手塚治虫のレビュー一覧
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ネタバレ『火の鳥 鳳凰篇』
我王と茜丸、何もかも対照的な二人の主人公。
「鳳凰篇」が極めて人気が高いのも、この徹底的なコントラストをなす二人が、後に宿命的なライバルとして相まみえる所にあると思います。
我王は、容貌も心根も醜く、世の中を恨み、強盗・殺戮を繰り返しました。
ですが、速魚や良弁僧正との出逢いを通して、人間の心と生きる意味を取り戻してゆきます。
才能を開化させ、聖者の風貌を具えますが、悪に対する怒りは失いませんでした。
一方の茜丸は、容姿端麗・清廉潔白な青年です。
純粋な心と、ひたむきに没頭する資質とで、絶望さえも克服してゆきます。
愛する女性とも出逢い、理想的な人物となるはずでした。
そんな彼も哀れ、権力の渦中で自己を見失ってゆくのです。
このように『火の鳥 鳳凰篇』では人間の善と悪も、二つの典型を通して描かれています。
この二人が仏師として彫刻に生涯を捧げるという、一つの接点を持つに至ります。
そして、東大寺大仏殿の鬼瓦造りで、互いの技量を競うことになるのです。
物語中、茜丸と我王それぞれに「火の鳥」は現れ、彼らの心に働きかけます。
人間の業、輪廻転生、永遠の生命······。
あまりにも壮大なテーマが、対照的な二つの生涯、二つの結末を通して展開されてゆくのです。 -
医療漫画の金字塔
懐かしいですね。この少年漫画、半世紀前に「週刊少年チャンピオン」に連載されていましたし、山上たつひこ先生の「がきデカ」同様、同雑誌の看板と言っても決して過言ではありませんでしたね。「医療漫画」と言う言葉を聞けばこの「ブラック・ジャック」を逐一連想する人が圧倒的に多いでしょうし、この少年漫画、「鉄腕アトム」や「リボンの騎士」に比肩する故・手塚治虫先生の代表作と言っても決して過言ではありませんよね。主人公の「ブラック・ジャック」と言う「医師免許も博士号も一切持たない敏腕外科医」が幼い頃に瀕死の重傷を負って「本間丈太郎」と言う外科医に救出されたと言う壮絶なあらすじには勿論ですが、主人公が「輸血抜きの外科手術」に成功するシーンや「山之内」と言う若手医師が自らの尊い命と引き換えに「生まれて初めての外科手術」に成功するシーン、そして、主人公が助手の「ピノコ」と言う女の子が「風邪薬」と勘違いして誤飲してしまいました「青酸カリ入りカプセル」を取り出すのに成功するシーンにもとても感動しました。
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▼娘⑻に手塚治虫を好きになって貰いたい完全に親のわがままエゴだけど活動の一環。そんなエゴを持つくらいだから、僕は手塚治虫さんが子供の頃からずっと好きです。小学生の頃に「ドラえもん」→「藤子不二雄」→「トキワ荘」・・・みたいな道のりを経て手塚治虫大陸に上陸。小学生高学年から中学生にかけて、丁度時代が「過去の名作漫画をハードカバーで再版して懐かし世代に売る」というビジネスが始まったお陰と、あとは手塚治虫漫画全集講談社の恩恵で、初期SFからアトム、ブラックジャック、ブッダ、火の鳥・・・ほぼほぼ網羅していたんです。どろろ、ワンダースリーは当然のこと、キャプテンKenとかサボテン君あたりまで。
▼というわけで「ふしぎなメルモ」「リボンの騎士」がうまくいったので、「エンゼルの丘」。ただ、これは実は初読でした。少女漫画だからな・・・という偏見があったんでしょう。読んでみて、これぁ、オモシロイ。さすが手塚治虫。
▼謎の島の王女様が、色々あって日本にやってきたら、瓜二つというか割らずそのまんま、というそっくりさんがいて。これが日本のお嬢様。この二人が入れ替わるんです。当然ながら王女さんは陰謀に追われていて、日本のお嬢様にも。恋の行方と重なって、島から日本へと海をかける大スペクタクル冒険ロマン。そして事件の中心主人公は常に少女なんです。これはたまりません。
▼娘に読ませたところ、これが潔いくらいにどハマりしてくれて。この「エンゼルの丘」を換骨奪胎してノベライズした、という青い鳥文庫の「海色のangel」(全5巻!)まで買い与えたら読んでしまいました。2023年は娘が青い鳥文庫で活字本を読むことが始まり定着した1年間でしたが、その大事な一角を担ってくれてました。手塚さん感謝。そういう感謝の意を込めると、満点以上の読書でした。 -
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悪夢のようなお伽話。
民話風から現代劇からSFまで、装いは違えど地球人が抱える愛と業を描いた短編作品群18篇。
まず巻末解説に曰く『空気の底』というシリーズタイトルは地球上が舞台、という事を示唆したもの。
むちゃくちゃカッコいいまえがきがぶち刺さる。
「金魚鉢の底はいつも水がよどんで
たべ残しや糞や泥やらでどろりとにごっている
われわれの世界が
犯罪やさまざまな悲劇でうずまいているのも
それと同様に
深く沈んだ大気の底だからかもしれない
人間の一生のあいだにほんのわずかでも
清い空気の中のやすらぎを求めないものが
いるだろうか?」(p6)
いいですねー。
人の世は綺麗事だけでは済まない、悪意だったり反目だったり汚濁だったりに満ち満ち溢れているからこそ、稀少な人の善意や友愛や清廉な振る舞いに飢えており、そういったストーリーに飛び付いてむしゃぶりたかり消費し尽くして飽きたらスッカリ忘れ去ってしまう、その豺狼のような姿こそまさに「たべ残しや糞や泥」に喩えられる人間の営みであり、一方で人間を人間たらしめている要素なんだなと思う。
どの話も短いながら強烈に印象深いが、特に好きなのは
〈カメレオン〉…変わり身の早い節操無し・自分で自分は最高に賢くイケてると思っている男の話であるが、二転三転する展開と先が読めないミステリアス、男が枠線を齧り出すコミカルまで描きつつのラスト。何ともおぞましい結末。
〈ロバンナよ〉…冗談めかしたタイトルとあらすじだが怖い。さあ、本当にロバと小栗夫人の精神は入れ替わっていたのか?小栗が真の変態で奇人の妄想家だった可能性は?人のかたちをしているからといって人であるとは限らないという問答のような掌編。
〈帰還者〉…作品集の大トリを飾るSFホラー。ここで触れられる「宇宙平和コンベンション」とは何の示唆だろうか。この作品が発表された70年代初頭といえばベトナム戦争とか安保闘争真っ盛りであるので、近い年代で開かれたそれらしいセレモニーとしては「1970年大阪万博」が当てはまるのではないか。いかな巨費を投じて世界調和の式典を開こうとも、それだけで人類がみな進歩出来るのであれば世話ないというものである。「宇宙からの性病!?」(p382)というパワーワードに笑っちゃうけど当時は梅毒が日本でも大流行していたそうなのであながち笑ってもいられないネタなのかも。
読み応えたっぷりの一冊。
じつに良かった。
6刷
2024.1.4 -
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遺伝性疾患も
ピノコの白血病発症のエピソード、これ本当は一卵性双生児間で骨髄移植をしないとダメでしょう。実は時折、こういう例があり、本格的な症例研究書みたいな本も読んでいます。(連載時も医学生から色々と指摘されたとか)
登場人物の詳細(いわゆる手塚スターシステム)をまとめた本もあって、手塚御大、過去の主要作品等、全部覚えていたのでしょう。
公害に関連したエピソードや乳児をコインロッカーに、というような、世相を反映した作品も多いです。BJなんだかんだ赤ひげ化していて、メンタルケアもかなりしっかりしています。 -
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言わずと知れた天才外科医
外科手術の出てくる医療ものマンガ、これがやはり今でも日本のマンガでは代表作の1つで、この作品のフォロワーは多々いるでしょう。(ドクターXなども当然そうでしょうし)
私の年代だとBJは単行本で概ね読んでいます。学生時代、古書セットでも揃えましたし、文庫本もあります。
豪華愛蔵版のハードカバーも表紙が気合い入っていますし、手塚御大が亡き後に初めて読む読者とかにはこれが入門作品としてベストでしょう。
登場人物もいちいち挙げませんが、手塚ファンなら元ネタ、誰かと気づくでしょう。
週刊連載で毎週これを描き、なおかつ他にも優れた作品を執筆した、日本のマンガの神様、です。是非是非、読んで欲しいです。(NHK-BSの特番でもこの作品が1番人気でした)