一坂太郎のレビュー一覧
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幕末から明治、暗殺という視点から見つめ直した日本史。
幕末から昭和の戦前までの日本史は暗殺の歴史といえるだろう。本書は明治期までだが、実に多くの人材が暗殺で失われている。「言路洞開」、言論の道が開かれていない時代にはテロはやむを得ない手段だったのかもしれないが、どうも腑に落ちない。テロリストを礼賛する隣国のような狂信的な態度はどうかと。
暗殺に関する評価の変化が本書では面白い(第6章正しい暗殺、正しくない暗殺)。井伊直弼を顕彰し横浜に銅像を建てる旧幕臣。一方で桜田烈士50年祭を挙行する新政府寄りの立場。その翌月に大逆事件が起こるという皮肉。
暗殺という手段に違和感を覚えるのは、今の日本が -
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概ね20年間程度になるのだと思うが、幕末から明治維新の“暗殺”という事柄に関する事典のような様相も呈する一冊で、同時にそうした営為の社会での受け止められ方の変遷というようなことも論じられている。これまでに「無かったかもしれない?」という角度から、幕末や維新を論じるということになるのかもしれない一冊だ。
それにしても、この「幕末・維新」という時期に関しては、驚く程に多くの(未遂も含めた)暗殺事件が発生している。が、それらに関しては少しずつ“性質”を変えながら続いていたという面も在る。そういうことが論じられているのが本書だ。
更に本書は、事件関係者の「扱い」が「後年に如何なった?」に言及が在る。幕 -
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松陰、松陰門下の研究では第一人者の一坂氏の著作。
司馬遼太郎の作品はあくまでも『小説』であって虚構がある事を丁寧にふんだんな資料で説明してゆく。
これは解っていても司馬遼太郎ファンには切ないことだろうと思う。私も司馬遼太郎は好きなので気持ちは分るつもりだ。だが、筆者は決して司馬遼太郎を否定しているのではなく、『虚構を持ち込んが背景、理由』も考え提示する。そして理解を示す。著者が司馬遼太郎を敬愛していることが解る。
一面で『維新の英雄』として小説に描かれた人物を政治家等が盲目的に尊敬し、「私の理想です」という態度には批判的だ。私も同感。小説の登場人物を理想にしてはいけないだろう。
若いときに『 -
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龍馬さんが近江屋で亡くなってから146年が経ちました。
「もう、幕末関係の新事実は出尽くしたんじゃないの?」と素人の私などは思ってしまうのですが、ありがたいことにまだまだこうして新しい本が出てきます。
この本は今年、平成25年の9月に出版されたものです。
この本では、吉田松陰・坂本龍馬・高杉晋作を大々的に「英雄」として送り出した司馬遼太郎先生の小説を論じ、そこに描かれなかった「本当の姿」を映し出したものです。そこには松陰・龍馬・晋作だけでなく、その周りにあったものの、司馬作品には出てこない、それでも印象的な人たちも取り上げてくれています。
かく言う私は、司馬作品を今まで読んだことがありませ -
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坂本龍馬が31歳で岡田以蔵が27歳、吉田松陰の29歳に久坂玄瑞の24歳、そしてこの高杉晋作が27歳というほど、幕末の志士たちの夭折さは今さらながら無念の思いが募るばかりです。
それは単に、あたら若い命を惜しくも失くしたことを嘆くだけでなく、あの時代のあの時期にあってもっとも重要な考え方や動き方をした人物を喪失したということが、その後の日本にとって大きな損失になった、否、間違った方向に行ってしまう契機になったとさえ思われるからです。
それと、私も大好きではありますが、司馬遼太郎をはじめ幾つもの小説にとりあげられることで、あまりにも坂本龍馬だけが飛び抜けすぎて、もうひとり、大事な人物を忘れちゃ -
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ネタバレ[ 内容 ]
戊辰戦争に勝利し、明治国家の中核となった長州藩。
しかし、その栄光の歴史の陰には、好むと好まざるとにかかわらず戦い、斃れていった多くの無名の犠牲者が存在する。
高杉晋作が創設し、勝利の原動力となった奇兵隊も、維新後は解隊命令が下され、内戦で多くの命が失われていった。
著者は遺された史料や伝承をたんねんにたどり、懸命に生きた人びとの姿に光をあてる。
違人伝や英雄譚ではない、本物の歴史がここにある。
[ 目次 ]
第1章 「本物の歴史」を求めて
第2章 松陰を神格化した人たち
第3章 堕落する「志士」
第4章 墓碑は語る
第5章 町かどの維新史
第6章 「志士」たちの「内ゲバ」
第 -
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ネタバレ[ 内容 ]
東京は、幕末史のテーマパークだ。
道端や空き地にも、ときには堂々と、ときにはひっそりと過去のドラマが息づいている。
桜田門、坂下門など頻発するテロの現場、新選組のふるさと、彰義隊の落武者にまつわる怪談…。
本書はペリー来航から西南戦争までの四半世紀に繰り広げられた有名無名さまざまな事件の跡をたどる、「足で読む幕末通史」である。
巻末に幕末維新関係者千名の詳細な墓地所在地リストを付す。
[ 目次 ]
第1章 開国の激震(高島秋帆の洋式調練;「正気の歌」の碑 ほか)
第2章 攘夷の嵐(遺米使節の碑と新見正興の墓;愛宕山に集結した「桜田烈士」 ほか)
第3章 内戦の炎(御用盗の江戸攪 -
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高杉晋作が生涯の中で残した6冊の日記を一坂太郎氏が読みやすいように解説を付けて現代風に訳したという本です。
タイトルに革命という文字が使われているのですが、内容はごく普通の家族思いな青年武士としての生活が大半でした。特に忙しい仕事に追われる最中で自分の誕生日を心の中でひっそりと祝う所が可愛い。どの日記も途中で中断してしまっているが一坂氏の推測が面白い。とても幕末史に残る革命を起こした志士とは思えない。これが高杉晋作の本当の姿なのかと驚きました。
しかし、上海留学の体験を記した日記や野山獄に投ぜられた時に書き綴った日記は彼の人生に大きな影響を与えただけあって、心の底からの決意や訴えがひしひしと