著者は自分の地元でよく食べていた「あぶらかす」「おでんうどん」などの食べ物が被差別部落に特有のソウルフードだったということを知る。
そうした食べ物のルーツや分布を調べていくと、いろいろと興味深いことがわかってきた。
○肉の内臓系が多い
○食べにくいものを工夫して食べられるようにしている
○カロリー
...続きを読むが高い
○九州と大阪など離れた被差別部落間で婚姻関係を結ぶことが多く、このため遠く離れた地で全く同じ食べ物が残っていたりする
などなど・・・。
そのうち、作者の興味は海外へ。
フライドチキンにナマズフライなど、海外の「被差別の食卓」にもそれぞれにいろんな歴史や背景がある。
単に被差別というよりは「貧民の食卓」な部分もあるが、それはこのさいヨシとしよう。
・・・と、ここで私なぞが想像するありがちな展開は「いかに被差別民が理不尽な逆境を乗り越えて厳しい環境で暮らしてきたか、その労苦に思いをはせる・・・」という話なんだけど、この本はいい意味で裏切ってくれた。
著者は自分のルーツや被差別民への思いはあるにせよ、単純に「食べることが好き」なのだ。
食べることが好きなので、食べられないものを食べられるように工夫して、しかも美味しい!となると、それだけで嬉しくなるようだ。
この気持ちわかるーー。ww
世の中への怒りや過剰なシンパシーを排除して、淡々と食べ物を語る作者に、同じ食べ物好きとして共感するし、被差別部落問題を本質的なところで考えるきっかけを与えてくれた気がする。
私は「さいぼし」も「あぶらかす」も全く知らずに育って、内臓といえばハラミとレバー(でも好きじゃない)くらいしか食べられないんだけど、なんとなく「美味しそう!」と思えたのは間違いない。