溝口敦のレビュー一覧
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Posted by ブクログ
供給サイドの論理を基に危険ドラッグの全貌を明らかにしようというもの。危険ドラッグは単価が低く暴力団はほとんど参入していない。経営する者はたいてい全身が裏DVD屋、アダルトショップ、大人の玩具屋など、人種としては半グレかカタギ。儲かると思えば飛びつき、問題が起こればすぐに転業していくような場当たり的輩である。製造物責任への自覚はなく罪悪感も乏しい。恐れるのは前の製品より効かないことであって決して安全性ではない。加えてたいていの販売業者は責任を回避するため、その薬物が体内に摂取する物であるとは決して言わない。したがって一日当たり、一回当たりの用法や用量、摂取回数なども記されてはいない。警察や麻取の捜索を恐れるため、可能な限り手がかりを与えないという制約の中で危険ドラッグは店頭に並べられているのである。皮肉なことに覚せい剤や大麻といった違法薬物は長期間乱用されてきた歴史から危険情報がある程度知られているが、いたちごっこの中で新製品を生み出し続ける危険ドラッグは症例もなく何が起こるかわからない。普通の薬であればとてつもない研究費と年月を費やし作られるのに、危険ドラッグはいい加減な薬学知識をもって中国の製薬メーカーに発注されるだけ。げに恐ろしきことかな。
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Posted by ブクログ
起訴も逮捕もされないでのうのうと暮らしている
オレオレ詐欺などをやった「詐欺の帝王」がいるそうで、
その男と著者が接触し、詐欺の手口やなれそめ、
どういう人物なのかなどについて明らかした本。
その「詐欺の帝王」は、
本書では本藤という仮名で書かれていますが、
ちょっとネットで調べると工藤という男にたどりつきます。
これもまた、実在の人物説、架空の人物説があり、
お互いに工作員呼ばわりして混沌としていたりします。
たしかに、本書に詐欺のシステムなどを語った本藤は、
なぜ表に出てきたのか信じがたいところで、
すべてノンフィクションではなくて、
フィクション仕立てで詐欺の実像を暴いた本なのかなという気もしました。
こういう人物がいたほうが、えたいのしれない裏の世界の詐欺世界に対して、
逆に安堵の気持ちが持てるという人も多いような気さえします。
さてさて、
ヤミ金のシステムから換骨奪胎してオレオレ詐欺が生まれたとのこと。
それも、半グレ集団がやっているそうです。
暴力団は年々衰える傾向にあるようだが、
半グレ集団は勢いを増しているという。
突きつめると、現代の雇用環境の劣悪さが詐欺の世界を肥沃にしているんだとか。
倫理道徳がすたれて、そんなのどうだっていいとして生きている人々が多くなり、
雇用環境が悪化して、ワーキングプアだとかネットカフェ難民だとかになるくらいなら、
違法でも他の人を食い物にして生きてやるという、
万人の万人への闘争みたいなかたちになっているように見えてきます。
前に『キャバ嬢の社会学』を読んでいて、
オレオレ詐欺などで儲けた若者が来店して
大金を落としていく時期があったというようなのがあったけど、
この『詐欺の帝王』にもそんな記述がさらっとあって、
やっぱり詐欺で儲けた金をキャバクラなんかに落としていたようだ。
そういうところから検挙できないのが、
たぶんに大金を落とすものをかばう金目当ての人びとの
欲望のためなのだろうと思いますし、
終章にもそのように書かれていた。
本藤がオレオレ詐欺の黒幕ということなのだが、
彼は六大学出身でイベントサークルを仕切っていた人。
そのあたりの事情をしるにつけ、彼の企画したイベントには
スポンサーにつく大企業がいたりして、
暴力団にも通じていたと言う裏の事情も考えると、
ちょっとしたカオスになっていたなと思った。
学生時分からこうやって金もうけの世界に足を突っ込んで
自分たちのメリットを活かして金を引き出す方法を
血肉化させていった人びとを企業は将来、
自分たちの会社などの利益を第一とするという意味での
健全な金もうけの道を進むことを嘱望していたのだろうけれど、
実際の本藤はもっと姑息な人だったのが正体ということなのだろう。
これはなにも本藤にかぎらず、イベントサークルを仕切っていたような人は
多かれ少なかれそういう気質だったのかもしれない。
まあ、姑息というか、倫理観が薄れていて、
さらに個人主義(利己主義)で、という。
そういう土壌から出てきた人としてみると、
ホリエモンさんなんかの見方もなるほどなと思える部分もありそうな気さえする。
というか、そういう人とホリエモンを比較するなという感じもしますが…。
ちなみに、ぼくが学生時分にも、
大学に遊びのためや飲み会のためサークル、
イベントサークルがあったけれど、
なんだよそれと思って一蹴に付していた。
見るからに、悪徳、反モラルの温床という気がしたから。
時代はちょうど本藤と同世代になるかな。
逆に、そういうのを気にしないで楽しむ人が主流になって生きるようなのが
この世の中なんだろう。
こういうのにも、
生産物や購買物、贈与物などにその送り手・作り手の顔が見えるというか、
存在を感じるような社会は有効だと思うんですよね。
あたたかみを感じる社会。
包摂性のある社会。
今の社会には包摂性がないから、
詐欺をするような反社会的な半グレ集団が勢いをつけるともいえる。
というわけで、
ふだん読まない種類の本で、
さらに内容からして気が引き締まる思いがしました。 -
Posted by ブクログ
日本人は「ヤクザ」にえもいわれぬシンパシーを持っている。それはおそらく、国定忠治や清水次郎長の物語に始まり、岩下志麻や片瀬梨乃が演じていたような任侠物映画などに影響されてのことだろうけど、筆者は極めて冷静に書いている。暴力団にはある程度の美学があるのは確かだが、それはほとんど実践されていないし、今までのシノギで生活できなくなった暴力団は、今後犯罪者そのものになっていくだろうと。筆者は一貫して「暴力団」と呼び、「ヤクザ」や「極道」とは記さない。
そして、筆者は暴力団対策法にも批判的だ。暴力団の定義付けを図ることは、同時にその存在を許容することにもつながる。実際に今効いているのは、各都道府県の暴力団排除条例だ。存在自体は認めつつ合法的シノギからは排除を図る。その結末は即ち「犯罪者集団と化していく」ことなのだろう。
そして、ヤクザ退場後の裏社会について。ヤクザが日本の裏社会の秩序を保っている、そんな現状肯定的な見方には筆者は与しない。確かに半グレや不良外国人のような連中が増えて、振り込め詐欺は増加の一途となっている。ヤクザは自分の縄張りを犯されることには敏感だが、義侠心を発揮して他の犯罪分野を取り締まるようなことはしない。そんな風に、妙な期待値を排除してヤクザ即ち暴力団を見るに、最早衰退は必須、というのが筆者の結論なのだろう。 -
Posted by ブクログ
前著の「暴力団」の続きで、暴対法と暴排条例が暴力団に与えた大きな影響を詳しく説明している。これらの法律と条例の解説、一般人への影響、警察の対応や振る舞い、暴力団の今後についての考察などを記しているが、「前にも述べたように」と繰り返しながら説明を進めるので分かりやすく理解しやすい。
暴力団はこの法律と条例で困窮してきていて、社会との関係も変わってきているが、このまま暴力団がなくなることはないだろうと筆者はみている。それは、昔から持ちつ持たれつの関係がある警察が困るからだと喝破する。
このように現在の暴力団をとりまく状況を整理したうえで、筆者は暴力団は他国のように法律で非合法化すべきと主張する。非合法化で予想される問題も挙げての主張であり、説得力のある筋の通った議論が展開されている。 -
Posted by ブクログ
暴力団に関するノンフィクションライターの第一人者の筆者による、暴力団とは何かを記した入門書である。構成員など言葉の説明から、組織紹介、活動実態、外国のマフィアなどとの比較、法律の影響や警察との関係、活動の盛衰など、暴力団の全貌がおおまかにつかめる内容で、たしかに入門書である。
2011年発行の本書は、島田紳助引退事件など記憶に新しい事件についての記述もあり、3年前の書ではあるが古さは感じない。それだけ、暴力団に関する報道が少なくなっているのだろう。
筆者は暴力団の衰退と半グレ集団の伸長を予言しているが、その通りであると思う。日本の犯罪集団の形態が大きく変わろうとする現在において、その理由が分析されている本書は貴重だと思う。
暴力組織に興味がある人は少ないだろうけど、本書は決して読みにくい本ではない。残虐で不快を感じる記述はなく、誰でも読める一般人むけの書である。