山本義隆のレビュー一覧
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なるほど。山本義隆は、東大物理を卒業し、東大大学院で素粒子論を専攻していたのだね。東大全共闘議長で鳴らした人だった。その後予備校の講師をしていた。1941年生まれというから、80歳を超えているのか。この本は、2011年8月に出されている。山本義隆が70歳の時だ。
なぜ福島原発事故が起きたのか?そして、原子力発電とはどんなものか?を、①日本における原発開発の深層底流。戦後政治史。②原子力発電技術の未熟さと隘路、そして稼働の実態と原発事故。技術論。③科学史から見た原発という構成で書かれている。原爆開発と原子力発電開発は、双子のようなものだと読みきって説明している。
私は、原子力の平和利用は可 -
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リニアは夢の技術だから、困難はあっても進めてほしい――と漠然と思っていたが、どうやら違うらしい。
世界最速の鉄道はこの国に必要だろうか?
地方を切り捨てて成り立つ6000万人のメガロポリスは必要だろうか?
コストよりも安全性よりも速度を追求するべきなのだろうか?
どの国も追い付こうと思わない「世界をリード」する技術を磨いてどうするのか?そこまでして世界に誇りたいのか?何を?
時代錯誤だ。昭和のままだ。「もう一度、昭和を」というおじさんたちの暴走。五輪しかり万博しかり。もうやめよう、その発想。
この国は、自らイノベーションを起こせなくなり、バージョンアップできなくなり、既得権益層に金を落とす -
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リニア中央新幹線の孕む多方面にわたる問題点を、諸々の文献に依拠しながら、明快にわかりやすく紹介する啓蒙の書。エネルギー効率的にも社会経済的にもまったく割に合わない「時代錯誤」の代物であることが示される。そして何故そのような時代錯誤がまかり通るのは、成長発展を本質的に前提とする資本主義がすでに行き詰まっているにも関わらず、それにしがみつくメンタリティがあるからだと指摘する。それにしても、本当に様々な面で負の遺産となりかねないリニア計画について、何故マスコミは大きく取り上げないのだろうか。今更止められないということか。今までこの問題にあまり関心がなかったため、日々のニュースを見る中でリニアについて
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リニア中央新幹線は要らない、と常々思っていたのですが、この本を読んで、その思いを強くしました。
この本によると、少なくとも次のような観点から、リニア中央新幹線は不要、といえそうです。
○工事のコスト
○工事による環境負荷
・トンネルを掘る際に出る残土の対応
・様々な水系への影響
・森林をはじめとする生態系への影響
○運用コスト
・ハイスピードにともなうエネルギー消費増
・超伝導状態を維持するためのコスト
○事故時の対応の難しさ
○人口減にともなう需要減
○WEB会議システムの充実による、移動の必要性減
書くのが面倒ですが、これ以外にも不要な理由があります。
そ -
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ネタバレ戦後の高度経済成長の核となるものが「戦時中」にある、というのが一番インパクトが大きかったかな。具体的には1942年の食糧管理制度、1938年の国民健康保険法。戦争するには合理的な編成が必要となり、貧富の格差は是正され平等化・一元化される。これが戦時動員体制であるが、実はこの体制と福祉国家体制は類似しているのだ。
士族を由来とする技術エリートは、江戸時代から続く「職人」とは別格におかれ、軍事技術の必要性から特権的立場を得るようになる。学徒出陣で文系の学生は戦地に送られたが、理系の学生の多くは出陣を免除されていた。敗戦直後、科学者の内部からその反省は語られず、「科学戦で敗北した」という戦争指導 -
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リニア中央新幹線構想を知ったのは昭和の時代で随分前のことになるが、超伝導というすごい技術を使うようだけれど、そんなに速くしてどうなのかなという程度の、あまりに素朴な考えしか持っていなかった。
また最近は、トンネル掘削による大井川水系への悪影響を巡って、JRと静岡県が揉めているニュースを耳にすることが多かった。
本書は、リニア中央新幹線に関する問題点を一つずつ暴いていく。
巷間言われているのとは異なり、相当な電力を必要とし、原子力発電からの供給が想定されていること。超伝導マグネットの冷却材として液体ヘリウムが使われるが、ヘリウムは希少資源で日本は100%輸入に頼っていること。事故が発生 -
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ネタバレ原発による放射性物質の汚染は、子孫に対する犯罪だとする著者の意見は、納得できるものでした。
原発はクリーンであると教科書的に習ってきたけれど、それは誤りでした。
原発それ自体はクリーンだとしても、その前後はクリーンではないということもあります。
原発の原料調達から汚染は始まり、数万年後まで放射線は出続けるということです。
数万年後は、人類が存在しているかもわからず、存在していても言語や絵が伝わるかわかりません。
立看板や警句は意味をなさない可能性があります。
数万年という単位は、人類の管理不能な単位であるということかもしれません。
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ネタバレもうそろそろエネルギー政策をはじめとして無批判に科学技術を享受するだけではいけないとぶっといメッセージが伝わって来る。
日本は、明治維新以後、西欧の科学技術を輸入し、帝国主義を背景に軍事力を高め、日清戦争や日露戦争を通じて自らの科学技術に自身を深めた。
その後日本は、大陸の植民地化を推進し、さらに無謀な太平洋戦争へと突き進み、2発の原子爆弾で降伏を選択した。
この間、西洋の科学技術を取り入れるため、多くの科学者や理系の技術者を育成するとともに、軍事産業につながる産業の育成にも尽力していた。
産官学の総力戦は戦後になっても、経済戦争にとって変わっただけであり、戦前戦中に育成した技術者 -
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ネタバレ2011年3月11日の福島第一原発の炉心溶融・水素爆発事故を受けて、どうして日本で原子力発電が推進されてきたのか、その歴史的な経緯を振り返りつつ、原子力事故が隠される背景に探りを入れている。ページ数から分かる様に、それほど深い考察をしている訳ではないが、著者の専門分野との関わりを示しつつ、著者の考えを明らかにしている。
本書は三章構成となっており、第一章では日本の原子力政策に岸信介元首相が果たした役割を強調しつつ、兵器転用の含みを残すための民生利用だったことを明らかにしている。
第二章では、そもそも、原子核物理学から原子力工学へ至るためには、電気科学理論から電気工学へ至るのに比べ、比較 -
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かっては日本物理学会を100年推し進める才能と期待され、現在は科学史著述家として活躍されている山本義隆さんの書下ろしです。
戦後、アメリカで提唱された「原子力の平和利用」を、当時の総理だった岸信介が、日本で国策として始めたのは、必ずしも将来の電気需要を見込んでの判断ではなく、核兵器保有国としての将来性を考えてのことでした。やがて、国策は、国是となり、政治家、官僚、学者、企業が一体となり原発プロジェクトが、推し進められました。
国是は、決して過ちを犯さないはずのものです。最先端の科学技術が集約されているはずの原発への、科学的な批判や検証が省みられることはありませんでした。多くの専門家の発言がそれ