ダロンアセモグルのレビュー一覧

  • 自由と国家 下 繁栄する国 衰退する国

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    自由と国家を国家の力と社会の力の均衡で説明しようとする試みの下巻。
    上巻はより分かりやすいモデル。
    過去の典型的な事例や、過去から引き継いでモデルが説明しやすい事例だったが、下巻はより複雑な状況について、モデルを適用して説明しようと試みる。

    本書の半ばくらいまでは、政治経済に不具合が生じたまま解消に至らなかった事例を様々にモデルを使って説明するが、中盤以降は、回廊の外から回廊内に入り持続できている例(日本はこのモデルで説明された)や、社会福祉の観点から最も成功した北欧諸国がどうやってそれを成し遂げたかを説明している。
    そして最後の例を引き合いに、現在の社会たちはこの後、何に気を付けて社会を構築すればよいかを論じている。

    出てくる社会
    ・ドイツ(ワイマール共和国、ナチスドイツ、ドイツ連邦)
    ・ソ連、ロシア
    ・南米諸国、グアテマラ、コスタリカ、コロンビア、アルゼンチン
    ・アメリカ
    ・サウジアラビア、ナイジェリア
    ・南アフリカ、トルコ、日本、スウェーデン

    上巻に比べて、より概念が複雑になり、関係する影響因子も増えてくるので、頭が正直ついていかなかった。
    それでも、概念と構造が少しでも理解ができてとてもタメになったと思う。

    読む方も苦労するが、本書のためにかけられた労力は途方もなく膨大であり、純粋にその熱意と苦労に敬意と謝意を示したい。(参考文献だけで50ページのリストに上る!!)

    個人的な感覚だが、下手な新書やビジネス書30冊分くらいの価値があるような本だと思う。

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    2026年02月14日
  • 自由と国家 下 繁栄する国 衰退する国

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    ノーベル経済学賞を受賞した二人の著書。ギルガメッシュ問題が導入。強い国家がなければ、人は自由を得られない。強い国家と、これを不断に制限していく社会があってこその自由であり、その過程は狭い回廊である、というのがこの本の結論。ここにたどり着くまでの歴史的考察が厚いコンテンツだ。

    自由は上からは降ってこない。一般の人々、社会によって獲得するもの。アリスの物語に出てくる赤の女王の「長い間、とても早く走ることで同じ場所にとどまることができる」という言葉を比喩的に使い、「赤の女王効果」と呼んで自由を維持する社会の努力と重ねている。
    社会の力と国家の力の間に「狭い回廊」があり、その中で自由が生まれる。ある経路から別の経路への乗り換えはシームレスには行われない。例えばいったん専横のリヴァイアサンの軌道に乗ってしまうと、国家制度を支配する国家とエリートはますます強くなり、経路依存性が作用すると。

    イタリアの民衆が作り上げたコムーネと貴族エリートの闘いは、ポピュリズム台頭の説明としてとても分かりやすかった。エリートに権力が集中するのをおそれてコムーネの民衆は闘うが、既存の民主的な制度を使っても情勢が好転しない時、制度への信頼が薄れ、制度を破壊してもより強力にエリートに対抗できる独裁的リーダーを望み、自ら民主的制度を破壊してしまう。トランプを筆頭に、現代のポピュリズムへの傾倒はまさにこれで説明がつく。そしてこの動きが、民主政を基盤としていた国々を回廊の外に押し出す危険性をはらんでいるという力学が理解できる。

    現代の危機的状況下で、社会の一員として「立ち上がれるか」が問われているのだろう。

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    2026年02月10日
  • 国家はなぜ衰退するのか 権力・繁栄・貧困の起源(下)

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    研究は膨大なため、途中様々な国、それも普段触れない国の細かな歴史が紹介されるため、興味を保つのが難しい。ただ、本研究で明らかにしようとしている仮説は興味深く、示唆に富む。末尾の解説が丁寧であり、理解が深まった。解説にあるとおり、筆者の見解は多くの失敗した試みが登場し、また昨今の脆弱な民主主義やトランプ、習近平、プーチンのような独裁への執着が見られる中では、悲観的なメッセージに映る。それでも炙り出した真実は、包括的な政治経済制度を目指す人々に自信を与えるものであり、今一度この提示を噛み締めて世界を俯瞰的に見れるようになりたいと思う。

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    2026年01月24日
  • 自由と国家 上 繁栄する国 衰退する国

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    ノーベル経済学賞を受賞した著者が読み解く「国家のかたち」に関する書籍。

    今、世界を見渡しても実に様々な国がある、そしてあった。
    ある国家の国民は自由で豊かで幸福を追求することが当然と思う一方で、とある国は多大な人口を抱えながらも、国家の監視の目に絶えずさらされ、隣人さえ信用できず、熾烈な競争の中を生き残ることに人生を終始してしまう。

    なぜ、その国はそうなったのか(だったのか)?
    を俯瞰的に考察する本。
    小難しい話ばかりが並ぶのかと思いきや、過去に起きた事件を生々しく描いているので、これはなぜこれが起きたのかを知らなければ!と時折、モチベーションを上げてくれる。

    かなり重たい本ではあるものの、手軽な時流を知る系の本では決して手にいられない深い知識と見識が得られる。

    下に書いたように中学校時代に習った「リヴァイアサン」がこういう概念だったのか!と初めて理解できた。

    前半は下記キーワードの実例を用いた説明と
    ・古代国家
    ・イスラム国家
    ・ヨーロッパ
    ・中国
    ・インド の国家形態とその歴史について

    キーワード:
    ・不在のリヴァイアサン
    ・専横のリヴァイアサン
    ・足枷のリヴァイアサン
    ・赤の女王効果
    ・規範の檻とその解体
    ・狭き回廊と自由

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    2025年12月25日
  • 技術革新と不平等の1000年史 下

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    我々は技術の進歩とともに豊かになれているのだろうか?。科学技術の進歩が必ず豊かさにつながると信じられている現代において警鐘を鳴らしている。技術による生産性バンドワゴンが正しく駆動するためには、単に技術を進歩させるだけでなく、いくつかの条件が必要であると説く。AI時代を迎える我々のこれからの社会を見通すために必読の一冊。

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    2025年06月18日
  • 技術革新と不平等の1000年史 下

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    第二次世界大戦後、アメリカは豊かだった。1950年代。
    これはよく聞く話。
    技術革新がなされ、それが労働者にも反映された、古き良き時代。
    しかしそれが続かなかった。
    機械化がどんどん進み、労働者は隅に追いやられた。切られた。
    必然的に労働分配率は下がる。
    理屈は分かる。それだけ設備投資に金が要るのだ。その金が利益を生む。
    。。ここでまた、ミルトン・フリードマンが登場する。
    企業は利益と配当だけ考えればいいと。フリードマン・ドクトリンと。
    悪のように書かれる。フリードマン信者としては心外だな。
    フリードマンは再配分を疑ってかかってる。私も同じ。うまくできるはずがない。
    必ず恣意的なものになる。権力者が有利な分け方になる。
    操作せないのが民主主義のはずだが、実態はうまく行かない。
    だったら経済に任せれば、、となると今のように富の偏在が起こる。
    悩ましい。
    話しを本に戻すと、その技術革新はDX、AIで違うステージに入る。
    いよいよ人間がいらなくなる。

    。。。そうなると答えはベーシックインカム、もしくはベーシックサービスなのか?
    奴隷に働かせてローマ人は遊んで暮らしていたように、
    富はAIが作って我々は芸術等にいそしめるのか?
    この本はそこまで書いていないけれど、そういう未来もあるのかな、、

    いずれにしても今の日本もこの本の通りになっている。
    富める者と貧しい者に分断されている。
    ただ違うのは日本自身が衰退しているということ。衰退の中の分断。
    悲劇だ。限られたパイの取り合い、、、
    地球環境を考えれば衰退もやむなし、、、とは、思えない。子供たちを見れば。
    未来を見れば。
    どうしたらよいものか、、、

     〇第7章 争い多き道
     〇第8章 デジタル・ダメージ
     〇第9章 人工闘争
     〇第10章 民主主義の崩壊
     〇第11章 テクノロジーの方向転換
     〇謝辞
     〇解説/稲葉振一郎
     〇口絵クレジット
     〇文献の解説と出典
     〇参考文献
     〇索引

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    2025年03月18日
  • 国家はなぜ衰退するのか 権力・繁栄・貧困の起源(下)

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    国家が繁栄するための必要条件がわかりやすく説明されています。多様性の高い包括的政治制度と、所有権の侵されない包括的経済制度が重要。この2つの制度の上で、創造的破壊が繰り返されて、繁栄に繋がっていきます。今の日本は、ちょっとヤバいかな。創造的破壊がされない。中国よりはマシですが。今後の中国が凋落していく様子をしっかりと見届けたらと、思っています。

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    2024年12月28日
  • 国家はなぜ衰退するのか 権力・繁栄・貧困の起源(上)

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    絶対主義的な政治制度は経済的に発展しない。包括的な政治制度を目指すべき。創造的破壊を恐れてはいけない。所有権の保証、大切。

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    2024年12月07日
  • 国家はなぜ衰退するのか 権力・繁栄・貧困の起源(上)

    Jie

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    例が細かく多様

    言ってしまえば、核心は変わらず様々なケーススタディで繰り返し主張への説得力を固めていく形。でもそのケース内容が細かくて、じわじわと教養も広がって、既存の知識と結びついていく感じがして読みがいもあるし、主張内容も納得。

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    2024年11月30日
  • 国家はなぜ衰退するのか 権力・繁栄・貧困の起源(上)

    000

    購入済み

    ローマ人の物語の併読を推奨

    民主政、共和政が過度にお気に入りの様子なので、少しおかしなこと言ってるのではないの、
    みたいなとこもあります。
    塩野先生のローマ人の物語で裏をとってください。
    ローマは、王政、共和政、帝政、東西に分割、西、東の順番に消失になります。
    ライン河、ドナウ河の南西部が最盛期の領土で、ルーマニア、当時はダキア、ローマニアと発音すべき気もします。
    領土的には出っ張りもあります。
    共和制で協議しちゃうと決定するのに時間がかかる、戦争仕掛けられて対応の協議に時間がかかるのとか、まずいと思いますし、
    仕掛けた場合も同様です。そこで頭にいる皇帝が速やかに仕切るようにしたのが帝政ローマ。
    初めの約200年はパスクロマーナと呼ばれていて、前世のお手本のように言われてます。
    ルビコン渡ったカエサル、英語だとシーザー、7月の人ですね、後釜のアウグスチヌス、8月の人、
    の後任のティベリウスが塩野先生の言っていた通りに
    ボロカス言われているのは、この人ほんとに嫌われていたんだなと思います。
    話は面白いです。お好みで。

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    2024年11月01日
  • 技術革新と不平等の1000年史 上

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    技術革新が人のためになるとは限らない、というか、むしろ害悪の面が強いということを、様々な事例から説明するもの。現在のAIや宇宙開発、ゲノムテクノロジー、環境対策など、明るい未来を作ってくれると期待するが、その恩恵を受けるのは、発明者や投資家、有力者などの一握りであり、一般市民はむしろ虐げられたり、犠牲になったりする。スエズ運河やパナマ運河の開発、イギリスの産業革命、鉄道開発、など。都市伝説みたいな話かと思ったら、アセモグルさんの分析は明晰。こういうことを知っておくことは重要だと感じる。

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    2024年08月08日
  • 国家はなぜ衰退するのか 権力・繁栄・貧困の起源(下)

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    社会の繁栄と貧困の差は、政治と経済の制度の違いによって生まれたと説明する。

    多数の資源を少数が搾り取る収奪的制度では、所有権が保護されず、経済活動のインセンティブも与えられない。少数は、自らの利益のために収奪的制度を維持し、手に入れた資源を利用して政治権力を強固にする。収奪的制度の下でも、政治的中央集権化化によって、ある程度の成長が可能だが、創造的破壊によるイノベーションが起こらないため、成長には限界がある。また、政治権力をめぐって闘いが発生するため、社会は不安定になる。

    包括的政治制度では、政治権力が幅広く配分され、法と秩序、所有権の基盤、包括的市場経済が確立される。有史以来、収奪的制度がごく普通だったが、14世紀のペスト流行、大西洋貿易航路の開通、産業革命といった歴史的な決定的岐路において、既存の制度との相互作用によって包括的制度が生まれた。

    今後、収奪的制度下でも政治的中央主権下で成長しそうな国は、アフリカではブルンジ、エチオピア、ルワンダ、タンザニア、ラテンアメリカでは、ブラジル、チリ、メキシコなど。中国は、持続的成長をもたらさないため、いずれ活力を失うと予測する。

    本書は、ポール・コリアー、ウィリアム・イースターなどから称賛されているが、ジェフリー・サックスは単純な制度決定論と批判している。

    近代化とは、収奪システムから普遍システムへの移行であるという説明は、今まで読んだ本の中で一番わかりやすかった。

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    2018年10月31日
  • 国家はなぜ衰退するのか 権力・繁栄・貧困の起源(上)

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    世界に裕福な国と貧しい国が生まれた理由を歴史的に解き明かす。緯度や気候などの地理的条件、宗教や民族ごとの価値観などの文化的側面は、世界的な不平等の説明にはならず、経済と政治の制度が重要であると説く。

    ヨーロッパの植民地としての歴史を持つ南北アメリカ大陸に相違が生まれた理由がおもしろい。スペインが支配するアメリカ大陸の植民地では、金銀の略奪段階が過ぎると、労働力としての先住民を分け与える制度であるエンコミエンダなどの制度を導入し、土地を奪い、労働を強制し、低い賃金と重税、高い商品を売りつけた。コンキスタドールとその子孫は大金持ちになり、先住民の生活水準は最低となる不平等な社会となった。スペインは、1808年にナポレオンが率いるフランス軍に侵攻され、王が退位させられると、評議会が結成されてコルテスと呼ばれる議会を組織してカディス憲法を生み出したが、南米のエリートは、労働力としての先住民を分け与える制度であるエンコミエンダ、強制労働、絶対的権力による制度を守り、独立していった。

    イングランドはアメリカ大陸の征服に遅れたため、先住民がたくさんいて鉱山のある場所はすでに占領されており、北米しか残っていなかった。入植者たちは先住民を支配することができなかったため、入植の支援をしたヴァージニア会社は人頭権制度を導入して土地と家を与え、1619年には議会が設立されて法と制度の決定権が与えられた。メリーランドでは荘園社会がつくられたが、議会が創設されると荘園領主の特権は剥奪された。1720年までに、アメリカ合衆国となる13の植民地のすべてに知事がいて、選挙に基づく議会があった。

    ヨーロッパでは、14世紀のペスト流行による人口減少が、地域ごとに異なる結果を生んだ。イングランドでは労働力不足の結果、農民は強制労働と多くの義務から解放された。しかし、封建君主が組織化されていた東欧では、もともと広かった小作地はさらに拡大され、労働者の自由は奪われた。1500年以降は、西欧が東欧の農産物を輸入し始めたため、地主による労働者の支配は強くなり、無給労働が増えた(再版農奴制)。

    政治制度の違いも重要な影響を与えた。16世紀末のイングランド、フランス、スペインは、いずれも絶対君主に支配されていたが、イングランドとスペインの議会は課税権を手に入れていた。スペイン国王はアメリカ大陸からの金銀から膨大な利益を得ていたが、イングランドの女王は税金を上げる見返りに、独占企業を創設する権利が奪われていった。イングランドでは、大西洋貿易と植民地化によって、国王とつながりのない裕福な商人が大勢現れ、政治制度の変化と国王の特権の制限を要求して、名誉革命において決定的な役割を演じた。名誉革命によって、所有権が強化・正当化され、金融市場が改善され、海外貿易における国家承認専売制度が弱められ、産業拡大の障壁が取り除かれた。包括的経済制度の下で、ジェームズ・ワットをはじめとする人々が機会とインセンティブを与えられて、産業革命が始まった。

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    2018年10月31日
  • 国家はなぜ衰退するのか 権力・繁栄・貧困の起源(上)

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    タイトル通りではあるが、なぜ繁栄している国家と貧困にあえぐ国家があり、後者は貧困を脱することができないのかがクリアになる。やはり自由、信頼、イノベーションは必須で、行き過ぎた統制、独裁は進歩を妨げるのだ。ジャレド・ダイアモンドの説より腹落ちする内容で、国家だけでなく組織に当てはまることで学びが多い。読み応え十分。

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    2016年07月12日
  • 国家はなぜ衰退するのか 権力・繁栄・貧困の起源(上)

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    繁栄する国家と、逆に落ちていく国家。その違いを、地理や文化といった(役に立たない)理論に求めるのではなく、経済と政治に関する、歴史の中では小さな選択にあるされています。なぜイギリスが産業革命で成功したのか、他のヨーロッパ諸国はそうならなかったのか。少々の偶然の要素もあったのですが、違う制度を取った国々の差を広げこそすれ、そのベクトルを決めたのは、その選択にあったということ。
    具体的な歴史を、読みやすく、読ませる書き方で書かれており、現代の我々が立っている位置が、どのように出来上がっているものなのか。また維持するために、何に注意していなければならないのかを教えていただきました。

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    2015年04月23日
  • 国家はなぜ衰退するのか 権力・繁栄・貧困の起源(下)

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    「世界には四種類の国がある。先進国、発展途上国、日本、アルゼンチンだ。」ノーベル賞経済学者のサイモン・クズネッツの有名な言葉だそうだ。1914年のアルゼンチンは50年ほどの経済成長を達成し世界で最も裕福な国の一つだった。しかしその後は独裁主義と民主主義の間を行ったり来たりした。民主主義と言ってもペロンの正義党は巨大な集票組織による利益供与の賜物で権力は著しく集中していた。そして2001年には経済危機を迎え先進国から果て得ん途上国へと滑り落ちていった。

    日本は逆に19世紀中頃までは中国とともに鎖国政策の元で停滞していたが完全な中央集権の中国とは違い、薩摩藩が琉球を通じた交易で密かに力を蓄えていた。中国はアヘン戦争以降国力を落とし、太平天国の乱は一時期江南一帯=中国の穀倉地帯を征圧したにもかかわらず後に自壊し、辛亥革命後も統一政府は作られず各地の軍閥が地方を支配し、抗日戦の一時期を除いて国共内戦が続いた。鄧小平の改革開放以降少しずつ所有権や個人の権利は拡大し経済は発展してきてはいるが独裁的な政治体制が続いている。日本の明治維新が成功しより包括的な政治制度へと踏み出したのに対し、なぜ太平天国の乱や辛亥革命は収奪的な制度を維持してしまったのか。藩の独立性が高かったことで説明しているのだが藩内部の構造は収奪的で独裁的だったのではないのか。中国の軍閥の争いが誰が独裁者になるかと言う争いなのに対し、明治維新後は中央集権制の下で少なくとも民主化が進んでいる。徳川家を打倒した後薩長内戦が起こり、薩摩独裁政権が生まれても不思議ではない。しかし現実は坂本龍馬の船中八策と言う当時の常識ではかなり急進的な政策が採用され政治制度が生まれ変わった。

    歴史的な記録は近代化が必ずしも包括的な制度に結びつかないことを示している。20世紀初頭豊かな工業国として発展したドイツと日本でナチスドイツや日本の軍国主義の拡大を防げず弾圧的独裁政権と収奪的制度に屈し工業化はそれを支えてしまった。21世紀のアルゼンチンは未だにとがめ立てもされずに国民の財産を収用できる。敗戦後の日本がアメリカ主導で民主化に一機に向かったのはアメリカ国内の例をみると必然だったとも言えない。そのアメリカの収奪的な制度の名残は今でもまだある。1901年に書き直されたアラバマ州憲法256条は現在でもこう述べている。「議会は、公立学校制度、公立学校の資金の割当制度、白人の子供用と有色人種の子供用の別々の学校を創設し、維持する義務を負う。(中略)どちらの人種の子供も、もう一方の人種用の学校に通ってはならない。」この憲法を削除する修正案は2004年に州議会で僅差で否決された。18世紀末にイギリスで始まった奴隷貿易廃絶は1807と翌年に英米で法制化されたが大英帝国で奴隷制度が廃絶されたのは1834年であり南北戦争に負けた後も黒人に投票権が与えられた南部ではプランテーション農業は存続し、差別的な法律がいくつも成立した。これらの制度が崩壊しだしたのは1950年代からの公民権運動によるものだ。

    アフリカの植民地の大半では奴隷制は20世紀になっても存続した。例えばシエラレオネの首都フリータウンは送還された奴隷の安息の地として築かれた町であるにもかかわらず奴隷制が最終的に廃止されたのは1928になってやっとのことであり、すぐ南の国リベリアもアメリカ奴隷のために建国された国だが1960年代になっても労働人口の1/4は強制労働に従事している。イギリスの植民地政府はまずシエラレオネに収奪的な制度を作り、独立後はアフリカ人の政治家達が制度を引き継いだ。イギリス人は大首長を終身制にしこの制度は今でも続いている。シエラレオネ東部の現在はダイヤモンド鉱区であるコノのスルク王=大首長の玄孫は2005年にスルクのために設けられたサンダーと言う保護領の大首長に選出された。イギリス国内で作り上げた包括的制度は植民地政策には適用されなかったということだ。現在のアメリカの自由主義の輸出がうさんくさいのも同根だろう。

    アフリカにも包括的な制度を導入できた国がある。ツワナ人の国ボツワナは南アの北にあり、西はドイツ支配下のナミビア、東にボーア人支配のトランスヴァール(現南ア)やセシル・ローズのローデシア(ジンバブエ)に挟まれていた。これらの勢力の拡大を防ぐためにイギリスが支配したが植民地化には値せず出来るだけ手をかけない方針だったがツワナの三人の首長はよりましな方、イギリス人の支配の強化を求めた。1895年チェンバレンの言質を取りイングランドを遊説し庶民の支持を得た。またコットゥラと言う集会所では成人男子の総会が開かれ誰でも発言が出来る。そして実力が認められれば誰でも首長になれる。イギリスの力を借り収奪的な勢力から身を守ったボツワナは1966年に独立した時点では世界最貧国の一つであったがーだからイギリスも植民地化しなかったー翌67年に世界最大級のダイヤモンド鉱山が発見されるとすかさず国営化し、その収益でインフラを整え一人当たりGDPでは2013年世界80位となっている。これは中国やタイよりも上位なのだ。

    ここで得られた結論は制度は変えられると言う楽観論でもあり、しかし容易には変わらないと言う悲観的な見方でもある。現在の中国のように収奪的な制度化であっても一定期間の経済成長は歴史上多く見られた。包括的な制度が永遠に続く保証はなくメディアや国民の監視によってなんとか続けていくものなのだろう。そして収奪的な独裁制の下での持続的な発展が続いた例は歴史上ない。

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    2015年02月13日
  • 国家はなぜ衰退するのか 権力・繁栄・貧困の起源(上)

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    ジャレド・ダイアモンドは「銃・病原菌・鉄」で文明発祥と伝播には栽培可能な穀物や家畜が反映する社会を生んだ原動力となり東西には伝播しやすく自然環境の異なる南北には伝播速度が遅いと唱えた。それは一つの強力な仮説だが本書の調査結果によると歴史的に野生の牛や豚が棲息した地域の分布はヨーロッパからアジアの非常に広い範囲に及び米の原種はインドから東南アジアにかけて広く分布している。小麦の原種も肥沃な三日月地帯だけでなく地中海東岸からイラン、アフガン、中央アジアの「スタンズ」にまで広がっている。ダイアモンド自身も「文明崩壊」で同じ島でありながら崩壊しつつあるハイチと発展を目指すドミニカの違いを書いている。また、ニーアル・ファーガソンは西洋文明が優位になった理由を「競争、科学、所有権、医学、消費、労働」とまとめた。

    それに対して本書では北朝鮮と韓国、フェンスを挟んで貧富の差が激しいアメリカとメキシコのノガレスなどを上げながら地理や気候と経済的成功の間には単純な、あるいは持続的なつながりはないことを明らかにしていく。そして政治制度が包括的で多元的であれば繁栄の好循環を生み、収奪的で独裁的であれば貧困の連鎖を生むとしている。包括的と多元的と言うのがわかるようでわからない訳なのだがinclusiveとextractiveの対比らしい。包括的な市場と言うのは個人の権利が尊重され、権力者による搾取がない市場、包括的で多元的な政治制度とは参政権が広く開かれ、色々な考え方が許容される政治制度と考えればいい。その最も極端な姿が民主主義だ。収奪的な独裁制の元では個人が努力するモチベーションが働かない。産業革命がイギリスで生まれたのは偶然ではなく、イノヴェーションが個人の利益を生むと言うモチベーションが後押しした。

    しかし歴史的には封建社会が長く普通でイングランドで包括的な制度が生まれたのは偶発的なものだった。1688年の名誉革命によって王権の制限や多元的な制度を求めた商人達を含むグループが勝利したのは100年前にイングランドがスペインの無敵艦隊を破り大西洋がイングランド承認に開かれたことに端を発する。それでもイングランドで包括的な制度が力を持つにはまだまだ時間がかかり、1733年に飛びひを発明したジョン・ケイやジェニー紡績機のハーグリーブスはラッダイト運動でイノヴェーションに対する抵抗に会っている。それを黙認したのはイノヴェーションにより政治権力が脅かされることを怖れた権力者だ。君主制化の17世紀には王家や貴族は専売制の独占権の分配によって収奪的な制度を維持しておりこれが国家の大きな収入源だった。1642年独裁的なチャールズ1世に対抗した議会はオリヴァー・クロムウェルの指揮の下王党派を破りチャールズ1世を裁判にかけて処刑したがそれはただ、クロムウェルの独裁を生んだだけだった。そして王政復古後絶対君主制を復活させようとした弟のジェームズ2世は議会に破れ、議会はオレンジ公ウイリアムとメアリを招き立憲君主制を成立させた。王と議会の力関係が代わりより多元的になったわけだ。

    逆に繁栄が上手くいかなかった例としては13世紀のヴェネツィアがある。定住し資金を提供する商人と自身は財産を持たず商人のパートナーとして旅をする貿易商からなるコメンダ(ワンタイムの合資会社)によりヴェネツィアの経済は発展し大評議会が生まれ毎年100人の新たな評議員が任命された。独立した裁判所、契約法と破産法が生まれ現代の銀行業の元が生まれた。しかし既得権益を持つ貴族勢力は評議会を世襲化し、コメンダの利用を停止した。1314年に貿易を国営化し、個人商人に高額の税を課すようになるとヴェネツィアの経済は衰退を始めた。ヴェネツィアは世界経済の中心から今では地方の観光地、よく言えば往事の繁栄を記録した博物館になっている。

    「発見」された当時のアメリカ大陸では現在のアメリカとカナダの人口密度が最も低くこれだけでも地理説は力を持ちにくい。どこで差がついたかと言うとアメリカの入植はことごとく上手くいかず入植者に所有権と参政権を与える試みだけがうまく働いたのは収奪するほどの先住民がいなかったということでもある。メキシコや南米に入植したエリートは強制労働を元にした植民地制度を享受していたからだ。そしてクーデターはあっても制度は維持された。アメリカ合衆国が楽園とは言えずとも世界最大の経済大国になった成り立ちには自由主義や民主主義が大きなモチベーションとなったことは間違いはない。

    では共産党一党独裁の元で収奪的な政治制度の下で繁栄する中国はどうなるのだろうか。収奪的な制度の下で経済的な発展を達成するケースはある。中央集権制がない政治制度よりはまだ条件としては整っている。「漢江の奇跡」の韓国の政治が包括的制度に移行したのは1980年代盧泰愚政権の時だ。しかし著者の見立てでは中国が韓国の様に包括的制度に移行する見込みは薄い。

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    2015年02月11日
  • 国家はなぜ衰退するのか 権力・繁栄・貧困の起源(下)

    Posted by ブクログ

    本書の主張は極めてシンプルだ。収奪的制度をしく国家は衰退する。なぜならイノベーションへのモチベーションが起こらないから。国家を企業に置き換えるととても分かりやすいのではないかと思う。苦労してイノベーションを成し遂げたとしても、単に収奪されるだけで報奨がなければ、モチベーションが上がらないのは当然だ。では何故収奪的制度がなくならないのか。権力の掌握は富の独占を生むからだ。そうした体制において、イノベーションは既存権力を脅かす存在として排除される訳だ。これはリアルでわかりやすい。
    興味深いのは、ルーズベルトがニューディール政策を推進するために、最高裁判所判事の任命権を大統領の与える法案を通そうとした時に、米国では、経済的効果が期待できるにもかかわらず、行政権の濫用(=収奪的制度)につながるという理由で通らなかったことだ。現状の日本の状況に似ていると感じるのは気のせいだろうか。日本が収奪的な国家へ向かわなければよいと思うのだけれど。

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    2014年06月29日
  • 国家はなぜ衰退するのか 権力・繁栄・貧困の起源(上)

    Posted by ブクログ

    人民に労働対価が与えられないと、その国は滅んでいく。ということを、実例をいくつも挙げながら説明している。特に、アフリカ諸国での絶対的権力政治が、現状に至っていることがよくわかる。ソマリランドの無政府状態が何故続いているのかが、判りやすく書かれている。平易な言葉で書かれているが、中身が非常に濃すぎるだけに、読むのに時間がかかる。3回くらい読み直してやっと、筆者の言いたいことが判るのかもしれない。

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    2014年06月19日
  • 国家はなぜ衰退するのか 権力・繁栄・貧困の起源(上)

    Posted by ブクログ

    経済は政治の上にある。政治が正しく平等で安定していないと投資もできないし新しい産業は(既存の権力者に)つぶされる。で政治は民主的なほうが長続きしやすくて、王政や社会主義とかだと一時的に発展はするが継続しない。まっ100年ぐらいは持つかもしれないみたい。ソ連は持たなかったけど。
    南米やアフリカの収奪的な政治を何とかしないと経済発展や飢饉の対策はできない。
    となるとまずは地域の自治レベルでの民主制の萌芽を目指すのかな。フランス革命も三部会とかの影響もあったし。

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    2014年06月13日