俊也は、幼い日の桐を助けたことが縁で、妹・美姫と共に、佐倉家に引き取られた。
佐倉家は少し変わった感覚を持つ両親の家で、実子である桐と藤の双子。
それから、桐の誘拐をきっかけに引き取られた俊也と美姫。
そして、両親が早くに他界したため、引き取られてきた桐と藤の従兄弟の寛吉。
多忙な両親は
...続きを読むほとんど自宅に帰ってくることがないため、その五人の兄妹で日々、生活をしていた。
その中でも、誘拐された直後に、俊也を引き取るように言って聞かなかったという桐は、俊也に対して傍若無人で、あれこれ無理難題をふっかけてきては、俊也を振り回す。
桐は「美姫のことが好きだ」と言ってはばからないのだが、「高校卒業するまで美姫に手を出さない」と約束していることを理由に、俊也にあれこれお願い事をしてくる。
けれど、「好きだ」と言われている美姫は、一切本気にしていない様子で取り合わず、また、桐も桐で、それに傷ついた様子はない。
それどころか、“美姫に惚れてる”はずの桐が俊也に向ける言葉や仕草に俊也がドキドキし始めて――
という話でした。
俊也は一度、家族が壊れる経験をして施設に入っていたから、「家族として」とか「家族にならなきゃ」というものに(本人の自覚がないままに)ものすごくこだわっていて、なかなか自分の希望とかこうしたい、みたいなのを言い出せずにいる――という感じでした。
最後は自分の気持ちをはっきり伝えだした桐に観念してハッピーエンド。
すごくゆったりしてて、穏やかで、あくせくしたところがないので(じりじりとした焦燥感はありますが)、とってもいい話でした。
「家族」のあったかさと、「兄妹」の良さを再認識したのと。
そこから踏み出すことの難しさも感じました。
ほっこりした恋愛話が読みたい人にはオススメします。