あらすじ
未曽有のコロナ禍を経て、誰もが食卓の囲み方や外食産業のあり方など食生活について一度は考え、見つめ直した今日だからこそ、食とともに生きるための羅針盤が必要だ。料理人であり実業家であり文筆家でもある、自称「活字中毒」の著者が、小説からエッセイ、漫画にいたるまで、食べ物にまつわる古今東西の25作品を厳選。仕事観や死生観にも影響しうる「食の名著」の読みどころを考察し、作者の世界と自身の人生を交錯させながら、食を〈読んで〉味わう醍醐味を綴る。食べるだけが「食」じゃない! 人生に必要なことはすべて「食べ物の本」が教えてくれる!!
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Posted by ブクログ
副題にある「料理人」という肩書が一般に想定されるそれとは違うもののように感じられるが、料理人然とした徒弟制度的な修行のようなエピソードがあまり見受けられないこと以上に、文章が素直にうまいと思わされる。
参照される書籍は硬軟さまざまで、ひとまず最初の章を読んだ時点でこれはなにか残るものがありそうな本だと思えたが、気になる章に手をかけてみて合いそうに思えればその読者にとって貴重な縁となるのではないか。
Posted by ブクログ
料理人で読書人の著者が、食に関する作品を紹介するエッセイ。
・まえがき
小説、エッセイ、漫画など、食に関する25の作品を紹介。
・あとがき
それら本の著者たちは、食に対して多くを語る者ばかりで、
水上勉、土井善晴、東海林さだお、檀一雄、玉村豊男、
原田ひ香、吉田戦車、岡根谷実里、池波正太郎、森真茉莉など。
作者と本との妄想対話集と位置づけてのレビューは、
それぞれの著者の食への主張を、料理人として、業界人として、
経営者として、そして読書家としての視線で読解し、
括目に値する文章に心揺さぶられる様が描かれています。
「面白南極料理人」など、読んだことのある本は、
再読したくなるような隠し味の読み方があるし、
未読の「食堂生まれ、外食育ち」や「忍風!肉とめし」、
短編集の「あいにくあんたのためじゃない」などには、
読んでみたくなる味付けもあった感じがしました。
Posted by ブクログ
著者ならではの視点と語り口調がやはりとても面白い。読んだことのある書籍は改めて読みたくなるし、読んだことのない書籍もいくつか読んでみようと思う。『自炊者になるための26週』、『ペルシア王は「天ぷら」がお好き?』、『面白南極料理人』、『むかしの味』、『貧乏サヴァラン』
Posted by ブクログ
日本における南インド料理のパイオニアである『エリックサウス』の総料理長を務める著者が食べ物に関する本を25冊も紹介してくれている本。いわゆる(?)グルメ本だけでなく小説から研究書のような変化球まで飽きさせない。自分は読んだことある本の方が少なかったので純粋な情報的価値たっぷりで嬉しかった。著者の読書感想文・紹介文もネタバレ回避の巧みさと“読欲”の高め方が絶妙なんだよなぁwサクッと読めるけどその先に25冊の深遠なる世界が待っている。
Posted by ブクログ
7-11の、季節限定人気商品ビリヤニを監修、
南インド料理専門店「エリックサウス」の稲田さんの、食に関する本の読書録。
紹介されている本の漫画以外の本は大抵既読していたため、
うんうんそうだよねーと頷きながら読めたのだが、私が「いけ好かないな。鼻持ちならない。なんかイラッ」と思いながら読んだ本に老兵の悲哀や哀愁を見るあたり・・・人としての出来の違いを見せられてしまった。
ラストに森茉莉の「貧乏サヴァラン」を持ってきてあって、やっぱりコレが来るよねー。外せないよねー!と思うなどした。
Posted by ブクログ
主観的過ぎる所も有るが、料理人としての視点は新しかった。読んでみようと思い本も多かったし、既に読んだことが有る本は、そういう読み方も出来るのかと参考になった。
Posted by ブクログ
■内容をざっくり
著者は『料理人であり読書家である』という自分の立ち位置から、『食』をテーマにした小説・評論・漫画まで25の作品を幅広く読み解いた〈ブックレビュー×食エッセイ〉。
料理人ならではの視点で…
◉食材の描写に“嘘”がないか
◉調理のリアリティや背景
◉表現の巧みさと文学性
…等々を読み解く鋭さと愛情が混在した、ユニークで知的なブックレビュー。
■感想
① 料理人×読書家の“ダブルプロ視点”。
ただ『美味しそう』『面白かった』を、『なぜ美味しそうに感じるのか?』『何が表現として巧みなのか?』を分析し提示してくれる、“言語化の手腕”が際立ち、〈味わいを理詰めで考えたい読者〉は表現の上手さにニンマリするはず。勝手な想像だけど、著者はおそらく『えも言われぬ表現』という言葉を忌み嫌ってると思うな。それを表現するからプロだろ!って。
② 本が“料理されていく”ような面白さ。
著者の解説は、本一冊を食材に見立て、あたかも料理をしているかのように“捌いて”“味付け”を施す。時に手厳しく、時に愛をこめて。本書収録の本は既読もあり、なるほど著者の手にかかればこうなりますか⁈と驚きもあったり、読んでみたい本もあり、料理の仕方によってこうも変わるんだと感心しきり。
③ 晩酌との相性抜群の“読書のおつまみ”。
居酒屋にて、自宅にて独酌する際、傍らに本を置くことが多いワタシ。まさにそれを想定したような1篇が5〜10分程度で読めてしまう掌編書評。酒肴をつまんでは食の本を読み、ツィ〜と盃を舐める。『文章の旨味』も手伝い、酒の味を引き立ててくれる、格好のお供。
■まとめ
京大卒の料理人であり実業家で、そして活字中毒者の著者の作品は今作で2冊目。前作『おいしいものでできている』では、食への偏愛を通り越し、ほとんど変態の域へと昇華した語りに苦笑い。とは言え、暴論妄論には走らず、語彙と表現の引き出しの豊富さをもって、往年の北別府の投球よろしく巧みなボールの出し入れを見せられてるような手練れさで、食への傾倒ぶりに圧倒されっぱなしだった。
今作では、『本を読むことと、食を味わうこと』。そのふたつを、プロ目線”で語る著者の感性に酔った。