ダロンアセモグルのレビュー一覧
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本書を読みながら、グローバルヒストリーという言葉が浮かんだ。
著者の、収奪的制度はインセンティブを起こさず、発展を阻むという理論の例証に、数々の国が登場する。日本も多くのページ数が割かれているわけでは無いが、ペリーの黒船が来航して以降、明治維新への流れが触れられている。ペルーでは、侵略者に対し、なぜ同じように抵抗し、打ち勝つことが不可能だったのか。もし、成功していればペルーは現在よりも豊かな国家となっていたのではないか。
それは、小さな相違と偶然性という言葉で表される。そして歴史の形態の一部であると。
横断的展開は、アフリカのシエラレオネやツワナのダイヤモンドへの対応、中国共産党の独裁制 -
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国家が繁栄するのか、貧困したままでいるのかを分ける原因を国家統治体制に求める大著の下巻。最終章である15章にこれまでの議論がおおよそまとめられている。
主張のポイントは、収奪的制度の下では一時的には成功したように見えることがあるが、その成功は大きく二つの理由から持続的でないということである。一つは、創造的破壊に伴う変化を嫌うためにイノベーションが発生しないことと、二つ目は支配層が持つ特権をめぐって争いが生じるための不安定さである。
そして、収奪的制度から包括制度には自然には発展しないということも強く主張する。日本やイングランドを含むいくつかの事例があるが、中国やロシアやアフリカ、中南米の貧困国 -
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地理的要因と家畜化および農耕化可能な野生生物種の存在を文明発祥の起源としての条件を提示したジャレット・ダイヤモンドの名著『銃・病原菌・鉄』に対して、その統治形態によって、国家の趨勢が決まるというのが本書の要点だ。
しかし、『銃・病原菌・鉄』のスコープと本書はスコープと論点が異なっており、明らかに互いに排他的な議論をしているわけではない。名が通ったものを恣意的な解釈のもとにアンチとして定義し、それ対して自らを対置することで正当性を主張する手のように見え、あまりいい印象を持つことができない。
著者の主張をまとめると、ごくシンプルで、統治形態が収奪的である場合は経済的繁栄は持続しないし、包括的制度 -
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国が豊かかどうかを規定する因子を考察している。つまり、国民にインセンティブを持たせることができるか、どうか。それは、経済制度であり、政治制度が、どのような形をとっているのか。アメリカとメキシコの国境の街ノガレスを例に挙げ物語が始まる。
創造的破壊を拒絶するような絶対主義のもとでは、インセンティブは育たない。もちろん、創造的破壊によって、統治者やエリートは多くのものを失いうる。抜本的なイノベーションを導入するためには、常に新規参入者を必要とする。多元的なものを許容できる政治制度、つまり変化し続けることが生き残るための秘策なのだろう。
私のような基盤を未だ持たない者にとっては、本著はきわめて刺 -
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ネタバレマックスウェーバーは国家の本質を『合法的な暴力の独占』と定義した。中央集権していない国家は政情不安を招き、混沌となる。そしてその盛衰は文化や地理的気候が決めるのではなく、国家の政治・経済制度が決める。収奪的制度(≒共産主義?)を採る国は一部のエリートが富を得ることで、それ以外の人々との内紛や政情不安を必ず引き起こす。エリートは情報を操作し、自由な発想や創造的なものを破壊してしまうからだという。
つまり十分に中央主権された強力な国家と多元的価値観を認める政治・経済制度の共存が、繁栄できる条件なのだ。
植民地時代においても王に集権していたスペインと多元的なイギリスとの差がその後の繁栄を分けた。
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本書自体は膨大な歴史実証の本で大変素晴らしい内容であるが、上巻に比べると、ケーススタディばかり書いてあって上巻に加えた純な付加価値はほとんどなかった(つまり、オチが一緒だった)ので、読んでいて正直退屈であった。従って、本書を読む際は新たな理論的枠組みを知ろうという目的で読むと期待外れな結果になってしまうので、上巻の理論的枠組みの事例紹介の続きを読むような心持ちで読んだ方が良いと思った。言い換えれば、経済成長史の本として読むのが適切であろうということである。
個人的に付加価値があるなと思ったのは最終章(15章)で、ここでは本書の締めくくりのみならず開発経済学の観点から見て興味深いポイントがいくつ -
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国がどうやって繁栄するのか、なぜ衰退するのか、を色んな角度から説明してくれる本。
経済的な制度と政治が重要だとはわかった。文化的や地理的な説も多いが、それは違うとも言っている。日本で生まれたことは恵まれたことだなぁ、私は自由だなぁと感じられた部分もあった。今の私レベルだと「へぇ~そうなんだ〜」という感じだが、いつか何かのきっかけでこの知識を思い出せたらと思う。
とはいえ、翻訳だと一文が長くて、なかなか読みにくい。うーん、くどいかも。内容は魅力的だから、この本をもとに池上彰さんとか日本語を平易に使ってくれる方に再編集してもらって、図録付きで出版してくれたら、と思ってしまった。もっと軽快なテン -
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つまり、当時のテクノロジーは、それらが排除した機会と同じだけ、労働者向けの機会も創出したのだ。これは、自動車産業における大量生産に関して見たのと同じ理由からである。通信、輸送、製造のテクノロジーの改善によって、ほかのセクターが活気づけられたのだ。だが、より大切なのは、 これらの進展は、それが起こったセクターでも新しい雇用を創出したことだ。数値制御やほかの自動機械が人間の操作者を完全に排除することはなかった。というのも、一つには、それらの機械は完全には自動化されておらず、生産を機械化するにつれて多様な追加作業が発生したためだ。
あるレベルでは、なにが起こったのかは明らかだ。戦後の共有され -
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進歩のバンドワゴン
テクノロジーの進歩は共有利益をもたらすという楽観主義の根底には、「生産性バンドワゴン」というシンプルで強力な一つの考え方がある。これは、生産性を高める新しい機械や生産方法は賃金をも上昇させるという主張だ。テクノロジーの進歩につれて、バンドワゴン〔パレードの先頭を進む楽隊車)が、起業家や資本家だけでなくあらゆる人を引っ張っていくというのである。
説得する力は絶対に堕落する
たとえ、われわれが権力者のビジョンに行き着く可能性があるとしても、彼らのビジョンが十分に包摂的で開放的となることを、少なくとも希望することはできるだろうか?というのも、彼らが自分たちの構想を正当化す -
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ネタバレ長期的な経済発展は、地理的、環境条件、社会学的要因、文化の違い、生物学的遺伝的差異でもなく、政治・経済制度の違いにある。
包括的な政治制度と包括的な経済制度の組み合わせが必要。収奪的政治制度と包括的経済制度ではだめ。新自由主義は、その見本。
収奪的政治制度のもとでは、破壊的イノベーションは起きても潰されやすい。既得権益を守るため。規制緩和は限界をむかえる。
中国のような収奪的政治制度のもとでは、経済の自由度が高まっても破壊的イノベーションは起きにくいので、経済成長は持続しない。
収奪的政治制度がデフォルト。
長期的には、自由民主政治と資本主義は不可分。格差があっても、経済強者の交代可能性 -
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ネタバレ解説より
自由な市場経済、リベラルな政治は実現と維持は困難。アラブの春、ポピュリズムの台頭、排外主義の台頭。
経済成長とは、量的拡大だけでなく、質的拡大が必要。新しいもの、新しい生産方式など。
テクノロジーの生まれる環境は、制度やビジョンによって形作られる。
技術革新が包括的か搾取的か、多面的に見る必要がある。
高度成長は、見えざる手に導かれたのではなく、労働運動の結果、社会保障制度の充実と福祉国家体制の確率がなければ生まれなかった。
分配の不平等が解決しなければ、経済の発展はない。
データ所有権のアイデアで格差の解消ができるかもしれない。 -
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