泊功のレビュー一覧
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理系の友人が、エンジニアは世界を変えていけると言っていた。 この短編集は、劉慈欣が、エンジニアとしての知識をフルに活かして、さまざまな世界を、そこにあるかのように生み出してくれる。一緒に旅する世界は、過去から未来、宇宙、そこに住む人々、ありとあらゆる世界だ。私たちの想像力は、羽を持っているように、導かれて広がっていく。
一方で、人間たちへの優しさが、細やかな表現を通して、伝わってくる。自然もまた、テクノロジーとの対比で描かれていると同時に、その世界を包むように、さりげなく美しく表現されている。
久しぶりのSF、これがSFなのだなあ、と思う。
そしてこのお話を生かしているのは、見事な -
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ネタバレ『三体』三部作、完結。読み終えてまず感じるのは、頭が遠くなるような「スケールの歪み」だ。
1. 魔法の正体は「四次元」だった
冒頭、1453年のコンスタンティノープルで描かれた「聖女の魔法」。心臓を抜き取る、鍵を奪うといった非現実的な描写が、実は宇宙に漂う「四次元の破片」による物理現象だったという設定には脱帽した。この「上位次元からは三次元の密室など存在しない」というルールが、後に太陽系を襲う「二次元化攻撃」の絶望感へと直結している。歴史の転換点と宇宙の物理法則を繋げる筆力に圧倒された。
2. 狂気の「階梯計画」から始まったすれ違い
かつての同級生、雲天明の脳を宇宙へ放り出すという「 -
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ネタバレ面壁計画の裏で同時進行していた三体艦隊にスパイを送る”階梯計画”の発案者である程心が本作の主人公。羅輯の後継者として執剣者に選ばれた程心。
程心が就任直後、つまり羅輯からの脅威が消えた瞬間に三体世界は地球への侵略開始し、占領下に。
そんな中、宇宙を彷徨っていた万有引力が三体系の座標を公開したことで地球より撤退。でもそれは同時に全宇宙に向けて、地球の座標も公開したことを意味し、その3年後に三体世界は破壊された。脅威の渦中、階梯計画の任務遂行者の雲天明と程心が再開した場面で後半は終わる。思ってた通り、地球が黒暗森林状態に。やっぱり三体世界は地球侵略の機会をずっと伺ってた。
羅輯が自分達に危険だから -
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IIは400年後の三体襲来に人類が足掻く話です。
Iは未知世界の探索みたいな高揚感が常にある感じで、IIも未来の地球危機に現代人がどう足掻く様子が書かれててどちらも最高に面白いです。
本作のキーワードは面壁者。三体人は脳波で直接意思疎通するから思考が筒抜けで、人間では当たり前の隠すって言う概念がない。その性質を使って考え出した策が面壁者。
選出された4人の策略が闘争本能、敗北主義、現実逃避とよく考えられててこれがまた面白い。
地球の運命がたった4人の頭の中だけに託されるって、一見異常だけど、それぐらい混乱しても仕方ない話だなと。
その重圧の中での行動や思惑がいかにも人間味溢れてて、見どころだと -
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ネタバレ簡単に読み通せるSFではないし、全てを理解できたかと言われたらできていない部分は多い。しかしながら核融合エンジンの炎の色や恒星X…の惑星の色の記述に代表されるように色彩感あふれる世界観がリアルさを醸し出しているように感じられた。色彩の描写しかり、4次元空間や2次元空間の描写などが本当に見てきたかのような臨場感であり著者の頭の中を見てみたいほどであるが、これらを破綻なく訳出した訳者らに心から賛辞を贈らせていただきたい。最後に恋愛小説のエッセンスが垣間見られたのも象徴的で、これだけ壮大な宇宙の物語であっても種の存続というファクターは無視できないという本質的な事実に改めて気付いた。足掛け数年掛けて読
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【結論】
完結編の幕開けである本作は、これまでのシリーズで提示された「宇宙の法則」を、さらに残酷な「文明の生存戦略」へと昇華させている。序盤の停滞感を補って余りある、後半の爆発的なスケール感と心理描写。これは巨匠・劉慈欣と読者の「信頼関係」が試される一冊だ。
■ 序盤の「沈黙」は、巨匠との信頼の証
物語は1453年のコンスタンティノープル陥落から始まる。正直に言えば、最初は「何を見せられているのか」と困惑し、面白さが加速するまでには相応の時間を要した。
しかし、我々読者には前作『黒暗森林』を共に潜り抜けた著者との確固たる「信頼関係」がある。一見、象徴的で不可解な伏線や「階梯計画」の -
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ネタバレ今回一番印象に残ったのは、程心が執剣者になった瞬間だった。正直あまりにもあっさり抑止が崩壊して笑ってしまったが、同時にこれは構造的には納得感しかなかった。
程心は人類と三体世界の仲介になろうとしていたように思う。執剣者に求められていたのはむしろ逆で、「撃つかどうかを合理的に判断する人物」ではなく、「合理性を超えて撃つ可能性を否定できない人物」や、ウェイドのように「こいつなら閾値を超えたら絶対やる」という確信を与えるような振る舞いが求められるべきだったと思う。羅輯はやはり個としての判断基準を持っており、それが誰にも共有されないという点に本質的な強さがあったのだと思う。彼は人類に対しても完全には -
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1はそんなに刺さらなかったので据え置いていたのだが、同じような人が2は面白いとレビューしていたので手に取った。確かに面白かった。
400年後の対決に向けてどこにリソースを注ぐべきかという考え方が興味深かったのだが、それをウォールフェイサーに一任するという展開に驚いた。背景を踏まえたとしても現実で考えたらとても採択されるとは思えなかったが、案の定作中でも皮肉られていて苦笑した。おまけに主人公が理想の恋人を妄想したり、果てには妄想の恋人をウォールフェイサー権限で探し出したりして、一体何を見せられているのかという気分にもなった。そりゃ「計画の一部」がミームになるよ。とは言え冷凍睡眠で時間軸が飛ぶと大 -
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ネタバレ三体が面白かったのでこちらも読んでみた
【印象に残った短編】
・郷村教師:高度な知的生命体から見た地球人。相互情報伝達は音波を通した毎秒10ビット程度の低性能なもの。世代間の記憶継承能力も無い地球人が技術を進歩させてきたのは、「教師」という人達が知識を紡いでいったから。物語後の子供たちの将来に想いを馳せずには居られなかった。
・詩雲:神に近いテクノロジーを持つ生命体が、古代地球文明の「漢詩」に興味を持ち、李白を越えようと太陽系全てと引替えに漢詩を総当りで作成しようとする話。
文化にテクノロジーで対抗しようとするその発想がまず面白い。宇宙に浮かぶ全ての可能性を含めた漢詩のストレージ、それこそ -
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ネタバレ本作は、宇宙文明同士の関係を「暗黒森林理論」という形でモデル化し、人類がそれにどう対抗するかを描いたSFだと感じた。特に印象的だったのは、文明の第一目的が生存であり、さらに文明は技術爆発を起こす可能性があるという二つの前提から、互いに先制攻撃を選ぶ方が合理的になるという発想である。ゲーム理論を学んだ経験から、この結論自体はある程度予想できる構造だったが、それを宇宙文明同士の関係に当てはめ、物語の中心原理として描いている点が興味深かった。
羅輯の戦略は、同じ面壁者であるレイ・ディアスの計画と通じる部分が多い。三体文明が圧倒的な技術力を持っているにもかかわらず、宇宙に三体星系の座標を公開するという -
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ネタバレ著者初読。自分にとっては珍しい翻訳小説でもある。もともと翻訳物にはどこか苦手意識があり、購入をしばらく躊躇していたのだが、物は試しと手に取ってみた一冊である。
物語の舞台は15世紀前半。日本でいえば室町時代、いまだ戦国の世が到来する以前の頃であり、中国では明が繁栄を極めていた時代だ。当時の皇帝洪熙帝は、皇太子である朱瞻基を留都南京へと派遣する。朱瞻基は実在した歴史上の人物であり、のちに皇帝として即位する存在であるが、恥ずかしながらその背景知識をほとんど持たないまま読み始めたため、序盤は状況を掴むのにやや手間取った。
さらに、物語の随所に登場する官職名や職業名、あるいは地名などがすべて漢字表