高井ゆと里のレビュー一覧
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人は生まれた瞬間から男性か女性かを決められ、戸籍に登録され、それ相応の「らしさ」を身に着けさせるべく育てられる。
服装や髪型、言葉遣いや態度、挙げていったらきりがないほどあらゆる場面で男性らしさや女性らしさが求められる。
学校でも教科書や制服から性別の違いを意識させられ、別の生き物なのだという認識が脳にうめ込まれる。
その当たり前の中で違和感を覚えるトランスジェンダーの苦悩を痛感した。
シスジェンダーが考える性別の基準がいかに極端で残酷であるか。
生まれ持った性別に違和感を感じないでいられる特権が、いかにトランスジェンダーを傷つけているか。
無自覚な固定概念や偏見に気づかせてくれる一冊だった。 -
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別の著者の本(たしかフェミニズム系の本だったと思う)で「差別主義者の最大の特徴は、自らが差別主義者だと自覚していないことだ」と書かれているのを読んだことがあり、自分が誰かを無意識のうちに差別することがないように、自分のよく知らないトランスジェンダーについて書かれたこの本を読んでみた。
著者は、「トランスジェンダーのことをきちんとわかりやすく書いた本が世の中にないので自分でこの本を書いた」と述べている。
私は専門外なのでこの本に書かれていることがどれほど正しいのかは判断できないが、少なくともこの本を読んでトランスジェンダーの方たちの気持ちを以前よりはるかに理解したり想像したりすることができるよ -
Posted by ブクログ
この本を読み終えて、自分の中にフィルターが一枚生まれた気がした。それは過剰な忖度だったり、厚みの分だけ他者との距離を生んでしまうものではなくて、考えや思いを口にしたり文字で発信する際に、無意識に誰かを傷つけてしまうような表現をこしとってくれるようなもの…であったらいいなと思ってます。
正直なことを言うと、半分くらい読んだ時点ではトランスジェンダーの人たちの辛い体験や困難を想像して神妙な面持ちになりつつも、文章の端々から滲み出てくる言葉の強さに「なんかすみません…」と書き手のお二方に頭を下げたくなるような圧を感じてしまったのも事実でした。本書に出てくる表現でいうところのシスジェンダーにとって、ト -
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ネタバレ「身体の性」は、生物学的な特徴で外性器のような客観的な要素をイメージされやすいが、実際には外性器をもって他者の性別を理解することはまれで、背の高さや髪の長さなど「身体の性別特徴」によって判断される。よって、「身体の性」とは複合的な概念である。
男性の性的特徴がある人が女性ホルモンを投与し、睾丸を摘出しても、「男性でない状態」に近づきたいだけで、「女性化」したいとは限らない。
トランスの人々は厳しい社会的現実によって、メンタルヘルス不調に陥りやすい。
トランスジェンダーの法的な性別商人は権利の問題で、公衆浴場やスポーツなどの局所的な場面の話は別である。それらの話は、それぞれの事業者や団体が個別運 -
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ネタバレトランス男性/女性という言葉自体、ジェンダーのカテゴリーは2つだけしかないという考えに異をとなえる人からすると不適。
今日におけるトランスジェンダー問題とは、シスがトランスとの共存の中で発生する問題であり、トランスが直面している問題ではない。
家庭内暴力のシェルターは深刻なまでにジェンダー化されており、トランスを念頭に置いていないため、ホームレスや殺人事件につながっている。
暴力の脅威があるせいで、多くのトランスが自分の外見を変えるか、公共喰うy間を通る仕方を変えるか、どちらかを選ぶように強いられていると感じている。
不遇にある人々から、ラディカルで怒りっぽく、品が悪い人々によって運動が奪われ -
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自分のように今まできちんと学んでこなかった人間にとっては、入門書として読みやすい内容であった。諸々の議論については他の文献をあたる必要があるが、その基礎固めにはなったと思う。後半に進むにつれて語気が強くなり、やや首を傾げる部分もあったが、著者らの熱意のあらわれと思いたい。
フェミニズムだけでなく、男性学に触れられていたのも興味深い。日頃から何気なく男性/女性でカテゴライズしている場面に遭遇することがあるが、それがいかに無意味な行為であり、その無意味な行為に苦しめられている人がいるということを考えさせられた。トランスジェンダーの同性婚・異性婚も個人的に興味を惹かれる内容であった。 -
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ハイデガーの『存在と時間』の解説書です。
『存在と時間』はかつて、既刊部分のみをもとに実存哲学の代表的な著作とみなされていましたが、その後「存在の問い」というより大きな問題設定のなかで『存在と時間』の位置づけを見なおすことの必要性が主張されるようになり、日本でも木田元が多くの著作を通じて、そうしたハイデガー解釈を啓蒙してきました。
もちろん、そのような理解が広く受け入れられたあとも、仲正昌樹の『ハイデガー哲学入門─『存在と時間』を読む』(2015年、講談社現代新書)や北川東子のハイデガー 存在の謎について考える』(2002年、NHK出版)など、あえて『存在と時間』の議論を実存哲学として紹介 -
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ハイデガーの思想に関しては先に読んだ飲茶の『あした死ぬ回復の王子』が物凄く分かりやすかったので、もう少し違う視点、更に原典に近い内容を読みたくて手に取った。それと、何より著者の高井ゆと里に興味があった。ノンバイナリーの哲学者である。
ハイデガーの哲学そのものは、やはり原典をきちんと読もうという結論に達した。私は物臭なので、原典の今の感性から少しズレた語感を今の感性に直して、その上で自分自身の思考に当てはめる所作を好まない。噛み砕いて解説する本があるならそれで良くて、原典を経験したマウントは、本質的にそこまで重要視しない。
ただ、本書は、高井ゆと里氏独特の感性というか、言葉遣いがあったと思う -
Posted by ブクログ
は~時間かかった…
・UKはトランスフォビックが激しい。NHSの問題もあいまって治療にすごく時間がかかる
・トランスフォビックなフェミニストが政治的に反中絶などの右派的な人と組むことがある
・トランスヘイトの世界的な高まり
・刑務所廃止主義というのがあるのははじめて知った。性犯罪の厳罰化は賛成だが、安い労働力としてこき使われているのも事実
・”プライド”はブランド化され企業のイメージ戦略に使われてるだけじゃない?というのはそう思った。
ややこしいことを持ち出しているというのはそうだし、大掛かりな手術をしてでも性別を変えたいというのはなかなか想像しづらいが、もし自分がそうだとしたらどれほどつらい