渡辺容子のレビュー一覧
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何気なく手にとって、さして期待もせずに読み始めたこの渡辺容子氏のミステリー。
結論から言うと非常に面白くて、最初から最後まで興奮が止まなかった。息を呑む展開がさらりと出て来て引き込まれる。
アルコール依存症の女性が主人公で、元依存症だった私は恥ずかしくて「イテテ…」となることもしばしば。心臓のペースメーカーのことや万引き防止装置のことなど、詳しくない事柄について読むのも面白かった。最初は自堕落な主人公に辟易するが、夫への愛に立ち上がる姿が沁みてくる。主人公以外のキャラクターも癖が強いが愛すべき描写になっている。向かいの老婆のくだりはやや出来すぎか。
もっとたくさんの人に読んでもらいたいし、この -
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文庫書き下ろし作品。渡辺容子と言えば、これまでは硬いイメージの作品ばかりだったが、この作品は角が取れており、読み易く、親しみ易く感じた。
日給百万円の選挙プランナー・千堂タマキを主人公にした痛快選挙小説。市長選に出馬した鈴木まこと候補を当選させるべく奔走する選挙事務所のボランティアと千堂タマキ、千堂タマキに誘われ、ボランティアとして千堂タマキを支える阿部まりあ…次々と起こる数々の難問に千堂タマキはどう対処するのか。鈴木まこと候補は当選出来るのか…
選挙のドロドロした部分が描かれており、非常に面白い。また、主人公の千堂タマキを阿部まりあの眼を通して描く事で、描写に厚みがあるように感じた。
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再読。何度読んでも面白い。
女主人公・八木薔子が、初々しい保安士から警護員へとステップアップしていく文字通り、ターニング・ポイント(転機)となる出来事が巧く描かれている。
ラストを飾る「バックステージ」は、最もミステリー色の強い中編。「警護員」に転身後のヒロインが放つ渋い輝きがGOODよーん!
尚「SP」とは、警視庁警備部警護課の課員をあらわす「セキュリティ・ポリス」の略なんだよね。SPなる単語を使用するならば、民間SPが妥当なんだろうが、作者は一貫して「警護員」を使っている。些細なことかもしれないが、安易にSP を使わない所に良心が出ているネ。
長編「エグゼクティブ・プロテクション -
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渡辺容子の長篇ミステリ作品『流さるる石のごとく』を読みました。
ここのところ、国内の作品が続いています。
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サスペンスに魂が泣く。
夫を殺さないで!
私、酒を断ちますからーー大富豪のひとり娘で、エリート医師の妻・速水圓(はやみ・まどか)。
何不自由ない生活を送る一方で、重度のアルコール依存症に沈んでいた彼女を、突如襲った夫の誘拐事件。
犯人の指示に従い、2億円のダイヤモンド・コレクションを手に新幹線に飛び乗った圓を、想像を絶する事態が待ち受ける。
魂を震わせる、感動の長編サスペンス!
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1999 -
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1996年第42回江戸川乱歩賞受賞作。
殺人の容疑をかけられた万引きGメンが、周囲の協力を得ながら自らの手で犯人に迫っていく長編ミステリー。話を伺う先々で、次の話題のきっかけになる人物が浮上し、またその人物を当たるというシンプルな流れなので、時系列で追っていきやすい。問題を解くヒントがあちこちに散りばめられていて、最後にはそれが一気に繋がる感じがして面白い。
今から20年以上も前の作品なので、スーパーの深夜営業やバーコードシステムなど、今では一般化されているものが導入される当初という社会情勢が垣間見られるのも懐かしい感じがして、しみじみする。
読み進めていくと「人って、なんて自分都合」 -
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医師の妻で父親は大富豪という一見幸せそうな生活を送る速水圓。しかし現実は夫との関係はうまくいかず、万引きを繰り返し、アルコール依存症にも陥っている。しかし、久しぶりに夫と話し、関係修復に一歩近づいたと感じた矢先、夫が誘拐されてしまう。
話の展開が予想とはだいぶ違った方向に進んでいくのもあって、ぐいぐい読み進んだ。不思議なのは、高飛車で犯罪にも手を染めているような主人公にどんどん共感し、応援しながら読んでしまっていたこと。義母と一緒に事件を追って行くというのもなかなか珍しいし、誘拐の展開も他とは一味違っていたし、読んでいておもしろかった。 -
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◆右手に秋風・・・女性保安士としてまだ駆け出しの八木薔子が警戒するのは客だけではない。怪しい動きをしている女性販売員(白ネズミ)もいる。
◆去年の福袋・・・同じマンションに住む2歳年下のOL・佐久間律子が持ってきた福袋には、なんと使用済みの男性用ブリーフが入っていた。
◆サボテン・・・保安士の教官となった八木が今1番気にかけている後輩が、奥寺真弓だった。仕事に身が入っていない彼女がかかっているのは恋の病だった。
◆ターニング・ポイント・・・同期の岩田久美子が急に辞めると言い出したため、その代わりに久しぶりに保安士として現場に出ることになった八木。そして彼女はさっそく若い中国人3人組に目をつける -
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選挙小説というジャンルがあるなら、この作品も、その一翼をしっかりと担うことができる。
古くは、真保裕一「ダイスをころがせ!」、それに吉田修一「平成猿蟹合戦図」、最近では佐々木譲「カウントダウン」、そして原田マハ「本日はお日柄もよく」もこのジャンルに含めていいかも。
いずれの作品も選挙の結果にむけて、緊張が高まり、読者をも熱くさせる。
この作品も、スーパーレディの当選請負人を主人公に、終局へ向けて大いに盛り上がる。様々な妨害や、困難を乗り越え、当選へ至る結末には、カタルシスと爽快感に
浸ることができる。
出来れば、副主人公ともいうべき、阿部まりあの今後、政治家秘書になった彼女の活躍も見てみたいも