見どころ抜群!
正清さんの出番が見たくて仕方なかった人にはお待たせしました!とばかりにテンションあがりますよぉぉー!
そして、美世さんのとある勘違いによる清霞さんの慌てっぷりが最高にかわいいので、そこも胸キュンでした///
皆さん、是非とも読んでくださいまし♡
※
以下、ネタバレを含みます。
感想というより個人的雑記———と普段は書かせてもらっていますが、今回はエッセイ風に致しました。
貴重な時間をいただける方だけ、お付き合いを願います。
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落胆はしても卑下はしない
ある者がある人生を歩み
得られたものと
得られなかったものがある
それだけのことなのだから
綺麗事は
幸福なものが
花畑な妄想を
不幸なものに押し付ける
気色の悪い夢物語
今も不幸を嘆くものに
力を
機会を
自由を与えるのなら
感謝され
尊ばれるはずだ
それでも時代は変わっていく
いずれ必要とされなくなる役目なら
変わりゆく世の中で生きる備えをするべきだ
願いを叶えるために
力を求める
誰もがそうやって
足掻いて生きている
それでも人は
己に与えられたものを
精一杯に尽くし
在らん限りの幸せを目指す
そうやって生きていくものだから
誰かの力を妬み羨むものではなく
自らの才を掴むために続けた努めは
自らを卑下し諦めることなく
真っ直ぐ生きる希望を与えてくれる
その姿を あなたの勇気を
いつか どこかで
必ず見ている人がいる
誰かがあなたを愛している
夢見の力は
戦いを防ぐための力
つまりそれを使えば
必ず戦いで苦しむ誰かを見ることになる
あるいは己が害される経験をすることになる
あまりにも辛く悲しいこと
甘やかされ守られた暮らしの中で
小さな幸せを感じるだけの存在
それでもいいと思えた
尊き力を 選ばれた役目を
誰のためにもあえて使わない
そのかわりに
自分に与えられた幸せを
心から感じて生きていきたいと決めた
力を持つものを誰もが放ってはくれない
その理由はなぜだろうか
それは人が己の境遇を外に求めているから
外に原因があるから
誰かのために力を使わないものを
己が望んでも手に入れられないと
勝手に思い込んで諦めているものを
容易く手に入れている誰かを強く憎む
ゆえに力を持つものを放っておけない
ならば逆もまた然り
誰もが 内を 己を
見つめ 向き合うようになったなら
誰もが己の責を全うし
互いが互いに認め合い
時に尊び 時に愛し
そうして絆を育めるようになる
責を全うする者とは
己を任せられる者のこと
無条件に信じられるものなど
この世に己しかいない
己の最大の味方は他ならぬ己自身
己が己を諦めてしまっては
世界はこれを救えない
天は自らを助く者を助く
そして人はやがて
己以外にも
ひとつぐらい……
無条件で信じられるものを
見つけられるのかもしれない
それはときに信仰であり
ときに親しみであり
ときに愛情になる
そもそもひとひとりが出来ることは
じつのところ程度が知れている
ほんの12階ほどの高さから
街を見下ろしてみただけで
自分の暮らしは豆粒ほどのものだと分かる
けれどそれは虚しくない
そして大袈裟なことでもない
偉大な使命を手放すためには
壮大な覚悟が必要だと
勝手に思い込んでいただけ
己を天から見下ろす心の眼差しがあれば
あれよと言う間に手放せる
人の心などそんなもの
それでもあえて近づきたい
こだわってみたい
そういう想いが 願いが 夢があるから
人は苦しみ 悩み 思い込む
それでも
そう それでも
芽生えたら花咲くことを止められないように
勝手に色づいてしまう心があるからこそ
生きることは こんなにも
すばらしく うつくしい
大切な人のために
そしてその人を想う自分のために
強くなれるなら やさしくなれるなら
ありがとう 悲しみよ
ありがとう 喜びよ
やさしくて 不器用で 意外なほどに 甘えんぼ
自分の願いに素直になれるよう 想い 歩み続けてきた 強さ
2人が恋をして 愛し合い 幸せになるための物語
———とポエミィなエッセイにしましたところ、もうね、かねてより思っておりました通り、あくみさんの歴史考察はお見事だと感動するばかりです。私の最愛の物語『装甲悪鬼村正』と、時節が重なるというのも見応え抜群で……かの物語に通じるものもたくさんありました。
また、キャンディス・オーウェンズさんの『BlackOUT』を読んだ後ですと、被害者意識を引きずったまま、世界のせいにし続けていても世界は変わりませんし、そうやって無力なままでいてくれた方が、搾取し、より容易く富を奪える存在がいることを、今の私は知っています。
今回はまさに、政府や軍に不満を持っている者が、たまたま流行に乗るかのように、力を試させてくれる異能心教が現れてしまったため、彼らは己の正義はともかく、我慢ができなくなってしまったことはなんとも切なく思えます。それでも、カリスマの甘水がいなくなった瞬間に倒れてしまった組織の脆弱さを見ると、やはり、レーニンの革命によろしく、暴力によって願いを叶える正当性は、自分がその座についた後に現れる暴力を否定する時点で矛盾していて、誰もがその論理の破綻に虚しさを抱えていたことが明らかになったのでしょう。
ほんの10数年の陰謀は2000年を明らかに超える歴史の重みには決して勝てないと、本編のモノローグにもありましたように、大日本帝国時代は、帝国大学によって、かなり強烈な共産主義に毒されたものの、今もこうして、国体を失うことなく、国家を続けていられると言う時点で———どれだけ今の日本が本来の日本らしくなかったとしても、決して大切なものは失われていないのだと分かります。本編中の人々も、科学に準じ、信仰を素直に信じられなくなったとしても、最後の一線、歴史の重みに敬意を表するというところは、無意識において失われていなかったことを嬉しく思います。
それにしても甘水は、美世さんが薄刃の夢見を手に入れてなければ、本当に国家転覆を叶えていたかもしれません。本編中、異能が信じられなくなり、変わっていく世の中の未来を指摘した清霞さんのように、異能心教のその後の続くかは別として———少なくとも転覆は可能でした。限りなく危ういところだったと思います。それほどまでに彼の弁論は優れていました。理性に訴える正しさにおいては劇中の頂点といえましょう。けれど理性だけに囚われてしまったから、愛情を失った後の絶望に耐えきれず、新たな愛を育む希望を見出せなかったのです。私は、理性を左脳、直感を右脳と呼ぶようにしています。甘水にもし、ほんの少しでも、右脳寄りな感性が残っていたのならと思わずにはいられません。前巻の感想でも私は彼の幸せを願いました。
せめて、死して旅立ったあと、彼の魂が、須美さんと再開し、涙し、幸せになれることを願います。堕ちていった斎森の業も、彼の悲哀を思えば然りのこと。決して美世さんが力を求めて斎森を貶めたのではないのです。たとえ、斎森の子を産んだ手前、須美さんにとっては、甘水のことを受け入れることは難しくとも……せめて、この世の建前とか、常識とか、恋愛観とか、そういうものが一切必要のない、四次元以上の神の世界においては、斎森の妻でありつつも、甘水の恋人として、彼を抱き、愛し、救ってあげられる須美さんの自由が敵いますようにと、願ってやみません。
絶対に叶わない横恋慕という境遇が、どうにも、前述の装甲悪鬼村正の主人公・湊斗景明さんに重なりすぎて、甘水に感情移入してしまいます。彼の転生・死語のスピンオフなどを書いてみたくなりました。
力をあえて使わない勇気を持つ大切さや、じつのところそんな勇気や覚悟なんて初めから必要なかったという達観、そしてそんなちっぽけなことに囚われる心だからこそ、恋焦がれて、胸ときめく楽しさがあり、人生はすばらしいと———物語の景色から伝わってくる感動の内容は、そっくりそのまま今上陛下そのものだも想い、日本人らしさだなぁと思えました。
日本人からしたら当たり前ですが、日本語ってすごい言語なんです。縦にも横にもかけますし、カタカナもひらがなも漢字も書けますし、アルファベットもお茶の子さいさい。こんな多機能な言語は他に類がないほどに群抜いています。ゆえに世界の中心に立てる、圧倒的な倫理観を育むに十分すぎるほど、選ばれた存在であり、そうすべき力があります。世界は日本を待っています。
けれど、それでも———あえて、力を振るわなくてもいいのです。
その理由は、前述の通り。
世界が力あるものを、才あるものを放ってくれないのは、その力と才に依存しているからです。自分にはないから、外から寄越せと欲しているだけなのです。では、内を、己を見つめ、向き合い、力を、自由を育むことが、誰にでもできるようになったなら……力を持つことは当然であり、妬むものではなく、敬うものになるのです。江戸時代の武士は、生涯刀を使うことがないことの方が多かったですが、それでも武士道や稽古を勧められていた理由は、まさにこの、「強くなることは、己を磨くことは、他者と比べず、理由も求めず、当然のこと」であり、だからこそ「力あるものを妬まず、敬える心を持つ」大切さがわかるようになるから、なのです。
日本人は世界の中心になれる特別な言語と才能を持っていますが、世界中の人がそれをただ羨むだけでなく、自ら努力できるようになれればそれでいいのです。
美世さんのように、陛下のように、
祈り、想い、
自らと己を取り巻く全ての
悲しみ 喜び
そして幸せを
心から感じて生きていくだけでいいのです。
少なくとも私は、そう信じられる気持ちになりました。こんな気持ちにさせてくれたあくみさんの物語は、つくづく素晴らしいなぁと感謝の気持ちでいっぱいです。ありがとうございます。
あくみさんは歴史考察が苦手だと語っておりましたが、とんでもない。すさまじい研究努力の方であり、しかも無意識か意識してなのか、一番大切なメッセージを掴む巧さをあっさり成し遂げてしまっています。私がこのところ歴史を学んでたどり着いた感性を、小説の、物語の一筋だけで表現してしまえるその心の豊かさ。もう、愛していますとばかりに尊敬してます。
つくづく、日本は、和歌だなぁと。
私が尊敬する偉人のひとり、本居宣長さんも、和歌の大切さを繰り返し伝えていました。
人の心のささいなことを届ける于多-うた-
けれど幼児が感情を喚き散らすごとく叫んでも、だいの大人は、子泣き爺の戯言かと迷惑がって聞いてはくれません。
だからこそ先人は「嬉しいなぁ、悲しいなぁ」という、ただ単純な感情にすぎないその想いを、いまをときめく人々に、そして先祖への感謝と、未来へと続いていく希望のために、詞-ことば-を学び、工夫することで、和歌を高めていったのでしょう。
物語とは、私にとって、この和歌の無限の連なりの一筋に思えるのです。ゆえにどこか、歴史の重みと必ず通じ合うのかもしれません。私が本居さんに、装甲悪鬼村正に感じたときめきや涙や想いが、美世さんを通した彼女の世界と詞-ことば-の中に、たくさんあるように思えましたから。
語りたいことは尽きませんが、このあたりで一区切りにさせていただきます。
芙由さんの再登場でテンションあがるわ、清くんのあまえんぼがかわいすぎるわ、美世さんの痴女(!?)っぷりにドキドキさせられるわ、もう最高すぎました……。———あ、浮気を考えることも不誠実ではなく、だからこそ想いをひとりの相手に込められることは贅沢な悩みだと芙由さんが諭してくれたシーンも、振り返ると、宣長さんの恋煩いに似ていて、ドキドキしたものです。正清さんがずっこけていたのは笑いましたが。笑笑
次回はいよいよ結婚!タイトル通りの展開なので、ものっそい楽しみです。
私の思いつきによる雑記&ポエムにお付き合いいただいたあなたに、心から感謝を。
ありがとうございます