東崎惟子のレビュー一覧
-
Posted by ブクログ
ネタバレなんとなく転生モノでもない、純粋なファンタジーを読みたくなって、タイトルと表紙と電撃文庫という組み合わせでなんかそんな感じがした本作をジャケ買い。
結果的にとてもファンタジーだった。満足。しかもだいぶ不幸気味。
ヨコオタロウや縹けいか作品ほど残酷で絶望というほどではなかったが。
強くて切ない主人公。
コミックだと明るいものを読みたい昨今だが、小説だとそうでもない。なぜかは自分にもよくわからない。
しかし一番の疑問点は、本屋で見かけたときはシリーズで、二冊目があったはずということ。
途中から「あれ、この展開どう考えても…」となり、読み終えた今でも「なぜ二冊目がありうるんだ?」ってなってる。変わった方向からネタバレを食らってしまった。
結局アレですね、人は愚か、と。 -
Posted by ブクログ
鮮烈で脳にこびりつくぐらい印象的なストーリーだった。
主人公の少女の描き方がとにかく上手くて、いくつかのエピソードを通して、人称や視点も使い分けながら少女の多面的な部分を描くと同時に、登場人物の目を通して彼女が持つ心のうちの優しさや魅力にも自然と読み手側が気づけるようになっている。
復讐と愛という相反するふたつの要素がテーマになっていると思うが、これも物語内で主人公視点の部分が少ないことによって、いわゆる心の中の葛藤のような部分に焦点を当てすぎることなく、程よく感情移入し、また程よく傍観しながら、メインストーリーの流れを追えるようになっている。それでいて、最後にはちゃんと感情の波に浸らせてくれる。
読み終わって全体を俯瞰すると、プロローグを絡めた構成のうまさには舌を巻いてしまうし、無機質気味ながらここぞと言うところで情熱的になる語り口も感情を動かす場面を演出するのに一役買っていると思う。
いやー読んでよかった。 -
Posted by ブクログ
ネタバレ東崎惟子『王妹のブリュンヒルド』は、シリーズの中でもひときわ濃密な感情の奔流をたたえた一作であり、その読後に残る余韻は、単なる物語の完結を超えて、読者の内面に深く沈殿していく。
本作の核にあるのは、愛と赦し、そして赦されなさという、極めて普遍的でありながら、扱うにはあまりにも苛烈な主題である。ブリュンヒルドとシグルズの関係は、血縁という揺るぎない絆で結ばれながらも、その内実は痛ましいほどに歪み、すれ違い、そして決して単純な形では回収されない。だが、その“解けなさ”こそが、本作の価値を決定づけていると言っていい。
登場人物たちは皆、不器用である。自らの感情を持て余し、言葉にできず、あるいは誤った形でしか伝えられない。その結果として生じる悲劇は、決して奇をてらったものではなく、むしろ現実の人間関係の延長線上にあるような生々しさを帯びている。だからこそ読者は、ただ物語を“読む”のではなく、彼らの選択や逡巡を、自らの痛みとして追体験することになる。
特筆すべきは、その重厚な構造の中に確かに息づく“愛”の存在である。たとえ憎しみに覆われ、破壊的な結末へと向かおうとも、そこにあった感情の根が愛であったことは否定されない。この二律背反的な感情の共存が、本作に単なる悲劇以上の奥行きを与えている。読者は、誰かを責めることも、完全に肯定することもできない曖昧な領域に立たされ、その中で人間という存在の複雑さを思い知らされる。
また、物語の終着点も印象的である。劇的なカタルシスではなく、静かに、しかし確実に胸に沈み込んでくる結末は、読者に思考の余白を残す。すべてが解決されたわけではない。それでもなお、この物語は確かに「終わった」と感じさせる力を持っている。その余韻の長さこそが、本作の完成度の高さを雄弁に物語っている。
『王妹のブリュンヒルド』は、読み手に決して優しい作品ではない。だが、その厳しさの中にこそ、物語が持ちうる深みと真摯さが宿っている。感情を揺さぶられ、心を削られ、それでもなお「読んでよかった」と思わせる力——それこそが、本作が多くの読者の心に刻まれる理由なのだろう。 -
Posted by ブクログ
ページをめくる手が止まらなかった!!
寝る間も惜しんで読み倒した
前半
よく聞くカルト宗教の話
エホバの知識がある程度ある人なら、あー、このことねと読める
思春期の恋のくだりは、よく描けていて、ドキドキした
映画館のシーンは、個人的に「キュン」だった
手の描写一つ一つが甘酸っぱく描かれていて好き
後半から
ガラリと変わる
ススキノ事件を上回るグロテスク描写で、読むのをやめかけた
カルトにより、人間変わってしまうことを描きたかったのか、でも、違う方向性で描けなかったかなと
そして、なんだか設定がファンタジーっぽくなり、ついていけず興冷め
でも!
なるほど、ラストの描き方がなかなか!
え?!そうくる?と思ったが、良かった
後半の展開になっても、主人公を思い続ける十条はすごいよ、、
理屈じゃなく、99%の人は無理なはず
サイコパスか?!
グロテスクシーンをマイルドにしたら実写化見てみたい
主人公
高石あかり、志田彩良、當真あみ、清原果耶
十条
小林虎之介、宮沢氷魚
でどうだろう
-
Posted by ブクログ
''狂気''のひとこと。
おかしくなりそうな本だった。
でも続きが気になって仕方なくて最後までほとんど一気に見てしまった。
狂ってる中に、つかぬ間の青春。学生時代の当たり前の生活がこんなに素敵なものだったのかと胸が苦しくて仕方なかった。
救われた、のか...
''神''をたてるのも、なにかに縋って''信仰''するのも、結局は自分たち人間が考え出したものに甘えてるというかなんだろ...うまい言葉が見つからないが、こう不確定の何かに救いを求めるのは人間の本能的な弱さなのかと思う。
居るかも分からないものへの信仰心で何かが変わるのかと言われると、カルトや宗教への信仰がないわたしには分からないしそこに対しての教養もないので、この本は狂っているとしか言いようがない。
ただ本当に可哀想という言葉で終わらせるにはカルトや宗教に関する重大な事件が多すぎて、怖かったなぁという言葉で終わらせてはいけないなと感じた。なぜこういう宗教ができるのか、信仰する人は抜け出せないのか、家族はどうなるのか、二世宗教者はどういう生き方をするのか勉強してみようと思う。 -
Posted by ブクログ
ネタバレクリムヒルトとブリュンヒルド(著:東崎惟子)は、シリーズの中でもひときわ濃密な陰影を湛えた、静かでありながら苛烈な物語である。読み進めるほどに、王という存在の重みと、その座に就く者が背負わざるを得ない「選択の残酷さ」が胸に迫ってくる。
本作で描かれるのは、単なる善悪では割り切れない人々の決断の連なりだ。それぞれがそれぞれの正義と責務を抱え、最善を尽くそうとするがゆえに、結果として取り返しのつかない断絶が生まれていく。その構図はあまりにも誠実であり、だからこそ痛ましい。しかし、その痛みこそが本作の核であり、読者に深い思索を促す力となっている。
クリムヒルトの在り方は、とりわけ印象的だ。彼女は理想や情だけで動くのではなく、未来のために現在を切り捨てる覚悟を引き受ける。その姿は決して華やかではないが、だからこそ王としての孤独と気高さが際立つ。彼女の選択は決して万人に肯定されるものではないかもしれない。それでもなお、その決断の重みを正面から受け止めようとする意志に、強い感銘を受ける。
また、本作が優れているのは、誰一人として単純な「悪」として描かれていない点である。対立する者たちもまた、それぞれの立場において必然を抱えており、その衝突は避けがたいものであったと理解できてしまう。この救いのなさは、同時に物語の深みそのものでもある。
結末に漂うのは、決して快い達成感ではなく、静かな余韻と苦い納得だ。しかしそれは、軽やかな希望よりもはるかに強く、長く心に残る。すべてが報われるわけではない、それでもなお人は選び続けなければならない——その厳然たる事実を、美しく、そして重厚に描き切った一冊。 -
Posted by ブクログ
書店で表紙と帯が目に入り、興味をひかれ読んでみた本。
主人公の女子高校生は幼い頃、母とともにとある新興宗教の勧誘を受け、それにはまっていく。
宗教活動に勤しむ母によってだんだんと引き裂かれる家族仲。家族が幸せになれるという教えを信じ、母のため、神のために無垢な心で祈りを捧げ、活動をしてきた彼女だったが、信仰心、家族愛、責任感、教団の闇によって着実に狂わされていく。そして、惨劇が起きてしまう。
物語前半は、カルト宗教にはまっていく恐ろしさと、人間の愚かさが描かれたヘビーな内容で、思わず目を閉じ、落胆の息を吐いてしまうような箇所もあった。
後半は衝撃的な展開になるのだが、ネタバレになるので割愛。
読んでいて楽しい作品ではなかったが、一人称視点でカルト宗教の恐ろしい側面を体験でき、ハラハラする展開もあって、結末も納得いくものだった。
フィクションであることが救いだが、少なくともこの物語のように教団に取り込まれ、苦しんでいる人はいるのだろうと考えると、いたたまれなく思えた。