あらすじ
やりがいを感じないまま働く.ムダで無意味な仕事が増えていく.人の役に立つ仕事だけど給料が低い――それはすべてブルシット・ジョブ(ルビ:クソどうでもいい仕事)のせいだった! 職場にひそむ精神的暴力や封建制・労働信仰を分析し,ブルシット・ジョブ蔓延のメカニズムを解明.仕事の「価値」を再考し,週一五時間労働の道筋をつける.『負債論』の著者による解放の書.
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Posted by ブクログ
仕事を辞める後押しをしてくれた本。なぜくだらない仕事が増殖するのか、なぜ楽な仕事なのにつらいと感じるのかの答えが見つかった。仕事本の中では個人的に1位。
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分量が多く難解ではあるが、誠実に、そして極めて正確に「現代社会にはクソな仕事がまん延している。だから生活と労働は切り離さないといけない」と主張している。再読の価値あり。
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若干冗長に感じたところはあるけど、面白かった。特に最後の何章かがとても面白かった。
世の中のあり方に対する著者の姿勢に心を動かされた。
結局のところ、この本で一番私がグッと来たのは、意思の発露みたいなものだ。アナーキストっていうのはこういうことなのかなと。
本を読む楽しみというのはそういうことにある気がする。
ずっと、カタカナの何とかコンサルタントみたいな人がこんなに増えていて、しかも現場に対する意見が異常に抽象的で、人がわからないような英語が多く、ケアリングの場所においては何の役にも立っていないにも関わらずコンサルタントとして入ってきては結果を出せ結果をだせ(そして、ケアリングワークをしている人たちは何も結果を出していない)、と叫んでいるのをあたかも役に立っているように扱わなければいけないのはなぜかと考えていたけど、ずいぶん腑に落ちた。
6,7章はいわゆる現代のブルシットジョブがどのように発生してきたか、対極(というか見えないところに配置されている)ケアリングワーク(エッセンシャルワーク)との関係を示していて、大変興味深い。
解決法としてUBIが挙げられている。
ただ、事例についてのところはちょっときつかった。
自分がブルシットではないと思っている仕事(人の役に立っていると思うもの)が、ブルシットというふうに感じる人もいるのだなと思うのは、ちょっとショックだった。
同様に、私がブルシットだと思っていても、当事者はそう思っていないかもしれないのかなと思うとちょっと切ない気持ちがした。
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斎藤幸平の『人新世の資本論』でこの本を知り、手に取った。はじめはブルシット・ジョブとは誰の役にも立たない仕事や資本主義を成立させるために作られた(例えば広告代理店のような)仕事のことかと思っていたが、そうではない。役に立たないとわかっているのになぜかなくならない仕事のことだった。
私の周りではブラックな仕事の話を聞いてはいたが、その反対にこのような内容の伴わない仕事があるのかと暗然とした。
その対極としてあるのがケアワークである。教員の仕事がブラックであることは昨今知られていることであるが、このブラックさは政治によって作られたものであり、ケアワークをブルシット化することが政治的に進められた結果ではないかと思った。
労働に関して非常に示唆に富んだ本だと思う。
Posted by ブクログ
この本以降「ブルシット・ジョブ」という言葉が流行語のように数々の著作で引用され、動画でも用いられてきた。この語感の意味をその定義以上の文化的な課題への警鐘を含め、しっかり前後の文脈まで把握する事が重要。二次的な浅い理解ではなく、原典を読めて良かった。本著は少し冗長で口説く感じるが、平易で分かりやすい表現。かつ、自らの頭で考えながら読む為には、あれこれ具体例を示しながら、ダラダラとした対談のような紙幅がちょうど良かったと、後から感じた。
興味のある切り口で頭の整理をしてみる。「価値のある仕事とは何か」「価値とは何か」「価値の無い仕事は何故生まれたか」「隣人と奥さん(旦那さん)を交換し、相互に有償で仕事を依頼するとどうなる」「本当は働かなくても良いのでは」、これら個人的な疑問に対し、本著を援用し、時に行間を自発的に思考し、読み進めた。本来、読書とはその所作なのかも知れない。
富裕国の37から40%の労働者が既に自分の仕事を無駄だと感じているらしい。無駄なら辞めれば良いが、お金が必要だ。また、何故無駄と感じるのか、無駄とは何か。コロナ禍にエッセンシャルワーカーという言葉が多用された。生活に必須な仕事以外は自粛。そう言われると、確かに、無用な仕事はありそうだ。更に、ここでは、職務に留まらず、同じ仕事における「拘束時間」を問題視する。
勤務時間中においては労働者の時間はそれを買った人間に所有されているという観念がある。そのため勤務時間中は生産性を上げて余裕の時間が生まれても、自分の好きなことをするわけにはいかない。監視の目があるから、余計な仕事をする。余計な仕事をしないと暇すぎて心が参ってしまうという問題もある。漫画でも読んで待機できれば良いが。この点、一足飛びに労働分配とベーシックインカムにより解決されずとも、コロナ禍のテレワークが社会実験となったように感じる。仕事の早い人間は、テレワーク中に手っ取り早く成果を出し、ブルシットの生まれる余白を自らの時間として手に入れたのだ。
労働者が実際に行っている事は、フェミニストがケアリング労働と呼ぶものにかなり近い、という本著の発言も響いた。ケアリング労働を有償で交換し合えば、労働者の納得感は増すが、最終的には税務署が喜ぶだけだ。金銭を対価にせずに、つまり、価値比較の無用化とそこから第三者に搾取されぬためには、我々は、信頼と愛をベースに、または単にネット上の承認欲求を満たす仕組みをモチベーションに労働交換比率を高めていくのが良いのだろう。その時、それはブルシットと対極になる。
思考は尽きない。もっと読みたい、考えたいと思わせる読書だった。
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「あなたは、お金の心配がなくなったとしても、今の仕事を続けたいと思えるだろうか?」ー答えは「No」だ。
今の仕事をやりがいがあり、社会的価値がある仕事に変革するのもマネジメントである私の責任だ。
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自分の仕事がブルシットジョブで向こう20年を耐えるのはムリだから転職する、という人生の節目で、じゃあブルシットジョブという言葉を作った人の本を読んでみようと手に取った。
語感だけで使ってた単語だが、著者の定義を見てその通りで驚いた。被雇用者本人でさえ存在を正当化しがたいほど完璧に無意味で、不必要で、有害でもある有償の雇用の形態で、とはいえその雇用条件の一環として本人はそうではないと取り繕わなければならないように感じている、と。そしてこれはシットジョブとは違うんである。
ブルシットジョブの種類や、市場が生み出した仕事になぜそんな非効率なものがあるのか、なぜブルシットジョブが増えているのかという問いと答え、ブルシットジョブがサドマゾヒズム的状況を生み出す仕組み、そしてブルシットジョブをなくすための1つのアイディアとしてのベーシックインカム。
著者はアナキストの人類学者で、他の著作を読んでみたくなった。
Posted by ブクログ
この本は語られること多くして、実際にはあまり読まれていないのではないか。
実際読んでみると、グレーバーはここで、現代の資本主義の根源的な問題を抉り出しており、その最も本質的な批判になり得ていると思う。
この書物の結論のひとつは、この社会においては、労働が他者の助けとなり他者に便益を提供するものであればあるほど、そしてつくり出される社会的価値が高ければ高いほど、それに与えられる報酬はより少なくなるということ。そして逆に報酬の高い労働とりわけFIREセクター(金融、保険、不動産)におけるそれは、社会的に徹底的に無意味であると本人に感じられるようなものであるということだ。
すなわちいわゆる「負け組」は貧に甘んじ、いわゆる「勝ち組」は無意味に耐えなければならないということ。どちらにせよ、浮かばれることはない。
いずれにせよ、この社会は、働くことの意味を根底的に転倒させ、そのことによって人が生きる意味をも喪失させた、ということなのである。
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やらなくても誰も困らない仕事(何も寄与しない仕事)って確かにあると思います。
労働自体が目的となっていないか❓
そんな事を考えさせられる一冊です。
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他の人も書いている通り、とにかく冗長で読みづらい。が、筆者の言いたいことは納得できるし面白い。
本文の後に続いた訳者の文章は1番要約してあってわかりやすいのだが、だったら本文の訳もう少しわかりやすくしてよ…と言いたくなった。。
ケアリングの話は全くその通りで、簡単にロボットによる代替ができると思わないし、それを数量化しようとするからおかしなことになる、というのは実際にブルシットジョブをやっている人間として非常にわかる。
そして最後は少し違う観点からベーシックインカムの議論に。ここが非常に面白かった。
人間の本質はきっと労働そのものに価値を感じるはずであって、だったらそこに集中する環境を作るべきだと。
とても腹落ちしてしまった。
総じて苦行でもあったが、読んで正解だった、かな。
Posted by ブクログ
新年度にぴったりの本、かもしれない!
就職や就活を通して「社会人」になる洗礼を受ける私たち。
社会に貢献する、
組織の役に立つ、
どんな仕事も尊い、
そうやって社会に出たときに世界中の働く人が直面する矛盾や葛藤は、
きちんと説明されてこなかった。
だからこそ、多くの共感を読んだんだろうと思います。
本書が出版されたのは2018年、この日本語版も2020年7月、パンデミック発生後に出されています。
著者のブルシットジョブ論が世に広まったのは、2013年のウェブマガジンへの寄稿記事からだそうです。
その後のコロナがさらに彼の議論を現に裏付け、「グレーバー現象」がさらに広まっていったのも納得です。
人類学者でありアナキスト活動家でもある著者は、2011年のウォール街占拠運動や『負債論』執筆もされていた。
そして、この日本語版出版直後、2020年9月に急逝されたそうです。
働く場の状況は、変わったのかな。どうでしょうか。
Posted by ブクログ
アメリカのアナキストでもある文化人類学者デヴィッド・グレーバーが書いた世界のカラクリを解き明かす「解放の書」との触れこみで、前から気になっていたものをついに読んだ。
3名で訳しているのもあり、かなり読みにくい。訳も色々と迷ったようで、訳注も多い。原文も修飾語が多く一文が長いのだと思う。日本語もそのとおりに訳しているらしく、やたらと「~の~の~における~については~か?」みたいな冗長な表現が多く、章立ても行き当たりばったりで、全然頭間に入らなかったため、2回ほど通読するはめになった。
ブルシット・ジョブというのは「その仕事にあたる本人が、無意味であり、不必要であり、有害でもあると考える業務」、「それらが消え去ったとしてもなんの影響もないような仕事であり、なにより、その仕事に就業している本人が存在しない方がましだと感じている仕事」のことである。本書の目的は、各種の仕事の社会価値を明らかすることではなく、自分の仕事にそれらが欠けていると考えながら働くことの心理的、社会的、政治的効果を理解することである。
■ブルシット・ジョブの5類型は以下のとおり
・取り巻き 企業の受付など
・脅し屋 ロビイストなど
・尻ぬぐい 無償ソフトウェアへの互換性対応を行う有償プログラマーなど
・書類穴埋め 役人など
・タスクマスター 取り巻きの逆(必要のない従業員ではなく、必要のない管理者)
また、ブルシット・ジョブの特徴として、欺瞞と曖昧さもあげられている。欺瞞というのは、どんな無意味な仕事でも、どんなに時間を持て余していても、働いているふりをしなければならないということ。つまり堂々とサボってはいけないのだ。曖昧さは、その欺瞞をまわりの人がどこまで自覚し、演じているのか分からない状況であり、「サボり」はどこまでが許容範囲か、「手が空いている」と宣言していいものか不明確ということである。
なぜブルシット・ジョブが人間の精神を侵すのか、なぜ人はブルシット・ジョブに耐えるのか、なぜブルシット・ジョブは増えているのか、なぜ問題視されないのか、といったことが400ページをもって解き明かされる。正直なところ、ちょっと長くて回りくどくて、読むのが面倒になりかけた。歴史に残りうる良書だと思ったし、もはや「革命の書」なのだけど、咀嚼に時間がかかる。何度も読んで、考えて、じわじわと蒙が啓かれる。
本書にはグレーバーのもとに届いたブルシット・ジョブの実例がいくつも含まれていて、それがかなり面白い。ドイツ軍内で隣の部屋にPCを動かすためにいる委託業者(遠くからやって来て隣室にPCを運んでくれる)とか、会社受付ですることがなく、クリップの色分けに従事する人とか…。ブルシット・ジョブに就いて自尊心が傷つき辟易している労働者が多いが、正直、それでそれなりの給料がもらえるならいいのではと思う。労せず大金を得られるのは幸運だと考える者はグレーバーは少ないと考えているようだが、本当だろうか。また、出てくる例が暇そうな仕事ばかりだけど、ブルシット・ジョブのくせにやたら忙しく責任も重い仕事も多くあるはずで、それが一番精神を蝕むのではと思う。
ジョブ型雇用の国とメンバーシップ雇用の国、キリスト教圏とそのほか(イスラムや儒教、仏教圏等)でかなり労働観は違うのではと思いつつ、そのあたりの論考はなかった。
Posted by ブクログ
ブルシットジョブ、確かにあるよなと納得してしまう。これまで、このような視点で仕事の意味について考えた事は無かったし、仕事の有無は問題になってきたが、主観的な仕事の価値が問題となった事はたぶん無かった。
ブルシットでない仕事が生活できな程低賃金で、ブルシットなペーパーワークが高給な事は事実で、何でこんな事になったのか、納得が出来ない。
ベーシックインカムはいい考えだが、ハードなケアワークをニーズを満たすだけの人間が選択するのか、需給のバランスが取れないように思う。
Posted by ブクログ
読みづらくて大変だった。本書による定義では、ブルシットジョブとは、
「被雇用者本人でさえ、その存在を正当化しがたいほど、完璧に無意味で、不必要で、有害でもある有償の雇用の形態。とはいえ、雇用条件の一環として、本人は、そうでないと取り繕わなければならないように感じている。」とされている。既にしんどい。
その無意味な仕事に対して、なぜか結構なお金が支払われる状況があり、これが働く者の尊厳を傷つけて苦しめるような現象まで起きている。
・・そして、200ページほど事例の列挙と勿体ぶった考察が続く。大幅に端折ると、
・労働はそれ自体が価値という考えが古くからある(労働価値説)。
・そこに資本主義が入ってきた。富の生産者は労働者でなく資本家となった。
地位の源泉は、生産力でなく、購買力(消費力)にとってかわられた。
もはや生産に重要な意味はなくなり、仕事自体に価値が置かれるようになった。
・さらに情報化がやってきて、正味では大量の失業者が生じたが、
(内容がなくても)仕事をすること自体に価値が置かれるようになっていたため、
失業は忌み嫌われ、意味のない仕事が大量に生み出された。
・それがブルシット化を加速した。
・解消は困難であるが、労働と収入を切り離すのは有用だろう。
たとえば、ベーシックインカムみたいに。
そうすれば、計量できないケアリング労働を正当に評価することにもなる。
理解としてはこんな感じ。どこか間違っているかもしれない。
さてこの本の考察をどう思うか?
正直なところ、前半の考察がなくても、ブルシット化現象の成因は情報化の影響だけで大方説明がつくんじゃないかと思う。ただ、それだけでは労働と収入を切り離す方法がなく、ブルシットジョブを解消できそうにない。解決のヒントが欲しい・・というところに考察の前半分が活きてくる。著者も述べている通り、これは問題提起の書であり、解決策を説くものではない。そして、書籍の出版後まもなく、著者は2020年に亡くなっている(訳本は死の直後に出版されたようである)。著者による続編は永遠に得られず、謎かけまでで終わっているのである。
ということで、概要を知るだけならダイジェスト本やコミカライズ版でいいのではないかと思う。
Posted by ブクログ
話自体は非常に面白かった。
ただ"""日本語訳"""って感じの文章が読みづらすぎて読むのが辛かった。
かまいたちの、「もし俺が謝ってこられてきてたとしたら絶対に認められてたと思うか」、みたいな感じ。
※P.263の見出し「現代社会に生きるほとんどの人びとは、たとえそれがなんなのか明確にすることが困難であったとしても、どのようにして経済的価値とは峻別される社会的価値という概念を受け入れているのか」
解説本によいものがあれば、本書よりそちらを読みたい。
#ブルシットジョブの定義
被雇用者本人でさえ、その存在を正当化しがたいほど、完璧に無意味で、不必要で、有害でもある雇用の形態。とはいえ、その雇用条件の一環として、本人は、そうではないと取り繕うわなければならないと感じている。
#ブルシットジョブの主要五類型
①取り巻き(フランキー)
②脅し屋
③尻ぬぐい(ダクトテーパー)
④書類穴埋め人
⑤タスクマスター
#ブルシット・ジョブ従事者は不幸に感じる
■囚人は、一日中テレビを見ているよりも、洗濯や掃除などの労働をしている方がストレスを感じない。それほど無意味なことを強いられるのはストレス。
■独房に6ヶ月入れられると、物理的に観測可能な形で脳に損傷が出る。それほどに人間は社会的な生き物。
■幼児は、自分の行動が予測可能な形で世界に影響を与えられることに気付いた時に大きな幸福感を得る。
#資本主義社会においてはブルシット・ジョブは増殖し続ける
■資本主義社会において金融セクター従事者の賃金は上昇、だが金融セクターはブルシット・ジョブの宝庫
■資本主義では貧富の差は広がるしかない
→富裕層はフランキーや脅し屋を生み、それによってダクトテーパーやタスクマスターが必要になり、書類穴埋め人の仕事も増える
#なぜブルシット・ジョブの増加に人々は反対しないのか
■古来より労働は大変なほど神聖とされ、神聖な労働ほど見返りを求めてはならない風潮がある(例えば「出産」など)
#解決策は?
■ベーシックインカムが提案されている
ここが一番面白い。実現できるとは思えないが。
実際、ロボットやAIなどによって、人間が行うべき労働は減少しているはず。
ベーシックインカムが導入されれば、人々は報酬を気にせず好きなことができるはず。
やりがいのあるリアルジョブほど報酬は低いが、取り組みやすくなる。
Posted by ブクログ
★金銭に換算できないケアリングの価値★労働は苦行を伴うものであり、教師や看護師など誇りとやりがいを得られる職業は低賃金でも仕方ない――。「プロテスタンティズムの倫理と資本主義の精神」に先立つ、労働を修養の一環とみなす英国の考え方まで立ち上り、無意味なのに意味があるように取り繕わなければならないブルシット・ジョブの存在に光を当てる。
労働はそもその金銭と換算するものではなく、時間の切り売りという概念を取り込んだから雇用者は働き手が暇そうにしているのを許せない。労働は生産にばかり焦点を当てていたからこそねじれが生じ、サービスという概念を取り込めていない、と主張する。最後に遠慮がち(?)ながらベーシックインカムに触れ、労働を金銭から解放しようと訴える。
代替可能性や市場性で収入が決まるおかしさに違和感があるのは確か。満足度で収入を補うやりがい搾取に通底するものだろう。
前段の各地の体験談は興味深く、後段の理屈も納得感がある。ただ、実はそのつながりはうまくつかめなかった。読み物に仕立て上げたいのだろうが、論旨をはっきりさせた章の名称にしてくれたらもっと理解しやすいのに。
Posted by ブクログ
自分を含めて、おそらく多くの人間が感じていながらも口に出してこなかった問題について論じている。「世の中から消えても別に何の問題もなさそうな(むしろ無くなったほうが良いかもしれない)無駄な仕事」について。
例えば、わざと通さないように作られている補助金等の制度における書類作成や穴埋め作業、ファンドマネージャー、決定権のない中間管理職、コンサルタント、いなくても会社が回るCEOなど、権力者を権力者たらしめる為だけに存在する「貴族社会における従者」のような仕事のことを言うらしい。ブルシットジョブとは「誰から見ても不要だと分かっていて、本人でさえ自覚しているにも関わらず、表立って不要な仕事だと言えない仕事」と、この本では定義している。そしてこういう仕事は往々にして高賃金である。
その対極にあるのが、医療や教育、あるいは3Kと言われる仕事だそうだ。これらは確実に人のためになり、無くなってしまったら社会が回らなくなる。そしてこれらの仕事は総じて賃金が低く設定してある。コロナ禍で言われるようになったソーシャルワーカーである。コロナ禍で勇者の如く祭り上げられているが、彼らの賃金が上がる事は今のところない。何故こんな不条理極まりないことが起きているのか。
この本はそれを経済的観点からだけでなく、宗教的観点、道徳的観点、左翼右翼それぞれの観点など、多角的なアプローチで論じている。
なるほどと納得できる内容ではあるが、それゆえ人間の非合理的で不条理な固定概念を覆せない現状にモヤモヤする。
資本主義の機能はすでに破綻しつつある。
人間はそれに変わる新たな社会のあり方を作り出すことができるのだろうか。
Posted by ブクログ
オーディブルで聴いた。
世の中の何の役に立ってもいない無意味な仕事=ブルシットジョブについて扱った本。
題材は面白いけど、長いし話がよく脱線したりするから聞き逃してもそのまま聴き続けた。
うちの上司は典型的なタスクマスター、無意味な仕事をいちいち振ってくるブルシットジョブ生成機。そして自分もそんな無意味な仕事をこなすブルシットジョブ。
自分に振られた仕事がいかに無意味であるかを上司に理解させるより、仕事を終わらせる方が早いから無意味な仕事が生成され続ける悪循環。上司を説得できるとも思えないし、説得できなかった時のリスクもある。
「自分の仕事が無意味であると思いながら仕事をすることは、ちゃんとした給料を貰っても辛いもの」ってのはまさにその通り。
Posted by ブクログ
ある人にとってはクソどーでもいい仕事でも他のある人にとっては必要な仕事なこともあるんよなー
やから必要ないクソどーでもいい仕事なんて実は無いのかなあと思ったり!!!
知らんけど!!!
Posted by ブクログ
ブルシット・ジョブ=クソどうでもよい仕事が増えている。交通違反を待ち構える警官、スキャンダルを大問題として長々と扱うマスコミ、申込書に押されたハンコが本人のものか印鑑証明書で確認する銀行、、ちょっと見渡しただけで失くなっても何の影響もない、むしろ有害にすらなっている仕事が溢れている。
問題なのは、エッセンシャルワークと呼ばれる現場に近いブルーカラーの仕事(=シット・ジョブ)の給与水準が低く、長々と結論の出ない会議や書類を作成する作業に時間を費やすホワイトカラーの方が経済的に恵まれていることだ。当然、現場の方がやりがいを感じられる一方で搾取のような構造が常態化している異常な社会なのだ。
個人的にも、大学で働いた時にブルシット・ジョブの多さに辟易とした。本来的な価値創造である教育や研究に割く時間は半分以下であり、参加するだけの仏像になる会議、現場をまったく分かっていない上層部に説明するための資料作成、文科省のご機嫌を伺いながら都合よく解釈する目標設定、、最後の方はブチ切れ気味でこれらのクソ仕事を放棄した。
刑務所においてもっとも過酷な刑罰とは、何のためにやっているのか分からない作業である。穴を掘ってまた埋める、右から左に移したらまた左から右に移すといった、成果のない仕事をさせることで人間の精神は病んでいくことは実証されている。給与は高いけど社会の役に立っているのか分からない仕事は、まさにそんな状況なのだろう。そんな社会を何と呼ぶのか、"地獄"だ。
Posted by ブクログ
飛ばし読みで読んだ
世の中にどれほどブルシットジョブ(クソどうでも良い仕事)が溢れているか、みたいな内容がほとんどで自分が読みたかった解決策に関してはほとんど書かれていなかった。最後にベーシックインカムについてちょろっと書かれてただけ。
解決策は世の中からブルシットジョブを無くして、雇用を失った大量の人にどのような対応をさせるかが肝なんだろうな。
世の中には必要のない仕事が溢れている。理論的には労働時間短くなっているはずなのに必要のない仕事がその分増えているから今だに人々は8時間働いてるとのこと。ホントかわからんけど。
ベーシックインカム以前に、1日4時間労働・週休3日で働けます!みたいな求人・職種が増えていくことが大事だと思う。義務教育の軍隊教育の影響か国民性か知らんけど8時間労働こと自体を疑わない人が世の中の大半だから既存の雇用形態は変わらないだろうな
この国でベーシックインカムが導入されて一般市民が労働しなくても良い世の中になるには時間はかかりそう。西欧諸国が導入し始めない限りは無理だろうな。
Posted by ブクログ
問題提起が素晴らしい。そしてこの本を読むと、単に世の中の無価値な高給取りを批判しているだけではなく、なぜこういう構造が生まれるかを説いている。なので、他の本が変に引用するものをもってわかったようにならないことは大切だなと思った。
最も悲しい事実は、社会的価値が高ければ高いほど、それに与えられる報酬はより少なくなるということ…
ただ、もう少し簡潔に説明できるはず…分量の割に…
Posted by ブクログ
読みながら本当に思ったこと。
「会社のブルシットジョブな業務を洗い出す為に専門の部署が必要!そしたらその部署を管理する人間も必要か!」
重症。
Posted by ブクログ
p111「囚人を六カ月以上、独房に閉じ込めつづけたばあい、物理的に観察可能なかたちで脳に損傷をこうむることが、いまでは判明している。人間とはたんに社会的な動物であるだけではない。もしも、他の人間との関係から切り離されたならば肉体的な崩壊がはじまるほどに、本質的に社会的な存在なのだ。」
巻末脚注より
「無能というだけでクビにするのは――パイロットや外科医ですらも――ほとんど不可能だが、ふるまいの基準に反しているようなばあい、つまりきちんと役割を演じていないようなばあいは、きわめてかんたんにクビにできる、と。」
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個人の自由・個人の主権を守るために私有財産は認められる。▼各個人の自由意志に基づく結合はよいが、国家という形での結合はだめ。▼全人類の利益に対する道徳的義務が正義を形作る。正義の判定は政府ではなく、自立した個人が判断する。自然権は個人の恣意を正当化するもので社会規範にはならない。ウィリアム・ゴドウィンGodwin『政治的正義』1793
所有すること(私有財産を持つこと)は他人から盗むことだ。個人の自由は財産の共有によりもたらされるのであり、私有財産は認められない。▼自律的な個人は多種多様なものを生産する。生産したものを自由に交換し合う。個人は小さな諸集団に組織され、小さな諸集団同士が連合する。最終的に国家はいらなくなる。ピエール=ジョゼフ・プルードンProudon『貧困の哲学』1846
私有財産は認められない。▼農村のような相互扶助の関係を再建すべき。相互扶助が自然な原理であり、自然な原理に必要のない国家は打倒すべき。▼組織的な階級闘争ではなく、個人の直接行動(テロ)によって社会を変えるべき。ピョートル・クロポトキンKropotkin
労働運動により国家を暴力的に転覆すべき。共産主義者のように「どういう国家権力をつくるか」ではなく、「どうやって国家を廃止するか」を考えるべき。ミハイル・バクーニン『神と国家』1882
※ロシアの裕福な貴族出身。一時、日本にも滞在。
社会的憎悪や宗教的憎悪は、政治的憎悪よりもはるかに強烈で深刻である。ミハイル・バクーニン『政治哲学』
政府は社会の成員に無条件にお金を与えるべき。その人に就労意欲がなくても、金持ちでも貧乏でも、誰と生活を共にしていようと、国のどこで住んでいようと与えるべき。ベーシックインカム。フィリップ・ヴァン・パレースVan Parijs『本当の自由をみんなに』1995
意味がない、必要ない、有害ですらあると感じている仕事。膨大な書類作成。複雑な事務手続き。皆、意味がないと分かりながら、自分を騙し騙し働いている。こうした仕事は廃止すべき。仕事を失った人はベーシックインカムで生活すればよい。デヴィッド・グレーバーGraeber『ナンセンスな仕事』2018
※bullshitな業務とbullshitな職業の違い。LSE。ウォール街を占拠せよ運動を指導。
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社会的には役に立っていないと本人が感じている仕事を、勤務時間中は忙しそうにやらないといけないため、精神的苦痛を味わう。威厳を保つためにだけ存在していたり、脅迫と欺瞞を押し付けたり、無駄な書類ばかり作ったり。ブルシット・ジョブだけでなく、仕事のブルシットジョブ化も進んでいる。
経営本には如何に効率化するか的なことが書かれているのに、それをがんばって読んでいたのに、実際は、やる仕事がないから遊んでるって。。でもそれで、給料がもらえてるからうらやましいな。