佐藤多佳子のレビュー一覧
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Posted by ブクログ
ネタバレ『一瞬の風になれ 第三部 -ドン-』を読んで、まず強く感じたのは、かけっこというシンプルな競技の中に、こんなにも色々な気持ちが詰まっているのかということだった。走ることはただ前に進むだけの動作なのに、その裏には努力、焦り、悔しさ、喜びなど、さまざまな感情が積み重なっている。
物語を読み進めるうちに、やっぱり涙が溢れた場面がいくつもあった。勝つ瞬間だけではなく、うまくいかない時間や迷いながらも走り続ける姿がとてもリアルで、胸に響いた。高校陸上部という一つの場所の中で、仲間たちはそれぞれ違う思いを抱えながらも、同じトラックを走り続けている。その姿から、強い希望を感じた。
また、この作品では人と人とのつながりの大切さも強く描かれている。仲間同士の友情はもちろん、ライバルとの関係や、支え合うチームの雰囲気がとても印象的だった。一人で走っているように見える短距離走でも、実は多くの人に支えられているのだと感じた。
さらに心に残ったのは兄弟愛である。兄の存在は主人公にとって大きな影響を与えており、その思いが走る原動力にもなっている。兄を追いかけ、乗り越えようとする気持ちは、単なる競争ではなく深い絆の表れだと思った。
この物語を通して、かけっこはただのスポーツではなく、人の成長やつながり、そして未来への希望を感じさせてくれるものだと改めて思った。高校陸上部の仲間たちが全力で走る姿は、読者にも前に進む勇気を与えてくれる作品だった。 -
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一瞬の風になれ 第二部 -ヨウイ-を読み終えたあと、胸の奥に静かな余韻が残った。
この物語で強く心を打たれたのは、「引退」という現実の重さだ。
走ることが当たり前だった日々が、ある瞬間から“過去”になる。その決断の裏にある葛藤や悔しさを思うと、思わず涙が溢れた。 競技の終わりは、ただの区切りではなく、生き方そのものと向き合う時間なのだと感じた。
さらに「怪我」や「事故」という避けられない出来事。
どれほど努力を重ねても、一瞬で道が閉ざされることがある。その理不尽さは残酷で、それでも時間は止まらない。だからこそ、仲間の存在が際立つ。
印象的だったのは、
会話はなくても良い、ただ寄り添う。
という在り方だ。
励ましの言葉がなくても、正解を示さなくてもいい。ただ隣に立ち、同じ空気を吸う。それだけで伝わるものがある。競技の世界は結果がすべてのようでいて、実は人と人との関係が支えになっている。
もし自分が同じ立場ならどうだろう。
仲間が苦しんでいるとき、余計な言葉を重ねるのではなく、黙ってそばにいられるだろうか。そして、その想いにきちんと応えたいと思えた。
走るのは一瞬。
けれど、そこで交わされた沈黙や涙は、ずっと心に残り続ける。 -
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主人公が生意気なのかカッコつけていて好きになれず、2/3くらいまでは音楽の本だからということだけで我慢して読んでいました。ところがです、核心部分が表に現れ始めた高円寺と新宿の夜から引き込まれ始め、翌日のおばあさんとの会話では涙が出ました。その後の父の部屋での場面は最初から心臓が押しつぶされてしまい、お母さんからの手紙を明かされてからは号泣でした。もちろんその後はずーっと涙目で読まされました。メシアンとBWV533を初めて聴いてみました。こんなマイナーな曲を高校生が部活で演奏するのかと驚きです。20回以上聴いてみましたが、バッハはまだ分かるとしてもメシアンは未だに"なぜこの曲?"という感じです。確かに少しロックっぽいかなとは思いますが。
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1〜3巻まで一気に読んだ。青春いいな〜
陸上の面白さが少しわかった気がする。特に神谷目線で語られるリレーの臨場感、心の声が漏れ出たかのような描写でその場にいるかのように感じられるのがすごい。
特に心に残ったのは、神谷が顧問の三輪先生に焦りを感じて相談に行った時の三輪先生のコメント
「俺はおまえらの夢までは面倒見ねえぞ。夢が実現するようにいくらでも手は貸すが、俺がおまえらの夢を先に見るようなことはしねえ。…(中略)…自分で夢を見ろ。でかい夢を見ろ。」
指導者ってこうあるべきだなって。三輪先生は自分も陸上に未練や、やりきれなかった悔しさがある中で、それを生徒に押し付けるのではなく、一歩引いて生徒が主体的に夢を持って、それを応援することに徹せられるって、すごいし、すごく難しいと思った。 -
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登場人物
今昔亭三つ葉
落語家。頑固で気が短く、すぐに角の立つようなことを言ってしまう
綾丸良
テニスのコーチ。吃音があり、本人もコミュニケーションに悩んでいる
十河五月
OL。顔立ちは整っているが、つっけんどんで口調もキツいために誤解されることも多い。
物語
「上手に話せるように、稽古をつけてほしい」良は友人の三つ葉相談しに来た。吃音のためにスクール生と円滑なコミュニケーションが取れず悩んでいるのだ。三つ葉は会話の教室に行くように勧め、付き添いで教室に行くようになる
ある時、寄席の席に仏頂面で座っている美人がいるのに気がつく。何とか笑わせてやる…と気になっていた矢先、会話の教室でその美人、十河とまさかの遭遇を果たす
お互いの口のキツさから始めは険悪だったが、良と十河に落語の稽古をつけることになる…
読後感
とても不思議な作品、口調に棘ありの曲者揃いのはずなのに、物語全体としてはとても温かい
それは、口の悪さの裏にある不器用さや秘めた本音が、読み手にはハッキリと伝わってくるからだろう
だから、登場人物はみんな、悪態をついて横道にそれながらも少しずつ前進しているのがわかるし、私自身みんなを好きになれた
人の温かさを多分に感じられる、また読み返したくなるような一冊 -
Posted by ブクログ
ネタバレ何年か前に読んだ『一瞬の風になれ』のインパクトを思い出し、手に取った一冊。
主人公の富山は、深夜ラジオのハガキ職人であるが、接触恐怖症に苦しみ心に大きな傷をかかえていた。
大学を休学し、深夜のコンビニでアルバイト生活を送る。そのコンビニを舞台に、鹿沢、佐古田、永川との交流を通じて、少しずつ困難を乗り越えていく、青春ストーリー。
私自身、深夜ラジオは聞かないが、富澤や佐古田の、そして筆者のラジオ愛が伝わってくる。
特に印象的なのは、p261の佐古田の言葉。「中学の頃、夜中にずっと眠れなくて、電気つけて本読んでると怒られるから、イヤホンでラジオ聞いてたんだ。お笑いの深夜ラジオが好きで、ジャンピングビーンって名前、よく聞いた。(中略)夜中にいつ起きてても、ジャンピング・ビーンが一緒にいてくれる気がして。ジャンピング・ビーンもどっかで起きてて、この番組聴いてて、つながってる気がしてた。」夜の中で、ラジオでつながる感覚って、とても素敵だなと思った。
青春を生きていた頃、誰もが感じたことのある生きづらさ、もやもや、葛藤。お互いがそれを埋め合わせるように、進んでいくストーリー。
読者である私まで、この4人と一緒に生きる仲間の1人だと思えてきて、「まだ読み終わりたくない」と久しぶりに思えた、とても良い作品でした! -
Posted by ブクログ
主人公の俺、という一人称で進められる小説。久々な感じで新鮮だった。そのせいかテンポもよく、他の登場人物たちもキャラが良い。はがき職人を題材にしていて、芸人のオールナイトニッポンの話などが細かく描写されている。私自身は聞いたことがないけれど、聞いているかのように感じるリアル感が、なせる技だと思った。同じ著者で、落語をテーマにした「しゃべれどもしゃべれども」という小説もあるが、同じように、題材がリアルだった。一つの題材に対して、すごく愛を持って取材されて、本にされてるのが伝わる感じがした。それは恩田陸さんもそういう感じがするけれど、佐藤多佳子さんはまた違ったテイストだと感じる。
また登場人物たちに会いたい、と思う小説だった。
個人的には佐古田が大好きになった。