【感想・ネタバレ】トランスジェンダー問題――議論は正義のためにのレビュー

あらすじ

トランス女性である著者が、トランス嫌悪的な社会で生きるトランスの現実を幅広い分析によって明らかにする。不十分な移民政策、医療体制の課題など、英国の抱える問題は日本と共通するところが多く、本書は日本の「トランスジェンダー問題」を考える上でも大いに参考になる。

議論は知識を踏まえ、事実に基づき、正義のために行われなければならない。
「女が消される」「性犯罪が増える」「多くの人が性別移行を後悔する」
――「トランスジェンダー問題」にまつわる数々の虚偽(デマ)から解放される時が来た。
これは全身全霊で推薦すべき、正義の書だ。
――李琴峰(芥川賞作家)

トランス女性はどちらのトイレを使うべきかというような、反対派によってでっち上げられた「問題」ではなく、当事者の経験する本当の「問題」を論じている。
20年以上コミュニティに関わるわたしから見て、ひろく一般の読者にお勧めできるはじめてのトランスジェンダーについての本。
――小山エミ(シアトル在住活動家、脱植民地化のための日米フェミニストネットワーク共同創設者、性労働者の権利と安全のための連帯代表)

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感情タグBEST3

Posted by ブクログ

ネタバレ

LGBTQ+差別の問題を正確に知る為に欲しく、以前購入したが少し読んで「積読」状態となった。
「ブレンダと呼ばれた少年」はノンフィクションでも小説のスタイルなので、アメリカ文学を味わう事が強いられるので尺が長過ぎて早々にめげた。本書は論文なのでこれよりはとっつき易そうだが、それにしても分量が多い。大変だが頑張ろうと思う。

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2025年03月30日

Posted by ブクログ

ネット言論でのパニックめいたトランスヘイトに左右されないため、まずはトランスジェンダーの人々がどのような状況にあるかを知るべきだろう。英国の事例が中心ではあるが、解説や訳者解題まで読むことで、日本の状況についてもある程度の理解を得られる。右派のトラスフォビアは今に始まったことではないが、驚くべきはマイノリティ側から社会変革を求める左派にもトランス排除の言説に取り込まれる層がいるということだ。そこにあるのは、かつて白人フェミニズムが犯してきたような権利獲得の力学であり、つまるところ更なる弱者を維持しようとするシステムである。ある程度 フェミニズムを理解したと考えている層にこそ、次なる連帯のために読んでほしい一冊。訳者である高井ゆと里氏の注釈も細かいところまで目が行き届いており、安心して読むことができる。丁寧な仕事に感謝したい。

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2023年03月27日

Posted by ブクログ

これは現在まかり通っている不正義についての正義の書であり、当事者たちが直面させられている絶望に対する希望の書だと思う。
そしてその不正義も絶望も生み出しているのはシスヘテロ優位のジェンダー規範であり、その恩恵に預かる我々(僕含め多くのシス男性)であることを決して忘れてはならない。
僕は加害者でもある以上、安直な連帯は許されないと思う。それでも、なんとか連帯できる手立てを探し続け、この不正義を変える義務が僕にはある。

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2022年11月03日

Posted by ブクログ

ある日、何かと強い意見がある同僚が、トランスジェンダーへの配慮が行き過ぎているのでは、と言った。オールジェンダートイレとかはやりすぎ。彼らは心の中でだけ思っておけばいい、そこまでは何も批判しない、という。ほとんどマジョリティの要素ばかりの彼のそのえらっそうな言い草に心底腹がたって反論したが、ずっとこれまで遠慮して我慢してきたのに、それはあんまりなのでは、というようなぼんやりしたことしか言えなかった。その時思い浮かんだのは1人トランスの知り合いのことだった。まだトランジションの途中で、ぱっと見て男性だったことがすぐ分かる容姿だった。海外で買い物に付き合ってくれた時、モールのトイレには行けないから家まで我慢する、と悲しそうに微笑んでいた顔が忘れられない。
同僚と議論する時間もなかったし、議論できるほどトランスジェンダーについてよく知らないと思い本書を手にとった。

詳しく英国の状況が説明されていてよく理解できたが、学術的な文体を忠実に訳したからなのか、読みやすいとは言えなくて、五分の四まで読んでいったん休憩。

古代ローマでも女装をし、女帝として女性の代名詞で呼ぶように命令していた皇帝が居た、という部分は、やっぱりずっと一定数人間の中には存在するジェンダーなんだなと得心した。

機械みたいに2つにキレイに分かれるわけではないのだから、そう生まれついた人たちが同じように幸せになれるよう考えて社会のあり方を工夫して直していくことの何が行き過ぎなのか分からない。

そうやって少しずつ社会は前進し続けてきたのだし。

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2025年06月08日

Posted by ブクログ

ネタバレ

トランス男性/女性という言葉自体、ジェンダーのカテゴリーは2つだけしかないという考えに異をとなえる人からすると不適。
今日におけるトランスジェンダー問題とは、シスがトランスとの共存の中で発生する問題であり、トランスが直面している問題ではない。
家庭内暴力のシェルターは深刻なまでにジェンダー化されており、トランスを念頭に置いていないため、ホームレスや殺人事件につながっている。
暴力の脅威があるせいで、多くのトランスが自分の外見を変えるか、公共喰うy間を通る仕方を変えるか、どちらかを選ぶように強いられていると感じている。
不遇にある人々から、ラディカルで怒りっぽく、品が悪い人々によって運動が奪われる。そして、その運動は今度は卑劣なアクティビストによって売名のためにダメにさせられる。
人々をセックスワークに突き動かしているそもそもの制度的な原因、とりわけトランスの人々を動かしている原因に対処することなしにセックスワークを犯罪化することは、すでに存在している不平等な取引をより強固なものにする。結果、ワーカーはますます危険に身を置くようになる。)
トランスジェンダーは誤解によって、同性愛者からもフェミニズムからも敵視される部分がある。

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2023年09月10日

Posted by ブクログ

謎が解けた。なぜ左の“フェミニスト”が右の宗教保守と手を結ぶのか。「肉屋の豚」現象ですね。

そして、これが日本だけでも英国だけでもないのは「米国の宗教保守が、明確にLGBとTを分断する戦略をとってるから」。

私がTwitterで上位ツイッターフの相手してて感じてた「信念」や「使命感」はあながち間違いでもなかったんだな…という絶望。

一方で、家父長制に迫害されてきた人たちが連帯して立ち上がれば十分、というメッセージには、頷きつつこちらこそ救われた。トランス差別に対して何もできてない無力感があるので。
立ち上がりましょう。立ち上がります。

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2023年01月07日

Posted by ブクログ

は~時間かかった…
・UKはトランスフォビックが激しい。NHSの問題もあいまって治療にすごく時間がかかる
・トランスフォビックなフェミニストが政治的に反中絶などの右派的な人と組むことがある
・トランスヘイトの世界的な高まり
・刑務所廃止主義というのがあるのははじめて知った。性犯罪の厳罰化は賛成だが、安い労働力としてこき使われているのも事実
・”プライド”はブランド化され企業のイメージ戦略に使われてるだけじゃない?というのはそう思った。
ややこしいことを持ち出しているというのはそうだし、大掛かりな手術をしてでも性別を変えたいというのはなかなか想像しづらいが、もし自分がそうだとしたらどれほどつらいだろうな。トイレや風呂は一部のクソ野郎のせいで不自由だし。
オトコはみんなレイプ魔でオンナはみんなバカだって?落ち着きなよ。

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2024年07月31日

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