安東能明のレビュー一覧
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静岡出身の著者が、戦後の静岡で起きた「二俣事件」を題材にした事実に基づく小説。
赤松刑事の自白強要が強烈に伝わってくる。
そして、犯人捏造がこんなにも軽く行われていたということに愕然となる。
著者自らが、取材しながらのストーリーになっているので史実では…と感じる。
この事件は、無罪判決が出るまで7年かかったとある。
ほかにも静岡県では、幸浦事件、小島事件、島田事件、丸正事件、そして袴田事件はよく知られていると思う。
拷問捜査で冤罪をつくりだすというだけではなく、警察内部の体質にも問題があるのだろうと感じる。
最後にジャーナリスト・清水潔との特別対談も読み応えがあった。
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安東能明『蚤の王』中公文庫。
実在の冤罪事件をテーマにしたノンフィクション風警察小説。
著者の安東自身が取材を行うという描写もあり、創作小説をより一層ノンフィクション小説の側に寄せている。なかなか面白く、読み応えのある骨太の小説であった。
巻末には北関東幼女連続殺人事件の真相に迫るノンフィクションを執筆し、足利事件の冤罪を証明してみせた清水潔と安東能明の対談が収録されている。
拷問による取調べにより幸浦事件、二俣事件、小島事件と次々と冤罪を作り出した悪徳刑事の赤松完治のモデルは悪名高き紅林麻雄であろう。最近、無罪が確定した袴田事件を始め、静岡県で冤罪事件が多いというのは非科学的或いは非 -
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警察モノ、事件モノの小説である…
山梨県を舞台とするということになる小説だ。実は自身では山梨県を余り知らない。が、それでも物語の中での事件の舞台としてリアリティーを持って迫るものは在った。
プロローグに、暴力団抗争という不穏な事態の最中、街で発砲事件が在って、女性が救急搬送されるという物騒な場面が描かれる…そして以降、物語の本編が始まる。
県警の捜査二課に課長として赴任したキャリアの仁村は、着任早々に大きな事案の相談を受けた。県知事が収賄に及んでいる可能性が在るので内偵を進めるという相談だった。
収賄側の県知事、そして贈賄側の会社の代表者の関係性、贈収賄の事実を明らかにしようとする訳だが、内偵 -
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ネタバレ柴崎令二シリーズ第3弾、事務方で出世を狙う柴崎が、元上司の陰謀によって左遷させられた警察署で、捜査現場に駆り出される…的シリーズである。
が、今回の主役は柴崎というより、この巻から登場した、今時の女性警察官高野巡査。警察手帳を紛失するというとんでもない登場の仕方をする第1話から始まって、彼女の成長激で最終まで話が進むという展開。一種の成長譚で、その手の話は好みなんで、楽しかった。
が、それだけで☆5つなのではない。この本のスゲーのは表題ともなった最終話「朋連れ」のラスト3ページほどである。興ざめ警戒で多くは書かないが、このどんでん返しは、中年以降には刺さるぞ! -
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撃てない警官続編。
柴崎警部はまだ所轄にいた。前作で警視総監直属の花形セクションから左遷させられたのだったが、春の異動内示はなく警務課の課長代理のままだった。
今回、新しく同年代バリバリのキャリアの女性署長を迎え、補佐していく。
捜査の経験はほとんどないが、柴崎警部は管理畑にいるのがもったいないほどセンスがある。
そして補佐が絶妙だ。出過ぎず、立てるべきは立て、ここぞの時は譲らない。
「本来なら我々だけでこの事件は解決できたはずです。しかしそうはできなかった。その原因に、思いを致すべきです。」
これ。痺れましたわぁ。
昔のセクションに返り咲いてもほしいけど、もう少しここで活躍する姿をみ -
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過去の3作品は、3冊の何れもが「短篇、中篇という体裁に纏まったモノが積上げられ、1冊としての一定の纏まりになっている」ような構成であるのだが、本作『広域指定』は1冊丸ごとで1つの物語という体裁になっている。そういう表現スタイルの微妙な違いは在るが、シリーズの魅力は損なわれておらず、寧ろ過去の各作品に登場する主要視点人物達の活躍等が確り愉しめて好い。
「過ぎる」程に意外な顛末が明かされる…最後まで面白い!!本作は、“推理”の面白さと、柴崎警部を始めとする劇中人物達の“人間模様”が巧く併存しているのが好い!!
「短篇、中篇という体裁に纏まったモノが積上げられた1冊」が「1冊の長篇」に“発展”した感 -
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戦後に起きた冤罪事件を題材にした小説
作者の後書きにもあるとおり、ほぼ史実をベースに書かれているようです。
冤罪とはたった二文字で表される言葉ですが、冤罪は一人の人生を台無しにしてしまいます。
人はどうしても嘘を吐きます。
犯罪者という属性上やむを得ないと思います。
警察や裁判官はその嘘を見抜かなければなりません。
しかしその嘘を見抜く為に嘘をついてしまったら犯罪者と同じで、犯罪者が被害者から未来や金品を奪うのと一緒で、国家権力が冤罪被害者から未来を奪ってしまいます。
根幹には間違った起訴が許されない事と警察や検察の官僚制度というか一種のポイント制度のようなものが、冤罪事件を産み出して