あらすじ
2024年ノーベル経済学賞。独裁と無法の間にある自由に迫る!
なぜ自由は自然に生まれないのか? データが示す、僅かな国家のみが該当する「狭い回廊」とは? 人類史を総攬する、世界的名著
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Posted by ブクログ
自由と国家を国家の力と社会の力の均衡で説明しようとする試みの下巻。
上巻はより分かりやすいモデル。
過去の典型的な事例や、過去から引き継いでモデルが説明しやすい事例だったが、下巻はより複雑な状況について、モデルを適用して説明しようと試みる。
本書の半ばくらいまでは、政治経済に不具合が生じたまま解消に至らなかった事例を様々にモデルを使って説明するが、中盤以降は、回廊の外から回廊内に入り持続できている例(日本はこのモデルで説明された)や、社会福祉の観点から最も成功した北欧諸国がどうやってそれを成し遂げたかを説明している。
そして最後の例を引き合いに、現在の社会たちはこの後、何に気を付けて社会を構築すればよいかを論じている。
出てくる社会
・ドイツ(ワイマール共和国、ナチスドイツ、ドイツ連邦)
・ソ連、ロシア
・南米諸国、グアテマラ、コスタリカ、コロンビア、アルゼンチン
・アメリカ
・サウジアラビア、ナイジェリア
・南アフリカ、トルコ、日本、スウェーデン
上巻に比べて、より概念が複雑になり、関係する影響因子も増えてくるので、頭が正直ついていかなかった。
それでも、概念と構造が少しでも理解ができてとてもタメになったと思う。
読む方も苦労するが、本書のためにかけられた労力は途方もなく膨大であり、純粋にその熱意と苦労に敬意と謝意を示したい。(参考文献だけで50ページのリストに上る!!)
個人的な感覚だが、下手な新書やビジネス書30冊分くらいの価値があるような本だと思う。
Posted by ブクログ
ノーベル経済学賞を受賞した二人の著書。ギルガメッシュ問題が導入。強い国家がなければ、人は自由を得られない。強い国家と、これを不断に制限していく社会があってこその自由であり、その過程は狭い回廊である、というのがこの本の結論。ここにたどり着くまでの歴史的考察が厚いコンテンツだ。
自由は上からは降ってこない。一般の人々、社会によって獲得するもの。アリスの物語に出てくる赤の女王の「長い間、とても早く走ることで同じ場所にとどまることができる」という言葉を比喩的に使い、「赤の女王効果」と呼んで自由を維持する社会の努力と重ねている。
社会の力と国家の力の間に「狭い回廊」があり、その中で自由が生まれる。ある経路から別の経路への乗り換えはシームレスには行われない。例えばいったん専横のリヴァイアサンの軌道に乗ってしまうと、国家制度を支配する国家とエリートはますます強くなり、経路依存性が作用すると。
イタリアの民衆が作り上げたコムーネと貴族エリートの闘いは、ポピュリズム台頭の説明としてとても分かりやすかった。エリートに権力が集中するのをおそれてコムーネの民衆は闘うが、既存の民主的な制度を使っても情勢が好転しない時、制度への信頼が薄れ、制度を破壊してもより強力にエリートに対抗できる独裁的リーダーを望み、自ら民主的制度を破壊してしまう。トランプを筆頭に、現代のポピュリズムへの傾倒はまさにこれで説明がつく。そしてこの動きが、民主政を基盤としていた国々を回廊の外に押し出す危険性をはらんでいるという力学が理解できる。
現代の危機的状況下で、社会の一員として「立ち上がれるか」が問われているのだろう。
Posted by ブクログ
現在の日本は、専横のリヴァイアサンと不在のリヴァイアサンの間にある狭い回廊、足枷のリヴァイアサンに留まっている状態である。
つまり、国家と社会が均衡状態にあるといえる。
本書を読むと、狭い回廊に居続けるのは容易ではなく、国家か強くなりすぎると専横のリヴァイアサンに、社会が強くなりすぎると不在のリヴァイアサンに陥ることになるという。
その国家において、市民か自由で居られるかどうかはとても重要なことであり、ただ、それを手にすることがいかに難しいかを、本書では古今東西のさまざまな国家の歴史や出来事を例に挙げながら説明している。
内容が分厚いため本書の全てを理解したとはとても言えないが、国家と社会の関係性について新たな見方を提示してくれた良書だった。