【感想・ネタバレ】福島の原発事故をめぐって――いくつか学び考えたことのレビュー

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山本義隆氏の本を読みたかった。
探してみると、本書が見つかった。
薄い本である。しかも原発に関する書である。
今まで私なりに原発や核兵器に関して、本を読んできた。
氏の原発に対する考え方を知りたかった。浪人生時代を思い出し、あらためて生徒になった。
先生の言葉を聴き逃すまいと、一文一文ゆっくり読んだ。原発は外交カードであったことを知り、目から鱗が落ちた。先生の知識量に圧倒された。また、先生の正義感と誠実さと優しさも感じられて嬉しかった。
先生は20年前と少しも変わっていなかった。
柔らかい表情の奥に光る野武士のような目の輝きを思い出した。

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2018年06月09日

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ネタバレ

福島の原発の災害をどうして招くことになったのか、その淵源を原子力爆弾の開発、さらには産業革命以前にまでさかのぼるなどさすがの一言につきる。ただここで書かれていることに賛成もするのだが、原子力推進派にはなかなか届かない言説になっている。
これは山本氏に限らず反原発、脱検発の言い分が原発推進者にとどかないのと同じなのである。
だからと言ってこの本の価値が減じることはない。この本の言い分が届かないという現状から出発しないと何もかわらないことが本当に日本人が考えるべきことなのである。
産業界が力をもちすぎたことが 一つの悪夢の始まりだが、産業界に距離をおくひとに産業界の歯車をとめる力は生まれない。
省エネを叫んでも、エネルギー消費社会の舞台からそでに身をひくだけで
舞台ではあいかわらず乱痴気騒ぎ。
そして客席からいかにやじっても舞台は舞台ですすむ。
論理的か、実証的な、説得的かも関係がない。

放射性廃棄物の廃棄場所も、原発作業者の疾病も、福島の人の移住も関心のない人にはぜひ読んでほしい。

難しいことを優しく書いているので 読みとばし危険です。

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2012年04月23日

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誠実な思考。その積み重なり。
ひとことを導き出すために、多くの言葉が選ばれていることがわかる。
「特別にユニークなことが書かれているわけではありません」と著者がいうとおり、書かれていることは、すでによく知られていること。
それだけに、著者の論の進め方は、説得力がある。

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2012年02月17日

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3月11日の大震災、その後の福島の原発事故が発生し、いまだ自分の
中でもやもやした感情が残っている。
この著者は、今回の原発事故は科学技術幻想の肥大化が招いたものだ
と指摘する。科学技術とは、技術者が経験主義的に形成してきたもの
だが、原子力は純粋な科学理論のみに基づく点が異なり、それが人間
のキャパシティの許容範囲を超えた技術を生み出す結果になってしま
ったという。
脱原発社会に向けた説得的な批判を読み、腹落ちのする内容だったと
思う。

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2011年12月30日

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アルファブロガー池田信夫氏が「残念ながら読んではいけない本になってしまった、、、」と書かれていたので、政治的なことで山本先生もつい力が入って過激で刺激的な文になってしまったか、と思っていた。
が、池田氏が駄目出ししていた「正気で書いているのかどうか疑わしい。」という表現。苦笑を誘うような部分である。決して池田氏がいうように他者を罵倒したものではない。
読むべき本である。
ちなみに苦笑を誘う表現とは「処分場閉鎖後、数万年以上というこれまでにない・・・したがって、・・・各地方自治体や国民に広く理解、協力を得る必要があり・・・」という原発推進者の一文である。数万年・・・。苦笑せずにはいられないだろう。西堀栄三郎氏が技術者倫理を説いた「技士道十五ヶ条」の十四・「技術に携わる者は、技術の結果が未来社会や子々孫々にいかに影響を及ぼすか、公害、安全、資源などから洞察、予見する。」を捧げたい。1985年の言葉である。

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2011年09月01日

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 著者があとがきで断わっているとおり、とくに新しいことが書かれているわけではないのかもしれない。しかし、これまで「進歩」の名のもとで語られてきた自然支配へとシフトした科学技術の進展と、それに乗じた軍事技術の開発と一体で、かつ利潤のために不正と不公正を生まずにはおかない資本主義の発展との延長線上で、福島の「事故」が起こるべくして起きたことをこれほど明晰に見通させてくれる書物に出会ったのは、これが初めてである。著者が専門とする16世紀に、知と技術が自然の模倣から、自然の支配へと移行したこと、そしてその頃にはまだあった自然への畏敬がその後失われていったことから、科学主義的な幻想が生まれ、そして科学技術がとくに20世紀の大不況を契機として、国家に取り込まれ、その軍備拡張に寄与することになったことの延長線上に、現在の「原子力ムラ」の「原発ファシズム」とそれがでっち上げた「安全神話」があることが、簡潔ながらもしっかりとたどられている。また、原子爆弾をマンハッタン計画の延長線上に、「原子力の平和利用」があり、それはさらにニュー・ディールを背景としていることや、並行して日本では、戦前は岸信介が指導し、今日の経済産業省に連なっていく、国家資本主義による軍需産業の発展があったことも歴史的に描かれている。ちなみに、岸信介は戦後、核技術の導入に奔走し、その際核武装による「国力」の誇示をつねに夢見ていたとか。とくに日本の戦後に、「進歩」、「成長」、そして「復興」と語られてきたことが、何に由来し、何に行き着くものであったかはもはや明らかだろう。なお、科学史研究の立場から、現在の「原子力技術」が技術的にも欠陥だらけであることも、丁寧に綴られている。近代の歴史を踏まえて核を乗り越える見通しを開くうえで、貴重な足がかりとなる一冊と言えよう。

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2011年09月01日

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ネタバレ

原発による放射性物質の汚染は、子孫に対する犯罪だとする著者の意見は、納得できるものでした。

原発はクリーンであると教科書的に習ってきたけれど、それは誤りでした。

原発それ自体はクリーンだとしても、その前後はクリーンではないということもあります。
原発の原料調達から汚染は始まり、数万年後まで放射線は出続けるということです。

数万年後は、人類が存在しているかもわからず、存在していても言語や絵が伝わるかわかりません。
立看板や警句は意味をなさない可能性があります。

数万年という単位は、人類の管理不能な単位であるということかもしれません。

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2021年01月27日

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 さすがに、学究の分野に進めばノーベル賞級の研究者といわれるだけあり、客観的で、説得力のある著述だ。

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2012年05月21日

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ネタバレ

 2011年3月11日の福島第一原発の炉心溶融・水素爆発事故を受けて、どうして日本で原子力発電が推進されてきたのか、その歴史的な経緯を振り返りつつ、原子力事故が隠される背景に探りを入れている。ページ数から分かる様に、それほど深い考察をしている訳ではないが、著者の専門分野との関わりを示しつつ、著者の考えを明らかにしている。

 本書は三章構成となっており、第一章では日本の原子力政策に岸信介元首相が果たした役割を強調しつつ、兵器転用の含みを残すための民生利用だったことを明らかにしている。
 第二章では、そもそも、原子核物理学から原子力工学へ至るためには、電気科学理論から電気工学へ至るのに比べ、比較にならないほどの経験蓄積が必要であり、未だ原子力を必要十分にコントロールできる科学技術はないという著者の考えを明らかにしている。
 第三章では、科学技術に対する幻想と、政治的思惑の野合が、現在の状況を作り出し、それを掣肘することすら許さないもたれ合いが原子力村にはあることを糾弾している。

 ではこれらの経緯を受け、これからどうすれば良いのか、そういうことを考えていく必要があるだろう。

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2012年01月25日

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福島出張のお供にチョイスしました。
「福島の」とついてはいるものの、中身は日本の潜在的抑止力としての「核」としての原子力への取り組みからはじまり、誰も制御できないものになっていった過程、そして日本がアジアに、そして世界にどのような態度を示していくべきなのかということを訴えています。
福島にいる人々は明らかに被害者であったものの、この国は、世界的に見れば加害者なのです。なんともやり場のない…

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2011年12月23日

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原発がなぜここまで推進されてきたのか。不安視する声が聞こえてこなかったのか。そんなことが分かる内容です。結果として誰にも止められなくなってしまっていると感じます。

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2011年11月09日

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かっては日本物理学会を100年推し進める才能と期待され、現在は科学史著述家として活躍されている山本義隆さんの書下ろしです。
戦後、アメリカで提唱された「原子力の平和利用」を、当時の総理だった岸信介が、日本で国策として始めたのは、必ずしも将来の電気需要を見込んでの判断ではなく、核兵器保有国としての将来性を考えてのことでした。やがて、国策は、国是となり、政治家、官僚、学者、企業が一体となり原発プロジェクトが、推し進められました。
国是は、決して過ちを犯さないはずのものです。最先端の科学技術が集約されているはずの原発への、科学的な批判や検証が省みられることはありませんでした。多くの専門家の発言がそれを証言しています。
ルネサンス以降の自然を凌駕する人間の技術革新を良しとし、今後も進むのか。技術では制御できないものがあることを認め、謙虚に新たな道を模索するのか。私たちは選ばなければなりません。

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2011年09月16日

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ネタバレ

科学史に精通した著者によると、原爆製造から派生した原発技術は、核分裂という物理学理論から生み出された科学技術であり、それまでの経験主義的な技術先行で、理論が追いついてきた事例と異なっていると述べている。このような原発技術は未だ未完成であり、数万年にわたって管理が必要な放射性廃棄物の問題など、人間の感覚や想像を超える制御不可能なものと主張する。人間の能力を超えるものが存在するという認識は大事であると思った。裏表紙に記された一文には、日本の原子力ムラについての状況がシンプルに(一文としては長いが)的確に表されている。

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2011年09月11日

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山本義隆 「福島の原発事故をめぐって」 将来に負の遺産を残さないために脱原発を行うべしの論調。

著者の主張「原発周辺の住民に対して、原発という未完成技術の発展のために捨石になれという権利は誰にもない」


著者の主張に同意するが、これまでの原子力政策を否定し、脱原発を実現すると、安全保障や外交面で問題(核について 日本の国際的発言力が低下して 核なき世界が遠のくこと)もありそう。


原子力問題は 経済産業だけでなく 外交、安保、環境、憲法解釈など、それぞれの意見を知りたい。メディア、選挙、国会で争点化してくれないだろうか。


これまでの原子力政策
*原子力技術は 産業利用のみでなく、軍事利用も選択肢
*どちらを利用するかは政策による
*核兵器を持つことができなくても、原子力技術を持つことで、潜在的に 核兵器を保有していることになり、核についての国際的な発言力を維持できる



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2020年02月07日

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ボリュームはあまりないし、内容も悪くはないのだけれど、ちょっと退屈だったかなぁ。期待が大きすぎたかも。

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2018年10月09日

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原発停止による電力不足が日本経済に与える影響があることは分かっていても、原子力発電に関しては再考すべきだと思います。どんなに安全だと言われても、無害化まで数万年かかる放射性廃棄物の処理すら人間にはできていないのです。

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2013年02月09日

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原子力と核兵器の関係、とくに核燃料サイクル政策の不自然さへの指摘は、広く共有されるべきだと思う。それにしても、財政赤字の子孫への負担を憂う人々が、万年単位の放射性廃棄物という負の遺産に鈍感な現実は理解に苦しむものがあります。

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2012年03月11日

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間違いなく慧眼である。著者は、長い間政治に関わりそうな問題については頑固に沈黙を守ってきた。それだけに深く考え抜いた結論であると思う。
しかし、惜しむらくは、こうした本にするには、与えられた情報量があまりに少ないのでは無かろうか。原子力村だって一枚岩と推断できない様々な考え方があるに違いない。もう少し丁寧にそうした部分が拾えたらなあと無い物ねだりをしてみたくなる。
このタイミングでこのたぐいの本を出すとすれば仕方ないのかもしれないが。

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2011年09月01日

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