の目論見が『日本書紀』が『日本書』「紀」だったとは。そして『風土記』は『日本書』「志」にあたるとは…。確かに中国の歴史書を踏まえて作ったいるなら、それで該当することになる。そしてその目論見は何らかの理由でうまくいかず、『風土記』は独立した地誌となった。
また「出雲国風土記」の性格に -
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平安時代初期に奈良薬師寺の僧•景戒(きょうかい)が編纂した仏教説話集。約120話の短い話を口語訳したのが本書。原典は漢文だが、口語訳されているのでサクサク読める。本文の下に註釈も付いているので理解しやすい。巻末には地図•系図•関連年表もある。
内容は、後世に伝承されて昔話や伝説となって広まったような物語が多い。動物をめぐる恩返しや臨死体験を語る冥界訪問譚などはその代表的なものだろう。
『日本霊異記』の価値は、それ以前には日本人の思考に無かった因果とか応報などの"観念"を駆使して語られる仏教的な戒めが、短い物語として大量に記録されている事にある。
正直、全部読み通すと些か食傷 -
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今から1300年ほど昔でも、人間の心情や行動は現代とそれほど違わないのではないかと、古代の文学を読んできた著者は言う。
本書では、そうした観点から、記紀や風土記、万葉集、日本霊異記等の興味深いと思われる箇所を紹介していく。
第1章の異界論では、黄泉の国でのイザナキとイザナミのやり取り、不老不死を求めての常世の国訪問、浦島子物語などが紹介される。
以下、男と女を巡る純愛やスキャンダラスな物語、エロ、グロ的な話、親子の断絶、さらには有間皇子、大津皇子、称徳天皇と道鏡の関係などの政治史的事件を巡る物語等々が紹介される。
関係箇所の訳文、そして著者の考察が分かりやすく示されているので、興味 -
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長年にわたって『古事記』を中心とする日本古代文学の研究をおこなってきた著者の、出雲神話についての見解がまとめられている本です。
出雲神話をめぐる従来の解釈を批判し、考古学上の研究成果も参照しながら、ヤマト王権に敗北した出雲の側の「語り」を、『古事記』や『風土記』のうちに読みとろうとする試みがなされています。著者は、高天原からタケミカヅチが使者として遣わされ、タケミナカタとの力くらべを経て「国譲り」がおこなわれたという解釈は、ヤマト王権による出雲の「制圧」として理解されなければならないと主張しています。また、カミムスヒについても、出雲とかかわりの深い神であったという考えが提出され、『古事記』や -
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『あらすじで読み解く古事記神話』(2012年、文藝春秋)の加筆改題版です。
著者は、『古事記講義』(文春文庫)や『古事記を読みなおす』(2010年、ちくま新書)など、古事記の入門書を数多く執筆していますが、そのなかでも本書は、著者が「中学生以上ならだれにでも楽しんでいただけよう」と述べているように、とくにわかりやすく書かれている印象です。
古事記の上巻から、親しみやすいエピソードを紹介し、それをめぐっての著者の解説がつづくという構成になっています。他方で、「一般的な解釈とは違う新説も随所に加わっているので、古事記研究を専門とする人にも読んでほしい」と著者が述べるように、著者自身の見解も前面 -
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古事記の上巻の内容をわかりやすく紹介しながら、そこにひそんでいるさまざまな問題をとりあげ、著者自身の解釈を織り交ぜて解説をおこなっている本です。
著者はすでに『古事記を読みなおす』(2010年、ちくま新書)など、古事記にかんする入門書をいくつか執筆していますが、本書は著者の講読の授業に似たスタイルで、古事記についての解説をおこなっているところに特色があります。
著者の古事記についての理解がどのようなものであるのかということを簡単に知るためには、上述の『古事記を読みなおす』などの著書にあたるほうが適切です。とりわけ古事記における「語り」の契機を重視する著者の古事記解釈の基本的なスタンスそのも -
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・三浦佑之「古事記の神々 付古事記神名辞典」(角川文庫)を読んだ。講談社から出た「出雲神話論」の前駆書であらうか。ここでも出雲神話 が大きく採り上げられてゐる。「出雲神話論」を読んでない私はこの点でまづ興味深かつた。何しろ私の古事記は好きでちよつとかじつた程度である。たかが知れてゐる。それ以上に、私は古事記と日本書紀を「別個の作品だと言いながら『記紀』という呪縛(マインド・コントロール)から完全に解き放たれていない」(10頁)人達の 古事記理解の中にあつた。しかし、これが普通の古事記理解のはずである。アマもプロも、歴史も文学も、記紀の片方と理解しながら古事記を理解してきた。「今考えると、『記紀
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第一部「歴史叙述の方法」では、日本書紀と古事記という性格を異にする2つの歴史書において、歴史はどのように叙述されているかということを論じている。
日本書紀では、特に巻三以降の各天皇紀は、編年体により、天皇の時間によって整序されているため、つながりのある出来事でも分断されることとなる。
これに対し、古事記では、〈混沌→秩序〉のブロックが積み重ねられた伝承群から成り立っている、とされる。
第二部「歴史としての起源神話」では、起源神話の語り方について考察される。笑いとイケニヘ、そして人間の誕生を語る青人草。
第一部は、叙述の方法に関しての議論のため、その論理が比較的追い易かったが、第二 -
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古事記に登場する主だった神々について、その成り立ちや性格、他の神々との関係等を論じたもの。
著者は、古事記の序は後世に付け加えられたものであり、日本書紀が国家的事業として、国家の正統的歴史書を作ろうとしたのに対し、古事記はそうではないと言う。特に出雲神話が書記にはほとんど取り上げられていないのに対し、古事記では、権力に抗い、敗れた敗者への共感があるのではないかとする。
そうした基本的立場から、オオクニヌシを始めとする神々について説明されるのだが、特に、出雲から越にかけての日本海側のつながりに着目する。
著者の見解について、その当否を述べる能力はないが、古事記を読み込んだ魅力ある仮 -
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紀記とまとめて考えられがちな古代の話を、古事記、日本書紀、出雲風土記など様々な一次資料を個別に参照し、先行研究によって凝り固まってしまった考え方を説き解しながら、出雲にまつわる神話を順を追って浮かび上がらせている。
面白いと思ったのは、考古学の発見も参照しているところ。文献だけでは得難い実感を伴って読むことができた。博物館で観た大量の銅剣や出雲大社の柱の基礎などが想起されて、神話と現実を行ったり来たりするような不思議な感覚。
読み進めるにつれ、万葉集や物部など歴史として知る単語が出てくるのも同様。
ついに次は古事記自体を読んでみようかと思います。いろんな神社にも行ってみたい。 -
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ネタバレ古事記は、律令国家の由緒を描く史書として読まれてきた。だが、こうした理解には根本的な誤りがある―。日本書紀には存在しない「出雲神話」が必要とされたのはなぜか。どうして権力にあらがい滅びた者たちに共感を寄せるのか。この作品の成り立ちを説く「序」は真実か…このような疑問を通じ本書は、「国家の歴史」以前から列島に底流する古層の語りとして、古事記をとらえ返す。それにより神話や伝承の生きた姿、魅力がよみがえる。古事記の世界を一望に収める入門書の決定版。(カバー)
入門書としては偏っているような…。
全編通して話が及んでいるのはうれしいところ。読みごたえがありました。