結城充考のレビュー一覧

  • プラ・バロック

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    私の読書歴で最も没頭した作品かも知れない。

    本作『プラ・バロック』のあらすじと感想になります。

    機動捜査隊に所属する女性警察官のクロハは、ある刺殺事件に駆り出された途中で、所轄の奇妙な事件を捜査せよと班長に言い渡される。
    それは港に隣接する冷凍保存型のコンテナの1つで異臭がするという通報で、現場に到着したクロハは冷凍コンテナの中に整列された14体の凍死体を目の当たりにする。

    集団自殺なのか?殺人なのか?
    奇妙な事件は、これだけでは終わらなかった。むしろクロハにとって、それは長い数日の始まりに過ぎなかった。

    解説で有栖川有栖さんが選考委員を務めた本作含めた日本ミステリー文学大賞新人賞は、

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    2023年08月23日
  • 捜査一課殺人班イルマ オーバードライヴ

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    捜査一課の二輪を駆使し自分一人で活動する女性刑事イルマの魅力が大爆発。今までの最高作だ。敵役はあの毒を操る蜘蛛、相手にとって不足はない。
    24時間で致死に至る毒薬を蜘蛛に注射されたイルマは、蜘蛛の指示のままに少年の命を救うために、自分の身を返り見ずに動き回るが、頭脳の方もフル回転して、蜘蛛の陥穽を打ち破ろうとする。
    イルマの視点とともに、もう一人小路刑事の視点も加わっているのが効果的だ。イルマの行動を疑いながらも、だんだんと心情はイルマの方に惹きつけられていくのだ。「主任は空の金星(ヴィーナス)ですから」とぬけぬけと言う宇野のように。
    結末もダイナミックに終わる。最高に面白かった。

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    2020年11月18日
  • 捜査一課殺人班 狼のようなイルマ(祥伝社文庫)

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    星4.6

    警察小説強化期間の中、お薦めされて読んだ。二十代後半の武闘派捜査一課刑事(♀)が、大陸系暗殺者「低温」と謎めいた毒物使い「蜘蛛」、狡猾なIT社長「佐伯享」の三者を相手取りながら、それぞれ別個の奇妙な縁を結びつつ、渡り合う話。

    蜘蛛の気味の悪い手口の数々と、同僚の宇野の抑制された情緒、イルマの交通機動隊時代に培ったという二輪操縦技術の描写が優れていた。低温の過去は『機龍警察 未亡猟団』を読んでいた時のノリで楽しめた。

    文章の品質自体も、日本語の作家としてかなり上位に入るのではないか。読点を繋げて状況描写を続けるハイライトシーンがあるが、どれも無理のない接続で違和なく、映像が自然に

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    2020年11月06日
  • 衛星を使い、私に

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    機動捜査隊に入る前、女性警察官のクロハの自動車警邏隊での活動を淡々と描くように見せて、最後の裁判の公判に向けて非常な熱を持って盛り上げていく。これはクロハ自身が内に持つ熱なのだ。死んだ父親への不信感や周りからの圧力などに翻弄されても、自分を曲げずに突き進んでいくクロハの不器用な生き方は光を放つ。警察のことは詳しくは知らないが、警察の活動の描写にはリアル感があるし、人間の強さも弱さも如実に感じることができるのだ。

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    2020年10月08日
  • エコイック・メモリ

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    クロハシリーズ第2弾。動画サイトに虐殺シーンが連続して投稿され、クロハが捜査することになるが、フェイクではなく実際に行われたことが判明する。その一方で、立てこもり事件が起こり、バディになった警官が発砲して被疑者は死亡し、マスコミの批判を受けて二人は苦しむことになる。クロハは、死んだ姉の子どもの養育権を巡って、姉の離婚した元夫と対峙することにもなる。さらに、人気の仮想空間がRMT(リアルマネートレーディング)の脅威に晒され、クロハもそれに関わっていく。クロハは優秀な警察官なのだが、決してスーパーマンではなく、繊細な神経を持った現実味のある人物として描かれ、いくつもの事案に翻弄されるが、諦めずに戦

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    2020年10月03日
  • 捜査一課殺人班イルマ エクスプロード

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    大学の研究室での爆発、電気通信事業会社のビルでの立て籠り事件が同時に起こる。小説の世界でこれらが関係ないわけがない。爆発物を自在に操る犯人の未曽有うの事件の開幕だった。立て籠りの現場に駆け付けたイルマがじっとしているわけがなく、単独で渦中に飛び込んでいく。
    バイクを乗り回す捜査一課殺人班の女性刑事イルマのなんとかっこいいことよ。それでいて女性らしい感情も持ち合わせていて、文章はイルマの内面を丁寧に描き出す。周りの人間との関わりも細やかに描いていて、ぐいぐいと引き込まれる。
    それにしてもイルマには命がいくらあっても足りないぐらいだ。決して無傷ではなく、負傷してしまうところも人間らしくていい。

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    2020年09月05日
  • プラ・バロック

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    ー コンクリートの地表に、また新しい要素が加えられていた。水たまりのテクスチャ。薄く透明な膜が地面を装飾している。

    そこに雨点が当たり、波紋を広げては消し、広げては消しを繰り返していた。アゲハは空を覆う雨雲を仰いだ。雲を突き抜けて聳える塔の姿。近代的にも宗教的にも見える、刺々しい形。アゲハがいつも向かうのは、その足下だった。

    崩れた壁や錆びた金網が視界を塞ぐ。
    その隙間を縫うように、アゲハは歩いた。歩きながら瓦傑の金属的な質感を確認する。トタン板の仕切りの向こうに、その酒場はあった。 ー

    独特な文体の警察小説。
    めちゃくちゃ面白かった。
    伏線が綺麗に無理なく繋がって、満足感が素晴らしい。

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    2020年06月02日
  • 捜査一課殺人班イルマ オーバードライヴ

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    イルマシリーズ4部作はそれぞれ独立した物語なのだと思っていたが、最後になって全てが絡み合ったひとつの物語であったことに気付いた。4部作を一気に読み終え、興奮が冷めやらない。もし、続編が発表されるのなら是非にも読んでみたい。

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    2020年05月14日
  • 捜査一課殺人班イルマ オーバードライヴ

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    超面白い。今回は舞台設定上展開が目まぐるしいから、特に退屈しなかった。描写が淡々としていて人物の内面を推し量るのが難しい場面もあるが、そこを考えながら読むのも楽しかった。、

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    2020年01月29日
  • クロム・ジョウ

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    作者の他の作品らしく、硬質で冷たい感じがする作品。物語やロジックの組み立てが緻密でとても引き込まれる。ラストについては好き嫌いは分かれそうだけれど……

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    2019年06月27日
  • 捜査一課殺人班イルマ オーバードライヴ

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    結城充考『捜査一課殺人班イルマ オーバードライヴ』祥伝社文庫。

    アマゾネス系の女性刑事イルマを主人公にした警察小説。4ヶ月連続刊行のシリーズ第4弾。一応の完結なのだろうか。まだまだ続きがあるような気がするが……

    第1弾で度肝を抜かれ、第2弾はまあまあ、第3弾は少し中弛みしたが、この第4弾で一気に盛り返した感がある。やはり、警察小説の主人公には宿敵が必要なのだろう。イルマの場合、警察組織自体が宿敵なのだが、一匹狼である以上は組織に馴染まないのは致し方無しであろう。

    あの奇怪な毒物専門の殺し屋『蜘蛛』が拘置所を脱走し、再びイルマ……警視庁捜査一課殺人班の女性刑事・入間祐希と対決することに……

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    2019年06月17日
  • 捜査一課殺人班 狼のようなイルマ(祥伝社文庫)

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    結城充考『捜査一課殺人班 狼のようなイルマ』祥伝社文庫。

    アマゾネス系の女性刑事イルマを主人公にした警察小説。4ヶ月連続刊行の新シリーズ第1弾。『クロハ』シリーズがモノクロの世界観なら、本シリーズは総天然色カラーといった世界観である。

    なかなか面白いぞ!来月の第2弾も待ち遠しい!

    警視庁捜査一課殺人班の女性刑事・入間祐希は都内で発生した連続毒殺事件の犯人を追う。犯人は奇怪な殺人請負人『蜘蛛』。『蜘蛛』の暗躍と中国黒社会の殺し屋『低温』の不気味な影……

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    2019年03月24日
  • アルゴリズム・キル

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    ずっと続きを読みたかったシリーズの最新刊。ミステリーとしてはあっさりした展開で、犯人を推理したりトリックを見破ったりという要素はないものの、主人公を通して見たときの事件への没入感がすごくて、退廃的な世界観と解決への焦燥をリアルに感じられる。ミステリーとアクションの中間のような作品かもしれない。

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    2019年03月22日
  • プラ・バロック

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    セカンドライフみたいなポリゴン製電脳空間に殺人犯と女刑事が出会っていた、なんて、懐かしい感じの設定。

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    2018年12月28日
  • 衛星を使い、私に

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    クロハシリーズの原点。

    6つの短編というか事件というか?短編集のような感じですが、つながっている部分もあり。
    『プラ・バロック』以前のクロハということで、少しイメージが変わった気がします。
    別の人物から見たクロハが描かれているのも楽しめました。

    パーキングエリアで発見される人の指先。
    薬物取引にうずまく人間関係。
    警察組織におけるSの存在。

    重たいテーマも多いですが、まっすぐに正義感を持って立ち向かうクロハは魅力的だと思いました。

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    2016年06月30日
  • アブソルート・コールド

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    しっとりした読み口と終わり方で、厚さの割にかなりボリュームと満足感がある本だった。見たら連載してたのは2018年らしい。もともとの作風と合ってるとはいえ、AI時代を予測したかのような内容には驚かされる。
    最後もなんだか優しさが感じられる終わり方で良かった。

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    2025年02月02日
  • 首斬りの妻

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    仕事に貴賤はないと言われるが、今も昔も世間の風は冷たい。エッセンシャルワーカーなどと言われても低賃金。濡れ手で粟の大金持ちはチヤホヤされる。300年経っても卑しい心根は変わらんのかねえ。時代劇もハードボイルドでしたな。

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    2024年12月13日
  • 衛星を使い、私に

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    連作っぽい短編集。
    時間軸も若干入り乱れつつ。
    この人短編の方が上手なんでは?
    第三者から見たクロハの描写が印象的だった。
    長編よりも以前の話だからか全体的に少し人間的なクロハが良かったな。

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    2024年07月08日
  • エコイック・メモリ

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    「エコイック・メモリ」(結城充考)を読んだ。

    これは見事!

    独特の色合いの緊迫感と疾走するストーリーとクロハユウのキャラクターがガチっと嵌って頁を繰る手が止まらない。

    結城充考は読者を惹きつける術をよーくわかっていらっしゃる。

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    2024年03月12日
  • 衛星を使い、私に

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    シリーズ第三弾だが、前2作品以前、自動車警ら隊時代のクロハが描かれている。交通事故と思われる現場で殺人事件を解明、切断された指先だけから殺人事件に到達と、クロハ凄すぎ。6つの短編が連作短編の形で収録されており、前2作より読みやすかった。

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    2024年01月21日