五十嵐大介のレビュー一覧
-
Posted by ブクログ
今の時代のカウンターとして成立するものは何か。ニュートン力学以降の科学合理主義の先端たる現代社会に対するカウンターとして対置するものは何か。五十嵐大介は科学合理主義を光と喩える。キリスト教の神を光と、言語を光と、ロケットを光と、欺瞞を光と、社会を光と喩える。そして闇を対置させる。有限より無限を、キリスト教より異教を、真実より秘密を、男より女を。
東洋と西洋が交わるところ、数千年の歴史の中で都市の地下に封じ込められた異教の神が、象徴の中に生き続け、捨てられた女の恨みを通じて現代の覚醒しようとする力。ジャングルの精霊のビジョンはパブロ・アマリンゴのドローイングの如くアヤワスカのビジョンが用いられる。世界の多重な細部まで描写しようとすることで伝えようとする、世界の持つ超自然的な力。自然の持つ本来の姿に気づけたものだけが持ちえる生命力。人間の本来性に光りを当てれば、こちらの方が本来の姿だと、このこの作品は主張する。しかしこれは現代ではすでにオカルティズムの領域に属するのだろう。人間の闇に光を当てる事で、ギリギリの真理に辿り着こうという試み。かつて魔女の弟子であった神父が、転向した理由について説明して言う科白、「神は・・・確かに存在するからです。」。
光は無限に生成され、文明は世界中を覆い尽くし、果てしない未来へ向か行く中で、闇の中から未だ生まれ得ぬものを待ちわびながら、光の中へ踊り出たいと思っている魂。そしてその先に世界と一体となる事で超克するまでをこの作品では伝えようとする。
インターネットによって巨大な闇が文明にも生まれたこの現代で、この漫画は科学主義とオカルティズムの天秤を、オカルティズム側に傾けようとしているのだ。