小山宙哉のレビュー一覧
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ネタバレおすすめ度:90点
着陸まであと2日。
食堂で偶然にも吾妻とその家族をみかけた。意を決し話しかけようとする六太。すると吾妻は、六太に力強く手を差し出してきて――。
「打ち上げ、成功おめでとう」と、素直な気持ちを表現してくれた。吾妻と固い握手をし、その家族と話しをしたことで、彼の本当の気持ちがわかったような気がした六太だった。
2026年3月8日――日々人が月面着陸する日の朝。
南波父と母の寝室では、午前4時にセットされた目覚まし時計が、けたたましく鳴り響いていた。だが、この時間に目覚まし時計が鳴ったのは、南波家だけではなかった。日本中の人々が、日々人の月面着陸する瞬間を生放送で見るため、一斉に起きだしたのである。
日々人は宇宙服を着こみ、月へ降り立つ直前、六太から送られてきた映像を思い出す。その内容は、『吾妻は日々人を妬んでおらず、日々人の月面着陸をとても楽しみにしている』――という良い知らせだった。
心のつっかえがなくなり、身も心も軽くなった日々人は、一気に月に降り立ちジャンプ。
そして叫んだ「イエーイ!」と。
その軽やかな姿はまるでウサギのようで、日々人は月面で最も高く跳んだ男と呼ばれるようになったのだった。
一方、六太は発表までは運を使いたくなかったにも関わらず、くじ引きで当たったり、半額シールを貼ってもらったり、さらには財布を落としても美人に拾ってもらえたりと幸運続き。意に背いて少しずつ運が消費されていくことに、たいそう焦りを感じていた。
六太はJAXAからの電話を待っていた。
そしてケンジもまた、家族と一緒に合格発表を待っていた。
宇宙飛行士を目指すまで、ケンジは仕事にいつも物足りなさを感じていた。ケンジの仕事は光化学研究所の職員。毎朝目覚ましが鳴る前に起き上がり、いつも同じバスに乗って会社に向かう。いつも同じメニューの食堂、グレーの地味な作業服、どこか向上しようとしない同僚たち。
ケンジはずっとモヤモヤを抱えていたのだ。
『俺はあの場所を飛び出したい。だだっ広い施設の、ほんの一角から――俺のモヤモヤをぶっ飛ばせるほどの場所へ――!』
そして、ケンジはJAXAから合格発表の電話を受けた。 -
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ネタバレおすすめ度:90点
日々人にとって吾妻は憧れの人だった。
日本ではJAXAのメンバーと南波両親が成田空港に集まっていた。
日々人たち宇宙飛行士は、ウイルス感染などを起こさないよう、NASAの隔離施設に入っていた。
一方六太は、ジョンソン宇宙センターの一室で、宇宙飛行士を選抜する最終試験を受けようとしていた。
審査員の中には日々人を妬んでいるという吾妻もおり、不安がよぎるのだが……六太の一番の心配はそのことではなかった。
先日のスクワットが原因で筋肉痛になり、座れなくなってしまっていたのだ。痛みをこらえ、なんとかイスに腰かけたまではよかったが――ガキンッ! とイスのネジがはずれ、六太は後ろに倒れてしまう。
本当は六太の実力を試したかった紫三世(むらさき さんせい)のイタズラだったが、そんなことは知る由もなく、六太はひたすら笑顔をキープするのだった。
あっさり終わった最終面接の翌日、六太たちはJAXA主催の親睦会に参加していた。受験者たちは知らないが、実はNASAでの面接はフェイクで、この親睦会こそが受かるか否かを決める場だったのだ。
そんな中、紫も六太に近づき、『みんなのことをどう思っているか』の質問をしていた。
正直に、新田は携帯の待ち受け画面がネコ、絵名はクシャミが変、森嶋は話す直前に必ず唇をひとなめするクセがある、などなど、仲間への愛情あふれる解答をする六太。
そんな六太を気に入ったのか、最後に『吾妻には話しかけないほうがいい』と忠告する紫。
しかしそれは逆効果で、六太は早々に吾妻に話しかけようとしており――?
しかしいざ吾妻に挨拶をしようにも、まったく会話が続かない。焦る六太に、吾妻は一つの質問を投げかけた。
「死ぬ覚悟はあるか――?」
六太は『当然ある』と答えたが――しばしの沈黙後、言い直した。
「本当は死ぬ覚悟、できてないです。多分、こりゃもう死ぬなって瞬間が来たとしても、ギリギリまで生きたいと思いそうです」
打ち上げ4日前。
六太たち家族は、月へ行く飛行士たちと最後の食事をするため、ケネディ宇宙センターへ来ていた。そこで六太は、日々人に一枚のDVD-Rを渡す。
打ち上げ直前。
そんな中、よりにもよって犬・アポがいなくなってしまう。
その後六太とアポは、怪しくもNASAの職員と名乗る明るい老人・デニールの車に乗せられていた。そこはもう20年以上使っていないシャトル時代初期の訓練施設だった。
そしていよいよ、カウントダウンの大歓声とともに、日々人たちの乗るマルスワンが発射したのである。
六太は、その様子を棟の屋上で静かに眺めていた。この場所のおかげなのか、六太の中にはもう日々人を嫉妬する自分はいなかった――。 -
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ネタバレおすすめ度:90点
六太は結論が出せず迷い悩んでいた。非情に切り捨てるのではなく、運に任せるべきなのか、と。
六太が提案した方法は、ジャンケンだった。一同が驚く中、いち早く古谷が反対する。古谷はこれまでやった全課題の成績を記録しており、ジャンケンには納得できないというのだ。そして、歯を食いしばって続けた。
「俺は……最下位や――最下位やったわ 俺……」
古谷の中で、もう2人は決まっていた。その名前を言おうとした時、六太が口を開く。
「やっさん、前にスルドイこと言ってただろ――ジャンケンを超える公平な方法はない――って」
この5人はジャンケンみたいなものであり、グーみたいなヤツ、チョキみたいなヤツ、パーのようなヤツがいるのだと。
「誰が一番強いか、答えを知ってるヤツいるか?」
ジャンケンで決める方法に納得したA班のメンバーは、それぞれ拳をかまえた。そして――。
『ジャンケン――――ホイ!』
ボックス内に、しっかりと、大きな声が響き渡った――。
数日後――。
古谷は、宇宙服の開発をしている職員・馬場広人に会うため、JAXAへと来ていた。
実際にその宇宙服を見せてもらうことが出来た古谷は、また決意を固めたのだった――。
人生を賭けたジャンケンで勝ったのは、新田とせりかだった。
数日後、宇宙に近づいた2人を祝うべく、打ち上げに集まったA班のメンバー。
そしてJAXAでは――JAXA側が選ぶ候補生を決めようとしていた。
JAXAの発表があった後――六太は福田に誘われ、スカイツリーへ来ていた。
日本初の有人宇宙ロケットの開発に携わることとなった福田は、一度ゆっくり六太と話し、礼を言いたかったという。
「ヒューストン行き、おめでとう!」
そして、男性枠は1つのはずだが、ちゃんとケンジも受かっていた。
2か月後に行われる最終試験を前に、六太は日々人の住むヒューストンへと来ていた。
だがその審査について、ジェニファーから不安な話を聞いてしまう。六太の最終面接の審査員である吾妻が、日本人初の月面着陸者に選ばれた日々人のことを妬んでいるというのだ――。 -
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ネタバレおすすめ度:100点
ケンジのいるB班では、真夜中だというのに、寝室にはけたたましいアラーム音が鳴り響いていた。メンバー内で主導権を握ろうとする溝口は、犯人捜しに躍起になり、B班の雰囲気は悪くなる一方である。
翌朝、六太のいるA班では唯一の時計がなくなっていた。そしてようやく見つけるも、その時計はめちゃくちゃに壊されていたのだった。
そんな中、真っ白なピースのジグソーパズルを3時間作業しろという課題が出される。六太の頭の中は混乱していた。なぜなら、六太は昨晩見てしまったのだ、福田が時計を壊しているその姿を――!
閉鎖ボックス内・10日目の深夜。A班メンバーが寝静まる寝室に、突然けたたましいアラーム音が鳴り響いた。時計が壊される事件に引き続き、また問題が起きたのだ。
「福田さん――よかった!」晴れやかな顔で硬い握手をする六太と福田。福田の行動は、すべてグリーンカードによる指示だったのだ。
そんな中、新田はまだアラームを探していた。グリーンカードの存在をまだ知らず、一人モヤモヤする新田に、六太は言う。「これだけははっきり言えるよ。この中には……悪い奴は一人もいない!」
そんな六太の言葉のおかげか、A班はグリーンカードを乗り越え、楽しげな雰囲気が戻った。
その翌日、A班にまた新たな問題が浮上する。せりかが個人的に食事を作りすぎてしまい、食料が最終日までもたなくなってしまったのだ。このことをせりかに打ち明けられた六太は、一人で勝手にグリーンカードのせいだと勘違いするのだった。
閉鎖ボックスでの試験もあと数日。A班はグリーンカードの存在に気づくことができた六太のおかげで、もと通り和気あいあいとした雰囲気に戻っていた。だが食料不足という問題は続いており、ジャンケンで食事を取り合うことに。
「ジャンケンを超える公平な方法はあらへん。負けても文句言うなよ!」
古谷はそうハッキリとした口調で言うのだった。
そして、ついに六太もグリーンカードデビューをすることになる。それは『唐突に叫びをあげ、ほかのメンバーを驚かせなさい』というものであった。
一方B班では,またも新たな問題が起きていた。パソコンに記録していたテストの点数データが、すべて消えてしまったのだ。溝口はここぞとばかりに、ライバル視しているケンジを犯人扱いする。しかしケンジは、冷静に自分の意見を伝えた。
その言葉に同じ班のメンバー・手島も賛同するが、溝口だけは違った。手島とケンジに、選ばれても辞退するよう迫ったのだ。
溝口の横暴とも取れる言動に、険しい表情を浮かべるケンジは、ひとりバスルームにこもり、心を落ち着かせようと耐えていた。
ケンジは、娘・風佳が自分を送り出す時に発した、『かぺー!』という言葉を思い出す。
閉鎖ボックスでの生活も残り2日。B班では、それぞれ自分の好きなものについて談話していた。手島、北村、そしていつの間にか富井も加わり、みんな楽しげな表情を浮かべていた。
ケンジがうまくきっかけを作ったことにより、ギスギスしていた雰囲気が、ようやく改善されたのである。
一方、A班では、「良いニュースと、悪いニュースと、あと、微妙なニュースがあります――どれから聞きたい?」
六太がみんなを集め、重大なことを発表しようとしていた。悪いニュースは、明日の食料がないこと。良いニュースは、六太が小麦粉と調味料を発見したということだった。
「これで明日はうどんが食えるぜ、みんな!」
楽しげにうどん作りをはじめるA班のメンバー。六太が、『作り方は天文学者・シャロンに教えてもらった』と明かすと、シャロンと親しいことに一同羨ましげな声をあげた。六太は感動した。なぜなら、子どもの頃天文台に友達を誘っても誰も興味を示さず、誰もついて来てくれなかったのだ。
様々な宇宙の話をしながら、六太は目頭を熱くする。
『ここにいたんだ――誘ったら、喜んでついて来てくれそうな連中が……――ここにいたんだ!』
しかし――……。
「そういえば――もう一つの微妙なニュースって?」
福田の言葉に、六太がゆっくりと、神妙な顔で答えた。
「……ニュースっていうより再確認で……明日、必ず……この中から二人、選ばなきゃいけない……」
楽しい時間には、限りがあったのだ――。
閉鎖環境での生活も、ついに最終日。日記を書く者、成績表を見つめる者、受験者たちはそれぞれの想いを胸に、最後の朝を過ごしていた。
六太は、『宇宙飛行士にふさわしい2人』の選出方法について、ずっと考えていた。『どーやって決めればいいんだ?』誰だって自分が一番宇宙飛行士になりたいと思っているに決まっている。5人の中からその2人を自分たちに決めさせることは、グリーンカードより何より一番酷い仕打ちだ、と。
時間は刻一刻と過ぎ、管制からいよいよ指示が出された。
『どんな方法でも構いません。2時間以内に2人を選んでください』 -
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ネタバレおすすめ度:95点
三次審査は2週間の泊まり込みで行われるという。合格者人数は15人が残っていた。
理事長・茄子田のかけ声で、さっそく外へ移動するよう指示される六太たち。そこで待っていたのは、窓という窓を鉄板で塞がれた、異様なバスだった。
しばらくすると、JAXA職員の指示で受験者たち同士の『交流会』が始まった。隣り合った人と10分間きっちり話し合い、合計140分間しゃべり続けろというのだ。
バスは受験者たちが就寝したあとも走り続け、何時間走ったのかもわからなくなった頃、ついに停車する。外の様子が見えない不気味な場所であった。
今度は5人一組、A・B・C、3班に分かれることになった。これから班ごとに別の閉鎖環境ボックスに入り、そこで2週間、管制から与えられる様々な課題に取り組んでいくのだ。そして最終日には、各班互いに話し合いをして、全員意見一致のもと、5人の中から2人だけ宇宙飛行士にふさわしい者を選ぶのである。
六太のいるA班のメンバーは、せりか、福田、新田、古谷。閉鎖ボックスの中へ入ると、早速、『5人で話し合い、現在の時刻を推測して時計を合わせろ』という課題が出された。
A班のメンバーは、まずお互いを知るため、改めて自己紹介をすることにした。和気あいあいの空気に気が緩んだのか、六太に『せりか』と下の名前で呼ばれたせりか。ふと、小学校の頃、自分の名前の意味を父に尋ねたことを思い出していた。『せりか』という名に意味はないが、とても大切につけられた名だということを――。
次の課題は、ランニングマシンで走りながら5分間で計算問題を何問解けるかという『計算ランニング』だった。
さらに続く課題は――難題だった。『多額の予算がかかる宇宙開発事業を非難する辛口キャスターを納得させられるような文章をつくれ。』
閉鎖ボックス内の合宿が5日目ともなると、各班にも性格が現れてきた。C班は穏やか、六太がいるA班はにぎやか、しかしケンジのいるB班だけは、微妙に険悪なムードが漂っていた。頭脳明晰なメンバーが集まっているB班は、互いのプライドが邪魔をしてしまい、心に壁ができてしまっていたのだ。
だが、楽しげに過ごしていた六太たちA班にも問題が起きる。福田の眼鏡を古谷が誤って壊してしまったのだ。福田は眼鏡がないまま、必死に課題をこなしていた。 -
Posted by ブクログ
ネタバレおすすめ度:90点
JAXAでは、六太が元上司の発言のせいで、不合格にされそうになっていた。子ども時代の南波兄弟を知る審査員の一人・星加は『六太は弟のために頭突きをした』という真実を審査員たちに伝え、合格を再検討して欲しいと説得していた。
そんな中、消火器男に襲われピンチを迎えた六太だったが、結果、市民を救ったヒーローとして人気者になってしまっていた。それがJAXA内でも『勇気ある行動をした南波六太』として評判になり、六太は2次審査を無事通過する。
その夜、帰国の準備をしていた六太は、ふと家具の下に日々人が書いた『遺書』が隠されているのを発見する。
数日後、合格祝賀会でケンジは火星へ、せりかはISSに搭乗したいという希望もっていることを知る。