新庄耕のレビュー一覧
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新庄耕らしい現代日本で実際にありそうな小説である。ブラック労働環境が主題だが、主人公は労働者ではなく、彼らの味方である監督当局の役人であるところが新しい。
その役人の活躍というか仕事を、4編の物語を通して描いている。各編とも、物語の結末を最後まで書かずに終えており、その余韻は読者に任せるのも嫌いではない。
でも、これらの小編を通して主人公が変わっていく様は、どこか既視感があり、もっと尖ったストーリーが欲しいと思った。ブラック労働ぶりにも負けないような、個性というかシナリオがないと、小説なのに現実に負けてしまう。
まだまだ視点の独自性が他の追随を許さない作者なので、今後の作品のさらなる発 -
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私の勝手な決め付けで思い込みですが、労基署へ駆け込む人は大雑把に分けて二通り、「つらすぎる思いをして、悩みに悩み抜いて相談しようと駆け込んだ人」と、「適当に働いていたら不愉快な待遇を受けたから、ダメモトでチクってやると駆け込んだ人」がいるのではないかと。
本当に気にかけなければならないのは、誰にも相談できず、もちろん労基署に駆け込むこともできず、たったひとりで悩んでいる人。
労基署のことも、本作に出てくるブラック企業に勤める側の社員同様、お役所だと決め付けていました。でも、どこの職場にもいろんな人がいるように、お役所仕事に徹する人もいれば、どっちがブラックだと思うほど働いて、どこにも声を上 -
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100億円詐欺を成し遂げた地面師たちが、そこへ転がり落ちていくまでを描いた前日譚の短編集です。
読み進めるうちに引っかかってくるのは、詐欺の巧妙さよりも、もともと“普通だった人間”が一線を越えていくまでの距離の近さでした。
司法書士や手配師など、それぞれの過去が淡々と描かれていくことで、悪の側に立つ理由が少しずつ見えてくるのが嫌なリアリティとして効いてきます。
一方で、短編集ゆえに一つ一つの話はあっさりしていて、大きな驚きやカタルシスを期待するとやや物足りなさも感じました。
それでも、読み終えたあとに残るのは派手な犯罪の印象ではなく、「自分でも踏み外し得るのではないか」という現実的な不安でした -
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ネタバレ街の光 辰(刑事)
辰
藤森
代々木署。
ハリソン山中
ランチビール 後藤(法律屋)
後藤
アミ
事務員。
所長
洋文
都内の大手事務所で華々しく司法書士のキャリアをスタートさせた所長の息子。
ラン
穂香
後藤の一人娘。
景子
後藤の妻。
ハリソン山中
剃髪 川井菜摘(尼僧)
川井菜摘の母
子宮頸癌のステージ2で入院中。安土桃山時代からつづく寺を尼僧として引き継ぎ、今日まで守ってきた。
川井菜摘
母の体調を考慮して、寺の宗教法人の代表役員に選任された。
カズキ
川井和希。菜摘の年少の夫。女性専用の更生保護施設の運営をまかされている。
マサル
母方の従伯父。企業勤 -
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ネタバレ後藤
元司法書士。
ササキ
島崎健一のなりすまし役。
拓海
三十七歳。親族で経営する会社が倒産。五十名ほど従業員のいた会社は、医療機器や医療消耗品を取り扱う専門商社だった。拓海も大学を卒業してからいち営業員として勤務していた。前職はタクシドライバー。出張型風俗店のドライバーをしていたがクビになる。
ハリソン山中
地面師集団のリーダー。昭和三十年に島根県の商家に生まれる。高校卒業後に暴力団組員となった。三十歳のときに破門される。
島崎健一
ターゲットとなっている物件の所有者。七十八歳の男性。数年前に妻と死別してからはひとり暮らしをしていた。昨年の夏に都内の老人ホームに入居。
麗子
なり -
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変わらず皆が酒肴を楽しんでいた 無意識の内に肺に溜め込んでいた呼気が微かな擦過音を立てて鼻から漏れ出る 渓谷に立ち込める暑気に炙り出されるように蝉時雨が注ぎ 芳醇なピートが香る酒を口の中で転がしつつ 点在する池塘の水盤が澄み切った青淡の空を映している 胸の空隙が埋まるような事は無かった いつか地面師という仕事そのものに淫するようになっていた 狷介な性格な上人嫌いで 胸の引っ掛かりを自覚していながら、それを放置したばかりに取り返しのつかない事態に陥り、解決の道を完全に断たれた事もまた、一再では無い。 波状雲を浮かべた淡青の空に吸い込まれていく 闇夜を纏って爛然と浮かび上がる東京湾の借景が広がって