戸谷洋志のレビュー一覧
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SNSの使い方(依存しないように生活の中での使い方を考えよう/セキュリティを意識しよう)についての本ではなく、私たちの生活の中にすでに溶け込んでいる(分離して考えることが困難な)SNSという媒体と、それを利用しながら(SNSとともに)生きるとはどういうことか、ということをヘーゲルやハイデガー、アーレントなどの哲学者の思考を組み入れながら分析・考察している本です。
「SNSについて」を主題としている書籍、というよりも現代のわれわれの生き方について改めて哲学適任考えることが主題になっているように思います。その思考のとっかかりとして、SNSを取り上げている、という印象でしょうか。
古典的な哲学書を読むとき、現在の自分が置かれている状況と照らし合わせながら読むことが難しいと感じることが少なくありませんが、SNSを切り口に話が進みますから、「自分事」としてとらえることがしやすいように思います。
特に第一章で取り上げられているSNSでの承認(いいね!をもらうこと)への考察はなるほど、と思わせるものでした。他人から「いいね!」をもらおうとして、自分を「演出」すること(=本来の「自分らしさ」からの乖離)や、お互いに「いいね!」を送り合うために他人の投稿に過剰に反応する事(依存)など、人によっては耳が痛くなるような私的なのではないかと思います。 -
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スマートな悪
voicy 荒木博行のbook cafeでマスターが熱弁していたので読みました。
私もかつてはsociety5.0の中にいて、スマートな未来を作ろうとしていましたが、それが本当に善なのかはあまり疑わなかったですね。
インフラコストを下げるのは疑うことのない善だった。
スマートになることによる世界への不感症、システムに組み込まれる人、そしてアイヒマンへ。
選択肢が多いとつかれる。楽な方へ流れてしまう自然人としての力学を理解して、複数に所属すること、いつでも変われる自分でいることが大事だと思わせてくれる本でした。
人はシステムの中でしか生きていけない -
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有名なJポップ15曲の歌詞を、恋愛や時間、死、人生などのテーマで哲学するという面白そうな試みに惹かれた。しかし、15曲中脳内再生できるのはせいぜい5曲ほどで、今も好きでよく聴くのは「天体観測」と「閃光少女」だけ。他の曲もよく知っているとより楽しめただろうな。「閃光少女」の今現在この瞬間をテーマに据えるって、なかなか難しいと思う。軽い、ありきたりな歌詞と思っていたが、解きほぐすと読み応えがあった。
それだけ人間はずっと同じことで悩み、普遍的な真理に到達しているということか。
Jポップは特に、曲の構成や各楽器の美味しいフレーズ、歌い方などを重視して聴くため、歌詞はユニゾンのようにまったく意味がなくても問題ないと思っていたが、これからは歌詞にも注目して聴こう。 -
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ドイツの現代思想が専門の若い哲学の先生と、今年から大学1年生の麻衣さんが対話をしながら、自分らしさとか、現在は何のためにあるのか、人生はどう意味づけられるのか、といったことについてJポップの歌詞を題材にしながら思索していくという本。取り上げられているJポップは14曲で、ミスチルの「名もなき詩」からバンプの「天体観測」という、おれの中高時代?らへんの曲とか、おれがカラオケで歌う嵐の「Believe」とかいきものがかりの「yell」とか、あとは全然知らない乃木坂の曲とか。基本的には2000一桁年代の曲が多い。それぞれのテーマで、過去の西洋の哲学者が引用されている。
全体的にはなんか簡単なことをコムズカシイ言葉で説明しているだけなんじゃないか、と思ってしまうところもあって、なんとなく物足りないという印象もあったが、もちろん部分的には面白いと思えるところはあった。「愛の告白は存在をかけた冒険」(p.60)というのは先生も麻衣さんに冷やかされているけど、かっこいい言葉だよなあ。サルトルとかヘーゲルとか割と有名な哲学者の引用も多いが、シモーヌ・ヴェーユという人?は有名?「三四歳の若さで断食によって自死した」(p.179)って、これは衝撃。一番分かりやすかったのは「私たちの日常生活において現在は常に目的への手段という性格をもっています。しかし、手段は無ければ無いほどいいものです。そうである以上、現在は無ければ無いほどいいものになります。(略)つまり、そうした現在は無意味だということです。私たちが現在を未来に到達するための手段として捉えている限り、現在は固有の価値をもたなくなり、無意味なものに変容します。」(p.191)という部分。そして、その後の麻衣さん「そうだとしたら、私たちの日常生活はほとんどが無意味になってしまいませんか?」(同)ということと、そこにどう活路を見出すのか、という部分。最近、50代の職場の人が「なんか意味のないことがしたいですよね」と言っていたが、それと結びつくような感じがして、印象的だった。おれまだその境地にいけないんだよなー、なんかウソでも意味があると思うことじゃないとできないんだよなーとか思ってしまう。
そして、この「麻衣さん」というアシスタントについては、読み始めはてっきり「テツガクなんてぜんぜんわかりませーん」みたいなおバカキャラを先生が説得していくみたいな設定なのかと思ったけど、麻衣さんは非常に頭が良く、物分かりも早いし鋭い。
(ここから最後の部分の話をするので、ネタバレ?になるかもしれません)「平凡な人生を歩むことと、決断に基づいて平凡な人生を歩むことの間には、どのような違いが見出されるのでしょう?」(p.337)という先生からの問いに、「自分と違う生き方をしている人を、尊敬できるかどうかです。」(同)と答える。すごい。先生に導かれる形であったにせよ、最後は麻衣さんがきれいにまとめていた。同じような先生と女性の学生との対話という設定で『宗教学講義』というちくま新書があったが、話の中身とは別にこの二人に最後にすごいことが起こる、みたいな話だったら面白いなあ、とか期待した。(21/09/04) -
Posted by ブクログ
哲学に精通した著者がJPOPのヒット曲の歌詞から5つのテーマについて哲学の観点からの考察を対話形式で書いた一冊。
自分、恋愛、時間、死、人生という5つのテーマについてJPOPの曲から考えるという斬新なものでありながらも内容は深く各楽曲の深い世界観を味わいながらも哲学の概念も学べて勉強になりました。
相互承認や至高性といった哲学者たちの概念や恋愛における癒合性、星の友情など言葉にできない人間の心理的な描写を哲学で表現することによってより歌詞の意味を感じることができると感じました。
また、歌詞における主人公の置かれた立場や状況を考察することでより曲の世界観や作詞家の意図なども読み取るきっかけにもなり、音楽の芸術的な見地も深めることができました。
本書を読んで学んだ考え方をもってそれぞれのテーマに対する他者との関係性や哲学的な視点で自分自身を俯瞰することで新しい視点が生まれ、より深い人生観を感じることのできるきっかけになると感じた一冊でした。