社会的金融教育家を名乗る著者による、お金の不安に対する考え方を説いた一冊。
著者は、この本の目的を冒頭でこのように述べています。
『この本で考えたいのは、息苦しい「お金の不安」から、どうすれば抜け出せるかということだ。それは、「お金をどう増やすか」という投資の話でもなければ、「気の持ちようで不安は消える」という精神論でもない。新しい時代を生きるための具体的な生存戦略の話だ。』
また、この本の全体像を、8つの問い、4つの行動で構成しています。
・整理する
①焦りを生む空気からどう抜け出すのか?
②成功者を真似てもなぜうまくいかないのか?
・支度する
①労働と投資、報われるのはどちらか?
②お金以外の何に頼ればいいのか?
・直視する
①なぜ「稼ぐ人が偉い」と思われるのか?
②いつまでお金に支配されるのか?
・協力する
①どうすれば仕事を減らせるのか?
②”大人”の常識はこれからも通用するのか?
これらの質問に対し、漠然とした不安を感じるかたには具体的な解決策ではありませんが、考え方のヒントが述べられていますので、参考になると思います。
老後2000万円問題をきっかけに、特に老後にお金の不安を抱える人が多いと思いますが、今後の心構えとして知っておくべき内容だと思いました。周りの情報に振り回されず価値を考えること、ピケティの法則の本当の意味、制約条件がカネからヒトへ移行していることなど、言われてみれば、という話が多く、理解が深まります。著者が遭遇した阪神淡路大震災の経験から得られたことなど、著者の背景を踏まえるとより納得が深まります。投資やリスキリングといったことも重要だとは思いますが、その前にこういう考え方を身に付けることも重要だと思います。
▼長らく日本をおおってきた「がんばっても報われない」という閉塞感は崩れ始めている。ギャンブル的な投資で一攫千金を狙うより、「働いて稼ぐ力」を着実に育てるほうが、人生を現実的に好転させられる時代が来ている。
▼AIは、与えられた問題を解くことには極めて優れているが、解くべき問題を見つけ出すのは、人間の方が得意だ。そのためにも、日常を深く見つめる「観察力」が重要になる。
▼会社は、社員を養うための装置ではない。会社とは、価値を生み出し、社会に役立つための場にすぎない。誰かの役に立つ価値を提供できなければ、企業は容赦なく淘汰される。「会社が社員を支える」のではなく、「社員が会社を支える」、あるいは、「社員が会社を通して社会を支える」。そんな単純な真実を、リーマンショックの嵐の中で骨身にしみえ理解した。
▼貯蓄自体を否定するつもりはないが、それだけでは根本的な解決にならない。イスそのものを増やす取り組み、つまり人材不足や少子化への対処が必要だ。お金だけでは解決できない現実が、すでに日本のあちこちで表面化している。
▼「老後の不安」は、個人の資産形成で解決する問題ではなく、人口構造という国全体で取り組むべき問題だった。それがいつしか、「個人のお金の不安」にすり替えられてしまった。
▼私たちの生活を縛る制約は、カネからヒトへと移っていく。経済の重心が、お金から働く人へと大きくシフトする局面を迎えているのだ。
▼重要なのは「大人になってから身につけた常識」と「子どもの頃に感じた素直な直感」との間にある葛藤に気づくことだ。その葛藤を無視し続ければ、私たちは新しい時代へと踏み出せない。
<目次>
はじめに── どうして、お金の不安が増えるのか?
誰もが抱えるお金の不安
作り出される孤独
不安のカタチは変わってきた
社会を物語のように俯瞰してみる
子どもたちの問いが教えてくれたこと
8つの問い、4つの行動
第一部 整理する――「外」に侵されない「内」の軸
第1話 その不安は誰かのビジネス
――焦りを生む空気からどう抜け出すのか?
増幅される「時間の焦り」
価値観を試す「メロンジュース」の問い
「欲しい」から「買わされる」へ
カネも不安も売る時代
「価格」より「価値」を優先する生き方
「焼きうどん」が教えてくれたこと
その不安は、あなたのものか
コラム1 不安連鎖社会を断ち切るために
第2話 投資とギャンブルの境界線
――成功者を真似てもなぜうまくいかないのか?
「みんな儲かっている」の正体
誰も教えない「儲けのレシピ」
「100億男」の末路と教訓
儲けたお金は誰の財布から?
健全な投資とギャンブルの見分け方
なぜ努力は報われなくなったのか
コラム2 「知らないと損する投資術」は存在しない
第二部 支度する――「内」に蓄える資産
第3話 「会社に守られる」という幻想
――労働と投資、報われるのはどちらか?
「投資をがんばった方がいい」という誤解
あなたをめぐる人材争奪戦
AIに負けないための「観察力」
「会社に守られる」という幻想
支えるのは会社か社員か
「稼ぐ力」の磨き方──仕事から「為事」へ
第4話 愛と仲間とお金の勢力図
――お金以外の何に頼ればいいのか?
カレーに宿る愛と利己心
「選べない村社会」から「選べる仲間」へ
「必ず6を出せる男」の愛され力
共感を生む「自分の不安」
「不安」と「ゴール」の共有戦略
第三部 直視する―― 変えられない「外」の現実
第5話 「あなたのせい」にされた人口問題
――なぜ「稼ぐ人が偉い」と思われるのか?
現代版アリとキリギリス
「老後の安心」を奪い合う日
バスが来ない、先生もいない
暮らしが壊れる「1100万人の働き手不足」
「1円も稼がないこと」の価値
値上げされた100円は、どこへ消えた?
円安と日本が失った「力」
お金の不安という幻想
コラム3 「ドルを稼ぎ、土地を失う」外貨投資の副作用
第6話 「お金さえあれば」の終焉
――いつまでお金に支配されるのか?
命を奪う「モノ不足」の恐怖
700年ぶりの人口危機――ヒトが制約になる時代へ
「ヒトの制約」を管理する人
ヒトよりカネを優先する構造
経済を回せない巨大ピラミッドの罠
もったいないのは何か?
第四部 協力する――「内」から「外」を動かす可能性
第7話 「仕事を奪う」が投資の出発点
――どうすれば仕事を減らせるのか?
「シイタケ」で読み解く給料アップの秘密
仕事が減るほど豊かになる理由
銀行が隠す「お金が眠る」カラクリ
「投資される側」になる勇気
「守る」ことで失った30年
「奪い合い」と「分かち合い」の選択
第8話 「子どもの絶望」に見えた希望
――〝大人〞の常識はこれからも通用するのか?
「最近の若者」の正体
歴史を変える非常識な挑戦
「出る杭」が打たれない条件
あなたが社会を変える可能性
危機感という希望