結城充考のレビュー一覧
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Posted by ブクログ
私の読書歴で最も没頭した作品かも知れない。
本作『プラ・バロック』のあらすじと感想になります。
機動捜査隊に所属する女性警察官のクロハは、ある刺殺事件に駆り出された途中で、所轄の奇妙な事件を捜査せよと班長に言い渡される。
それは港に隣接する冷凍保存型のコンテナの1つで異臭がするという通報で、現場に到着したクロハは冷凍コンテナの中に整列された14体の凍死体を目の当たりにする。
集団自殺なのか?殺人なのか?
奇妙な事件は、これだけでは終わらなかった。むしろクロハにとって、それは長い数日の始まりに過ぎなかった。
解説で有栖川有栖さんが選考委員を務めた本作含めた日本ミステリー文学大賞新人賞は、 -
Posted by ブクログ
捜査一課の二輪を駆使し自分一人で活動する女性刑事イルマの魅力が大爆発。今までの最高作だ。敵役はあの毒を操る蜘蛛、相手にとって不足はない。
24時間で致死に至る毒薬を蜘蛛に注射されたイルマは、蜘蛛の指示のままに少年の命を救うために、自分の身を返り見ずに動き回るが、頭脳の方もフル回転して、蜘蛛の陥穽を打ち破ろうとする。
イルマの視点とともに、もう一人小路刑事の視点も加わっているのが効果的だ。イルマの行動を疑いながらも、だんだんと心情はイルマの方に惹きつけられていくのだ。「主任は空の金星(ヴィーナス)ですから」とぬけぬけと言う宇野のように。
結末もダイナミックに終わる。最高に面白かった。 -
Posted by ブクログ
星4.6
警察小説強化期間の中、お薦めされて読んだ。二十代後半の武闘派捜査一課刑事(♀)が、大陸系暗殺者「低温」と謎めいた毒物使い「蜘蛛」、狡猾なIT社長「佐伯享」の三者を相手取りながら、それぞれ別個の奇妙な縁を結びつつ、渡り合う話。
蜘蛛の気味の悪い手口の数々と、同僚の宇野の抑制された情緒、イルマの交通機動隊時代に培ったという二輪操縦技術の描写が優れていた。低温の過去は『機龍警察 未亡猟団』を読んでいた時のノリで楽しめた。
文章の品質自体も、日本語の作家としてかなり上位に入るのではないか。読点を繋げて状況描写を続けるハイライトシーンがあるが、どれも無理のない接続で違和なく、映像が自然に -
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クロハシリーズ第2弾。動画サイトに虐殺シーンが連続して投稿され、クロハが捜査することになるが、フェイクではなく実際に行われたことが判明する。その一方で、立てこもり事件が起こり、バディになった警官が発砲して被疑者は死亡し、マスコミの批判を受けて二人は苦しむことになる。クロハは、死んだ姉の子どもの養育権を巡って、姉の離婚した元夫と対峙することにもなる。さらに、人気の仮想空間がRMT(リアルマネートレーディング)の脅威に晒され、クロハもそれに関わっていく。クロハは優秀な警察官なのだが、決してスーパーマンではなく、繊細な神経を持った現実味のある人物として描かれ、いくつもの事案に翻弄されるが、諦めずに戦
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大学の研究室での爆発、電気通信事業会社のビルでの立て籠り事件が同時に起こる。小説の世界でこれらが関係ないわけがない。爆発物を自在に操る犯人の未曽有うの事件の開幕だった。立て籠りの現場に駆け付けたイルマがじっとしているわけがなく、単独で渦中に飛び込んでいく。
バイクを乗り回す捜査一課殺人班の女性刑事イルマのなんとかっこいいことよ。それでいて女性らしい感情も持ち合わせていて、文章はイルマの内面を丁寧に描き出す。周りの人間との関わりも細やかに描いていて、ぐいぐいと引き込まれる。
それにしてもイルマには命がいくらあっても足りないぐらいだ。決して無傷ではなく、負傷してしまうところも人間らしくていい。 -
Posted by ブクログ
ー コンクリートの地表に、また新しい要素が加えられていた。水たまりのテクスチャ。薄く透明な膜が地面を装飾している。
そこに雨点が当たり、波紋を広げては消し、広げては消しを繰り返していた。アゲハは空を覆う雨雲を仰いだ。雲を突き抜けて聳える塔の姿。近代的にも宗教的にも見える、刺々しい形。アゲハがいつも向かうのは、その足下だった。
崩れた壁や錆びた金網が視界を塞ぐ。
その隙間を縫うように、アゲハは歩いた。歩きながら瓦傑の金属的な質感を確認する。トタン板の仕切りの向こうに、その酒場はあった。 ー
独特な文体の警察小説。
めちゃくちゃ面白かった。
伏線が綺麗に無理なく繋がって、満足感が素晴らしい。 -
Posted by ブクログ
結城充考『捜査一課殺人班イルマ オーバードライヴ』祥伝社文庫。
アマゾネス系の女性刑事イルマを主人公にした警察小説。4ヶ月連続刊行のシリーズ第4弾。一応の完結なのだろうか。まだまだ続きがあるような気がするが……
第1弾で度肝を抜かれ、第2弾はまあまあ、第3弾は少し中弛みしたが、この第4弾で一気に盛り返した感がある。やはり、警察小説の主人公には宿敵が必要なのだろう。イルマの場合、警察組織自体が宿敵なのだが、一匹狼である以上は組織に馴染まないのは致し方無しであろう。
あの奇怪な毒物専門の殺し屋『蜘蛛』が拘置所を脱走し、再びイルマ……警視庁捜査一課殺人班の女性刑事・入間祐希と対決することに……