グレアム・グリーンのレビュー一覧
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Posted by ブクログ
グレアム・グリーンによる短編集。
私の父は、「そんな渋い本を!」と驚いていたが、その父自身も数十年前にグリーン作品を読み漁っていたらしい。
21話の短編で、数ページで終わるものもあれば
数十ページにわたるものもあり、読み応えは抜群。
シニカルなもの・ホラーのようなもの・難解なものなど様々で、読みにくい話の次の章は、なんとなく進むのが億劫になりそうだったが、そんなこともなく読み終えた。
読んだ感想としては
・人間観察眼の鋭さ
・人の心の毒や闇を言語化するのが上手い
・人間の「自己矛盾」を的確に鋭くついてくる
そんな印象。基本的には「皮肉屋」だなーとww
そこを含めて好印象。
「ヒューマンファクター」も積んでるので、そちらも楽しみだ。
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Posted by ブクログ
「幸福と愛を混同するのは間違いだ」英文学史に名を刻む恋愛小説の最高傑作とはいえそこに甘さはない。妻と恋人と神との4角関係を描くキリスト教哲学小説の名作。西アフリカの植民地の警察副署長スコービーは南アフリカに移住したいと言う気まぐれな妻のためにシリア人の悪党に金を借りる。妻が発った後、海難事故で夫を失った若い女ヘレンと出会う。
グリーンの凄さは無駄のない人物描写にある。何かの役割を持って過剰に語ったり作者すら気持を理解できない人形のような人はいない。登場人物はごく自然に登場しその一挙手一投足が適確なジャブのように後々確実に効いてくる。そうそうと言ってるうちに迷路に迷い込み、それでも進むうちに一気に視界が広がりすべて計算されていたことに気づく。戻ってきた妻と理解ある恋人がいる中でスコービーはある決断をする。心の中は永遠に他人にはわからない。ときめきこそが人生の花でありときめきの数だけ罠がある(≧∀≦)しかし果たしてそれは罠なのか。恋人への愛、家族への愛、友への愛、人類への愛、神の愛、違うものなのになぜすべて愛という言葉で表現するのか、それが人類の明日の課題。魂が震える傑作 -
Posted by ブクログ
「ヒューマン・ファクター」。人間的要因、とでも訳しますか。
これは、大人の男性には堪らない小説でした。
手に汗握る、スパイ小説。紛れもないスパイ小説なんですが、そういう状況に置かれた男性の心理描写。葛藤。
銃の撃ち合いやら車の追っかけっこなんか、ゼロです。
後半は物凄い緊迫感。やめられないとまらない、でした。
1978年にイギリスで書かれた小説です。
書いたのは、グレアム・グリーンさんという人です。
グリーンさんは1904年生まれのイギリス人さん。1991年に亡くなっています。86歳くらいまで生きたんですね。
で、1930年代、つまり30歳前後にはもう、小説家として成功していたみたいですね。
そして、20代で共産党に入党。
この辺で、誤解してはいけないなあ、と思うのは。
1950年代くらい以降、スターリンさんが、隠しようもないくらい、相当な虐殺や警察国家をつくるまでは、
共産主義、というのは、世界中のインテリさん、理想主義者、ロマンある知識人的な若者たち、にとって、ある種の期待を込められる希望だった、ということですね。
で、第2次世界大戦が1945年に終了して、数年内に東西冷戦が始まるまでは、共産主義というのは、そんなに蛇蝎のように否定されるものではなかったはずです。
一方で、子供の頃からスパイ小説好きだったグリーンさんは、第2次世界大戦前から、MI6に入って、諜報活動、スパイをやります。
マジで、007の世界な訳です。
で、終戦直前くらいに辞職してます。
この辺、僕も不勉強ですが、若い人気作家が、同時にスパイでもあった訳ですね。
その後は、人気小説家として、不動の地位、死ぬまで続きました。
とは言え、一部の「スパイ小説ファン」「ミステリー愛好家」「イギリス文学ファン」以外には、そんなに知られてないですね。
名作映画「第三の男」の原作者でもありますが、これはグリーンさん本人が、「映画は素晴らしいけど原作はそうでもない」と発言しているそうです。
今回、読んでみたのは、大した理由でもなくて。
「娯楽小説読みたい気分だなあ。ミステリーっていうか、犯罪モノとか」
という気分と、
「丸谷才一さんが、褒めてたなあ。グリーンさん」
そして、
「読んだことのない作家を、外れるかも知れないけど、読んでみないとなあ」
という感じで。
で、外国文学は、翻訳が命。
これはほんと。
ぱぱっと調べて。
代表作らしく評判が良い。そして割と最近に新しい翻訳が出ている。電子書籍にもなってる。ってことで、「ヒューマン・ファクター」。
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主人公は、どうやら50代らしい男性の、カッスルさんです。
イギリスの情報部で働いています。
現場と飛び回るわけじゃなくて、ロンドンのデスクワークです。
アフリカなどの情報の受けや、その整理をやってます。
割に地味な仕事、地味な風貌、地味なブ男な感じ。
年下の部下デイヴィスと、実質ふたりの部署っぽい。
郊外に、妻と子と住んでいます。これがなんと、黒人妻、黒人の子。
カッスルさんは、諜報部員として南アフリカにいたんですね。
そのときに、スパイとして使った黒人女性に恋をして。
南アフリカですから。アパルトヘイトですね。白人が黒人と愛し合うなんて、えらいことなわけです。
色々あって、なんとか彼女を逃がして、自分も脱出。その辺りは全て、上司組織にも隠さず報告済みな訳です。問題なし。
さてこの、カッスルさんの部署の情報が、どうやらソ連側に漏れている、ということになります。
誰かが、スパイなんじゃないか?
って・・・みんな仕事がスパイですから、つまり、「二重スパイ」がいる・・・隠れている・・・。
さあ、それは。カッスルなのか。部下デイヴィスなのか。
罠。監視。不審。不信。不安。嘘。猜疑心。恐怖。
物語は、疑い迷う、上司たちの視点の章と、
疑われている一人である、カッスルの視点の章で描かれて。
#######ここからは、ネタバレです#######
上司たちは、部下デイヴィスが犯人、と状況証拠で判断、デイヴィスを暗殺しちゃう。
だけど、二重スパイは、カッスルだった。
カッスルは、妻をアフリカから脱出するときに世話になった友人がいた。
その人に本当に世話になった。
その男性は、共産主義者だった。
その人への友情義理から、ソ連側に情報を流していた。思想としては、全く共産主義じゃないけど。
そして、カッスルは恐れる。いつバレる。もうだめか。バレてるのか。バレてないのか。
デイヴィスが死んだ。もうこれ以上、情報を漏らしたら、自分が犯人だとバレる。引退しよう。
そんなときに、MI6の仕事で入った情報。
それは、そのまま許すと、アフリカの黒人たちに大変不利になる、米英の陰謀だった。
苦悩したが、それを、ソ連側に流すんですね。
もう、カッスルさんは、祖国も思想も大義名分も、その欺瞞性に倦んでいます。
ただ、黒人の妻と自分との、愛の共同体だけが、彼にとっての祖国なんですね。
それには、アフリカを、黒人を、見殺しにはできないんですね。
その情報を出した後で。
周辺の「連絡網」に異常が起こります。
もうダメか。妻子は、母の実家に、喧嘩したことにして去らせる。
さり気ない尋問に、職場の人が来る。ダメか。殺されるか。東側の救出は、あるのか。
結果、ぎりぎりタッチの差で、東側に救出、脱出、亡命。
モスクワで何とか無事暮らす。
だが、妻と子とは別れたまま。それが辛い。それが辛い。妻子もいずれモスクワに呼ぶ、と東側は約束してくれたのに・・・。
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と、言うお話です。
なので、ほとんどは、サラリーマン的な暮らしをしているカッスルさんの日常。
そして、サラリーマン的な暮らしをしながらも、二重スパイが誰なのか、考える、上司たち。
という、地味な状況。
全体の1/3くらいを過ぎて、多分そうだろうな、と思っていたけど、「カッスルが二重スパイ」と分かる。
●もう、そこからの、心理サスペンスが一級品。
●それから、敵味方を問わず。
諜報に生きて暮らす人々の、神経の疲れ具合。孤独感。不信感。寂寥感。この描写がまた、絶品で。
これは、ある意味、何の仕事をしていても、愛無き暮らしに忙殺されていれば、同じように当てはめれる心理。
●そして、そんなにクドくなく、語られ、展開される、世界観。
共産主義が正義でもない。
でも資本主義陣営が正義でもない。
黒人、という立場を通した時に見える風景。
仁義なき戦いの中で、主人公と妻が、守らなければならない、人としての最後の砦というか。
ヤクザ映画風に言うと、それでも捨てられない義理というか。
そして。
そんな主人公の周りで行われる、なんだかもう、手段と目的が数回転くらいこんがらがったような、
諜報戦。ゲーム。
いやあ、このジリジリした心理描写、圧巻です。脱帽です。
神なき孤独な街を往く男の背中、という意味では、男性のハードボイルド・ミステリー娯楽作なんですが。
とてもそれでは収まりきらない。
小説ならではの心理描写、サスペンス。
確かに、原作を手がけた映画「邪魔者は殺せ」「第三の男」に通じるテンション、焦燥感。
女性向きではないでしょうが、えらく、面白かったです。
丸谷才一さんの「快楽としてのミステリー」で確か知ったんですけどね。さすが丸谷氏。
ちなみに。
「半分、実話小説じゃないか」、という噂があるらしいですね。
キム・フィルビー、という名前でネット検索するとわかるんですが。
雑に言うとグリーンさんがMI6時代に、仕えていた上司さん。
この人が、MI6でかなーり偉くなったんですけど、実は共産主義者で、ソ連の二重スパイだった。
1950年代の英米のスパイ戦略は、モスクワに漏れまくっていたそうです。
で、ばれて、1960年代かな?にソ連に亡命したんですね。
その後は、モスクワでKGBで働いていた。
1988年か、そのへん、冷戦終結直前に逝去。
この人と、グリーンさん。
ゴルバチョフの雪解け時代にですね。
グリーンさんは何度かモスクワに行って。
再会してるんですね。
相当、仲が良かったみたいです。
面白いですね。
グレアム・グリーンさん、大人の味わいのある作家さんですね。
渋いです。
ジョルジュ・シムノンさんの、イギリス版っていう感じですね。
次々続けて読みたいわけではないですが、うん、四〇代から読み始めるくらいで、正しい作家さんだと思いました。
お子様にはね、渋すぎて。面白くないだろうなっ・・・と(笑)。
そんな、歳を取ることの旨み、を、味わえるのも、読書の快楽ですね。 -
「権力と栄光」について
この作品は、グレアム・グリーンの代表作の1つで、遠藤周作の「沈黙」に大きな影響を与えたと言われている作品。
メキシコの共産主義革命という実際に起きた出来事を背景に書かれています。
逃亡中の神父は、逃亡する以前に既に祭日や断食日、精進日といったものに心を煩わすこともなくなっていますし、妻帯や姦淫を許されないカトリックの神父であるのに、マリアという女性との間に6歳になるブリジッタという娘がいます。
そして、逃亡途中に聖務日課書を失くし、携帯祭壇(オールタ・ストーン)を捨て、通りすがりの百姓と自分の服を交換。
残っているのは、司祭叙任十周年のときの原稿だけ。
そこまで堕ちた神父であるのに、彼の存在は依然として神父でしかありえないのです。
この極限状況の中で、神父であり続けるということ、そして信仰を持ち続けるということに一体どれほどの意味があるのか、神父自身も分からなくなっていたはず。
それでも、きっぱりとやめるという主体性もないまま、彼は逃亡を続けています。
自分の罪を告解したくとも、彼は自分の罪の結晶である娘を愛しているのです。
そのため彼の最後の祈りはどうしても娘へと向けられてしまいます。
その揺れ動きが、そのままこれまでの彼の行動を象徴してるのでしょうか。
「権力と栄光」という題名の「権力」とは当然、国家権力のことだと思い、国家とカトリックの対比なのかと思っていたのですが、訳者あとがきによると「神の力と光」というのがただしいい意味合いなのだそう。
この題名が既に定着しているとはいえ、これではかなり印象が違ってしまいますね。
そして、さらに訳者あとがきでは、この神父とキリストの生涯との共通点を挙げていて、これはかなり面白いですし、説得力があると思うのですが、「そうした読み方はあまりほめたものではないし、慎むのが当然だと思われる」とあります。
なぜ慎むべきなのでしょうか。グレアム・グリーンという作家を読む上では、それは正しくないことなのでしょうか。
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Posted by ブクログ
「ヒューマン・ファクター…人間や組織・機械・設備等で構成されるシステムが、安全かつ経済的に動作・運用できるために考慮しなければならない人間側の要因のこと」(Wikipedia)
舞台は第二次大戦後冷戦時代のイギリス諜報部。
アフリカ情報担当である諜報部員カッスルは、すでに定年を過ぎても仕事を続けているが、その理由は自分でも解らず、常に「引退」を考えていた。
そこへ、所属する部署に内部調査が入る。
誰かによる情報漏洩の疑いを明らかにするため……。
イギリス諜報部というと「スパイ大作戦」「007」など派手なイメージがあるが、まったくそんな描写はなく、淡々と日常を描きながら疑心暗鬼が高まっていく様子が中心。
それは、主人公カッスルの好物である、J&Bスコッチの喉を通る甘く芳醇な香り、それで
いてキリキリと内臓を締め付ける刺激にも似ている……。
「我々はみんな“箱”の中にいる」
「あなたは言う、私は自由ではないと。
しかし私は思いどおりに手を上げて、おろしている。」
終盤に差し掛かった時にカッスルが引退を告げる。
物語は、ここからいよいよクライマックスへ向かっていく。
そして、わたしはこの結末が大好きだ。
どう好きなのかは、未読の人のために言わないでおく。 -
購入済み
映画「ことの終わり」や「第三の男」の原作者による長編小説。
父親の賭けのかたとして、キャプテンと名乗る詐欺師に連れ出された少年は、ロンドンの片隅でキャプテンの帰りを待ちわびながら暮らす女性と生活を始める。
やがて成長した少年は、キャプテンを追ってパナマへ渡る。
奇妙な関係で結ばれた男女と少年の、複雑でひたむきな愛を描く前半、パナマを舞台に冷戦時代のスパイ戦が展開される後半。
グリーンの魅力が楽しめる作品。 -
Posted by ブクログ
本書の解説には、某小説家による以下のコメントが引用されています。
「スパイを主人公にしているからスパイ小説にちがいないだろうが、そのようなレッテルは無用の傑作である」
まさにその通りです。
スパイ小説の傑作であることは間違いないですが、より大事なことはスパイという存在を描いた人間小説ということかもしれません。
誰が二重スパイなのかという謎を追いかける愉しみもありますが、それと同時に語り手であり主人公である男にとって何が大事なのかを知っていく愉しみもあります。
500ページ近い作品ですが、久しぶりに睡眠時間を削ってでも読み進めたいと思わせてくれた一冊でした。 -
Posted by ブクログ
トム・ハーディへのインタビューで、映画インセプションで彼が演じた役(イームス)のモデルの一人であるというのを知って読んだ。
最初はホーソンがそのモデル?と思ったけど、最後まで読むと主人公の方かなぁと。old manって言ってたしやっぱりそっちか。
内容は最初はなんだか展開が読みやすい昔の小説という印象で正直あまり面白くなかったんだけど、途中から怒涛の展開、主人公の変貌…いや変貌は寧ろ見事にしておらず終始一貫しているんだけどそのブレなさがどんどん得体の知れない印象を与え、この周りの登場人物や読者がいかに主人公を見誤っていたかに気づくという。こういう騙され方はとても面白い。
そして感情描写が少ない分想像が掻き立てられて良い。
恋愛物としても、こういう実は最初から一目惚れだったんですみたいな展開ツボ。
キャラクターもみんな個性的で一筋縄ではいかない感じ、グリーンのその土地の描写の巧さ、全体的にとてもハマったのでこれはまた読み返してしまうタイプの本だな。多分読む度にダイキリを飲みたくなるね。