上原善広のレビュー一覧
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すごく良かった。
被差別部落の出身である著者が、「被差別の民の知恵と結晶」である「むらの食べ物」を通じて、主に海外の被差別民を尋ね歩いた記録。
著者の、人に接する姿勢がとてもまっとうでほっとする。
「被差別者に対する配慮」という特別なものではなく、ただ当たり前に礼を尽くす。
食べ物を残さないようにおなかをすかせて行くとか、読者が取材対象に悪いイメージを持たないよう気を配った書き方とか。
してくれたことやされていること、ちょっとしたことにきちんと気づいてさりげなく拾っていく。
インタビューを受けた人が軒並み「(今では)大した差別はない」と言い、昔の差別は(ひどすぎて)語れないと答えるのが印象 -
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デビュー作「被差別の食卓」から10年後、今度は日本国内の被差別のグルメです。
ホルモンやサイボシ、あぶらかすなどなんだかんだ全部食べた事あるので、それくらい一般の中に浸透しています。もはや差別も相当薄れていると思うし、自分自身なんとも思っていませんが、差別された側は忘れられないし、いつまでも警戒する気持ちもわかります。
アイヌ、オロッコ(ウィルタ)ギリヤーク(ニブフ)の部分がとても印象的で、とても有名なアイヌに関しては知っていますが、後述の二民族に関してはほぼ知らないし知られていません。直木賞受賞作の「熱源」を読むとどのような扱いだったのかよくわかりますのでお勧めです。
第二次世界大戦後に日 -
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被差別部落出身ということでかなり突っ込んだところまで取材して、毀誉褒貶が激しいノンフィクション作家ですが、その無頼な佇まいになんとなく気を惹かれてしまいます。
お遍路についてまた違った角度から書いており、正直目からうろこでした。もちろん物事の一面でしかないのはよく分かっていますが、昔はホームレスのセーフティーネットになっていたという事だったんですね。
20年前くらいにお遍路ブームが有ったと思われ、僕自身耳にする機会もよくあったし、自転車旅で高知、愛媛を通過した時に何人も見かけたので近しい気持ちもあります。どちらかというと自分への兆戦という側面が多かったはずで、信心というよりはアスリートな気持ち -
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文句なしに面白い。
ここまで自分の体、人間の体を研究したアスリートは珍しいのではないだろうか。
トレーニングの解説書としてもよくできていて、「世の中の常識を徹底的に疑え」と試行錯誤を続けたノウハウや方法論は、現役アスリートにとっても有用だ。
「ウェイトは筋肉を付けると同時に、神経回路の開発トレーニングでなければならない」とは、目から鱗。
筋トレしすぎてスピードやキレがなくなったプロスポーツ選手を例に挙げて、スポーツ選手に筋トレはNGなんて言説を聞くのだが、単にやり方を間違えただけなのだろう。
ストイックな競技生活とは裏腹に、私生活は奔放で裏表のない性格のようで、いわゆる“体育会”とは -
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個人的に上原善広いブームが訪れたかもしれません。ジャーナリストとしては無責任な行動や、クズな言動に辟易しながらも、他の人の文章では見る事の出来ない生々しさが惹きつける要素ではないかと思います。
被差別部落出身であることを隠さず、それを強みとして入り込みにくい部分までぐいぐい入り込んでいく力技で、今回は被差別者達のソウルフードを追いかけて行きます。
各国で長年差別されてきた人々が、命をつなぐために食べて来た食べ物。それは大多数の人々が捨てたものを工夫して美味しく生まれ変わらせた、魂の籠った食事。まさに「ソウルフード」です。
やはり食肉に関わる事が多いからか、臓物料理がとても多いですね。日本の屠畜 -
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自分自身がアウトロー気味のジャーナリストである上原善広さんが、伝説のやり投げ選手の溝口和洋さんを一人称で描いたルポタージュです。
18年にも渡って取材を行った集大成として、納得の名作に仕上がっています。
そもそもやり投げにも陸上にも全く興味のない私が読んでも、ぐいぐい本に引っ張りこまれて、溝口選手を隣に感じる位の魅力が有ります。
アスリートとしては破天荒というのは、飲む打つ買うを全てしているという所が大きく、言動が乱暴で野性味に溢れていたという事で誤解されていたのだと思います。
これを読むと誰よりも練習と研究い明け暮れ、既存の知識ではなく自分で気が付いた事をどんどん肉付けしていく事で、新たな理 -
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上原善広『路地の子』新潮文庫。
『路地』とは非差別部落のことであり、本作は『路地』出身の著者が自身の父親の半生を描いたノンフィクション小説である。
梁石日の『血と骨』にも似た『路地』の世界。遥か昔から固有の土地に根付いて来た差別という風習。その土地に産まれたからには逃れられない宿命は、今の時代にはそぐわないはずなのだが、何故か途切れることなく永遠と続く不思議……
大阪の『路地』に産まれた龍造は、何者にも負けないと時には暴力を振るい、コッテ牛、突破者と呼ばれながらも、自らの腕一本で食肉業界を生き抜いていく。力強い、激しい生き様も、そうせざるを得ない理由がある。
本体価格590円
★★★★ -
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俗説で言われるところのホオルもん、ホルモンは実は被差別側からの巧妙な印象付けにより、その美味を隠しつつ独占して来たのでは。といううがった見方はないのだろうか。それほどホルモンは旨いし、今や正肉に比べても高級食材ともいえる。
フライドチキンしかり、差別の歴史はその歴史に反して余儀なくされたにしてはあまりにも美味な着地をしている。
多少動物臭が臭かったり、痛みかけとしても、絶妙なグルメ点があったといえる。
本来美味とはそういったものではないか。
辺見庸の「もの食う人びと」までの体の張り方がないのと、結果こちら先達のほうが美味そうだったわけだが。 -
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私が通っていた小学校には同和地区がなかったため、被差別部落という言葉すら知りませんでした。中学生になったとき、1学年に10人はいるかいないかの割合で、英数国の主要3教科の授業だけ別室で受ける生徒がいる。促進学級と呼ばれるそのクラスでは、被差別部落出身の生徒が先生と1対1で授業を受けていました。親が十分な教育を受けられなかった影響が子どもにも及び、いわゆる勉強のできない子どもたちの遅れを取り戻すいう理由で。
路地とは、被差別部落出身の作家・中上健次が部落を表現するために用いた言葉。本書の著者もやはり大阪の被差別部落出身で、日本中の路地を巡る旅を続けています。
保育園に行くのが嫌で路地から脱走