泊功のレビュー一覧
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ネタバレ今回一番印象に残ったのは、程心が執剣者になった瞬間だった。正直あまりにもあっさり抑止が崩壊して笑ってしまったが、同時にこれは構造的には納得感しかなかった。
程心は人類と三体世界の仲介になろうとしていたように思う。執剣者に求められていたのはむしろ逆で、「撃つかどうかを合理的に判断する人物」ではなく、「合理性を超えて撃つ可能性を否定できない人物」や、ウェイドのように「こいつなら閾値を超えたら絶対やる」という確信を与えるような振る舞いが求められるべきだったと思う。羅輯はやはり個としての判断基準を持っており、それが誰にも共有されないという点に本質的な強さがあったのだと思う。彼は人類に対しても完全には内面を明かさず、ある種の面壁者であり続けたように思う。その「理解不能性」こそが抑止の信頼性を支えており、三体世界にとっても最大の脅威になっていたのではないか。
今までのシリーズでもあったことだが、今回色濃いなと思ったのは人類全体の思想の一貫性の無さだ。場面場面でコロコロ移り変わりし、非科学的なものにすがりつく、とても弱い面が強く表現されていたように思う。
一方で、終盤での雲天明の再登場や4次元文明の示唆など、明らかに後半への伏線も多く、特に天明の提示した情報がどのように作用するのかが気になるところである。
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1はそんなに刺さらなかったので据え置いていたのだが、同じような人が2は面白いとレビューしていたので手に取った。確かに面白かった。
400年後の対決に向けてどこにリソースを注ぐべきかという考え方が興味深かったのだが、それをウォールフェイサーに一任するという展開に驚いた。背景を踏まえたとしても現実で考えたらとても採択されるとは思えなかったが、案の定作中でも皮肉られていて苦笑した。おまけに主人公が理想の恋人を妄想したり、果てには妄想の恋人をウォールフェイサー権限で探し出したりして、一体何を見せられているのかという気分にもなった。そりゃ「計画の一部」がミームになるよ。とは言え冷凍睡眠で時間軸が飛ぶと大胆な未来描写に、過去からの来訪者達が戸惑う様にはワクワクした。でも何でもかんでもモニターになるのはちょっと鬱陶しそう。
ルオジーの狙いは呪文をかけたタイミングで何となくピンと来た。ただ効果の出方までは想像していなくてその絶大さには驚いた。また他のウォールフェイサー同様、民衆からの扱いが乱高下する様は気の毒だった。一矢報いることが出来て他の面々も多少は救われただろうか。 -
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ネタバレ三体が面白かったのでこちらも読んでみた
【印象に残った短編】
・郷村教師:高度な知的生命体から見た地球人。相互情報伝達は音波を通した毎秒10ビット程度の低性能なもの。世代間の記憶継承能力も無い地球人が技術を進歩させてきたのは、「教師」という人達が知識を紡いでいったから。物語後の子供たちの将来に想いを馳せずには居られなかった。
・詩雲:神に近いテクノロジーを持つ生命体が、古代地球文明の「漢詩」に興味を持ち、李白を越えようと太陽系全てと引替えに漢詩を総当りで作成しようとする話。
文化にテクノロジーで対抗しようとするその発想がまず面白い。宇宙に浮かぶ全ての可能性を含めた漢詩のストレージ、それこそがタイトルである詩雲。
「猿をキーボードの上で歩かせて偶然できた小説は、どれだけ出来が良いとしても傑作と呼べるのか?」今のAIと芸術の関係を示唆するような内容。
・人生:胎児に母親の記憶を遺伝させられたらどうなるかという話。最終的に今後の人生の悲観して胎児は胎内で臍の緒を自らちぎり自殺してしまった。無知というのは将来を考えるにあたっては保護するものになる、というのは他にも当てはまりそうだと感じた。
・円:三体にもでてきた人間計算機の話。途方もない話で面白い -
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ネタバレ著者初読。自分にとっては珍しい翻訳小説でもある。もともと翻訳物にはどこか苦手意識があり、購入をしばらく躊躇していたのだが、物は試しと手に取ってみた一冊である。
物語の舞台は15世紀前半。日本でいえば室町時代、いまだ戦国の世が到来する以前の頃であり、中国では明が繁栄を極めていた時代だ。当時の皇帝洪熙帝は、皇太子である朱瞻基を留都南京へと派遣する。朱瞻基は実在した歴史上の人物であり、のちに皇帝として即位する存在であるが、恥ずかしながらその背景知識をほとんど持たないまま読み始めたため、序盤は状況を掴むのにやや手間取った。
さらに、物語の随所に登場する官職名や職業名、あるいは地名などがすべて漢字表記で現れるため、読み方すら分からず戸惑う場面も多い。翻訳作品に対して抱いていた不安が、やはり的中した部分もあったと言えるだろう。
それでも、物語が動き出すと、その勢いは凄まじい。皇太子一行に降りかかる陰謀と危機は、次から次へと連鎖していく。息つく暇もない展開の連続に、気づけばページをめくる手が止まらなくなっていた。歴史小説でありながら、徹底してエンターテインメントとしての疾走感を失わない点は見事というほかない。
読み進めるうちに、当初感じていた知識不足や言葉の壁は徐々に薄れ、むしろ未知の時代と文化の中を旅しているかのような感覚が生まれてくる。翻訳小説への苦手意識を少しだけ和らげてくれた一冊とも言えるだろう。
もっとも、本作はまだ物語の序章に過ぎない。続きが気になるのは間違いないが、果たしてこのままシリーズを追うべきかどうか。興味と逡巡のあいだで、しばし思案しているところである。 -
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主要人物の一人である羅輯(ルオ・ジー)に関わる2人の女性の話し方がとても印象的。「作者のコントロールを離れ、やがて彼らの次の行動が予測不能になる。作者はただ好奇心に駆られて彼らのあとをついていき、彼らの生活の細部を除きま見たいに観察して記録する。それが名作になるのよ。」- 羅輯の元恋人である女性小説家から、小説を書いてプレゼントしてほしいとお願いされ書き始めるが羅輯の中で登場人物が自在に動き出すことに悩む。女性小説家は、作者が登場人物をコントロールするのではなく、真に才能のある小説家であれば登場人物は自由気ままに動き回り、作者はただそれを記録するだけだとするメッセージ。
「ええ。人間の表情、とりわけ目の光は、一番微妙で複雑なんです。視線やほほえみは、ものすごくたくさんの情報を伝えられる。そしてその情報は、人間にしか理解できません。人間だけがこの種の感性を持ち合わせている。」 - 羅輯の妻となる女性はとても綺麗な心の持ち方をする女性で今作の鍵になるんじゃないかと睨んでいる。SFっぽさが感じられて良かった。