あらすじ
ニュートン力学のあとを受けた18~19世紀は、熱をめぐる世紀となった。なぜ熱だったのか? 本書は、科学者・技術者の実験や論理を丹念に原典から読みとり、思考の核心をえぐり、現代からは見えにくくなった当時の共通認識にまで肉薄する壮大な熱学思想史。迫力ある科学ドキュメントでもある。後世が断ずる「愚かな誤り」が実はいかに精緻であったかがじっくりと語られる。新版ともいえる全面改稿の全3巻。第1巻は、熱の正体をさぐった熱力学前史。化学者ラヴォアジェが熱素説の下で化学の体系化をなしとげ、より解析的に熱を取り扱う道が拓かれるまで。
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Posted by ブクログ
スゴいの一言。熱という概念の確立にこれほど多くの科学者の取り組みがあったとは。しかし限定された観測データから本質を見つけていく作業というのは、現代の素粒子科学にも通じるものがあるのでは。熱素を探す姿勢というのは重力子を追い求める姿と重なるような気も。
Posted by ブクログ
「重力と力学の世界」につぐ書籍で、熱力学を学ぶ、物理学、電気工学、機械工学、化学などの学生にはぜひ読んでおいてほしい背景知識である。
本書では、自然科学の発想のきっかけがつかめるかもしれない。
高校、大学の理科系の授業は、結果しか教えないので、おもしろくないと感じる人もいるだろう。どういうきっかけ、ヒントで、自然科学の理論を考えついたかがわからないことが多い。自然科学を理解できない原因にもなっていないだろうか。
ボイル、ジュール、カルノーといった基本的な理論もでてくる。
Posted by ブクログ
熱力学概念の形成を追った科学史の労作。この巻ではプラトンやアリストテレスの哲学からラボアジエの熱素理論までを取り上げている。熱力学形成史としての価値は言うに及ばず、誤謬とされた理論にも相応の蓄積と理があったことを理解することも出来ます。物理、科学史が好きな方のみならず、視野を広げたい人にもお勧め。
Posted by ブクログ
山本義隆の熱科学史。単なる単行本化ではなく、かなり書き直しているらしい。
どうやって熱力学が形成されていったのかを知ることで、とかく分かりにくい熱力学の思想や用語が理解できるようになるかも。
Posted by ブクログ
2008/12/25 セブン&yに注文
2008/12/27 届く。
2015/9/18〜10/4
元駿台生にとってはカリスマ教師である山本義隆大先生の著作。今回は熱力学の哲学的なお話。第1巻は古代からラボアジェまで。浅学で知らなかったが、ロバート・フックがボイルの弟子だったとは!難しいが面白い。続いて2巻へ。
Posted by ブクログ
熱とは何かという難しい問題をめぐる科学史の研究書です。読み進めるのはなかなか忍耐力がいりますが、やっと1巻を読み終えました。ガリレオによる機械的熱運動論からはじまり、ボイルの粒子哲学と熱運動論、ニュートンの引力斥力による熱の説明、ニュートンのエーテル論の受容を境にした熱物質論への転換などが一つの区切りで、後半は特に温めると物が膨脹するということから、火と斥力の関係が重視され、ヘールズの空気による斥力の説明、ブールハーフェの火の物質・保存と平衡の理論、産業革命をささえたスコットランドの学者たちカレン・ブラック(潜熱と熱容量を提唱)・クレグホン・アーヴィンなどの実験と理論、「化学革命」の騎手ラボアジェの燃焼=酸化説・熱素説・燃素説との関係などが書かれています。スコットランドのカレンあたりから、化学が力学から独立していく様子はたいへん興味深いものです。熱量保存の法則がブラックやラボアジェなどの新興上流階級が「簿記の原理を化学にもちこんだ」という指摘はなかなか面白い部分だと思います。