デヴィッド・グレーバーのレビュー一覧
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考古学者と人類学者の共著のビッグヒストリー系なんだけど、ハラリやダイアモンドが前提としていることを否定する。
ビッグヒストリーを書いてきた思想家はルソーとホッブズとの考えの間を行ったり来たりしてきたが、どちらも真実ではない。古代の人や未開の人は我々が思っているような未熟な人ではなく我々と同様に思索する人々だった。アメリカ先住民は西洋を批判していて、ヨーロッパ人は彼らから多くのことを学んでいた。社会的不平等に起源があると考えるが、それは農耕によって不可避的にもたらされたものではない。本当に問題にすべきは社会的不平等の起源が何かではなく、どうして閉塞したかにある。人類はそれまで様々な社会組織の間を往復しヒエラルキーを築いては解体してきた。新石器時代の農耕は長い時間をかけて進化しており、革命と呼びうるものではなかった。戦国時代の小氷期がアメリカ先住民の人口減少によるものである可能性。文化は他集団との違いを強調するためのもので、これが閉塞の一つの条件。ヒエラルキーの痕跡のない都市や共同体。現代の国民国家が決して自明のものではないこと。
翻訳者も凄い、これだけ専門性高いものを読みやすく訳して。 -
Posted by ブクログ
本文だけで二段組約600頁の大著、しかもその内容が帯によれば、「考古学、人類学の画期的研究成果に基づく新・真・世界史!」というのだから凄い。
人類史20万年で分かっていることはごくわずか。しかし現実にはルソーの『人間不平等起源論』かホッブスの『リヴァイアサン』で示された発想の二者択一で、それをアップデートしたものが語られているに過ぎないと著者たちは言う。例えば、農耕の発明により「バンド」から「部族」へ、さらに「首長制」→国家へであったり、狩猟採集、牧畜、農業、工業といった生産様式の変化などなど。ベストセラーらとなったビッグ・ヒストリーの著者たち(自分も大変面白く読んだ)、ハラリ、ダイアモンド、ピンカー等も、これまでの常識に安住しているとして批判される。
17世紀末のアメリカ先住民の哲学者=政治家カンディアロンクによる当時のヨーロッパ社会に対する批判の紹介から始まり、トルコの前9000年頃からの遺跡ギョベクリ・テぺ、前1600年頃にアメリカの狩猟採集民により建造され、商品文化の痕跡のないポヴァティ・ポイント、前100年頃から後600年頃まで存続し、多くの絵画芸術が残り、また居住用アパートメントが作られたメソアメリカのテオティワカンなど、これまで聞いたことのない考古学的遺跡から分かってきたこと、また素朴で単純な未開人といったものではなく、高度な政治や外交が行われ、また”所有”に関する考え方がそもそもローマ法やロック流のものではない別の在り方があったことが明らかにされていく。
これまで常識とされてきた社会の拡大、国家の成立、支配と被支配といったことに関して、別の人間社会の在り方があったことを最新の証拠によって明らかにするとともに、今後もあり得ることを著者たちは強く主張する。訳の功績でもあろうが、著者たちの主張は明晰で論理展開は分かりやす。ただ、あまりに膨大でこれまで知らなかった情報が次から次へと出てくるので、その内容を消化するだけでも一苦労だ。しかし、既成観念を打ち壊されるのはある意味快感である。
40ページ以上の訳者あとがきがあるのも、膨大な本書のエッセンスを解説してくれるものとして、とても参考になりありがたい。 -
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最悪のシステムの中の最善のシステムである、資本主義について、情報技術によってますます加速し、変容をしていく先に何が待っているのか。2019年の断面で7名の経済学者が未来を予測した書
キーワードは以下です。
米中の対立
資本主義の修正と変容
富の再配分
人工知能の発達と普及、そして雇用への影響
目次
プロローグ 「未完」のその先を求めて
Chapter1 ポール・クルグマン 我々は大きな分岐点の前に立っている
Chapter2 トーマス・フリードマン 雇用の完新世が終わり、人新世がはじまる
Chapter3 デヴィッド・グレーバー 職業の半分がなくなり、どうでもいい仕事が急増する
Chapter4 トーマス・セドラチェク 成長を追い求める経済学が世界を破壊する
Chapter5 タイラー・コーエン テクノロジーは働く人の格差をますます広げていく
Chapter6 ルトガー・ブレグマン ベーシックインカムと1日3時間労働が社会を救う
Chapter7 ビクターマイヤー=ショーンベルガー データ資本主義が激変させる未来
エピローグ 加速する世界の中で
ISBN:9784569843728
出版社:PHP研究所
判型:新書
ページ数:204ページ
定価:900円(本体)
発売日:2019年09月27日 -
Posted by ブクログ
『万物の黎明』が有名な人類学者グレーバーの論文、というよりは評論。民主主義は古代ギリシャから続く西洋起源のものであるという説を問い直し西洋を相対化する。構成員の間での意見の調整や対話的な試みは洋の東西を問わずむしろ一般的なものであるというのは言われるまでもない話ですが、民主主義という言葉を使うときに、社会契約説やフランス革命以降に整備された諸制度により成り立つ仕組みを指しているのか、根本の理念のことを指しているのかによって話が変わってくるということでしょう。ややこしいのはフランス革命以降の諸制度によって成り立っているのが単なる仕組みではなく資本主義も合わさった文化にまで広まっていることか。
で、グレーバーは西洋を相対化してどうしたいかというと、それが副題にもある”「あいだ」の空間の民主主義”ということになります。人と人のあいだに権力は生まれるのだから、根元からもう一度考えようというのは、これだけ分断の流れが強い社会の中では重要なこと。ハンチントンをこき下ろしたり論の立て方が強くて面食らう部分もあるが、真っ当なことのように思う。日本でも超高齢化社会が進み、地域の過疎化も進んでいく中で私たちの暮らしをどのように決めていくかという際には、参考になる議論ではないかと思います。 -
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朝の通勤電車は今日も人であふれる。眠そうな顔、スマートフォンを見つめる目、資料に赤を入れる手。皆、どこかへ向かい、何かを支えているように見える。だが、その仕事は本当に社会に必要なのだろうか、とふと思うことがある。
人類学者 (デビッド・グレーバー)は著書『(ブルシット・ジョブ)』で、働く本人でさえ「なくても誰も困らない」と感じる仕事が少なくないと指摘した。機械化が進めば労働時間は減り、人はもっと自由になる――そんな未来予想図は外れた。むしろ会議のための会議、報告のための報告が増えた。
忙しさは、しばしば充実と混同される。だが、埋まった予定表が人生の豊かさを保証するわけではない。働くことが目的化したとき、人は静かに疲弊する。
庭木を剪定すると、不要な枝を払うだけで風が通り、木は息を吹き返すという。社会もまた同じかもしれない。本当に必要なものを残し、余計なものを削ぐ。その先に、人が人らしく働ける風景がある。 -
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働いていることが善、働くことでお金を稼いでいることが善という認識がこびりついているため、いくら機械やAIに仕事が奪われても人間は何らかの仕事をしないといけない、そのためにブルシットジョブ(意味のない仕事)が生み出されているのだという話。
お金がないと生きられない、働く以外にお金を稼ぐ方法がないことが全ての問題ですね。ただ、私は上手くブルシットジョブを掴めた人に羨ましいの感情以外ない。「ブルシットジョブをしている人はリアルジョブをしている人を羨ましいと思っている」というような記述が何度も出てきたが、「でも俺にはあれはできない」と思ってる人も同じくらい多いと思う。
労働とお金を稼ぐことが同じ意味でなくなればいい。仕事の種類が給料の金額でなく「自分が生きながら何をしたいか」で選べるようになる。やっぱベーシックインカムってありよなぁ。労働が強制でなくなれば、生まれてきてよかったとも思えるかも。
一番胸が苦しくなったのは、p.319の「わたしたちは仕事に生活が侵食されているために、短い時間でできる娯楽、つまりお金を使った消費でしか快楽を得られない」という旨の記述。そうなのよね。お金を使うことが唯一の息抜きで、また働き、またお金を使いわずかな息抜きをする……その繰り返しが資本主義社会の人生。
よく「家事労働は給料に換算するといくら」みたいな論争が上がるが、給料に換算することでしか労働の価値を語れなくなっているってやばいね。 -
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「私が障がい者雇用枠だから、何もできないと思われて、業務をわりあててもらえない」前の職場ではそう勘違いしていた。
この本を再読して、あの会社じたいがブルシット・ジョブであり、健常者枠で採用された人も本当はすることがなくて、することがあるフリをするのが上手だっただけなのだと気づいた。
することがなく長時間すわっているだけの仕事に私はうつ病になり退職した。
今は、障がい者雇用枠であってもブルシット・ジョブではない仕事、意味のある作業をする仕事に転職したおかげで、うつ病はかなり改善された。仕事にやりがいもある。給与は高くないけれど。
SNSがここまで普及したのも、勤務時間中こっそりSNSをつかって時間をつぶすしかない人が大勢いるからという本書の指摘も腑に落ちた。
また、テクノロジーの発達で仕事の効率があがったぶん、人々の労働時間を短縮しようという流れに世界が向かわなかったのは、1960年代に世界各国で学生運動が活発になり世界が混乱したことから、仕事の効率は上がっても人々を長時間拘束したまま、政治運動に興味をもつ時間を与えないようにしようという流れに向かったためだ、という指摘も興味深い。
そのために、仕事とは長時間無意味に拘束されることだという世の中になってしまった。うつ病から人々を守るためにもこの状況は改善されなければいけない。
本書について欲をいうと、エッセンシャル・ワークほど給与が低くブルシット・ジョブほど給与が高い傾向にある原因についての著者の説明がわかりにくい。
ブルシット・ジョブの人たちにストライキされても困らないけど、エッセンシャル・ワークの人たちにストライキされたら困るから、ストライキする余裕すらない状態にしておくためだと言いたいのかな?とも思うけど、著者の書き方だと、意味のある仕事をしてる人たちへの妬みが原因だとなってて、ピンと来ない。 -
Posted by ブクログ
他の人も書いている通り、とにかく冗長で読みづらい。が、筆者の言いたいことは納得できるし面白い。
本文の後に続いた訳者の文章は1番要約してあってわかりやすいのだが、だったら本文の訳もう少しわかりやすくしてよ…と言いたくなった。。
ケアリングの話は全くその通りで、簡単にロボットによる代替ができると思わないし、それを数量化しようとするからおかしなことになる、というのは実際にブルシットジョブをやっている人間として非常にわかる。
そして最後は少し違う観点からベーシックインカムの議論に。ここが非常に面白かった。
人間の本質はきっと労働そのものに価値を感じるはずであって、だったらそこに集中する環境を作るべきだと。
とても腹落ちしてしまった。
総じて苦行でもあったが、読んで正解だった、かな。 -
Posted by ブクログ
ネタバレ新年度にぴったりの本、かもしれない!
就職や就活を通して「社会人」になる洗礼を受ける私たち。
社会に貢献する、
組織の役に立つ、
どんな仕事も尊い、
そうやって社会に出たときに世界中の働く人が直面する矛盾や葛藤は、
きちんと説明されてこなかった。
だからこそ、多くの共感を読んだんだろうと思います。
本書が出版されたのは2018年、この日本語版も2020年7月、パンデミック発生後に出されています。
著者のブルシットジョブ論が世に広まったのは、2013年のウェブマガジンへの寄稿記事からだそうです。
その後のコロナがさらに彼の議論を現に裏付け、「グレーバー現象」がさらに広まっていったのも納得です。
人類学者でありアナキスト活動家でもある著者は、2011年のウォール街占拠運動や『負債論』執筆もされていた。
そして、この日本語版出版直後、2020年9月に急逝されたそうです。
働く場の状況は、変わったのかな。どうでしょうか。 -
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アメリカのアナキストでもある文化人類学者デヴィッド・グレーバーが書いた世界のカラクリを解き明かす「解放の書」との触れこみで、前から気になっていたものをついに読んだ。
3名で訳しているのもあり、かなり読みにくい。訳も色々と迷ったようで、訳注も多い。原文も修飾語が多く一文が長いのだと思う。日本語もそのとおりに訳しているらしく、やたらと「~の~の~における~については~か?」みたいな冗長な表現が多く、章立ても行き当たりばったりで、全然頭間に入らなかったため、2回ほど通読するはめになった。
ブルシット・ジョブというのは「その仕事にあたる本人が、無意味であり、不必要であり、有害でもあると考える業務」、「それらが消え去ったとしてもなんの影響もないような仕事であり、なにより、その仕事に就業している本人が存在しない方がましだと感じている仕事」のことである。本書の目的は、各種の仕事の社会価値を明らかすることではなく、自分の仕事にそれらが欠けていると考えながら働くことの心理的、社会的、政治的効果を理解することである。
■ブルシット・ジョブの5類型は以下のとおり
・取り巻き 企業の受付など
・脅し屋 ロビイストなど
・尻ぬぐい 無償ソフトウェアへの互換性対応を行う有償プログラマーなど
・書類穴埋め 役人など
・タスクマスター 取り巻きの逆(必要のない従業員ではなく、必要のない管理者)
また、ブルシット・ジョブの特徴として、欺瞞と曖昧さもあげられている。欺瞞というのは、どんな無意味な仕事でも、どんなに時間を持て余していても、働いているふりをしなければならないということ。つまり堂々とサボってはいけないのだ。曖昧さは、その欺瞞をまわりの人がどこまで自覚し、演じているのか分からない状況であり、「サボり」はどこまでが許容範囲か、「手が空いている」と宣言していいものか不明確ということである。
なぜブルシット・ジョブが人間の精神を侵すのか、なぜ人はブルシット・ジョブに耐えるのか、なぜブルシット・ジョブは増えているのか、なぜ問題視されないのか、といったことが400ページをもって解き明かされる。正直なところ、ちょっと長くて回りくどくて、読むのが面倒になりかけた。歴史に残りうる良書だと思ったし、もはや「革命の書」なのだけど、咀嚼に時間がかかる。何度も読んで、考えて、じわじわと蒙が啓かれる。
本書にはグレーバーのもとに届いたブルシット・ジョブの実例がいくつも含まれていて、それがかなり面白い。ドイツ軍内で隣の部屋にPCを動かすためにいる委託業者(遠くからやって来て隣室にPCを運んでくれる)とか、会社受付ですることがなく、クリップの色分けに従事する人とか…。ブルシット・ジョブに就いて自尊心が傷つき辟易している労働者が多いが、正直、それでそれなりの給料がもらえるならいいのではと思う。労せず大金を得られるのは幸運だと考える者はグレーバーは少ないと考えているようだが、本当だろうか。また、出てくる例が暇そうな仕事ばかりだけど、ブルシット・ジョブのくせにやたら忙しく責任も重い仕事も多くあるはずで、それが一番精神を蝕むのではと思う。
ジョブ型雇用の国とメンバーシップ雇用の国、キリスト教圏とそのほか(イスラムや儒教、仏教圏等)でかなり労働観は違うのではと思いつつ、そのあたりの論考はなかった。 -
Posted by ブクログ
色んな視点があって面白い。
現代社会を憂えている点では一緒。
個人的には、フリードマン、グレーバー、ブレグマン、ショーンベルガーの思想にかなり共感を覚えた。それぞれの著書を読んで、より詳しく勉強しようと思う。
以下、個人的なメモ(ネタバレ?)
ポール・クルーグマン
富の集中は防がなければならない。
資本主義による経済不平等をどこまで是正するか。政治の話。
トーマス・フリードマン
「Average is Over」格差拡大で、平均的では不十分で、常に平均以上になることを志向しなければならない。
「creativity,collaboration,comunity,coding」が必須スキルになる。
加速化する時代に生き残るには「生涯学習者」になる能力が、最も重要。
デヴィッド・グレーバー
「Bullshit Jobs」意味のない仕事をしていると実感している人が多い。
仕事が社会に貢献している割合と、貰ってる報酬が逆相関になっている。
トーマス・セドラチェク
経済学の誤り。数字で計算出来るものだけを考えていること。
長期的な成長が前提であること。意思あるものが多くを取り、意志のないものは少なく取る傾向を前提にしていること。
タイラー・コーエン
中間層の凋落の原因は孤独。人と触れ合うコミュニティが減っている。
ルドガー・ブレグマン
歴史の中で何度もユートピアを現実となっている。奴隷制の廃止、民主主義、男女の権利平等、福祉国家の権利。
GDPの成長は必ずしも幸福を意味しない。この富をどう活用するか?
テレビの視聴時間が長いのは労働時間の長い国。本当に疲れてる時に余った時間を使えるのはテレビぐらい。
より多くの人がボランティア活動に従事し、子供やお年寄りの世話、作曲や芸術活動に携わるのは、労働時間が短い国。
働く時間を短くするべき=ベーシックインカム。
高給の仕事は、富を動かしているだけで、新しい価値はほとんど生み出さない。銀行業、シリコンバレー、管理職。
ビクター・マイヤー=ショーンベルガー
データ納税。