思ってたのと少し違った、けど面白い。
皮膚の病気で太陽を避けて引きこもっている浮世離れした少女の話かと思っていたけれど、一応それもあるんだけど、割と現実的というか俗世と関わるんだなという印象。
主人公の楼子の話し方がとても綺麗なお嬢様言葉で、するすると心地よく読める。だけど語っている内容がとても不穏で、しかも読者も知らないことが後から出てきたりして、一体誰を信用して良いのか分からなかった。最後の最後まで結末がどうなるのかずっと気になって、予想外にミステリアスだった。
嶽本野ばらの作品には特徴があって、お嬢様気質の主人公が自分の境遇や趣味についての拘りを独白することと、逆にとんでもなく暴力的で低俗な下衆が主人公を脅かすことが多い。下品な言葉で恫喝したり、性暴力を加えたり。
今回は畠山がそれに当たるのだけど、とにかく不快だった。楼子に付きまとうだけでなく、明確に危害を加えようとする。結局この時点では畠山には何の関係もない高校生だった楼子に、自分の被害妄想から、容赦なく嫌がらせをしたり暴力を振るう。
別作品でもそうだけど、弱い者に対してむき出しの欲望を押し付ける・拒否できない相手を全力で傷付けるという行為がすごく苦手。より動物的に感じるからかな。
鱗病に限らず、不治の病に罹るということの残酷さが分かる。治らないとは不可逆であり、自分が別の何かに変わっていくのを受け入れるしかないということ。受け入れられないから自ら死ぬ人もいる。特に楼子たち龍烏家の人間は皆容姿が整っているようで、普段から美に執着したりプライドがある分、それが失われることは怖いだろう。日暮医師の居る閉鎖病棟の人達を見てしまったら余計。
楼子にとって叔母は良くも悪くも影響力のある人だった。確かに鱗病についての知識は叔母から聞く必要があったけれど、つかみどころのない性格の上に全てを一度に話してくれる訳でもなく、完全に信用して良いのか分からない。
唯一信用できるのは楼子の兄琳太郎だけだったけれど、彼もまだ大学生で、重い病を抱えた楼子を救えるほどの器量はない。だから兄妹で世界を敵に回して内に閉じてしまった・・・
最初は叔母がエリザベート・バートリーを模倣しているのかと思いきや、成り行きで楼子がそうなってしまった。バートリーのことはこの本を読むまで知らなかったけれど、この人実在したん!?と驚くほどの残虐行為を行った人物。この人にどれだけの人間が「吸血」されたのだろう。やはり権力を持つものは容易く他者を犠牲にして生き延びることができる。
ラストの終わり方はどうなんだろう。ちょっと駆け足すぎたなというか、まだ分かっていないことがあったのに。
叔母は何しに出かけた?楼子にどこまで教えて協力する気だった?なぜもっと早く畠山について詳しく伝えなかった?琳太郎も感染したとして、叔母や日暮医師は兄妹の関係をどう捉える?殺人はごまかせる?等々・・・
結局叔母は謎は多いけど無実で(なんで鉄の処女なんて所持しているのかは超謎)、思い込みで叔母に追随しようとした兄妹が殺人を犯した上に近親相姦・・・
これは幻想小説的なんだろうか、作者の趣味なんだろうか・・・?楼子(と琳太郎)が急に短絡的になって終わった。兄や父親に疑似恋愛の感情を抱く子供は珍しくないと思うけど、本当に関係を持ってしまうなんて、楼子のような狭い人間関係の中で生きていたら違和感を持たないものなんだろうか。
叔母によって救われ、叔母によって煙に巻かれ闇堕ちしてしまった少女の話。
時々、全く別の本なのに点と点が繋がることがある。
解説の方が紹介していた雑誌『血と薔薇』には、創刊号に『仮面の告白』で出てきた「聖セバスチャンの殉教」の恰好をした三島由紀夫が掲載されているらしく、なんか嬉しくなって笑ってしまった。この雑誌だったのか!って。
年を跨いで読書って、年末のよく分からない焦燥感で落ち着かないのでもうやらないw
✰3.9ぐらい。
20260101