月岡月穂のレビュー一覧
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Posted by ブクログ
薫子さん、どうかお幸せに……
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以下、ネタバレを含みます。
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罰を受ければ、罪が消えるのかといえば、そうではない。
けれど、いつまでも責めていたところで———誰も幸せにはならない。
これは、英雄の物語ではない
それでも罪人は断罪-さばか-れる
私が人生で最も愛する名作、装甲悪鬼村正における、復讐篇のモノローグです。まさに、薫子さんは許されたわけではないけれど、罰を避けることはできないけれど、それでも彼女を愛し、慕い、生きていてほしいと願う人はいるという事実が……どうしようもなく、湊斗景明の殺人の罪を知りながら、彼に生きていてほしいと願った、大鳥香奈枝を思い出して止みませんでした。
そもそも古代の縄文のご先祖様は、木を切り、森を滅ぼして、土地を開き、水を引き、田を作ることに初めは畏れと抵抗がありました。何故なら土地と森は、そこにあるだけで無限に恵みを与えてくれる一方、人を簡単に殺めることができる天敵たちも、森の中に同居させているからです。恩恵と脅威。感謝と恐怖。そうした、畏れと深い愛情を、彼らは森への信仰としていたのです。
しかし、1000年以上の長いときをかけて、やがて弥生文明、水田と稲作の暮らしに移り変わり、人が人の都合のために、土地を耕し、穀物を刈り取る生活が始まります。彼らはそのとき、土地を掘り起こし、傷つけています。ゆえに彼らは地母神に赦しを乞いました。彼らはそのとき、稲を刈り取り、殺めています。ゆえに彼らは穀物神に赦しを乞いました。古代オリエントの地母・穀物信仰は、縄文時代にルーツがあると見る説もあります。
そもそも、人は人の都合だけで、与えられた恵みを勝手に壊している以上、その畏れを忘れてはいけませんし、ゆえに法を破らなければ罪ではないというような偽善や小細工は、少なくとも古代の人々は思いつきもしませんでしたし、かりにすると人がいたとしても、軽んじられ、決して真に受けることなどなかったことでしょう。
ゆえに、畏れや法や罰とは、それがあるから人が従うという後手のものではなく、そもそも人が、畏れと感謝を心に持つからこそ、自ら進んで善く生きるために、結果として現れたものにすぎないはずなのです。だからこそ、隊員を危機に追い詰めた薫子さんは決して許されてはいけませんし、罰は必ず受けなくてはなりません。法は軽んじられないからこほ、その秩序の下に大勢が守られます。
代わりに、ここで薫子さんが安易に許されてしまえば、軍規が侮られ、罰されないことを前提とした無法が罷り通ってしまいます。正直者が損をするなら誰もが犯罪をためらわないということです。結果としてひとりの独善を許すことが、大勢を望まぬ不幸に招いてしまいます。
トゥキュディデスの『戦記』にも記されていました。
「弱い者にも、清い心の正義の実在は認められる。
しかし、それを尊ぶあまり、力ない者の主張を許してしまっては、今度は許したこちらが他の多数・大勢に侮られてしまう。最悪の場合、裏切りや謀反によって戦う前から敗北する。
我々は味方を守るため、平和を続けるため、我々はあなたがたの主張を認めることを望まない。
我々が正義だから勝ったのではない。
あなたがたに正義がないから敗れたのではない。
ただ力の多寡があったのみである」
———と。
それでも。
そう———それでも。
好きならば、慕うならば、愛おしいならば、
生きていてほしいと、幸せになってほしいと、
叶わなくても、望み、願い、祈る、
それもまた、どこまでも儚く美しい
人のこころ、もののあはれ
だと私は思います。
なんなら、甘水がしたことも、やろうとしていることも、許されてはいけないのでしょうが……彼がどうしてこういう人物になったのかの経緯を慮れば、なんとも切ない気持ちになりますもの。彼がもし、能力によって「過剰防衛」で他の誰かを傷つけたりしなければ、あるいは、その人柄を信じて、須美さんは、一家の存続以上に、甘水を慕ってくれたかもしれません。
これから先の展開で彼がどうなるのか。もちろん、先述の通り、罪あらば罰されるのは法の掟ですし、それによって大勢の平和は守られるのですが……それでも、やり直しが許されるなら、彼がこれから先の長い時間の中で、もう一度こころときめいて、幸せな日々を生きられますようにと祈ります。
それにしても、改めて、殺陣の要素として読んでまいりますと、甘水の能力は強すぎるなぁと、敵ながら天晴れな読み応えでした。精神感応は強すぎるがゆえに、帝に止められているという展開は、なんとも、雷帝を側に置く邪眼使いの御堂蛮くんと、帝に禁止された精神感応機能を持つ三世村正を連想したやみません。奇しくも村正が主人の景明さんを呼ぶとき、劔冑-つるぎ-の掟として、「御堂」と呼ぶことも、偶然の一致にしては興味深いものがあります。※GetBackers・奪還屋、装甲悪鬼村正 の登場人物
甘水はその強すぎるがゆえに、国家や世界の秩序も変えてしまう危険性を、むしろ「使えばいいじゃないか」と解き放ってしまいました。令和現代でいえば、間違いなく最強の兵器は原子爆弾ですが……それを抑止力としてではなく、躊躇なく私用で使ってしまうといった具合でしょうか。即物的に喩えるとなるほどその狂気がぶっ飛んでるのがお分かりいただけるかと思います。
そんな甘水でさえ、一瞬でその背を捉えて蹴り抑えてしまうのですから、清霞さんつえーのヘヴン状態でございます。ここまでで彼の精神的な不完全さは、読者の皆様はよくよくご存知で、それをかわいいと思える一方で、彼の本来の職務である、軍事行為に至っては、全く有能どころか完璧すぎるほどに頼もしい。このギャップが最高なんですよね……あくみせんせい、ほんと、天才胸キュン作家さんです///
しかもその強い使命感と、帝大の徴兵免除の特権がありながらあえて入隊した決意の理由が、五道さんの父親を救えなかった未練からだったとは……そこも知ってしまっては、もう、アツい人だなぁと、尚更好きになってしまいますもの。男性は、尊敬する男性のために忠義を以って働く姿に、無条件に感動するものですし、そんな男性たちに慕われる姿を見ると、女性も、その頼もしさから自然と恋してしまうのでしょう。自分の好きな人ほど、他の女性もまた彼に恋している。そのいじらしさがまた夜伽を盛り上げてくれる隠し味♡なんちゃってなんちゃって! やーん、清霞さんと美世さんがやることやっちゃう展開になったら一体2人の胸キュンはどうなってしまうのでしょうか。笑 今や抱きしめたり、キスするだけで2人とも真っ赤ですのに!かーわーいーいー〜♡♡
はてさて、次巻も楽しみでございます!! -
Posted by ブクログ
芙由ちゃんかわいい。正清さんまじ殺生丸様。
え、短すぎ?
はい、いつも通り、もう少しお話させていただきます。
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以下、ネタバレを含みます。
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甘水直なる人物が浮かび上がって来ました。
憑依されているはずなのに異能封じが通じてしまう・・・その事実から、ラスボスもまた、美世さんと同じく、「薄刃」縁の者であろうとどことなく想像しておりました。実際その通りなのか、少なくとも直の正体は、薄刃の分家であり、その能力は特筆されるほどに優秀で、一族の掟を守らせることが出来ないぐらいに強力であったことも明らかとされました。
うーむ、興味深い。桜庭一樹読者としましても、あれこれ先の展開を想像しながら読むことはとても楽しいです。
そして、芙由ちゃんですよ。
もうね、初登場のシーンからして、「あ、これは、ツンデレだな」と確信しました。笑 長年、オタクをやっている人は、もう直感でわかりますよね?え?私だけ?
アニメ化もした本作ですが、芙由さんだけはCVが明らかでないので、私は勝手に水橋かおりさんを連想していました。高飛車なのに惚れたら一途な当たりとか、すごくピンと来るんです。お気に入りのリボンを渡して褒めるところとか、見ず知らずの男性と二人きりになることを心配しちゃうところとか、もう美世さんのこと好きすぎて、どんだけ可愛いのかとニヤニヤが止まりませんでした。笑笑
そして正清さんよ!
動かずとも風・雷だけで撃退できてしまうカリスマぶりは、アベルナイトロードや八神和麻を連想しますが、私の世代直撃なのは殺生丸様でした。性格でいわばむしろ清霞さんの方がそうなのですが、威能を扱う様の余裕ぶりを見ていると、どことなく正清さんにぴったりだなぁと感じます。
※トリニティブラッド、風の聖痕、犬夜叉、の登場人物
また、異能心教の考え方が、そっくりそのまま、20世紀の悪夢、共産主義・パルチザンそのもので驚かされました。帝都を覆す思惑と言えば、まさに実在の歴史においては真っ先に共産主義が挙がりますし、本作の異能対策のために動く部隊は、なるほど特高警察に似ているとも言えましょう。特高警察の戦後の異例な出世を見ると、国際金融資本と癒着の強い政治関係者と司法取引していた可能性は否めず、売国奴の代表例として挙げられることも少なくないので、その反動か、彼らが当時活躍したのは、学歴がなくても、戦地に赴くことなく、国家の敵・共産主義者(とおもわしい人物)を虐殺するだけで自分は安穏としていられる___などといったイメージも多く語られています。
小林多喜二や幸徳秋水は皇位を否定したのではなく、天皇の歴史について学びたかっただけであるにも関わらず、表に流布された情報以外を知ろうとするだけで、天皇を疑う逆賊として残酷に殺されてしまった・・・という場合もあります。その例を持ってすればあながち間違いでもありません。
ですが、あくまでもそこまで過酷な例はこの二つぐらいしかない、とも言えるのです。本作の五道くんや久堂さんは、むしろ立派な教養を持っていますし、帝大の卒業者ということは徴兵を免れる特権も持っています。にも関わらず、彼らは、表では、科学によって全く信じられなくなってきた異能退治などという役目を負い、誰に感謝されるでもないのに命をかける仕事を自ら選んでいます。
今でも、国際法におけるエリートの概念とは、学位や教養のことを指すのではありません。ところが、東大秩序にすっかり飲み込まれて云十年、現状、令和初期時点での日本は、エリートとは学位を指すことになってしまいました。本当のエリートとは、命をかけてでも成し遂げる使命を覚悟している人を指します。私にとって、それは実在の天皇陛下であり、自衛隊員さんたちであり、そして本作の清霞さんや新さん、五道さんなどがそれに当たります。
きっと、実在の特高警察も、全てが全て、高徳・小林事件のような人物たちばかりでなく、学位も収めつつ、国内の治安を納めるために残り、戦地に赴く友人を涙を呑んで見送り、むしろ国内で権力をほしいままにしている同僚たちを叱咤するような立派な人たちがいたと思います。帝大に通う金銭的猶予もなく、ようやくありつけたと思ったら、今度は同僚にまで叱られる・・・その憂さ晴らしとして、かの事件を起こしてしまったのだとしたら、もはや、残酷なことをしてしまった一部の特高警察の関係者たちすら、私からすれば、時代が起こした必然であり、彼らはもっと幸せになってほ強いと願うばかりです。戦後の敗戦既得権益の中に居残って、今なお権力をほしいままにしている人々も、そうした人たちの子孫たちです。彼らは本当に愛されたことが多分ないのでしょう・・・あったとしても、自分の地位、財力、人脈を欲しているだけだとうがってしまい、素直に信じられなくなっているのです。ちょうど本作の芙由ちゃんが、清霞さんの同情を惹くために哀れを演じてるのが美世なのだと、疑ってしまっていたように。
つくづく、全ての人々が平和でいられることを、幸せでいられることを願います。それが同時には叶わなかったとしても・・・やがて、いつかは、きっと、とそう願います。
鬼の一部を肉体や精神に取り込ませることで強引に憑依させ、精神感応によって操ることができる・・・という内容も、アドレノクロムとエプスタインの関係が海外に広く知られた今となっては驚くべき一致ぶりです。鬼とは元々は人です。そこに肉体的、精神的圧迫が加わることにより、耐えかねた体と心が、限界を超えて発露することによって形となるものが鬼です。狗、鬼、どちらも「いぬ」「おぬ」、つまりはそこに本来いない者を指して呼ぶ言葉ですから。悪魔召喚とも繋がりが深く、ハザールマフィアなど、現在の各国と同化したユダヤ人(アシュケナージ、スファラディなど)とは違い、最後まで自分たちの悪魔偶像崇拝を信じ、現在もその信仰を一部の者が続けている一族というのは・・・悲しいかな実在します。
彼らは、国際金融資本家たちが脱税を訴えられ、法的追求されないように、絶えず世界のどこかで紛争を起こすことに協力しています。人を○ろすこと。尊厳を貶めること。暴力に快楽を覚えること。そういった彼らの信仰の条件と、戦争を起こして欲しい、自分の財産を守ってほしい者たちの思惑は、同じではないですが、利害関係はぴったり重なっているのです。それゆえに、今現在の世界の標準的な倫理観からすれば、到底認め難い、パルチザンや悪魔儀式は、膨大な金銭的援護を背景にして守られるからこそ、今なお続いていると言えましょう。
アメリカにもいまだに悪魔儀式が政治的に根深い事実は、ジェイソンモーガン氏が深く追及されていますので、詳しくは彼の書籍をご覧ください。かつて月刊WiLLに記載された彼のコラムも参考になりました。
納得し難いことをいますぐに変えてしまいたい気持ちはもちろん理解できます。けれどそのために今すぐに全てを破壊するという考えは、どうしても、あらゆる時代、あらゆる世界において、長くは続かなかったのです。なぜなら、そうやって破壊された後に作られた新たな世界では、今度はその世界を守りたい人と、破壊したい人との争いがまた繰り返されるからです。
天皇陛下がずっと一族を続けてきたこと、そして彼らはあくまで、親善・祭司・権威であり、権力は全く持たないからこそ、あらゆる時代、あらゆる世界において、彼らが一方的に恨まれ、殺戮されることがなかった歴史・・・この伝統こそ、平和とは何か、また平和を守っていくにはどうしたらいいのかの答えを、ぼんやりと教えてくれているように思います。
答えは、きっと、祈りなのです。
現実的には、今すぐに、全ての人に、同時に、幸福を叶える手段などないのですから。
けれど、諦めない。
出来ることを少しずつ、全ての人が望むことをゆっくりと、順番に叶えていく。
その流れが滞らないよう、また流れが届くのが遅れてしまった人たちにも、幸多きことを願うために・・・祈りがあるのだと思います。
意味も、作法も知らなくても、一年に一度は、初詣として神社に通い、手を合わせ、祈る人々がいまだに多くいるこの日本。その日本の象徴が天皇陛下であり、彼らの国事行為である、祈りに、何か大切な者があるのではないかと、私はぼんやりと信じています。
本作の帝は、悲しいかな、恐れのために大勢の人々を犠牲にしてしまいましたが、そんな彼もまた、時代が起こした必然であり、心の犠牲者です。ある意味、薄刃の一族以上に、何の自由も許されていない人なのですから。
それと全く同じ境遇でありながら、違う、平和の道を探そうとした皇太子様がいらっしゃり、この物語のこれから向かう先が、とても楽しみになりました。次巻もじっくりと読ませていただきます。あくみせんせい、最高です・・・! -
Posted by ブクログ
美世さんつえー!清霞さんつえー!
おれつえー、ならぬ夫婦つえー!を楽しめる回でした。
え?短すぎ?
はい。もう少し詳細にお話させていただきます。
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以下、ネタバレを含みます。
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今回初登場の新くん。そしてまさかの美世さんの実のおじいさんまで会えるという衝撃の展開。
表沙汰こそ、家のしきたりや、古来からの慣わしに則り、対立者に侮られぬよう、秩序を守り続けるよう、まるで人格や意思を軽んじたような振る舞いを見せますが、他の誰もいない家族だけの時間になれば、それはそれは深い愛情を示してくれました。
トランプ大統領の側近である人が、これまたトランプさんの理解者である、饗庭さんに伝えた言葉の中で、印象的なものがあります。「饗庭さん、弱さは、挑発だと私は思います」と、彼は言いました。結局、永く、世の中を守り続けるためには、侮られてはいけないのです。カラスをはじめとした鳥たちが何故、餌場一つのためだけにあれだけ縄張りを争うのかといえば、メスへのアピールもありますが、それ以上に、実力を示して侮られなければ、一族を絶滅させるような争いにまで発展することはないからです。超人的な武道家を前にすると、どんなに戦いの素人であってもその気配を悟り、自ずから、その人と戦うことを諦める姿に似ています。
戦うことを諦めさせることが、平和になるのです。そのためにはどうしても相手に侮られない強さが必要です。そしてそうした強さというものは、その価値観の外からいる人から見たとき、大層、居丈高で、窮屈なものに見えてしまうのです。私は、薄刃の力が、国家を転覆させることも可能なほどの恐ろしいものであることを、誰よりも薄刃の家系の者たちが理解しているからこそ、そうした振る舞いを惜しまず続けているのであろうことを鑑みると、深く尊敬の気持ちを覚えます。
それにしても、新くん。新くんですよ。
ReLIFEのファンであることも相まって、どうも私は「あらた」と名前のつく人物に弱いです。笑 強烈に感情移入してしまいました。
歴史の視点で省みましても、日本人には貨幣経済は似合わず、また学歴秩序も似合わないことは確かです。江戸の老中になるために必要なのは、科挙のようなペーパーテストではなく、その実力を認められる機会で十分に働くことでした。家柄があってもその力が及ばなければその座には長くとどまることもできなかったのです。
そこを鑑みますと、ちょうど貨幣経済により、諸外国との軋轢の中、急速に生活を変えざる得ない状況となり、誰もが生活の中で、自分の心と周囲の環境との動きの差に追いついていけなくなり、苦しむ思いを抱えた人は多かろうと思います。新くんは、本来の姓を変え、強大な企業として生き残るための努力を続けて来ました。まさに彼の場合は、個人の自由を獲得したいという誇りと、陛下に任された家の使命があり、伝統的な価値観と変わりゆくリバタリズムを同時に抱えた人だと分かるのです。
そんな彼の一生懸命な姿を見ていると、なんとも応援したくなります。第1巻の幸次さんによろしく、彼も今後、幸せが満ちていくことを願います。・・・とはいえ、もちろん、路頭に迷ったり、まさに霊障によって実際に家族を失ってしまった人たちもいたであろうことを鑑みますと、新くんはすでに幸せではあるのですが。
また、皇太子の父、つまりは陛下が薄刃を恐れて、鶴木家の経営を傾けさせ,齋森家に美世さんの正体を知らせ、あまつさえ、清霞さんがオクツキ荒らしの悪霊によって死に至ることさえ謀略を企てていたという件は衝撃的でした。
しかしこの件も、実在の歴史、特に、室町時代や南北朝時代にまで遡ると、それほど珍しくもないことです。あるいは菅原道真さんが他界された後の、藤原家絶頂期における皇族をめぐる陰謀や、もっと前の、蘇我一族が天皇簒奪をおそらく歴史上初めて企てたこともまた、陰惨なものでした。近衛文麿もまた、皇位にとって代わろうとしたように見える行動が多かったです。※占領神話の崩壊/西俊夫 近衛文麿/林千勝 等参照
しかしその度に、中臣鎌足や一条経嗣などが現れ、歴史は必ず皇位が滅ぶことを避けてきたのです。本編におかれましても、皇太子様によってそれは防がれました。世界史を学ぶと、それはそれは残酷な戦争の歴史であるのに対し、日本は水に囲まれていたこともあり、とても穏やかな時代を過ごしました。これは島国にはよく見られる傾向で、ケルト文化などと融和したイギリス国教会もまた、歴史が長いことがその証明となります。文明は基本、大陸の大国ではなく、むしろ海に囲まれた小国の長い平和によって育てられたのです。
とはいえ、そんな平和も永遠ではなく、航海の技術が進んだり、貿易、戦争を避けられなくなってくると、望まざるとも、大陸の、常に戦争をし続けるしか、裏切りと謀反に怯えて支配するしか出来なかった歴史の思想に影響され始めます。やがて日本にも貨幣経済が入ってくるに連れて、そして、からごころから始まる西洋かぶれに続いて、格差が明らかとなり、そのことを憂いたり、驕ったりする者も、現れます。南北朝の時代などはまさにその象徴ですが、本編中に見られた陛下の疑念や、鶴木家を貶める陰謀を立てなくてはやっていけないほどの恐怖というのは、まさに中国の諺の「枕を高くする皇帝は早くに亡くなる」というものに似ています。安心して眠ることが癖になると、あっという間に裏切られて死んでしまうほど、彼らは圧政を妬みながらも、誰もがその位につきたいと日頃から羨んでいるのです。
厳密にはそれとは違うかもしれませんが、少なくとも、薄刃の者も、その力も、この国を、朕(われ)とともに生きるおほみたからだ、と認めることが出来たのなら・・・こうはならなかったのです。もし、南北朝時代に「天皇は必要ですか?」とアンケートを取ったら、「いりませーん」と答える人が多数となり、歴史は変わってしまっていたかもしれません。皇族の方々も、人の心をお持ちです。繊細で、時に怯えてしまう弱さも当然にあるでしょう。
だからこそ、その弱さを認めた上で、親善と祈りに尽くされる姿に、今尚つづているその尊さに、日本人は・・・いえ、日本のことが大好きな海外の人たちも含めて、感動されるのではないでしょうか。
皇太子様が、父の企てに本気で怒っている姿は、父が敗戦を企てて、その後の占領時代でのしあがろうとしていたのに対し、ソ連に幽閉されて、毒殺されることが決まっていても、決して国への忠義を躊躇わなかった・・・近衛文麿とその息子・近衛文隆の関係を彷彿とさせます。ゾルゲ事件に深く関わっている風見章も同様で、本人とは関わりなく、その子供たちは、何を愛し、何のために生きたいかを見誤らないことも少なくないのでしょう。薄刃の秘密が明かされ、少しずつ自由になっていくにつれ、もちろん争いや、その利権を得ようとする悪意もあるでしょうが・・・少しでも、彼らの幸せを願った皇太子様の想いが、報われ、叶いますようにと祈っています。
つくづく、原作者のあくみさんは歴史に詳しくないとのことですが、見方ひとつで史実の繋がりをこうも奥深く楽しむことができますので、知らずに描いてらっしゃるとしたら、すごいことだなぁと・・・むしろ感心しきりでございます。今回も最高の胸キュンと激アツの殺陣の数々、楽しませていただきました。ありがとうございます。 -
Posted by ブクログ
お腹が痛くなってしまうほどのつらい境遇から、お砂糖何杯入れますか?あ、それとも、砂糖の箱ごとご利用ですか?ってほどに甘々になれちゃうお話です♡♡
以下、ネタバレを含みます。
・ー・ー・ー・ー・ー・ー・・ー・ー・ー・ー・ー・ー・
歴史に詳しくはないと、筆者のあくみさんはおっしゃいますけれども、『反・東大の思想史』尾原広之 を読んだあとですと、本作の「異能」を、実在した帝大の「特権」に置き換えれば、なるほど驚くほどしっくり来ます。特権欲しさに政略結婚させたり、そのために家の中の確執があったこともおそらくは史実に限りなく近い出来事でしょう。
廃藩置県によって生活を追い込まれた者たちは、その多くは、日本の誇るべき精神性によって、慎ましくも立派に努めていらっしゃいましたが、当然、人間ですから、徳高く目指す人もいれば、落ちぶれば僻み卑しくなる人もいます。本作の斎森家、辰石家はそうした人たちだったのでしょう。
そんな中でも、自分の臆病さを自覚し、恋した人が愛する誰かを妬むよりも、より望ましい自分でありたいと目指した幸次さんは立派だと思えました。いえ、きっと、本当は羨ましいですよね……その気持ちはあるはずです。それでもその、「自分本位“しかない”感情」の醜さを、彼は斎森と辰石の家で、そして自分の臆病さのために、何度も見てきたはずです。だからこそ、変わりたいと望むなら、心から羨ましいと思いながらも、その自分本位に依存し、愛した人に禍根は残さないと決めたのでしょう。
「神無月の巫女」の大神ソウマくんが好きだからか、愛した人の恋路を助ける間男くんにはどうしても感情移入してしまいます……彼の名の意味が、己の幸せは二の次、というものではなく、幸せへの次(みちすがら)という、やまとことばの于多-うた-であって欲しいと願います。
それにしても、清霞さん、ツンデレかと思わせて、惚れたら露骨に好意しか見せないし、好きな人に酷い目合わせる人には激おこですし、美世さんが体当たりしても壊さなかった立派な建物をあっさり落雷でぶち壊しますし、何もかも、爽快というか、読者の心を揺さぶる気持ちよさですね/// これはひょっとすると男性の読者でも「なにこの人かわいい、かっこいい」と好きになること間違いなしでしょう。笑
美世さんのお母さんの血筋が大層なものだと扱われているのも、人の心や記憶に作用できる能力だとされているからと記されてありました。
形見の桜に彼女が手を触れたとき、少しの痛みと「何か」が脳裏をよぎったとのことでしたが、果たして彼女に悪夢を見せているのは誰なのでしょうか。恐れている自分自身が、母から受け継いだ力を無意識に使ってしまっているのか、それとも実は母は生きていて、その力を悪用させられているのか。はたまたその悪夢の存在によって、自分が利用させられていることを伝えようとしているのか……あるいはもっと違う、他の誰かの仕業なのか。
一瞬の伏線でしたが、さまざまな予想が立ちました。どのような展開となっていくのか、これからが楽しみです。
また、近しい時代を扱い、かつ異能の名家の歴史という視点においても重なる作品として、「暁からすの嫁探し」という作品があります。本作を気に入ってもらった人にはこちらも併せてお楽しみ頂ければ幸いです。
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ネタバレ 購入済み
彼女の幸せな未来
幼い頃から周りの人達に特に妹や両親にしいたげられて生きて来て、訳有の素敵な彼とお見合いして何故か断られる事なく家にいさせてもらいどうにか生きていけるような生活に付けて、彼にも段々と打ち解けて行けて自分なりに幸せだと感じてきたりして、穏やかな生活になってきているように思っていても、色々な自分の過去が分かってきて、彼にも迷惑がかかり申し訳無いと思ったり、全て自分の我儘と思い相談できなかったり彼が、旦那様になっても、頼れなかったり切なく感動する事も有り、最初から読んでいると本当に呑み込まれてしまう様になって泣けてドキドキハラハラワクワクしてきます何回読んでも引き込まれていき自分が、主人公になって来ますね。これからほのぼのと生活してゆっくり楽しく進んでいくのかな思いますね時々実家の妹や父の悪いはからいで、危険な事が有っても彼が助けてくれたし、この人なら安心して自分を預けられると思い読んでいて安心した。幸せになってね。応援しています。