【感想・ネタバレ】万物の黎明~人類史を根本からくつがえす~のレビュー

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Posted by ブクログ

いい本なんだけど、どこからどこまでがグレーバーのアイデアで、どこからがウェングロウのアイデアなのかがあまりはっきりしていない印象があった。斬新な価値観、西洋中心主義への揺さぶりは、グレーバーが提唱せずとも西洋の文献には存在する。グレーバーがそのことを知らなかったはずはない。本当はもっと別の内容を、グレーバーが一人で書きたかったのかもしれない。

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2024年04月14日

Posted by ブクログ

考古学者と人類学者の共著のビッグヒストリー系なんだけど、ハラリやダイアモンドが前提としていることを否定する。
ビッグヒストリーを書いてきた思想家はルソーとホッブズとの考えの間を行ったり来たりしてきたが、どちらも真実ではない。古代の人や未開の人は我々が思っているような未熟な人ではなく我々と同様に思索する人々だった。アメリカ先住民は西洋を批判していて、ヨーロッパ人は彼らから多くのことを学んでいた。社会的不平等に起源があると考えるが、それは農耕によって不可避的にもたらされたものではない。本当に問題にすべきは社会的不平等の起源が何かではなく、どうして閉塞したかにある。人類はそれまで様々な社会組織の間を往復しヒエラルキーを築いては解体してきた。新石器時代の農耕は長い時間をかけて進化しており、革命と呼びうるものではなかった。戦国時代の小氷期がアメリカ先住民の人口減少によるものである可能性。文化は他集団との違いを強調するためのもので、これが閉塞の一つの条件。ヒエラルキーの痕跡のない都市や共同体。現代の国民国家が決して自明のものではないこと。
翻訳者も凄い、これだけ専門性高いものを読みやすく訳して。

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2024年03月20日

Posted by ブクログ

暗黒時代とは、進化論の視点から現在を中心として歴史を観 察したときに現れる異分子を指している。本書は発展段階の 秩序空間に存在しえず、エラーとして意義付けされたすべて の可能性を肯定的に読み返す。すると、そこに現れるのは進 化の奴隷から開放された遊戯の人類史であった。

個人的に、千のプラトーの直後に本着を手に取れたことが僥 倖だった。歴史の境界線を反復横とびする自由な欲望の形態 が、具現的な形で理解できる。

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2024年02月10日

Posted by ブクログ

 本文だけで二段組約600頁の大著、しかもその内容が帯によれば、「考古学、人類学の画期的研究成果に基づく新・真・世界史!」というのだから凄い。
 人類史20万年で分かっていることはごくわずか。しかし現実にはルソーの『人間不平等起源論』かホッブスの『リヴァイアサン』で示された発想の二者択一で、それをアップデートしたものが語られているに過ぎないと著者たちは言う。例えば、農耕の発明により「バンド」から「部族」へ、さらに「首長制」→国家へであったり、狩猟採集、牧畜、農業、工業といった生産様式の変化などなど。ベストセラーらとなったビッグ・ヒストリーの著者たち(自分も大変面白く読んだ)、ハラリ、ダイアモンド、ピンカー等も、これまでの常識に安住しているとして批判される。

 17世紀末のアメリカ先住民の哲学者=政治家カンディアロンクによる当時のヨーロッパ社会に対する批判の紹介から始まり、トルコの前9000年頃からの遺跡ギョベクリ・テぺ、前1600年頃にアメリカの狩猟採集民により建造され、商品文化の痕跡のないポヴァティ・ポイント、前100年頃から後600年頃まで存続し、多くの絵画芸術が残り、また居住用アパートメントが作られたメソアメリカのテオティワカンなど、これまで聞いたことのない考古学的遺跡から分かってきたこと、また素朴で単純な未開人といったものではなく、高度な政治や外交が行われ、また”所有”に関する考え方がそもそもローマ法やロック流のものではない別の在り方があったことが明らかにされていく。

 これまで常識とされてきた社会の拡大、国家の成立、支配と被支配といったことに関して、別の人間社会の在り方があったことを最新の証拠によって明らかにするとともに、今後もあり得ることを著者たちは強く主張する。訳の功績でもあろうが、著者たちの主張は明晰で論理展開は分かりやす。ただ、あまりに膨大でこれまで知らなかった情報が次から次へと出てくるので、その内容を消化するだけでも一苦労だ。しかし、既成観念を打ち壊されるのはある意味快感である。

 40ページ以上の訳者あとがきがあるのも、膨大な本書のエッセンスを解説してくれるものとして、とても参考になりありがたい。

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2023年10月24日

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