稲田俊輔のレビュー一覧
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Posted by ブクログ
■内容をざっくり
著者は『料理人であり読書家である』という自分の立ち位置から、『食』をテーマにした小説・評論・漫画まで25の作品を幅広く読み解いた〈ブックレビュー×食エッセイ〉。
料理人ならではの視点で…
◉食材の描写に“嘘”がないか
◉調理のリアリティや背景
◉表現の巧みさと文学性
…等々を読み解く鋭さと愛情が混在した、ユニークで知的なブックレビュー。
■感想
① 料理人×読書家の“ダブルプロ視点”。
ただ『美味しそう』『面白かった』を、『なぜ美味しそうに感じるのか?』『何が表現として巧みなのか?』を分析し提示してくれる、“言語化の手腕”が際立ち、〈味わいを理詰めで考えたい読者〉は表現の上手さにニンマリするはず。勝手な想像だけど、著者はおそらく『えも言われぬ表現』という言葉を忌み嫌ってると思うな。それを表現するからプロだろ!って。
② 本が“料理されていく”ような面白さ。
著者の解説は、本一冊を食材に見立て、あたかも料理をしているかのように“捌いて”“味付け”を施す。時に手厳しく、時に愛をこめて。本書収録の本は既読もあり、なるほど著者の手にかかればこうなりますか⁈と驚きもあったり、読んでみたい本もあり、料理の仕方によってこうも変わるんだと感心しきり。
③ 晩酌との相性抜群の“読書のおつまみ”。
居酒屋にて、自宅にて独酌する際、傍らに本を置くことが多いワタシ。まさにそれを想定したような1篇が5〜10分程度で読めてしまう掌編書評。酒肴をつまんでは食の本を読み、ツィ〜と盃を舐める。『文章の旨味』も手伝い、酒の味を引き立ててくれる、格好のお供。
■まとめ
京大卒の料理人であり実業家で、そして活字中毒者の著者の作品は今作で2冊目。前作『おいしいものでできている』では、食への偏愛を通り越し、ほとんど変態の域へと昇華した語りに苦笑い。とは言え、暴論妄論には走らず、語彙と表現の引き出しの豊富さをもって、往年の北別府の投球よろしく巧みなボールの出し入れを見せられてるような手練れさで、食への傾倒ぶりに圧倒されっぱなしだった。
今作では、『本を読むことと、食を味わうこと』。そのふたつを、プロ目線”で語る著者の感性に酔った。 -
Posted by ブクログ
何だろう。この本のエピソードのいくつか既読感があった。最初のほうとかだけなら一度読んで途中でやめたのかなとか思うけど、全体にわたってところどころ読んだことがあるって感じだった。
著者が勧める岐阜のピッツェリアに2回も行ったんだけど、この本読むと感覚的に相容れないところもちらほらあった。一番最初のエピソード「客、お客さん、お客様」からして、ムダにというか魂入れずに慇懃無礼なのに意味がないと思うんだけど、著者もそのような考えでいるようでいながら慇懃無礼な接客をよしとしているんだよね。商売だからって割り切ってるのかもしれないしとか遠回しに皮肉ってるのかなとも思ったけど、心底そういう接客でいいと思ってるみたいだった。 -
Posted by ブクログ
私が読む本は小説か仕事関係の本か、ほぼ2択だけど、たまに読んでみるそれ以外の本。それ以外の本は自分の知らない世界が広がっている。
食にこだわりのない私にとって、栄養もカロリーも完璧なサプリが開発されたらそれを摂取して生きたいくらいですが、お寿司が好きだったり、サイゼリヤが好きだったり、近くにある和フレンチのランチが好きだったり、と全く興味がないわけではないなぁと気付かされた。
食べることが好きな人は見ていて気持ちがいい。作者のように食が大好きな人の人生は豊かなのだろうなと感じた。
寒くなってきて、田舎の割に存在してるロシア料理屋のボルシチを食べたくなりました。 -
Posted by ブクログ
ネタバレ八重洲口のエリックサウスなどでしられる稲田俊輔さんが長年の飲食店での仕事をしながら垣間見た飲食店側と利用客についてのエッセイ集。飲食店はビジネスでやっているので利益を上げねばならず、利用客はお金を払っているのだからあるいていど要求があり、両者の事情があえばベストマッチとしてウィンウィンとなるが、不幸にして合わないことがある。それは店側の技量不足や客の認識不足に起因するのであれば歩い程度仕方ないと言えるが、来る客くる客に不満を抱かせる訳にはいかない。そこで店側としてここはどういう店かをいろんな手でアピールするのだが、それでもわかってくれない客が一定数いるのは事実。
評者も色々と料理をするのでプロの料理人の苦労が垣間見えて面白かった。しかしキャバクラやマルチの勧誘の話などは面白エピソードであるものの楽しい話ではなかった。レストランといえども常には飲食が中心ではないということを気付かされてくれた。 -
Posted by ブクログ
南インド料理専門店として近年、メディアでの露出も増えた印象のある「エリックサウス」の総料理長である著者が、WEBマガジンに連載したエッセイを書籍化した一冊。
雑誌連載ということもあり、そこまで全体を通貫するテーマがあるわけではないが、食を愛する料理人・経営者が昨今の飲食を巡る状況をどう見ているのかを知れるのは、食を愛する自分にとっては面白かった。
個人的に慧眼だったのは、名前こそ伏せられているが明らかにアメリカンダイナーのシズラーを舞台にしたエピソードだった。自分もシズラーは大ファンで、あのリッチなサラダバーやチーズトースト、そして肉やシーフードのメイン料理のセットを食べるのは至福のひとときであるのだが、本書ではある若い女性客が、サラダバーだけで満腹になるレベルの量を楽しんだあげくに、メインのスペアリブを店員にごねてテイクアウトにさせる、というエピソードが紹介される。一見、これは店にゴリ押しをする客の悪癖を指摘するのかと思いきや、著者の着眼点はそうではなく、「シズラーの経営的にそのようなテイクアウトは許容されない」というものである。
シズラーのサラダバーは一度味わえば誰もが納得するように、それだけで相応の価格を払う価値があるものであり、メイン料理とのセットは確かに安くはないが、それなりのお得感を与えてくれる。そうしたプライシングが成り立っているのは、メインの料理を食べる胃袋の余裕を持たせるために客はサラダを食べる量を一定程度セーブするであろう、という見立てである。その見立てが、一定のお得感の源泉となっているにも関わらず、サラダバーを満腹に食べて、さらにメイン料理をテイクアウトして事後に食べるという行為をされるとこのモデルが破綻する、というのが著者の指摘である。
こうしたビジネス的な観点でシズラーのような食べ放題セット+メイン料理を含む飲食店を捉えたことがなかったので、経営的にはこう考えるのか、という見方がとても新鮮だった。 -
Posted by ブクログ
筆者のサイゼリヤ愛がひしひしと伝わってくる本。
松屋の紹介「とにかく私たちに米の飯を食わせようとしている」は非常に納得!(笑)
食べログの低評価レビューの話は、実用的で良い。
チェーン店の凄さを語る筆者の勢いに圧倒される。所謂"美食家"は、チェーン店を色眼鏡で見勝ちなものの、筆者の飲食に対する平等愛、尊敬を感じ取れる。飲食店を経営しているからこそ分かる凄さなのだと思う。
P266で、若い世代はチェーン店への偏見も少なく、今後は旧弊な先入観に囚われない実力勝負の時代が来る、と記載あるが、コロナで予想以上に早くその時代がやって来ている様に思われる。(3千円の格安店なら、お家で良いものを食べる動きなど。出版時点で2019年。)
筆者も述べる様に、成功しているチェーン店とは常にアグレッシブな挑戦をやめない企業だろう。消費者としても、チェーン店(に限らずだが)の挑戦を楽しむ度胸が大切。
チェーン店でもっと自信を持って食べて欲しい、凄さを知って欲しい、その思いで書かれた事を最後に知り、その熱い思いに感動しました!